26 / 49
始まりの森編
海賊の財宝見付けちゃった!
しおりを挟む最悪な事に、その中に別の弓持ちゾンビが1体混ざっていた。遠距離攻撃はもうコリゴリ、何とか先に倒してしまいたいのだけれど。
取り敢えずはファーの作戦を踏襲して、集団に向けて雷の水晶玉を使用しての時間稼ぎと範囲ダメージ。残りの個数を気にしている場合では無い、ってか確実にもう残り少ないが仕方がない。
炎の水晶玉に限っては、もう既に切らしてしまっているのは確定済み。難破船は見事に傾いていて、壊れた船体の残骸で甲板まで坂道が出来ていた。
それを伝って、何とか厄介なスナイパーゾンビに接敵出来た。一度接近間際に矢弾を喰らったけど、そんな些細な事はどうでも良い。
お釣りが来るくらいの好条件、この間合いとチャンスを逃すと敵の集団に挟まれて大変な事に。そんな焦りと憎しみを込めて、棍棒の一撃を喰らわせる。
相手は武器チェンジに、弓矢を捨ててナイフを取り出そうとしていた。その隙を見逃す俺では無い、と言うか待ってやるほどお人好しでは無い。
そして結局スナイパーゾンビは、持ち替えたナイフを振るう暇も無く没。ホッと息を継いだのも束の間、ワラワラとなんだか賑やかな集団が追い掛けて来た。
その中心には、それと分かる程に特異なレア種の海賊船長の姿が。そいつは荒ぶって、指揮を執ると言うか部下たちをこちらにけしかけて来ている。
そんな訳で、嫌々ながらも難破した船上での第2ラウンド戦闘の開始である。ボロボロに破れた海賊旗が、吹き込んで来る潮風で不気味にはためいている。
そして俺の集中を削ぐように、甲板の端に宝箱の設置を確認。しかも3つもあるじゃないか、否応無くテンションが上がるんですけどっ!?
ファーが最後の水晶玉を、固まっていた集団に向けて投下した。派手に閃光が飛び散って、雷の麻痺効果を受けた連中が残骸の通路の上でたたらを踏む。
それを見逃さず、集団の先頭のゾンビに取り出した木の槍と手斧を続けて投擲してやる。狙い違わず、続けざまに2体の敵がこちらに接敵する前に脱落。
おやっ、また何か珍しい装備品の入手のログが脳内に響いたかな。まぁ、今はそんな事を考えている暇は無い、とにかく残り半ダース程度になった死霊海賊団を殲滅せねば。
幸い陣取った場所は、残骸の登り口のてっぺん辺り。間口は狭いしこちらが上手を取っているので、囲まれる心配も無いし《ブン回し》が凄く効果的にヒットする。
そしてまた1匹崩れ落ちて、何だかんだで良いペース。ただし、生き残った弓持ちゾンビと、レア種の海賊船長のコンボは本気で辛い。
ダメージの入っていない敵はいないけど、こちらもHPは安全地帯と危険領域を行ったり来たり。パウダー型のポーションは、ポッケの中に残り僅かな感じ。
依然として魔法は使えないので、回復手段は薬品頼りしか手は無い……まぁ、死霊相手に闇のHP吸引魔法は効果が無い気もするな。
そんな感じで焦りは無いが、向こうが大技を放って来たらピンチかも。特に海賊船長が残ってるので、有利な場所取りは出来ていても油断は未だに出来ない状況。
ってか、残り時間はどうなっているんだ?
確認する暇は無いので、とにかく戦闘を早めに終わらせるのが唯一の手段には違いない。そんな横道に逸れた思考を巡らせていたら、海賊船長のハイパー化が来た。
今までの強敵にも、体力が残り少なくなると大暴れする敵は確かにいた。だけどコイツの大暴れは、まさに桁違いと言うか周囲の手下にも被害が及ぶ程。
手にしたサーベルを、狭くて足場の悪い場所で高速で振り回している。負のオーラを撒き散らして、目の前の俺しか目に入っていない様子。
こちらも対応に大わらわ……ってか、側に控えていた手下が巻き込まれて足場を踏み外して落下してますけど? 頭に血がのぼると、本当に碌な目に遭わない良い例だ。
などと冷静に楽観視していたこちらにも、大変なアクシデントが発生。レア種海賊のサーベル攻撃を受けた俺の持ち武器、棍棒が嫌な音を立てて真っ2つに!
ちょっと待って、まさかこんな激しい戦闘の途中でメイン武器を失うとかアリ!? 更なる大振りの横薙ぎを、俺は慌ててしゃがんでやり過ごす。
その後の撃ち降ろし攻撃が、危うく頭をかち割られそうな勢いで眼前を通り過ぎて行く。慌てて退避行動を取った、こちらの姿勢も良くなかった。
別に坂の頂上に陣取っていた事実を、すっぽり忘れていた訳ではないのだが。うっかり足を滑らせた体勢で、相手の懐に飛び込んだら勢いがつき過ぎてしまった。
その勢いのまま、俺と敵の集団はバランスを崩す破目に陥った。足場の淵っぺりから真っ逆様は免れたけど、坂道を一緒に転げ落ちるボーリングの球状態。
頭の中では、ピンが次々に倒れる音が見事に木霊する。
まさにそんな感じで、俺達は坂の頂上から甲板への登り口まで一蓮托生で駆け抜けた。離れた場所で攻撃を仕掛けていた、弓持ちゾンビを巻き込めたのは唯一ストライクと叫べるポイントだろうか。
そんな軽口も叩けない程に、警告アラーム音と視界の赤く染まった状態は笑えない。これは不味いとポッケに手を遣ろうとしても、何かが被さっているのか両手が動かせない。
いや、その正体は十中八九敵ゾンビの身体なんだろうけどね。ゾンビや骸骨とくんずほぐれつなんて、まさに冗談じゃないと飛び起きたいのだが。
受けたメージのせいか、身体に力が入らないのだから何と言うか仕方が無い。そんな俺の視界に、飛翔する微かな光輪が近付いて来た。
ファーだった、文字通り敵の群がる危険地帯に、彼女は何の恐れも無く飛び込んで来てくれた。そして俺の目の前で背中を向けて、必死に羽根を振るわせている。
妖精の放つ鱗粉は、質量を備えて光り輝いていた。それが雪の様に降り注いで、俺の皮膚に触れるとゆっくりと溶けて行く。
いや、これはヒーリングの効果が乗っかっているのか? それを知らせるように、次第に危険を知らせるアラーム音と赤い視界が正常に戻って行く。
ステータスを確認すると、実際に回復したのはほんの2割程度らしかった。それでも有り難い、今まで確実にHPは1桁のレッドゾーンにあったのだから。
防御の弱いスケルトン勢は、団体ボーリング走行で壊滅してしまったみたいだ。こちらが身を震わせると、光となって分解して消え去ってしまった。
残りはレア種の海賊船長と、手下のゾンビが1体のみ!
恐らくは、ファーが必死に運んで来てくれたのだろう。入り江の洞窟奥に置いてあった蓋空きポーションが、意外とすぐ近くに置いてあった。
ファーに指し示されるままに、俺はそれに飛びついて一気に飲み干す。これでHPにかなり余裕が出来た、そして改めてファーにお礼を言う時間も取れて何より。
ガッツポーズで応える相棒は、何とも可愛くて頼もしい。さてそれじゃ残った敵を片付けようか……って構えた俺の、手の中には武器が1つも無いっ!
慌てて近くを窺うと、投擲で見事役目を終えた石斧が近くに転がっていた。駆け寄ってそれを拾い上げ、そのままの勢いで手下ゾンビAの脳天に打撃をお見舞いする。
虫の息の雑魚ゾンビは、それで呆気無く昇天してくれた。そしてようやくタイマンに持ち込めた、手下を全て失った海賊船長がこちらに襲い掛かって来る。
ただしその手には、あの凶悪な威力を誇っていたサーベルは無い。転落の衝撃で落としたのか、はたまた壊れてしまったのかは不明なまま。
これは完全に、複数武器を操る俺に勝利の女神が微笑んだパターンか。ナイスゲームと敬意を表し、単身向かって来るレア種に止めを刺して死霊軍は全て没の結果に。
長かった入り江の闘いは、こうして幕を閉じたのだった。結局一体、俺はこの場で何匹の敵を倒したのだろうか。あっと、やっぱりレベルが上がってるみたい、これでレベル8となった。
今日だけで4つも上がるとか、何気に凄くない?
水晶玉は使い切ったけど、報酬は充分で元が取れたとは謙遜し過ぎだろう。宝箱3つ分に加えて、レア種撃破報酬と手下の武器ドロップなどなど。
一気に貰い過ぎて、何て言うかプチパニック状態で嬉しい悲鳴が止まらない。それだけ激しい戦いだった、いやこれも依頼の一環だったのかも知れない。
まずはレア種とレベルアップで、スキルPが2+4の6Pも一気に増えた。確かに奴は強かったし、手下も多かったので海賊船長の4Pは妥当な線かなとも思う。
ついでに、手下の武器ドロップが何か凄くて有り難い。
――海賊のサーベル 耐久8、攻+9
――海賊の長槍 耐久8、攻+12
――海賊の大斧 耐久9、攻+14
いやいや、スキルを振ってる武器は出なかったけど、それでも使ってみたくなる性能である。両手武器の長槍と大斧は、凄まじい攻撃力には違いない。
他には闇の水晶の欠片とか、古銭とか錆びれた装備類だとか。使い物にならないモノに関しては、もうここに置いて行く事には決めてある。
何しろ、3つあった宝箱の中身と来たら……。
おっと、その前にレア種の海賊船長のドロップを報告しておこうか。こちらは普通に『闇の術書』と『闇の水晶玉』×4、お金が5000モネーに魔石(小)と言うスタンダードなモノ。
更に加えて当たりの装備だけど、何とベルトとマントと2部位も出た。人型のモンスターって美味しいのかな、コボルトやゾンビだけ見てるとそう思ってしまう。
とにかくこれらも、かなり性能は良くて嬉しい限り。
――革の幅広ベルト 耐久7、防+5、ポーチ×4
――海賊のマント 耐久8、防+7、敵対心+2、魅力-2
装備欄の空いてるスペースが埋まっただけでも嬉しいのに、上々の性能である。後で確認するとして、次は宝箱の中身……いやいや、これこそ後で確認する大量レベル。
うん、スクショで撮影して現実世界で琴音にでも鑑定して貰おうかな? このゲーム、アイテムを眺めると一応簡単な説明文が浮き出て来るのだ。
そんな事している時間が勿体無い程、入ってる品物が大量過ぎて困ってしまう。そんなこんなで1人悦に浸っていると、妖精のファーが物凄い勢いで肩に乗って来た。
それから、入って来た方向を必死に指差して何かを訴えている。新たに敵でも湧いたかと慌てる俺だけど、そんな影はどこにも見当たらず。
ビビらせないでくれ、こっちは激戦の後なんだよ……。
――って、残り時間はっ?
0
あなたにおすすめの小説
親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します
miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。
そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。
軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。
誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。
毎日22時投稿します。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
転生大賢者の現代生活
サクラ近衛将監
ファンタジー
ベイリッド帝国の大賢者として173歳で大往生したはずのロイドベル・ダルク・ブラームントは、何の因果か異世界のとある若者に転生を遂げた。
ロイドベルの知識、経験、能力、更にはインベントリとその中身まで引き継いで、佐島幸次郎として生き返ったのである。
これは、21世紀の日本に蘇った大賢者の日常の生活と冒険を綴る物語である。
原則として、毎週土曜日の午後8時に投稿予定です。
感想は受け付けていますけれど、原則として返事は致しませんので悪しからずご了承ください。
スラム街の幼女、魔導書を拾う。
海夏世もみじ
ファンタジー
スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。
それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。
これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる