女装をしたら、えらい目に遭わされました

葵井しいな

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 「んー、やっぱり似合うわね」
 「……嬉しくねぇ」

 昨日と同じように姉貴の制服を身に着けた俺は、化粧台の前でげんなりしていた。
 鏡越しに見る姿は女の子そのもので、しかもそれなりの美少女である。
 
 元々、俺は染色体の異常かなんかで体毛が薄く、ひげなんかいまだに生えてこない。
 それにあんまり外にも出ない性質なので、肌は雪のように白かったのもある。

 「あとは女子っぽくメイクをすれば、化けるわね」
 「……え、そこまでする必要なくないか」
 「なーに言ってんの。これも重要なことなのよ」

 肩にポンと手を置かれ、亜里沙が口を開く。

 「いくらあんたが女っぽくても素の顔のままじゃ京介君と会った時にバレちゃうでしょ」
 「は?」

 バレるとか会うとかこの人なに言ってんの?
 そんな俺の表情から察したらしい亜里沙は、鏡越しにずいっと顔を近づけてくる。

 「あのさぁ、女装したら直接会ってやりとりしなきゃ、解決もなにもないじゃない」
 「あーなるほど。この姿で京介の前に立って、ネタばらしってことね」

 目の前で着替えて京介の目を覚まさせるって手か。
 ……ん? じゃ、バレるのは問題ないんじゃ。

 「ネタばらしなんてしないわよ。あんたには彼と会った後も女装を続けてもらうから」
 「え!? なんでだよ! バラせば終わるじゃねぇか!」

 姉貴の提案に対し、俺は異を唱えていた。
 どう考えてもこっちの方がスムーズに解決するだろうに。

 待てよ。コイツもしかしてこの状況楽しんでるんじゃ……。
 いぶかし気な視線を送るこちらに対し、姉貴はなぜか憐みのこもった眼差しを向けてくる。
 
 「あんたはさぁ、恋をしたことがないから知らないのかもしれないけど。……好きな子が女装した男だと知ったら、普通はどんな気持ちになると思う?」
 「へ? そりゃガッカリするんじゃ」
 「それが初恋とかだったらね、死にたくなるほど落ち込むもんなのよ」
 「マジでか」
 「マジでよ(多分)」

 つまり、京介は落胆するあまりに自ら命を手放してしまうかもしれないと。
 
 姉貴の言葉に、俺はサーっと血の気が引いていった。
 どうしよう、そんなことになりでもしたら。
 
 京介は俺のたった一人の親友だ。
 いつも仲良くしてくれるし、勉強だって教えてくれるし、とてもいい奴なのだ。
 俺は、アイツを失いたくない。

 目でそう訴えると、姉貴に頭を撫でられた。
 
 「そんな顔しなくても平気よ。言ってるでしょ、大船に乗ったつもりでいなさいって」
 「亜里沙……」
 
 優しい表情になった姉貴は、何度も頭を撫でてくる。
 落ち着かせようとしてくれてるのかもしれない。
 
 「女装したあんたがやることはひとつよ」

 耳元で、そっとささやかれる。

 「彼に、嫌われるような行動をとりなさい」
 
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