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始まりの森編
勝利の宴の闖入者
しおりを挟む体感的には凄く長かった戦いに何とか終止符を打ち、俺はようやく一息つけた。取り敢えずは休憩だ、減ったスタミナとHPを回復しないと不安過ぎる。
壊れてしまった女王蜂の短槍は、どう頑張っても修理は不可能みたい。尖端の針も持ち手の木の棒も完全に駄目になっていて、これを使い回すのは意味が無い。
それ位なら、大猪が落とした牙を使ってみる方が良い結果になりそう。そんな事を考え込むより、先に出来る事を済ませて行こう。
まずは、先ほどから煩いアナウンス……何かを得たから確認しろって、脳内で何度もリフレインしてる報告の内容確認を。
どうやらレア種を倒した報酬に、“称号”なるモノを貰えたらしい。良く分からないが、ステータスを開いたらちゃんと2つ並んで存在していた。
それを見るに、どうやら大蛾と大猪の両方から貰えたらしい。大蛾が恐らく、『蝶舞』なる称号を落としてくれたっぽい、蝶じゃ無く蛾なのにね?
確認してみると、麻痺や毒耐性が微増して、回避にボーナスが付くみたい。それから『猪突』と言う称号、言うまでも無く大猪レア種の贈り物だろう。
こちらの効果はHPが微増、それから進みながらの打突にボーナスが付くらしい。これは凄いかも、上手く使えば戦闘が少しは楽になる予感が。
効果をオンにしますかと尋ねられたので、勿論「はい」と答える。しばらくすると、文字色が明るくなったので効果が発揮され始めたっぽい。
これはずっと効果があるのかな、良く分からないけどその様である。一応琴音にメールを飛ばして訊いてみるか、ちゃんとやってるかとの質問メールの返信と共に。
本当にお節介焼きだな、さっきの華麗な戦闘シーンを見せてやりたかったよ。いや、逆にアレを見られたら卒倒されそうな気もするな。
ギリギリの攻防だったし、妖精のファーがいなかったら完全に逝っていただろう……本当に、お供のチビ妖精には感謝しかない。
それよりこの2匹のレア種、他にも色々とドロップしてくれていた。まずはスキルPが合計で6P、何とレベルアップ3回分の量である!
ひゃ~っ、旨みはあるけど死にそうな目と引き換えだし納得か。
次にアイテムのドロップだけど、これも結構多かった。大蛾レア種からは『精神の果実』に『雷の水晶玉』×4個、それから『雷の術書』が1枚と魔石(小)が1個。
『精神の果実』は、どうやらステアップに使用の使い切りアイテムらしい。雷の術書も同様で、こっちは魔法スキルアップ用のアイテムの模様。
風と雷系で無駄に2枚あるけど、魔法の使えない身で“猫に小判”な状態だったり。一番嬉しいのは、投擲用の雷の水晶玉の補充かも知れない。
大猪レア種からは、素材系がほとんどだった。大猪の牙と毛皮、それから『力の果実』と魔石(小)が1個。素材は取っておいて、ステアップの果実は早速使ってしまおう。
そんな訳で、ヤスケのレベル6現在のステータスがこちら。
名前:ヤスケ 初心者Lv6 種族:ミックスB
筋力 16 体力 16 HP 48(+5)
器用 16 敏捷 14(+2) MP 35
知力 13 精神 13(-4) SP 34
幸運 14(+8) 魅力 6(+3) スタミナ**
職業(1):『新米冒険者』Lv6
武器(3):《ブン回し》《落とし突き》《》
補正(3):《》《》《》
武器:弓矢1P
:短剣1P
:短槍4P《落とし突き》
:両手棍4P《ブン回し》
:投擲1P
魔法:『闇』(4)《Dタッチ》
種族:『ミックスB』(幸運+2、魅力-1)
称号:『蝶舞』『猪突』
スキルP:8
***『新米冒険者』ヤスケ 装備一覧***
武器 :女王蜂の短槍(-) 攻+6、時々毒(微少)
武器2:粗末な木の棍棒(4) 攻+4(両手時+6)
予備 :粗末な手製の木槍(3) 攻+3
盾 :粗末な木の盾(3) 防+2
頭 :犬獣人の兜(4) 防+3
上着 :質素な狼皮ベスト(5) 防+5
アクセ:妖精(-) 防+0、幸運+6、魅力+4、精神-4
指輪1:耐魔の指輪(2) 耐魔20%
腕 :粗末な革の腕輪(2) 防+1
下肢 :疾風のズボン(8) 防+7、敏捷+2
靴 :粗末な革の靴(2) 防+1
鞄:魔法の鞄(初心者用)
アイテム:ポーション(小)×4、毒消し×3、炎の水晶玉×3、雷の水晶玉×6
:風の術書、雷の術書、潤いの蜂蜜×3、魔石(小)×3、料理キット
:花粉の団子、蛇の皮、蛇の牙、大猪の皮、大猪の牙、冒険者セット
:木編みの鳥籠、研ぎ直した粗末な石斧、《風の茨》、松明、着火剤
:虹色の果実×2
ここまで、まずまず順調だと思う……HPも既に50を超えてるし。魅力値が全く上がってないのは、まぁ愛嬌だと思う事にしよう。
ってかもう既に諦めた、その代わり幸運値は凄いしそっちでカバー出来ると信じたい。ついでに、使えなくなった闇魔法が悲しくその存在を主張している。
それはもうどうしようも無いので無視、新しく獲得した短槍の《落とし突き》の活躍に期待しよう。兎にも角にも、全体的な戦闘力は上がって来ている筈。
装備も初日に較べたら、割と良くなっていると思う。誰の目から見ても異質なのは、やっぱりアクセサリー欄に居座っている“妖精”のファーだろうな。
そこは今更文句を言うつもりも無い、凄く役に立ってくれてるし。それよりもう少し装備を充実させたいかなぁ、狼を狩れば装備を交換してくれるのは分かっているんだし。
今日の後半は、マップを埋めながら狼を探すかな?
ちなみに鞄の中のアイテム、雑多な拾いモノは省略させて貰っている。ちょっと実験的に、森の中央の安全地帯に置きっぱなしの物もあったりするし。
ここは占有マップとの話だし、他の者に取られる心配も無い。一定時間放置とかログアウトで消えなければ、この“置きっぱなし”での管理も可能と言う理屈だ。
ちょっと怖い方法だけど、鞄の容量に空きが無いのだから仕方が無い。まぁ、現在の自分のステータスの確認はこれ位にしておこうか。
ついでに、称号2つを得て割と強くなった感はある……と思う。琴音の返信メールでは、称号なんて簡単に手に入る類いのモノでは無いって話だったし。
ましてや2つ同時に取得なんて、信じられないとの事である。後はクエ依頼の遂行だが、こちらは何とか無事に終わっている。
ゴタゴタしてて回収出来ていなかった2個目の『虹色の果実』は、妖精のファーに頼んで既に取って来て貰って鞄の中に収納済み。
これでクエも一歩前進、まずはホッと一安心。お礼を言うと、妖精は嬉しそうに宙で一回転を決めてみせた。言葉だけじゃ無く、何か食べ物とかもあげた方がいいかな?
丁度スタミナ回復に、何か食べようと思っていた所だし。
この前貰ったクエ報酬に、自分で料理が出来る『調理キット』ってのがあったっけ。これを使って、ファーにご馳走を振る舞ってあげようと思う。
とは言ってみたモノの、料理の材料が見事に無い! どうやら彼女、肉の類いは嫌いらしく見事にそっぽを向かれてしまった。
なのでキットの中の簡易ミキサーで、ミックスジュースを作ってあげる事に。これはどうやら気に入って貰えそう、興味深そうにこちらの手元を覗いている。
まぁ、材料の果実の大半は彼女自身が採集して来たモノなんだけどね。キットの中にはお皿もコップも入っていて、チョー有り難い。
ちょっとした宴会だ、モロにフィールド内なので敵との遭遇は否めないけど。幸い一番多い大蛾の群れは、コッチから仕掛けない限りは反応しない。
そんな訳で、いそいそと料理の準備を進める俺である。これでも家庭内では、長女の楓恋と同じ位には台所に立ってるし問題はない。
ってか、果実を切ってミキサーで潰すだけの簡単作業、料理と言える技でも無い。それでもファーは、出来上がった複雑な色の液体の入ったコップに興奮している様子。
早速一口飲んで、こちらにバッチグーと親指を立てて満足度を表示している。どうやら、気に入って貰えたようで何よりだ。
俺も鞄からクエ報酬で貰っていた兎肉の焼き串を取り出して、スタミナ回復に勤しむ事に。適当に果実なども、妖精と分け合って摘みながら簡易宴会は続く。
本当に長閑だな、さっきの激戦が嘘みたい。
