キンレンカ-幼女転生の殺し屋の成り上がり(リスタート)-

東山統星

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第二幕 ストーン・コールド・クレイジー

011 姉救出作戦

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 サーシャは上着だけ羽織って、姉救出へと向かおうとした。
 そのとき、バイプ音が鳴り響いた。サーシャはチラッと横を見て、それが姉リンのスマホだと確認する。非通知になっている時点で、サクラ・ファミリーとやらが絡んでいるのか。

「やぁ」
『テメェ、キラー・クイーンか?』
「そうらしいよ」適当な態度だ。
『テメェの姉の身柄は預かった。交換条件は、テメェそのものだ。今すぐ事務所へ来い。テメェを警察デコに差し出したら、姉を解放してやる』
「あぁ、そういうこと。リンお姉ちゃんは別のところにいるってわけ?」
『あァ?』
「今からアンタらの事務所行こうと思っていたんだ。けどなぁ、リンお姉ちゃんがそこにいないなら意味ないね。私も無用な殺生したくないしさ」
『……おい、ふざけてるのか?』
「ふざけているのはどっちだよ。アンタら、私と闘うのが怖くて人質取ったんだろ? だっせぇな」
『分かった、分かった。テメェのアネキで屍姦しかんしてやるよ』
「ネクロフィリアとは趣味が悪いね。全く、8歳のガキ相手になにムキになっているんだか」

 電話が切られた。サーシャは肺がしぼむほど溜め息をつき、これからの展望を考える。

「事務所に特攻して皆殺しにしても、リンは殺されるだろうな。うーむ。汚ねぇ真似しやがる。機械の魔法を使えるヤツがいれば……ん?」

 サーシャは自身のスマホ━━クールから与えられたそれで、リオへ電話をかけ始めた。

『……だから、アニキの出所パーティーだって』
「なら、そのアニキに変われ。相棒」
『……分かったよ。ポールのアニキ、オヤジが話していたサーシャってヤツです』

 リオは渋々、ポールとサーシャをつなげた。

「始めまして。といっても、もう挨拶している余裕もないんですよ」
『なんの用件だ? こっちは寿司食ってシャンパンファイトしてるのに』
「リオを貸してください」
『あ?』
「それだけで良いんです。リオさえいれば、あとは勝手に解決するし……なんならサクラ・ファミリーにかなりの打撃を与えられるかと」
『オメェとリオがサクラ・ファミリーと抗争するのか? ハッ、ふたりで組織に真っ向から立ち向かえるのかね』ポールはシャンパンファイトしているとは思えない明瞭な口調で言う。『良いか? 連中は準構成員を含めて4000人だ。ふたりでなにができるっていうんだ?』
「別に喧嘩のケツ持ってくれ、と頼んでいるわけじゃないです。ただリオに外部的な協力をしてもらえれば良い」
『……ヘッ、面白れぇガキだな。親分が気にいるのも分かるぜ。分かったよ。リオをそちらに向かわせる。当然、おれらは全く関与しねぇからな』
「ありがとうございます」

 電話を切り、サーシャは姉のスマホを握ってリオを待つ。
 それから数分後、リオがやってきた。しかしインターホン越しには、なぜか巨漢がいた。

「誰です?」
『ポールだ。リオをここまで運んだ。んじゃ、あとは好きにしろ』
「どうも」

 サーシャはリオを家に向かい入れて、即座に姉のスマホを彼に渡した。

「サクラ・ファミリーの三下が、非通知で電話かけてきやがった。逆探知してくれ。コイツから辿れば、芋づる式で姉がどこにいるか分かる」
「……了解」
「気が散るなら黙っておくが、きょうはポールさんの出所パーティーなんだろ? なんで張本人がオマエを連れてきたんだよ?」
「……ポールのアニキは、空間転移の祝福を受けている。一刻を争う事態なのは、アニキも理解してくれている」
「なるほど。良いアニキ分だな」
「……きょう初めて会ったけど、あのヒトの魔力は評判どおり凄まじい。〝悪魔の片鱗〟の達人だっていうのも、頷ける」
「悪魔の片鱗?」

 サーシャは、カルティエと闘ったときのことを思い出す。

「……知らないの? 悪魔の片鱗も?」
「私は8歳児だぞ。知っていることのほうが少ない」
「……惚けてばかり。まぁ良いや。逆探知なんて簡単だから、サクッと教える」リオはスマホをノート・パソコンにつなげる。「……要するに、魔力を身体の外側にまとわせるのを悪魔の片鱗っていう。身体能力の向上、身体そのものの硬化、魔力の探知が主な付与能力。……そして、これらは祝福で得た能力に加算される力だから、使えて損はない」
「どうやって使うの?」
「……まず、魔力を感じ取ることからだ」

 リオはノート・パソコンの画面から目を離さず、淡々と続けた。

「……祝福を受けた者は、皆持っている。……オマエが〝ルール・オブ・ロー〟を使うときに感じる、あの力の源だ」
「あぁ、あの快感か」
「……オマエの場合、それが魔力に値する。それを身体中に巡らせて、皮膚の表面で膜のように展開する。……それが〝悪魔の片鱗〟だ」
「なるほど。カルティエとかいう女が使っていた、身体を硬くする技術か」
「……カルティエ? あの〝セブン・スターズ〟の?」
「そういえば教えていなかったな。端的に言うと、アイツは悪魔の片鱗のみで私に挑んできた。私を侮っていたのか、街に被害を及ぼしたくなかったか知らねぇけど」
「……まぁ、その話はあとで良い。姉が大事なんだろ?」
「あぁ。そうだな」
「……解析が完了した。電話の主は、この廃工場にいる。あとはオマエだけでなんとかしろ。ネクサス・ファミリーと喧嘩しているのに、加えてサクラ・ファミリーと抗争する余力はない」
「そりゃそうだ、でも助かったよ。リオ。ありがとう」
「……困ったときはお互い様だ」

 廃工場の位置情報をスマホに送ってもらい、リオは家から出ていった。サーシャはこんな場面でもニヤッと口角を上げ、戦闘を心の底から楽しみにしていた。

 *

「事務所にキラー・クイーンは来たのか?」
「まだです。アニキ」
「まさか家族を見殺しにはしないだろう。しかし、ヤツのペースに載せられても困る。おい、この女の手をやれ」
「へい」

 廃工場には、数人の祝福済みの無法者がいた。リンは椅子にくくりつけられて、ぐったりとしている。

(サーシャ……アンタが捕まったら、あたしひとりぼっちになっちゃう。でも、ここであたしが殺されたら、今度はアンタがひとりぼっちになる。一体どうすれば━━)

 リンの右手にハンマーが振り下ろされようとしていた。彼らはニタニタと笑い、リンのような未成年の子どもだろうと構わず、サディスティックな感情に身を任せた。
 ところが、そのハンマーがリンの手に触れる直前、なぜかその動きは止まった。

 まず、爆発音が響いた。その次に凄まじい風がリンの頬を伝った。彼女は顔を上げ、すぐ目に涙を溜めた。

「サーシャ!!」

 金髪翠眼の幼女は、140センチほどの少女は、手始めにリンの一番近くにいたヤクザに、風の塊をぶつけた。

「ぐ、はぁッ!?」

 吐血しながら倒れ込む男を見て、他の者も状況を呑み込みざるを得なくなった。

「クソッ!! キラー・クイーンだ!! ぶち殺せ!!」

 魔力を感じ取れるのは、残り3名。指揮者にもそれを感じ取れる。

「これが〝悪魔の片鱗〟か……!!」

 サーシャは犬歯を見せながら、日本刀で突撃してくる男の攻撃を軽々交わす。この速度は、それこそ悪魔の力だろう。しかしここまで近寄られれば、いくらでも対処できる。

「グォッ!?」

 サーシャは風力を一点に集め、詰め寄ってきた男の鼓膜を引きちぎる。耳から地が流れ、男はその場からよろけ落ちた。

「さぁーて、ジャパニーズ・ハラキリの時間だぜ!! 腐れ外道ども!!」

 サーシャはそう声を張り上げ、日本刀を近くの男に投げる。それは意思を持っているかのごとく、下から上へと別の敵の胴部を斬り裂いた。
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