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1年目の春~夏の件
HPと特殊スキルを厩舎裏で確認する件
しおりを挟む何とかダンジョンの帰路も無事に踏破して、来栖家チームは車に乗りこみ我が家へと辿り着く。そしてようやく全員が安堵の表情を浮かべ、後は入浴と夕食を滞りなく済ませるだけ。
その後、皆がリビングに集合して恒例のアイテム鑑定会……の前に、今回はガッツリ反省会を行いますとの護人の提案に。それは大事ですねと、紗良の同意の言葉に神妙な顔つきの年少組である。
「えっと、反省って……7層の桟橋の事でいいのかな? 今まで探索してて、初めての本格的なピンチだったよね。
確かにアレは怖かったよ、護人叔父さんが急にいなくなるんだもん」
「そうだな、不意の襲撃に対する注意を怠ったのがまず1点。ダンジョンの罠は凶悪らしいし、チーム分散の危機は今後もあるかもな。
これを機に、サブリーダとか決めておこうか?」
反省会と聞いて、怒られるかなと身構えた年少組もこれには安堵。今後の方針決めならと、姫香と香多奈の口調も滑らかになる。
そして順当に紗良の名前が挙がって、多数決であっさりと決定に至った。ただ、本人は自信なさそうで、取り敢えずは頑張ってみるけどと不安げなコメント。
確かに性格的には向いてないかも知れないが、護人や姫香からの評価が高いのも本当。この配役は順当だし、姫香もサポートするよと姉を安心させる。
それより、あの左肩から生えてた黒い腕は何なのと、姫香は叔父に興味津々で訊ねる。寸での所で危機を回避出来たのは、確かにアレが発動したお陰だった。
恐らくは、オーブ珠で取得した特殊スキル《奥の手》だったのだろう。アレが無ければ、最悪あのまま溺れ死んでいたかも。
そう思うとゾッとするが、説明を聞いた子供たちはどこか誇らしそう。やっとこさの護人のスキル開花に、もろ手を挙げて拍手する勢い。
反省もするけど、ようやく特殊スキルが開眼したのは大きなメリットだ。今後は姫香の『圧縮』スキル共々、上手に活用出来るよう特訓するのも良いかも知れない。
そう話すと、姫香も超乗り気でご機嫌に賛同する。
「後は……地上組の苦戦は、リーダー不在に加えてMP切れも主な理由だったのかな? 探索はやっぱり、余裕をもって潜らないと本当に危ないな。
今後はこまめな休憩と、それに合わせたMP管理も必要だな」
「それもあるけど、あの時は相性の悪さもあったかなぁ? 泥の腕には殴ったりするのが、あんまり効かなかったんだよね。そんな敵にくっ付かれて、みんな焦って冷静な判断が出来なくなってたね。
ルルンバちゃんも頑張ってたけど、ネイルガンが弾切れしちゃったらしくって。そう言えば新しいスキルも覚えてたのに、誰も活用する手伝いしてあげて無かったよね?
そう言う事前準備も、今回は足りなかったと思うよ!」
手厳しい姫香の駄目出しに、そうだったねぇと香多奈はしょんぼり顔。家畜やペットの世話は大変だけど、サボってしまうと相応のしっぺ返しが待っている。
そういう環境で育って来たので、姉の指摘には参っている様子。護人も同じく、忙しさにかまけて家族サービスを怠ってしまったバツの悪さを感じつつ。
今後は事前準備にも、力を入れようと締めくくる。
他にも細々とした注意点や、危ない場面から学んだ教訓なども幾つか。挙げて行っては限が無いし、子供たちも一度に言われても覚え切れないだろう。
何よりも、護人の教育方針は褒めて伸ばすである。今回危なかったからと、叱り過ぎるのも宜しくは無い。そんな訳で、お小言はこれにて終了。
それを受けて、途端に香多奈が張り切り始めるのは毎度の事。仕切るのは姫香だが、ゲットした品々を弄り倒しては、どれを鑑定しようかと燥いでいる。
今回得た鑑定の書は7枚で、前回の余りを足すと9枚になるらしい。その前にスキル書2枚のお試しタイムだと、姉妹は張り切って家族に回している。
その結果、1枚が見事に紗良に反応!
「やった、おめでとう紗良お姉ちゃん……妖精ちゃんの鑑定だと、光系のナニかだって! 回復に続いて、新しい魔法スキルをゲットだねっ!」
「あ、ありがとう香多奈ちゃん……そっか、私も2つ目のスキル覚えたんだ。ちょっと嬉しいかも、後は頑張ってどんな魔法か確認しなきゃね。
姫香ちゃん、また訓練一緒にしようね」
もちろんと元気に返事する姫香、ちなみにもう1枚はペット勢にも反応せず。残念だが仕方が無い、これは青空市で売りに出す事に決定する。
7層まで攻略しただけあって、今回はアイテムも豊富である。そう言えばと思い出して、護人は途中で生っている果実を食べちゃったなと子供たちに報告する。
それと似たようなのが、今回収穫した中に混ざっていたのだ。それじゃあ一応、今回はそれも鑑定しようよと香多奈の提案に。
姫香が、木の実って結構残ってたよねと続いて発言する。1ダース以上あるかなぁと、アイテム管理責任者の紗良がそれに答える。
香多奈が手に取った虹色の果実は、それらより群を抜いて存在感があった。どことなく甘酸っぱい匂いを放っていて、瑞々しさも感じさせる。
それを含めて、今回は6個のアイテムを鑑定する事に。
【河童の首飾り】装備効果:HPオート回復・小
【初級エリクサー】使用効果:状態全回復・小
【魔法の魚籠】特別効果:空間収納力・中
【金魚の置物】設置効果:湿度調節・永続
【虹色の果実】使用効果:レベルUP効果・中
【ルキルの苗】育成効果:ルキルの実収穫・薬品素材
「わっ、また魔法の鞄が入ってた……えっ、この古惚けたお魚入れる網籠がそうなの? 信じられないけど、鑑定の結果が言ってるんだもんね。
凄いや、私達ラッキーだねぇ!」
「本当だねぇ、他にも何だか凄いのが混じってる……魔法のアイテムが2つあるけど、金魚の置物は微妙かな? 首飾りは、怪我し易い前衛の人向けだね。
初級エリクサーは、これはかなり高価かも?」
「買い取り価格表によると、100mlで15万円だって、凄いよお姉ちゃん!」
それは確かに凄いと、高額商品の獲得に興奮模様の子供たち。どうやらエリクサーは、全ての異常状態もHPやMPの低下も、一瞬で癒す能力があるらしい。
それは確かに高額になるだろう、ただしこれは『初級』なので、治せない状態回復もあるのかも知れない。とにかくそれを含めて、売らずに取っておく事に決定。
そして魔法の魚籠だが、これは紗良が管理するで決定した。まぁ、しばらくは香多奈が、色んなものを詰め込んで遊んでいたのだが。
どうやら今回の魔法の鞄に関しては、ちっとも重さが増えないらしい。更には容量も、かなり詰め込めそうとの事でこれはとんでもない拾い物だ。
そして残った4本の苗と木の実だが、ちょっとこれもトンデモない代物っぽい。ルキルの苗は、ダンジョン外で育成出来るかはトンと不明だけど。
虹色の果実は、恐らく食した者のレベルが上がるって意味だろう。とんだパワーUPアイテムが混ざっていて、誰か食べるか束の間の議論が家族で交わされる。
そして香多奈の挙手は、もちろん全員によって封殺される流れに。
「俺とレイジーは、探索中に1個ずつ食べたからな……順当にいけば、姫香か紗良なんだろうけど、ダンジョン産の食べ物を若い娘に簡単には勧められないしなぁ。
さて、どうしようか……こいつも、また俺とレイジーで処理しようか」
「私は別に、試しに食べても気にしないけど……私とツグミで食べてみようか、護人叔父さん?」
結局はその2択で議論は紛糾、最終的に成長出来るのならと姫香が権利を勝ち取った。そんな訳で、姫香は縁側の扉を開け放って相棒のツグミを呼び寄せる。
それから、2人で一緒に強くなるよと絆を確認しながらの果実のパワー摂取。ツグミは何の躊躇いもなく、姫香の掌中の派手な色彩の果実に食らい付いた。
姫香も同じく、食べ切った後に甘くて美味しかったと感想まで語る余裕も。
「いいなぁ、お姉ちゃん……今度見付けたら、そしたら私の番だからねっ!」
「アンタは10年早いよ、それより残った鑑定の書はどうする、護人叔父さん? 久し振りに、誰がどのくらい成長したか見るのもいいかもね?」
それならと、護人は珍しく自分の鑑定をしてみたいと挙手する。どうも最後の戦いで、水中に引き摺り込まれた際の違和感が気になるらしい。
ひょっとして、アレがHPを纏うと言う事なのかと、それが鑑定書に反映されてないかを試してみたいそう。その意見を軸に、今回は護人とスキルを覚えた紗良に試して貰う算段に。
もう1枚は、縁側に来ていたレイジーがハスキー軍団代表って事で。
【Name】来栖 護人/Age 37/Lv 07
体力 D+ 魔力 E
攻撃 D 防御 C
魔攻 E+ 魔防 D-
魔素 D- 幸運 E
【skill】《奥の手》『硬化』
【Name】稲葉 紗良/Age 18/Lv 04
体力 E+ 魔力 D
攻撃 F- 防御 F
魔攻 E+ 魔防 E+
魔素 E 幸運 D
【skill】『回復』『光紡』
【Name】レイジー/Age 5/Lv 08
体力 C+ 魔力 E-
攻撃 C 防御 D-
魔攻 D 魔防 E
魔素 D 幸運 E+
【skill】『魔炎』
「ううん、HPやMP関連の記載は全く無しか……レベルは順調に上がってるな、ステータスも前よりは良くなってるっぽいけど。
おかしいな、水中ではちっとも苦しくなかったから、ひょっとしてと思ったんだけど。協会の仁志さんにでも聞いてみようか、それとも明日にでも庭先で検証してみるかな?」
「あっ、それ面白い……一緒に実験しようよ、護人叔父さんっ! 後は苗を鉢に植え替えたりとか、明日はやる事は色々ありそうだねっ!」
「いいなぁ、私は学校があるのに……私が戻るまで、待っててよねお姉ちゃん!」
それは分からないと、意地悪を口にして妹をからかって遊ぶ姫香。まぁ、確かに明日は色々と雑用が立て込んでいて、午前中は忙しくなりそう。
ついでに日馬桜町の協会支部へと、報告と魔石を売りにも行かないと。そこで新しく獲得した、魔法の鞄の登録もしておいた方が良いだろう。
畑の方もそろそろ、収穫物があるので怠る事は出来ない。去年の今と比較すれば、格段に雑多な行事は増えている気がする護人。
それでもそれは嫌ではない、自分の目が行き届いて万事良好に事が進んでいる限りは。どこかで破綻が出ないかが心配だが、今は紗良と姫香がフォロー役に日増しに成長を見せてくれている。
それが全てだ、子供たちの成長を間近で見れる幸せが何より。多忙で日々大変なんて、何て贅沢な悩み事である事か。
まだまだ自分が中心で、働いて家の事は回して行かないと。
――若い者には負けられないと、そんな爺臭い事を思う護人だった。
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