もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら

東山統星

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チャプター2 実力と陰謀の学び舎、メイド・イン・ヘブン学園

024 銀髪碧眼の幼女といじめられっ子の女顔少年

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 メイド・イン・ヘブン学園。通称「MIH学園」。
 そもそもの歴史が浅い国家「ロスト・エンジェルス連邦共和国」において、創立から今年で100周年というのは極めて長い歴史を物語っているし、実際ロスト・エンジェルス──LTASエルターズにおいて屈指の名門校であることは間違いない。
 そんな学校だが、しばしば人はこう語る。「実力と陰謀の学校」であると。
 あまり良い言われ方ではないが、実際そのとおりなのだ、とルーシ・レイノルズはでありであるクール・レイノルズから口酸っぱくいわれていた。
 しかし、ルーシにとってはそちらのほうがやりやすいのかもしれない。彼……いや、彼女は、かつて21世紀日本の裏社会を征服した者だからだ。いまはなんの因果か10歳の銀髪碧眼幼女として生きているが、考え方はまったく変わっていない。
 だから、ルーシはMIH学園へ足を踏み入れる。

「……キャメルに見つかったら面倒だな。クールの部下に送迎したもらったわけだし。というわけで、ヤニの時間だ」

 MIH学園は広い。古めかしい校舎は10個あるし、中庭も巨大で、ところどころに喫煙所らしき場所があり、ところどころで喧嘩のような、いや、一方的な暴力が振るわれている。

「ま……鉢合わせたらまずい。裏行こうか」

 ルーシは10歳……ではないが、見た目は10歳だ。なのでキャメルというに見つかるのは好ましくない。そういう理由もあり、ルーシは人生ではじめてといって良いほどの行動をする。隠れて煙草を吸うという経験を。

「無駄に広いな。LTASエルターズって狭い国じゃねェのかよ。こりゃ生徒から金を搾り取っているな」

 そんな愚痴をひとりでこぼし、ルーシは学校の裏側へ行く。

 学校の裏側。ここまで来るとひと気は少ない。少々人がいて、やはり暴力が起きている。別に助ける義理もないルーシはそれを無視し、青いブレザーの内ポケットにしまっておいた、赤と白が特徴的な煙草を取り出す。

「一応携帯灰皿を持ってきて正解だったな。ポイ捨てってのはよくねェことだ」

 散々人を殺したくせにポイ捨ては良いことではないと考えている。それがルーシという人間なのだ。
 そんなわけで、ルーシは煙草へ火をつける。

 だが、
「火がつかねェな。こういうときに限って火がつかないんだ。呪われているのかもな」
 ルーシの電子ライターはまったく作動しなかった。

「しゃーねェ」

 ルーシは乱雑に誰かへ暴力を振るう生徒の背中を叩く。

「すみません、火をくれませんか?」
「あ? おれらがなにしてるかわかってるわけ?」
「いじめでしょ? 別にチクったりしないし、興味もない。とにかく火がほしいんですよ」
「はあ?」
「はあ、じゃないですよ」
「……。てめェ、ぶち犯されてェのか?」
「あっそ」ルーシは呆れた態度だ。

 ルーシは即座にその男の耳を掴む。
 なにが起きたか理解していない生徒。
 刹那、ルーシは耳を

「…………ッ!?」
「まだ片耳だけだろ? 私が知る限り、両耳両目両腕全部もがれても必死にあがいていたヤツはいるぞ?」

 別に嘘ではない。転生する前、そういう根性があるヤツがいたのだ。

「や、やべェ!! 逃げんぞ!!」
「お、おう!!」

 逃げるときは一目散。ルーシはため息をつく。

「ライターがねェよ。あーあ、メリットと連絡先交換しときゃよかった」

 そうやってやりすぎたなと思っていると、ただただ暴力を振るわれているだけだった少年が立ち上がった。
 髪は金髪。この国ではありふれた髪色だ。身長は160センチほど。制服からして高校生なので、低身長の部類に入る。顔はボロボロだが、中性的、いや、女性的な顔をしている。男子の制服を着ているため、おそらくは男性だが、そう感じさせない雰囲気が漂っている。

 とはいえ、話しかける義理もないルーシはその場から立ち去ろうとするが、
「ちょ、ちょっと待って。キミって高校生?」
 その少年に止められた。

「そうだが?」
「いや、高校生にしては子どもすぎるって思ってさ。あと、ライターならあるよ。ボクの髪を焼くために持たされてるんだ」
「なかなか凄惨ないじめを受けているな。だが、随分と元気じゃねェか」
「なれてるからね。この程度の暴力だったら、1日に3~4回くらいは起きるんだ」
「大変だな。ま、良いや。ライター貸してくれ」
「はい」

 ルーシは少年からライターを借りて、それで火をつける。

「あー……やはりこれに限るな」

 至福の表情である。りんごみたいな張りのある肌の少女が煙草を咥え、そんな表情を浮かべる。異常者以外の何者でもないかもしれない。

「で? オマエはいじめられているのに反抗しないのかい?」

 何気ない世間話というヤツである。

「別に……、反抗したところで結果は見えてるしね」

 すねた態度だ。ルーシは手を広げる。

「それじゃおもしろくねェな。しかし、1日に何回もぶん殴られるのは辛ェだろ? なにか支えがあるとか?」
「まぁ、ボクみたいなナードでも居場所はあるんだ。ゲーム部があってね。そこだとみんな優しいしさ。けど、こうやって殴られるのが辛いのは否めないかな」
「だろうな。ま、ライター貸してくれたんだ。相談くらいなら乗るぜ? 私はルーシ・レイノルズ。オマエは?」
「れ、レイノルズ!?」

 少年は明らかに驚いた表情だった。レイノルズ家がLTASエルターズ屈指の名門であることは知っているが、そこまで驚くことなのだろうか。

「ああ、レイノルズ。父はクールって名前で……叔母っていうのも変だが、キャメルが家族でもある」
「……キャメル」
「なにか嫌なことでもされたのか?」
「いや、別に……」
「わかりやすいヤツは好きだぜ。あれか、告白してボロ負けしたってところか。だが、アイツは狙わねェほうが良いぜ? いろんな意味で」
「いや……そういう理由でもないんだ」
「ふーん」ルーシは深堀りせず、「で? オマエの名前は? あと連絡先は?」
「アーク・ロイヤルって名前だよ。一応王族の血を引いてるっていうけど、ボクみたいな落ちこぼれがそれを名乗って良いのかは疑問だよね……」

 目を細め、
(……偶然というものもあるんだな。まさか元王族を騙っていたら本物の元王族と会うとは)
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