しばらくそんな風に和んでいると、妖精のファーが急にソワソワし始めた。アクティブな敵でも近くにいるのかと、俺も思わず腰を浮かせて周囲に視線を飛ばす。
地上を注視するが、敵っぽい影は見当たらない……同じく、周囲の茂みも変に揺れてはいない。それなら樹の上かなと、枝葉の間を注意して見遣ると。
黒っぽい毛並みの何かを確認、どうやら鳥が枝に止まっているらしい。鴉か何かかな、食べ物の匂いに釣られて来たのだろうか。
大きさ的には鴉よりは、一回り大きいみたいだ。ただしフィールドを闊歩するモンスターは、どれも既存の生物より大きいのが定番である。
コイツもその例に漏れないのだとしたら、納得は行く存在なのだろう。一点、鴉と違うのはその身体に紋様の様な青白い筋が走っている事だろうか。
今まで見た事は無いので、敵だとしたら初見である。
武器を構えて立ち上がるが、ファーの反応はそれより穏やかだった。って言うか一緒に食事が出来るように、もう1杯ジュースを作ってくれと催促している。
だとすると、少なくとも敵ではないのだろう……一体何者、予想がつかないんですけど? それでも俺は素直に、新たなコップに果実ジュースを作ってみる。
それから妖精に、同伴オッケーだよと伝言を与えてみたり。半ば冗談での誘いだったのに、本当に誘った相手が対面の席に居座ってしまった。
その時の俺の心境を、果たして誰か理解して貰えるだろうか? しかも流暢に言葉を喋ってる、ウチの妖精ですら喋れないのに。
この鴉モドキ、ひょっとしたら隠しNPCか何かなのだろうか……大仰な言葉使いは、どこか大物っぽい気もするけどその辺は不明。
今はその彼、ファーの甲斐甲斐しいお持て成しに再びお礼を述べている所。
「これは誠に申し訳ない……話を聞いて貰える上に、こんな持て成しを頂戴するとは。実は先ほどの見事な戦闘振りを見て、これならば依頼を願うに足ると判断致した次第」
「は、はぁ……依頼ですか……」
どうやらこの鴉モドキ、さっきの俺のレア種との戦闘シーンを見て感銘を受けたらしい。そして、これなら厄介事を持ち込んでも大丈夫だと判断したよう。
こんなNPCもいるんだなぁ、しかもフィールドに……正体を知りたいけど、知ったら面倒な事になりそうな。例えば強制的に、依頼を受けさせられるとか。
とは言え、今日の活動時間もまだたっぷり2時間以上は残っている。東マップの残りを埋めながら、当ても無く探索をするよりはマシだろう。
当の鴉モドキは、今は妖精に差し出された果実ジュースを美味しそうに飲んでいる。琴音の前情報では全く出て来なかった人物(?)なので、突発イベントな可能性が高い。
そもそも琴音は、レア種2連発なんて話もしてなかったけどね。
「おっと失礼、挨拶が遅れてしまった……我はこの森を統べる精霊、“ラマウカーン”と申す。最近、森のあちこちに問題が生じてしまってな、その治療をしてくれる者を探しておったのだ。
お主なら適任だろう、是非にお願いしたい」
「治療って、俺は医者でもなんでも無いんだし……そもそもそんな偉い精霊なら、自分で問題を片付けられるんじゃ?」
鴉モドキ……もとい、森の精霊は俺の答えにキョトンとした顔を作って見せた。鳥の顔で器用だなと思いつつ、返って来た彼の答えは至極もっともなモノ。
要するに、あなた達も自分の体内の不調を自分自身では治せないでしょうとの仰りよう。確かにそうだ、そんな時人間は医者か薬か自然治癒に頼るモノ。
そんな細かい部位の不調は、自身ではどう仕様も出来ないと言う事なのだろう。てな訳で、こちらに頼る理由は判明したので、次は憚りながら報酬の話だ。
精霊ラマウカーンは、そちらも快く取り決めに応じてくれた。つまりは、自分のコレクションの光物の中から、こちらの好きなモノを差し上げるとの話。
う~ん……正直、この買い物すら出来ない初期エリアで、宝物を貰ってもなぁ。いや、確かにスタートの街に辿り着ければ良い話なのだが、こちらはもっと速攻性の旨みが欲しい。
そんな訳で、俺は駄目元で精霊に相談を持ち掛けた。
――つまりは俺が今、一番困っている事の解決策を与えてくれと。
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