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始まりの森編
真夜中の回収作業
しおりを挟むさて、夜の探索も大詰めとなって、ようやく目的地に到着となった。森の端から断崖を眺めて、俺たちはそろりと周囲の安全を確認する。
やはり夜ともなると、この周辺も敵の分布が大幅に変わっているようだ。断崖周辺の大トカゲや山羊は、どうやら今の時間は見当たらない。
どこかで眠ってるのかも、少なくとも低地のこの周囲には見掛けないな。以前空を飛んでいた、ワイバーンの姿も見当たらずホッと安堵のため息。
そう言う意味では、大物仲間の大クマの姿も周辺には確認出来ない。それじゃあ夜中は安全かと問われれば、どうもそうは問屋が卸さない様子。
最初はコボルトかと思ったけど、もう一回り身体が大きい連中が視界の中をチラホラ。奴らは集団で活動中の、ファンタジーで有名なゴブリン種族だった。
あちらこちらで、クマやワイバーンの食べ残しの残骸を漁っている。彼らには夜目があるのだろうか、この暗闇の中を皆が平気な様子で活動している。
集団の数は全部で5つくらい、ってかこちらの活動に邪魔過ぎて厄介だな。目的の幌馬車の残骸の近くにも、3匹の集団がうろついている。
こちらも残骸漁りが出来ないじゃないか、などと情けない愚痴をこっそりこぼしつつ。こうなりゃ実力行使だと、ゆっくりと闇の中を近付いて行く。
森の端から出てしまうと、断崖近くまではほぼ遮蔽物も無い状態である。案の定に奴らに見付かって、強制的に多対1の戦闘に突入してしまった。
まぁ、こっちも決して考え無しで、ゴブリン集団に近付いた訳ではない。何しろ今夜の戦闘だけでも、俺のアバターは圧倒的に成長出来たのだ。
何せここまで、強敵とばかり戦った道のり……無事に辿り着けたのが、本当に奇跡のよう。この程度の雑魚の2匹や3匹……おっと、別の群れまで反応しやがった。
これは不味いか、まずは《フラッシュ》で数匹まとめて目潰しをお見舞いしてやる。そして、向かって来る群れには《風の茨》での時間稼ぎ。
おおっと、度胸もそうだけど随分と応用力も付いて来たじゃないか! こんな多勢相手の場合は、とにかく相手の数減らしが何より先決である。
あらかじめ棍棒に装備チェンジしていたので、《ブン回し》の範囲攻撃も効果的だ。SPが溜まれば、とどめに《撃ち上げ花火》を喰らわせてやる。
ゴブリンの強さだけど、体感的にコボルトよりは上かなって程度。装備もちょっと良いの持ってるかなって感じで、特に取り上げる程では無い……と、最初は思ってました、はい。
それが戦闘の終盤では、完全に考えを改める破目に陥った次第。
コイツ等、持ってる武器でSPが溜まり次第にスキル技を使って来やがる。魔法を使うゴブリンも混じってると、マジで最悪なんですけど。
コボルトにはそんな個体はいなかったので、完全別モノと思った方が良いみたい。魔法を効果的に使うってのは、戦闘を有利に進める上でとても重要だ。
例えば、ゴブリン集団の中に、回復魔法持ちが群れの中に1人でも混じってるともう最悪。誇張で無く、戦闘時間が倍近くに伸びる破目に。
さっきまで存分に魔法やスキル技を使ってたのに、敵にされると腹が立つ不思議。効果的な対処法は、魔法を使う個体から先に倒して行く位だろうか。
こちらの攻撃力も、レベルの上昇と共に上がって来ているのは確か。スキル技混じりの攻撃で、敵の数減らしはそれ程は苦になってはいない。
そしてようやく最初の3匹編成の群れを撃破、続けて魔法使い混じりの群れを迎え撃つ。さっきも言ったが、この群れは魔法使いゴブリンから倒すべし!
ゴブリンの戦闘特性に関しては、前述の通りで厄介なのだけど。見た目の特徴を口にすると、緑色の肌の小鬼と言った風情だった。
犬の獣人のコボルトとは違う、いかにも悪そうな顔付きで愛嬌などほとんど無い。ただやはり、スキル技や魔法は厄介だが、戦士的な特性は持ち合わせてない感じ。
体力も高くないので、雑魚感は否めない……まぁ、こちらにしては有り難いのだが。ドロップに関しても、コボルトと似たり寄ったりな残念感が溢れ出ている。
たまに武器や防具をドロップするが、半分以上はサイズが合わず使用不可。総合評価としては、何度も言うけど魔法とスキル技を使う少々ウザい程度の敵だ。
それでも必殺技があるよと脳裏に刷り込まれると、やはり対処に慎重になってしまう。まぁ雑魚とは言え、群れているのだし慎重になるくらいが丁度良いのだろう。
そんな感じで群れを2つ撃破、何故だか3つ目もこちらに反応している。馬車の残骸エリアは割と広いのに、反応する範囲が広い敵のようだなぁ。
まぁ、こっちとしても探索に邪魔な敵は、全滅させるのが得策なんだけどね。おっと、大コウモリまで絡んで来た……近くの洞窟から飛んで来たのかな。
レア種では無いよね、さっきの件もあってちょっとビビってしまう自分が情けない。強敵も良いが、こんな絡む敵ばかりの場所での戦闘は勘弁だ。
所詮は雑魚だと己に言い聞かせ、どちらも割と短期間で倒し切る事に成功。鞄の容量が増えたので、ドロップ品の収集が楽しみで仕方が無い。
おやっ、ゴブリン達は銀のメダルと言うのを稀に落とすらしい。これは何だっけ、確か金のメダルのランク落ちアイテムだっけ?
確か友達の説明では、街の交換所で良品アイテムと交換出来た筈なのだが。獣人が落とすとは知らなかった、ますます狩る理由が増えたじゃないか。
とは言え、今夜の予定は森の精霊の祠造りの材料集めなのだ。もう一度周囲を確認して、邪魔が入らない事を念入りにチェック。
もちろん頭上も要チェック、とっても怖い敵を以前に見てるしね。よしっ、見える範囲では敵は全て駆逐し終わって大丈夫みたい。
ゴブリンの群れはまだ散見してるけど、離れているので大丈夫だろう。わざわざ倒しに行くのも疲れるので、そちらに移動して来たら倒す感じで良いと思う。
そんな訳で、最初の“幌付き破損馬車”から収集作業開始。
うわっ、中は思ったより酷い状況だな……確かに、所々獣人どもに漁られた形跡が見られる。何か集中して眺めていると、ポンッと収集ポイントが浮かんで来た。
これって、ランダム収集でアイテムを得るタイプの奴だっけ? 野外でも果実や木の枝やらは、こんな感じで制限が掛かってたな。
それじゃあ一度取ったら、ポイント消えちゃうって事か。ファーも興味深げに残骸馬車の中に入って来て、あちこち指差してポイントを教えてくれる。
ってか俺より数段見付けるのが上手いな、さすが収集のプロである。俺はアシスタント宜しく、ファーに示された場所をポンと指でタッチして行く。
それだけで、アナウンスがアイテムを得ましたと知らせてくれる。当たり外れはあるが、それに従いなかなか順調に増えて行くアイテム類。
そんな作業を繰り返す事10回余り、大量のアイテムが鞄の中に入って来た。どうやら法則があるらしく、それを見付けるのも面白い。
例えばだが、干からびた食糧の残骸後から食料系が、運んでいた荷物から雑貨類が。壊れた馬車の破片から木材系が、上等な箱の中から割と当たりが採れるっぽい。
なるほどと感心しつつ、得た品物を確認しようと思っていたら。
妖精が再び、ここにもあるよとポイントを指し示して来た。あれっ、ポイントの復活がやたら早くないかと、俺はちょっとキョトンとしてしまった。
これがスタンダードなのか、それとも妖精のパワーが炸裂したのか……一応、琴音にメールで確認しておこうかな。とか思いつつ、収集作業は有り難く継続。
追加で5回収穫して、お陰で1台目の馬車は豊作だった。
――これは鞄の中の回収品の、確認作業が楽しみかも?
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