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始まりの森編
死の商人と召喚戦士
しおりを挟む地図を開いては、歩いていない暗くなってるポイントを見付けてそちらに向かう。そんな地道な探索のお陰で、マップの北西方角は段々と良い感じに埋まって来た。
その行為とレア種とユニーク種の遭遇は、恐らくは関連性は無いとは思う。ただし、夜の探索がソイツを引き寄せたのは、ほぼ間違いなく当たっていると思う。
そう、俺はソイツに以前遭遇した事があったのだ――
闇の眼帯の使い心地は、何と言うかすこぶる良かった。昼と同じ位に視界は良好だし、モンスターの放つ気配すらオーラみたいに窺える好感度振り。
ファーの自然に放っている光が、逆に眩しい位である。だからと言って光るのを止めてくれとは言えない、悪目立ちしないでねとはお願いはしてるけど。
そんな彼女もさすがに夜間は、収集活動は自粛している様子。俺にしてもいきなり強敵との連戦となって、さすがに夜は怖いなと脳への刷り込みは完成している。
これ以上レア種と出遭う確率は低いだろうけど、無いとは言い切れないのが現状である。そんな感じで彷徨っていると、以前利用した道の近くまで出て来た。
例の東西へと続く道だ、断崖を登るつづら坂から海岸近くのあの野原まで繋がっている。コボルト達も利用しているし、妖精を売ってくれたあの憔悴した商人とも出会った場所だ。
そこは既に歩いてマップ補完済みなので、その手前で西へと進む事に。いやしかし懐かしいな……あの商人と偶然出会えなければ、ファーとも巡り合えなかった。
そんな感想を込めて、俺は隣を呑気に飛んでいる相棒に何となく優しい視線を飛ばしてみる。ところがその相棒は、緊張した面持ちでじっと前方を凝視していた。
どうやら何やら見付けたらしく、こちらも慌てての戦闘準備の態勢へと入る。もしも大物だったら、手斧の投擲から始められる様にしなきゃね。
そして視界に入って来たそれは、相変わらずの死霊系だったと言うオチ。闇のオーラをバリバリに纏って、禍々しい人型タイプまでは分かった。
そして信じられない事に、今夜3体目のレア種……いや、恐らくはユニーク種だった。何と言う遭遇確率と呆れる俺、夜って本当に強敵の温床だなぁ。
って言うか、人型の筈なのにやけにフォルムが変だなと思ってよく見たら。どうやら背中に荷物を背負っているらしく、変に見えたのはそのせいらしい。
《Dビジョン》も万全では無く、視覚はオーラを優先してしまう。そのせいで敵の細部は判然としないけど、何となくコイツには見覚えがあるような。
過去の記憶を辿って行くと、何となく嫌な想像に辿り着いてしまった。まさかコイツ、あの時の憔悴し切っていた例の商人じゃないよね……?
そう思って改めて見てみたら、そんな気がと言うより確信に至ってしまった。つまりはあの後死んで、ゾンビとなって復活したとか?
ってか、名前を確認したら“死の商人”とか冗談みたいなネームセンス。うん、確定ッポイね……ファーを横目で見てみるけど、特に何の感情も無さそう。
まぁ、ファーからしてみれば勝手に掴まえて売り物にしてしまう酷い奴って印象しか無いのかも。そんな奴がくたばってゾンビになろうが、勝手にして頂戴ってなモノなのかな?
それはそれで良いが、果たしてこの“死の商人”の強さは如何程だろうか。元が戦士でも何でも無いのだから、戦闘能力は持ち合わせて無いと思うけど。
向こうもバッチリこちらを認識、そして戦闘開始のゴングが鳴り響く。
まずは小手調べ、なんて甘い認識はこちらには無い。最初の予定通りに先制攻撃、手斧の投擲で思い切り相手のHPを減らしに掛かる。
相手はそれを意に介さず、何やらアイテムを懐から取り出した。何を始めるのかと思いきや、いきなり死の商人の手前の土が捲れ上がった。
どうやら取り出した紙切れの様な品、召喚用のアイテムか何かだったらしい。そして何の前触れも無く、戦場に新たな敵が出現して来た。
パッと見た感じ、そいつはゾンビでは無いようだな……少なくとも肌は腐っていない。真っ黒な影みたいな皮膚の、戦士装備のユニットである。
迷わずこちらに突っ込んで来たので、間違い無く敵確定だ。迎撃態勢を取りながら、奥の商人の行動がどうしても気になってしまう俺。
何しろ奴は、もう1枚懐から同じような紙切れを取り出していたのだ。ちょっと待って、まさか再度の召喚ショーでのユニット水増しですかっ!?
その通りだった、しかも次に登場したのは弓持ち戦士と言う最悪の組み合わせ。死霊海賊との団体戦で、遠距離攻撃の厄介さは身に染みて体験済み。
唯一こちらに有利なのは、死の商人本体の戦闘力が低そうなこと。こちらに寄って来る素振りもないし、直接攻撃の手段は実は無いと思われる。
その分この召喚された前衛闇戦士が、やたらと強いんだけどね。盾を持っていて良かった、剣での攻撃の威力と速度が何と言うか凄まじい。
コボルトとかスケルトンの剣技なんて、これを体験すると糞みたいなモノだ。おっと、言葉使いが乱れちゃった、失礼……しかしこれが本物の剣士の技か。
俺レベルの盾防御なんて話にならない、実際に3回に1度しか防げていない。ってか、とうとう弓矢の攻撃もやって来ましたよ、奥さん!?
奥さんって誰だと1人突っ込み、ってかこのままじゃ魔法を唱える隙すら無い。その斬撃の凄まじさ、それならこちらにも考えがあるっ!
ファーさん、やっておしまいと他力本願な合図を相棒に。
あいよっ、てな軽い調子で妖精の光の水晶玉が投下される。上空からの狙い澄ましたその攻撃は、見事に商人込みで3体とも範囲に巻き込んだ。
弱点属性の爆裂玉に、思い切り怯む闇の住人達は少し哀れ。その隙に付与魔法を……いや、先に《フラッシュ》での目潰しを喰らわせてやる。
これで前衛戦士の命中率が下がれば占めたモノ、その隙に《風属性付与》を短槍に唱えて。さて、それでは殴りに……いや、俺も光の水晶玉を持ってたんだっけ!
てやって感じで、再び光の奔流が地面に渦巻いてダメージ変換されて行く。おっと、メインの死の商人のHP、既に半分以下じゃないか。
これは先に、召喚主のコイツを倒す手もあるかな? いやいや、護衛の前衛戦士は飽くまで立ちはだかる根性を見せていて、コイツに背中を見せるのは不味い。
後衛の弓使いにも、念の為に再度の《フラッシュ》を見舞ってやる。そしてそれなら付き合ってやるよと、前衛の闇戦士に《落とし突き》のスキル技を敢行。
それが深く戦士の胸板を抉って、相手はかなりの深手を負った。このままこちらのペースで戦闘を続けたい俺は、踏み込んでなおも突きを見舞ってやる。
念の為に、後衛の射線を塞ぐように前衛戦士を盾替わりに使いつつ。多対1人を、強引にタイマンへと持って行く素晴らしい戦術を展開する。
いやまぁ、それ程奇抜でも優れている作戦って訳でもないんだけどね。とにかくこれで、こちらに有利になると思った矢先に風向きは再び変わった。
光属性のダメージから回復した戦士が、特殊技の《ラッシュ》での猛攻を見せ始めたのだ。慌てて防御に廻ってみるも、ゴリゴリとHPが削られて行く。
やっぱり強いな、もう少し押し込めば瀕死にしてやれるのに。こちらも時々突きを返すが、その熟練度は傍目に見ても雲泥の差があるみたい。
う~ん、もう少し短槍にもスキルを振り込むべき?
やたらと色々、武器スキルを伸ばしたツケ……琴音や誠也に散々注意されたけど、こうやって実戦で体感すると、ひねくれ者の俺でも納得せざるを得なくなる。
いやいや、スキルPをレア種を倒して貯め込めば、綺麗に解決する問題でもある訳で。とにかく、そんな課題が浮かび上がった一戦には違いない。
それについては、後でスキル振りなどで調整する事にしよう。今はとにかく、目の前のこの窮地を切り抜けるのが先である。
とか思ってたら、何と弓使い闇戦士がナイフに持ち替えて前線に飛び出して来た。意地悪して射線を通さなかった俺への意趣返しか、戦闘AIの癖に賢いな!
これはピンチ、何しろナイフ持ち戦士も《Z斬り》と言う特殊技で、こちらの動きを止めに来る。文字通りに動きが止まるのだ、意図せず敵の真ん前で、数秒間にわたって無防備スタン状態の俺のアバター。
数秒と言えども、戦闘中のソレは破滅への直行便で怖過ぎるっ。
そこへ闇戦士の《二段斬り》と言う特殊技を浴びた時には、マジで天国への扉を垣間見た気が。実際はHPを2割まで削られただけで済んだのだが、無防備に大技を喰らうのは気分的に嫌過ぎる。
思わず俺は盾を振り回し、戦士2人と距離を取る。そして再度の《フラッシュ》で隙を強制的につくっての、ポーションパウダーでの回復作業。
これで体力は6割まで回復したけど、依然として敵の数は全く減っていない。不味いな、この繰り返しだと先にこちらの回復薬が切れてしまう。
いや、瓶薬ならたくさん持ってるけど、取り出して飲むのを向こうは待っていてくれないしね。闇属性に特効の光の水晶玉はあと1個しか無い、パウダー回復薬も同様にあと1個のみ。
ファーの鞄の中は不明だけど、当てにし過ぎるのは宜しくない。闇戦士のHPは、片手剣持ちの方が、丁度半分程度だろうか。
相変わらず連中は群れているので、範囲攻撃は有効には違いないんだけど。必要以上に早く追い込んで、自棄っパチの反撃を喰らうのも面白くない。
我慢して地味に削りつつ、ここぞと言う時に範囲の水晶玉攻撃が得策だろうか。とか脳内で作戦を考えていると、いつもの様に向こうの予想外の動きで予定が思い切り狂うパターン。
今回もそれを踏襲した感じ、何と死の商人まで前衛に出て来た!
えっ、コイツ何がしたいの!? アナタ武器すら持ってないジャンと、心の中は疑問符の嵐。ユニーク種の普通の動向なんて、こっちは知らないけれど明らかに変。
その前衛に出て来た“死の商人”さん、攻撃は飽くまでもアイテムで行う模様。懐から取り出したのは、何やら妙な色の液体の入った瓶だった。
それを俺のアバター目掛けて、思い切りぶち撒けて来た。そんなの引っ掛かる訳無いでしょと、おれは素早くサイドステップでそれを躱す。
どうやらこのゾンビ商人、前衛技能と言うか戦闘技能の類いは殆ど無いみたい。その代わりにと、召喚アイテムや特殊アイテムを駆使して戦闘に参加する感じらしい。
前衛の闇戦士たちは、そんな召喚主にやり難そうなリアクション。慣れない役目を担う味方は、ある意味敵以上に厄介ってか?
そこで思い付いたのが、それを逆手にとっての“もっと足を引っ張って”もいいんだよ作戦である。いや、実はそんな大した閃きでも無いんだけど。
何しろ敵は、現在3人が前衛に出張っている現状だったり。ちょっと考えれば分かるけど、独り相手に3人で横並びって、武器を持っていたらなかなかに難しい。
何しろ武器を自在に振り回すスペースって、ある程度は必要なのだ。片手武器でも同じ事、完全に相手を囲ってしまうなら話は別だけど。
そんな訳で、敵の連携に微かな乱れを感じ始めた矢先の事。あれだけ熾烈だった闇戦士の剣技も、召喚主を気遣ってかわずかに遅れ気味に。
そして回り込んで来た闇商人、再び変なアイテムを投擲に至った。バレバレの不慣れなその動き、こちらはバッチリ予測済みである。
ナイフ持ち元後衛弓使いに、密着気味なのも良かったのかも。サッと身を翻してその謎な効能の液体を避けると、目論見通りに味方同士のフレンドリファイアーが発生した。
このゲーム、プレイヤー側の殴り合いはあるらしいけど、果たして敵同士はどうなんだろう? 琴音の話だと、パーティを組んでると不可となるっぽいけど。
勘でしかないけど、コイツ等は絶対組んでないよな?
――でも俺とファーの場合とかもあるし、判断は難しいかも。
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