ミックスブラッドオンライン・リメイク

マルルン

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始まりの森編

学校内のベテラン勢1

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 琴音ことねも昨日の冒険で、無事に2つ目の果実をゲット出来たらしい。話によると森の北側探索をしたようで、お昼の弁当の時間でその辺りの話は更に詳しく聞かされた。
 ネタバレは禁止だとの俺の忠告に、その会話には果実の場所やモンスター配布図などは含まれない配慮をしてくれていた。やれば出来る娘なのだ、琴音は。

 こちらもヤル気を削がれなくて、まずは一安心の俺である。こちらの経緯も訊かれたので、俺は昨日の顛末を皆に面白おかしく話す事に。
 その話は、ゲームをしていない女性陣2人も楽しく聞いてくれたようで、その点は満足である。称号なるモノを2つも手に入れた事実は、琴音と誠也せいやには青天の霹靂へきれきだったらしい。

 まず有り得ないと最初は信じて貰えなかった、何かの勘違いなのだろうと。確かにこちらはゲーム初心者、別の何かと取り違える事もあるだろう。
 そこら辺は、事前に聞いていた『ステータスのスクショを撮って送る』方法で、無事解決してくれた。それによって、どうしてこうなったのと言う新たな問題が勃発したけど。

 実際、1日でレア種を3匹も倒した話は眉唾まゆつばだと一蹴いっしゅうされてしまった。俺のアバターの運値が20を超えている事実も、割とまともに取り合って貰えない始末。
 しかしそれも、大量の報酬を見せつけて納得して貰えて何より。

 この話をまともに聞いてくれたのは、ゲームをしていないたまき奈美なみの2人だけ。海辺の洞窟を発見して、そこで宝箱にありつけたのは素直に賞賛された。
 どうやらベテラン勢は、エリア探索はそこまで懸命にしない傾向にあるようだ。最初の職業の『初心者』の響きを嫌い、何よりお店が1つも無い森の状況に不安を感じるらしい。

 そこから一刻も早く脱出するために、『始まりの森』を最短で駆け抜けてるっぽい。こちらにしてみれば、どれが正常かなど分からない訳で。
 お喋りするNPCがいないのもお店が無いのも、そんなモノなのかと片付けてしまっている。不便ではあるが、別段と文句を並べる程でもない。

 これがこのゲームのシステムなのだと、俺など勝手に解釈しちゃっていたり。そんな2極化が、初心者の俺とベテラン勢では起きている様子。
 誠也の掲示板調べによると、ベテラン勢は『始まりの森』を5日でクリアが定番らしい。

「それで超混んでるスタートの街に着いて、後悔しちゃうみたいだねぇ……でもお店もNPCも仲間もいるし、クエは潤沢に受けれるし行動範囲は跳ね上がるし。
 総合すると、やっぱり最短で街に辿り着く方が得じゃないのかな? 僕も姉ちゃんに最短で合流するよって通達受けて、森ではあんまり自由に動き回れなかった覚えが」
「強い姉を持つと大変だな、色々と……俺は割と好き勝手に、森の中を動き回ってるぞ? でも目的の果実は、琴音より多い3個集まってるな。
 今更改まって、方針を変えるつもりもないなぁ」
「恭ちゃんはまぁ、それでいいと思うけど……うわぁ、本当にたった3日じゃ考えられない位に、鞄からあふれる程の戦利品集めてる……。
 魔法付きの良装備とか、宝珠や皆伝の書とか色々……うわぁ、やっぱり恭ちゃん、冒険者の適性があったんだねぇ!
 こんなの絶対、普通じゃ考えられないよ……!」

 なんだよ、冒険者の適性って? いつものお昼時間、校舎の隅のお気に入りのランチ場所で、俺達はいつもの様に昼食をとっているんだけど。
 いつもの会話では飛び出さない、冒険者の適正と言う変テコリンなキーワードが。ゲーム脳の琴音らしい言葉のチョイス、それを笑って聞いている幼馴染たち。
 指摘された俺だけが、笑うに笑えないと言うね。

 そんな事を言い合いながら開けたお弁当箱には、楓恋かれんの愛情と末妹の悪戯いたずらが詰まっていた。ご飯の部分に味付け海苔でハートマークとか、杏月あんずの仕業に違いない。
 友達には絶対に見せられないな、特に琴音に知れたら折檻せっかんモノだ……妹だろうと関係ない、何故か俺の管理不行き届きみたいな判決が下されるのだ。
 女の神経は……もとい、琴音の思考回路は本当に意味不明だ。

「スタートの街の混雑具合は、本当に酷くてさ。初心者の講習クエとか冒険者ギルドで出来ないから、とうとうアップデートで街の広場に受け付けが建っちゃったんだ。
 それでもクエ1つ受けるのも、割と時間が掛かっちゃって大変なんだよ。今スタートの街の冒険者達の指針は、さっさと条件満たして次の街に進むか、クエ以外でレベル上げるかどっちかみたいだね。
 僕と姉ちゃんは、もう次の街に進む算段になってるよ」
「次の街って、確か全く新しく創られた限定サーバオリジナルでしょ? そっちも色々大変そう、街の地形覚えたりNPCに話聞いて回ったり。
 4時間しか活動出来ないのに、レベル上げしてる暇とか無いんじゃない?」

 そうらしい、何かよく分からないけど次に進んでも色々と大変みたいだな。全く知らない街中の情景を想像しつつ、俺は適当に相槌あいづちを打ちながら2人の話を聞き流す。
 先行したベテラン陣勢は、一定の経験を備えているのは確かな模様。それを発揮しようにも、未だにこの限定イベントの“クリア条件”が言い渡されていないと言う。

 それを不安と感じている冒険者も、当然ながら少なからずいるそうだ。こっちは必死に、その日の冒険を生き延びてるだけで精一杯な有り様。
 その中で自信もついて行くし、もちろん反省材料も多々出て来る訳だ。こちらの生活と一緒である、言うならば学校の勉強なんかも特にそう。
 予習も大事たせが、復習もとっても大事なのだ。

「せめて限定サーバ内の限定イベントとか、積極的に開催して欲しいよねぇ……恭輔きょうすけ君、今は“ドロップ率上昇週間”だって知ってた?」
「なんだ、そうだったのか……確かに敵からのドロップ、やけに気前がいいなとは思ってたけど。ってか、それって始まりの森にも適用されてんの?
 そもそも、俺は元のドロップ率とか知らないし」
「恭ちゃんはそうだよねぇ……ドロップ率はともかく、レア種に遭遇する確率が酷いもん! そのレベルで従者に妖精連れてる時点で、やっぱり変だし!」

 変って何だ、ファーは俺の大切で陽気な相棒だぞ! ベテラン陣の話を総合すると、俺のプレイは破天荒で他に類を見ない進行振りらしい。
 そう言われれば照れるけど、定型を知らないから我が身をかえりみる事も不可能。自分的には『虹色の果実』の集まりも上々だし、ベテラン陣の不安など関係ない。
 自分なりの流儀で、冒険者稼業を楽しむのみ。




 皆でのランチを終えて、俺は独り少々早めに教室へと戻った。次の授業が移動教室なのと、その次の授業でレポートの提出もあったのだ。
 色々と準備の時間が必要で、抜かりないのは自分の性格上当然である。そのため時間が余ってしまったので、移動先の教室で暇潰しなど。

 さっきの話題であがっていた、スマホの自分のアバター画面を眺めて色々と脳内思考。例えばどうやって強化しようかとか、後はどの魔法を伸ばそうかとか。
 ついでに、今日のインでの計画などを練って楽しんでみたり。そんな事をしていたら、不意に同級生から声を掛けられた。

「あっ、八崎やさき君……実はさ、さっき噂で例の賞金付き限定イベントに、君が参加したって小耳に挟んだけど。
 ゲームしてるって聞いた事無かったのに、それって本当なの?」
「ってか、例の君の幼馴染がしゃべってたのを偶然小耳に挟んだんだよね。何か、絶対勝利宣言まで口にしてるみたいだし、凄い熱の入れようらしいね?」
「あれっ、これって八崎君のアバター情報……? こっちも知りたい情報出すから、ちょっとだけ見せてくれないかな?」

 自分の世界にひたっていたら、辛うじて顔見知りの隣のクラスの4人組に話し掛けられた。移動教室は一緒だけど、クラスは違うし普段は話とかしない仲である。
 ちょっと話してみたら、どうやら向こうも『ミクブラ』のベテラン勢っぽい事が判明。琴音はゲームの世界では割と有名人らしく、同学年の間でも噂の存在みたい。
 そんな彼女が打ち出した、勝利の方程式が気になって仕方が無いらしい。

「あぁ、あいつは妄想へきがあるから、口にした事の半分は聞き流していいよ? こんなんで良かったらどうぞ、幾らでも見て意見をくれれば。
 一週間遅れの参加だし、賞金を本気で取れると盲信してるのは琴音だけだから」
「いやいや、八崎君の武勇伝は色々と聞きかじってるからね、君と同じ中学の出身者から。何か凄かったらしいね、特に小学校時代とか。
 そんな君が冒険者デビューだもの、適正はあると思うよ?」

 ここでも冒険者の適正かっ! どんな理屈だと俺は憮然ぶぜんとするが、ほぼ初対面の同級生たちをビビらせるのは得策ではない。
 学生生活を円滑に過ごすのに、これでも俺は色々と気を遣っているのだ。その原因は主に、感情が過敏に振れる傾向のある、幼馴染の琴音に起因する。

 とにかくそんな思惑で、心の中の不機嫌を表に出さずにポーカーフェイス。向こうの話に適当に相槌を打っていると、いきなり1人が絶叫した。
 どうやら俺のスマホを受け取った人が、そのステータスを見て驚いたらしい。

 ちなみに、琴音がこの学校で有名な理由だが、それはひとえにその目立つ容貌にある。性格的な問題は置いといて、美人だとの評判は上級生にも下級生にも知れ渡っているのだ。
 それに付随して、俺の名前も何故か学校中に広まっているらしい。自分や俺に対する余計な吹聴ふいちょうは、琴音の十八番おはこでもあったりして。

 そんな訳で、俺達2人はちまたでは親も公認のカップルになってるらしい。これは俺に、余計な虫がつかない様にとの琴音なりの作戦らしいのだけど。
 それが俺に筒抜けなのは、幼馴染の単純な思考ゆえだったり。お陰で学校生活が妙に堅苦しくなったのは否めない、苦情を並べ立てる程では無いけれど。

 どうせクラブ活動もしないと決めてたし、誠也たち昔馴染みの友達もいる。だからこんな感じの、同級生との距離間は珍しかったりして。
 それも何だか、1人の絶叫から変な方向にねじれそうな予感。




 ――俺が一体何をした、そんな目で俺を見ないで欲しいんだが?






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