15 / 162
1年目の春~夏の件
皆で無事な“裏庭ダンジョン”からの生還を祝う件
しおりを挟む今は来栖家の皆は、入浴を済ませ夕食を食べ終わってリビングで寛いでいる所。ダンジョン探検の興奮もようやく落ち着いて、同じ部屋に集まっての歓談中だ。
家族の話題の中心は、もちろん今回の探索の結果に他ならない。最終5層を制覇した結果、見事にダンジョンコアを破壊に至った訳である。
それに伴って、戦利品も結構な数にのぼっていた。護人からすれば、それは完全なオマケ要素でしか無いのだが。
何にしろ踏破後の裏庭ダンジョン、魔素鑑定装置での計測では完全に安全マージンを得られたのだった。その事実に、ホッと一安心の家長である。
つまりは、推定で最大半年程度は安全が保障された計算となる。唐突に訪れた危機だったけど、家族で力を合わせて何とかそれを退ける事が出来た。
ダンジョン内での儲けは、それを思えば二の次って感じ。
「う~ん、ボスの落としたスキル書は、残念ながら誰にも反応しなかったねぇ……仕方ないから、売る用のリストに入れておくね、護人叔父さん」
「残念だなぁ、本当は私が覚える筈だったのに~!」
香多奈の相変わらず根拠のない叫びはともかく、護人はそれが普通だよなって程度の認識。姫香の言葉に頷いて、能力不明のスキル書の束を小判と一緒の分別場所に置く。
小判や瀬戸物は、完全にどこかの地面に埋まっていたこちらの世界の遺物らしい。古銭も同じく、何十枚と出て来たモノの、恐らくは骨董品以上の価値は無さげ。
子供たちの興味は、流れるように次の項目へと進んで行った。つまりは色々な鑑定がお気楽に可能らしい、『鑑定の書』の存在である。
今回これを数枚ゲットして、色々と試すには充分な数。
「えっと、これが鑑定の書に間違いは無いんだよね……早速使ってみようよ、お昼に貰ったドロップ確認表によると、人にも物にも使えるみたいだよ?
鑑定の書って何枚取れたんだっけ、紗良お姉ちゃん?」
「確か、全部で6枚だったかなぁ……そうそう、2枚足す4枚で合ってるみたい。人への使い方は動画で何となく分かってるけど、品物に対してはどうやって鑑定するんだろうね?
護人さんか姫香ちゃん、分かりますか?」
「サッパリ分からないな……妖精ちゃんは知ってるかな、香多奈?」
キッチンテーブルでは、姫香が回収した品物のチェックに余念が無い。それに香多奈がちょっかいを掛けて、早速みんなで使ってみようと家族に提案。
その筆頭が『鑑定の書』なのだが、これを品物に使って不明品を鑑定とかも出来るらしい。ちなみに、人に使うには唾液などを用紙に垂らせば良いみたい。
香多奈が妖精ちゃんにアドバイスを求めている間に、姫香が護人に一緒に鑑定しようと持ち掛けて来た。護人としては、たった6枚の貴重品を自分に使うのを躊躇ってしまう。
ただし、スキルを新たに所有した姫香の鑑定結果は見てみたい気も。そう言うと、それじゃあ私が最初に試すねと元気な姫香の返事。
そうして躊躇いなく、スマホ大の用紙をペロッと舐める少女。
【Name】来栖 姫香/15歳/Lv 03
体力 E+ 魔力 F-
攻撃 D 防御 E
魔攻 F- 魔防 F
魔素 E- 幸運 D+
【skill】『身体強化』
「おおっ、こんな風に出て来るんだ……何か良く分からないね、販売員さんの言ってたHPってどの数値の事だろう?
ステータスはアルファベット表示なんだ、Aに近い方がいいのかな? それだと……私の数値的には、攻撃と運がちょといいかなって感じ?」
「そうなのかもね、魔法的な数値はあんまり良くないみたいだから……後は、やっぱりスキルとかレベルって概念があるんだね。
姫香ちゃんのレベルは3かぁ、昨日と今日のモンスター退治で稼いだ感じかな?」
姫香の分析結果に、興味津々の紗良が乗っかって追随する。初めて見た鑑定結果なので、色々と目を惹く箇所はあるのも当然だ。その筆頭が、まずはレベルの存在である。
ただし、HPと言うのがどれなのかが分からない。或いは、たったレベル3では纏えないのかも知れないし、これも正確な情報で無いのかも。
そんな中、家長の護人は残り5枚の鑑定の書を、スキル所有者に優先するよう指示を出す。つまりは紗良とレイジーだ、それに素直に従う子供たち。
リビングから庭先のハスキー軍団に呼び掛けて、姫香がレイジーの唾液を回収する。一方の紗良も、素直に姫香のやり方を真似てみる。
そして示される、追加での1人と1匹のステータス。
【Name】稲葉 紗良/18歳/Lv 02
体力 E 魔力 E+
攻撃 F- 防御 F
魔攻 E+ 魔防 E+
魔素 E- 幸運 D
【skill】『回復』
【Name】レイジー/5歳/Lv 03
体力 D+ 魔力 F+
攻撃 D+ 防御 E
魔攻 D 魔防 F+
魔素 E 幸運 E
【skill】『魔炎』
「……うわっ、私よりレイジーちゃんの方が、レベルもステータスも高いや。凄いねぇ、D判定が3つもあるし、魔法系の能力も割と高いよ!
さすが、護人さんの優秀な護衛犬だよねぇ」
「本当だっ、レイジーのステータスってば私のより上かも? 今日のダンジョン探索でも、私よりたくさん敵を倒してたしね」
「でもお姉ちゃんは、ボス蟻を倒したじゃん! スキルも強いの持ってるし、いいなぁ……残った鑑定の書は、私が使ってもいい?」
姉2人は、紗良の鑑定結果よりレイジーのステータスに驚きの声を上げている。そして、どさくさに紛れて鑑定しようとした末妹に待ったの声掛け。
それから、アイテムの鑑定も試してみるべきでしょと、妹にその方法を聞き取るように叱り飛ばす。渋々な感じで、少女は妖精ちゃんに教わった方法を姉たちに伝授する。
それを聞いた皆は、マジなのと唖然とした表情。
「……それって本当なの、香多奈? アイテムを包んで、水を掛けて3分間待つって。お湯なら尚良しって、まるでインスタントラーメンじゃん!」
「私に怒っても知らないよっ、妖精ちゃんがそう言ったんだから!」
「まあまあ、試してみれば分かる事だろう……2人とも、喧嘩は止めなさい」
姉妹喧嘩が始まりそうな雰囲気を察して、護人が割って入るのはいつもの事。紗良は素直に信じた様子で、ポットから湯呑みにお湯を汲んで持って来た。
それから護人が雑多な回収品の中から、カナブンか何かの意匠の施されたブローチとナイフを取り出した。ついでに重量感のある、銀のチェーンも鑑定して見る事に。
【蟲のブローチ】装備効果:土属性耐性up・小
【蟲のナイフ】装備効果:毒付与・小
【純銀のチェーン】特別効果:特になし
蟲の意匠付きのブローチとナイフには、どうやら特別な効果が付与されていたようだ。チェーンには何も無いが、名前から察するに純銀製だったらしい。
こんな感じで分かるんだねと、子供たちはやや興奮模様。何しろ特殊効果のあるアイテムなんて、ある事自体を知らなかった。
相談の結果、蟲のブローチは探索時には姫香がつける事に。ナイフは勿体無いけど、使う人もいないので売る候補へ。純銀のチェーンも同じく、それから回復ポーションも少しだけ残して売り払う事に。
小粒の魔石も、今日の探索で数十個確保出来た。移動販売員から貰ったパンフを眺めながら、幾らになるのかなぁと夢見心地な末娘。
残念ながら、黒や赤の甲殻やら黄色の織物などの素材類、これらは材質や量によって価値はそれぞれらしい。主に探索用の武器や防具に使用され、モノによっては割と高価で取引きされるみたい。
高値で売れたら新しいスキル書を買おうよと、姫香も儲け話には興味がある様子。どうも彼女は、家長の護人の強化計画を企てているっぽい。
また近いうちに、移動販売車を呼ぼうよと盛り上がっている子供たち。ただし護人的には、こんな田舎に何度も呼ぶのも迷惑かなと考えるタイプ。
近場に魔石やアイテムを、持ち込める施設でもあれは良いのだが。そう言えば、探索者に申請した際、カードが無いと販売やら武器所有は駄目と言われたような。
念の為に、姫香にも探索者登録をさせるべき?
「それとも紗良に登録して貰うべきかな、年齢制限があったかはちょっと覚えてないんだが。取得すれば色々と優遇されるみたいだし、損は無かった気がするな。
試験も無いし、カードは割と簡単に貰えたよ」
「それじゃあ私と紗良姉さんとで、車の運転練習のついでに大きな町に行って取って来るよ。自治会長さんに言えばいいのかな、探索者協会ってウチの地元には無かったよね?
大手スーパーのある、隣町には建ってた記憶があるんだけど」
確かにそうだ、前回は特別に協会職員に来て貰って、発行も向こう任せで済んだのだった。とにかく護人は、探索者としてはまだまだ未熟で優遇される程の者でも無い。
ここは大人しく、週末の買い物のついでに隣町で登録を済ませるのが良策かも。そもそも次に、また探索活動をするかと問われれば否と答えるしか無い。
今回の探索は、飽くまで敷地内の安全確保が目的だったのだ。それに成功して、最大で半年の安全猶予を獲得出来たのだから、普通に考えれば探索者登録など必要はない。
ただし、依然として来栖家の敷地内には活動しているダンジョンが2つもある。その事実を鑑みて、武器を揃えたり防具を買い込んだりと用意を怠りたくは無いのは事実。
油断して愚を冒すより、前もっての準備はしっかりやっておきたい。そんな心積もりを子供たちに話しながら、取り敢えずの安全は確保出来たとの宣言も行う護人。
何しろずっと、身近な危険に気を張り詰めておくのも良くは無い。今日はよく頑張ったねと姉妹を褒め称え、それでも不必要に敷地内のダンジョンには近づかないよう釘を刺しておく。
最後に妖精ちゃんに、本当にアレを封印する方法はないのかも訊ねてみる。
何度目かの質問だが、何だか毎回はぐらかされている感じがする。そしてその理由が、香多奈の通訳によってようやく明かされた。
つまり、ダンジョンの封印方法は確かに存在するそうなのだ。ただその手順を踏むには、来栖家チームは実力が大きく不足しているみたい。
だからその方法を教えるのは、妖精ちゃんの実力認定が下りてからだそう。
――それは希望の光なのだろうかと、戸惑う護人なのだった。
3
あなたにおすすめの小説
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。
平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。
どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界帰りの最強勇者、久しぶりに会ったいじめっ子を泣かせる
枯井戸
ファンタジー
学校でイジメを受けて死んだ〝高橋誠〟は異世界〝カイゼルフィール〟にて転生を果たした。
艱難辛苦、七転八倒、鬼哭啾啾の日々を経てカイゼルフィールの危機を救った誠であったが、事件の元凶であった〝サターン〟が誠の元いた世界へと逃げ果せる。
誠はそれを追って元いた世界へと戻るのだが、そこで待っていたのは自身のトラウマと言うべき存在いじめっ子たちであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる