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ダンジョン都市
4※
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「っああ~~、生き返るぅ~~」
洗い場から腰丈ほどのクリスタルを挟み少し離れた浴槽で、俺は大きく息を吐いた
クリスタル越しにぼんやりとロワンのシルエットが見えている
「やっぱ風呂は最高だなァ?」
「本当それ。できれば毎日入りたい」
「ここに酒があれば完璧だ」
…でしょうね。
露天風呂で盆の上にお酒を乗せてやったら大はしゃぎするんだろうなあ…なんて、思いながら俺の隣で湯船に浸かるアルドへと視線をやる。
水も滴る良い男…
いいよなあ。大胸筋。腕も太いし、肩もすごい。
冒険者として生活していくわけだし、俺もこれくらい鍛えるべきだろうか?
そもそも鍛えたからといって、アルド程の筋肉がつく可能性を俺の身体が秘めているとは思えないが…
いや、それでももう少し鍛えよう。営業職で外回りだったとはいえずっとただの社畜だったのだ。ジムに通う様な時間も無かったし…アルドやロワンに比べると俺の身体は薄っぺらい。
「なンだ?見惚れてんのか?」
「ッ!な、ちがっ…!!!!」
俺の視線に気づいたアルドがニヤリと笑ったかと思うと、素早く腰に手を回され引き寄せられた。
広い浴槽内でピッタリと隣り合う俺たち2人
「……ッッ」
腰に回ったアルドの手がいやらしい手つきで下腹部を撫で回し、思わず息が詰まる。
「おいおい、そんな目で見ンなよ。煽ってんのか?」
お前の目は節穴か?!どうみても睨み付けているんだ
このセクハラ野郎め、と執拗に俺を撫で回すその手の甲を強めに抓ってみるが反応は無い
痛覚というものはこの男にあるのだろうか?
「っひ、!…アルド…!」
太ももを撫でられ、鼠蹊部を揉まれ、これはヤバいとその腕を掴み異議を呈する
が、どうやら聞いちゃいないようだ。
フ、と静かに笑った唇が次第に近づき頸へと埋まる
鼠蹊部と下腹部をいやらしい動きで移動するその手に身体が震えた。
溜まっていた…というほどでも無いが、あの女神の泉の一件以降、こういった行為が無かったせいか、あっという間に下半身に熱が集まっていく。
「っ、待って、んっ、ふ」
まるで黙れとでも言わんばかりに俺の唇へと噛み付いてきたアルドの口が、俺の口をこじ開けた。
ヌルリと絡みつく熱い舌と、流れ込む唾液
歯列をなぞられ、口蓋を舐め上げる舌の動きに腰が砕けそうだ
「ん、んん」
やめろ、と厚い胸板を押し返すがビクリともしない。それどころか口付けは激しくなり、下腹部を彷徨っていた手が、ゆるりと上を向き始めた俺自身へと纏わりついた。
高められる快感と、ここは公共の場だぞ!!と冷静な気持ちが鬩ぎ合う。
「っは、あ、アルド、いやだ…っ」
「嫌そうな顔してねぇけど?」
「あ、んんッ」
グチ、と鈴口を抑えられ腰が跳ねた。
これ以上は良く無いと精一杯の力で抵抗を試みるが、やはりピクリとも動かない
体格差が恨めしい
「随分と楽しそうですね?」
眦へと落ちてきたアルドの唇に睫毛を伏せると同時、聞こえてきた冷たい声
温かい湯船に浸かっている筈なのに、全身が一気に冷えていった。
「…チッ」
「っあの!これは!違っ…違うっていうか…」
「ここは公共の場ですよ」
そうです!ですよね!おっしゃる通りです!!
アルドの舌打ちは空耳だからね!だからそんなに怒らないでロワン
その周りを漂う水魔法を是非鎮めて欲しい
「さあトウヤ、こちらへ。私と共に出ましょう」
「あ、うん。そうだね、そうなんだけど」
ちょっと待って欲しいと言うか、そっとしておいて欲しいと言うか
「まだ勃ってんのに行けるわけねぇだろ」
ゴツン、とそれはもう条件反射で、アルドの脳天へと拳を落とした。
何故空気を読めないのか
アルドのその発言で、ロワンの笑顔がピクリと引き攣る。元々滲み出ていた真っ黒のオーラが更に凶悪になってる気がするのは、気のせいでは無い筈だ。
「躾が必要の様ですね」
ニコリ、と黒薔薇が咲き乱れる様なとびっきりの笑顔
件のスライム騒動が起こった洞窟の血溜まりが脳裏を過った
アルドは大丈夫でも俺は死ぬからね…?いや、それもだが、皆んなが使う浴槽を血に染めて良いわけがない。
どうしよう、どうしよう、と焼き切れそうな程まわる脳と、素知らぬ顔で余裕綽々のアルドへ対する怒りとで頭がグルグルと熱くなる。
もう、勘弁してほしい。
確かにちょっと流されかけたけど、俺は嫌だって言ったんだ!!そう言ったんだ!
流されかけたって何だ!流されてるんじゃないよ俺!しっかりしろ!!!!
この場をどう切り抜けるか、を考えていた筈が、どんどんと高まるアルドへの怒り
余裕綽々なのが、より一層ムカつく。俺はこんなに必死だというのに
そして更に高まるのが、自分への怒り
流されて気持ちよくなってるんじゃないよ俺…
沸々と溢れる怒り
アルドがフッと鼻で笑うのが見えて、何かがキレた気がした
既に一度殴っていたから、2度めのハードルは低かった。
ゴツン、と右手に響く肉と骨の感触
驚きからか、痛みからか、スルリとアルドの腕が俺から離れたので、その隙に浴槽を出て走り出した
背後から聞こえるアルドの怒鳴り声と、俺を静止するロワンの声を無視して脱衣所へと転がり込み、人生最速のスピードで服を纏い浴場を後にするのだった…
俺は知らない。何も知らない、この後何が起こっても俺のせいでは無い。後はあの2人の責任だ
洗い場から腰丈ほどのクリスタルを挟み少し離れた浴槽で、俺は大きく息を吐いた
クリスタル越しにぼんやりとロワンのシルエットが見えている
「やっぱ風呂は最高だなァ?」
「本当それ。できれば毎日入りたい」
「ここに酒があれば完璧だ」
…でしょうね。
露天風呂で盆の上にお酒を乗せてやったら大はしゃぎするんだろうなあ…なんて、思いながら俺の隣で湯船に浸かるアルドへと視線をやる。
水も滴る良い男…
いいよなあ。大胸筋。腕も太いし、肩もすごい。
冒険者として生活していくわけだし、俺もこれくらい鍛えるべきだろうか?
そもそも鍛えたからといって、アルド程の筋肉がつく可能性を俺の身体が秘めているとは思えないが…
いや、それでももう少し鍛えよう。営業職で外回りだったとはいえずっとただの社畜だったのだ。ジムに通う様な時間も無かったし…アルドやロワンに比べると俺の身体は薄っぺらい。
「なンだ?見惚れてんのか?」
「ッ!な、ちがっ…!!!!」
俺の視線に気づいたアルドがニヤリと笑ったかと思うと、素早く腰に手を回され引き寄せられた。
広い浴槽内でピッタリと隣り合う俺たち2人
「……ッッ」
腰に回ったアルドの手がいやらしい手つきで下腹部を撫で回し、思わず息が詰まる。
「おいおい、そんな目で見ンなよ。煽ってんのか?」
お前の目は節穴か?!どうみても睨み付けているんだ
このセクハラ野郎め、と執拗に俺を撫で回すその手の甲を強めに抓ってみるが反応は無い
痛覚というものはこの男にあるのだろうか?
「っひ、!…アルド…!」
太ももを撫でられ、鼠蹊部を揉まれ、これはヤバいとその腕を掴み異議を呈する
が、どうやら聞いちゃいないようだ。
フ、と静かに笑った唇が次第に近づき頸へと埋まる
鼠蹊部と下腹部をいやらしい動きで移動するその手に身体が震えた。
溜まっていた…というほどでも無いが、あの女神の泉の一件以降、こういった行為が無かったせいか、あっという間に下半身に熱が集まっていく。
「っ、待って、んっ、ふ」
まるで黙れとでも言わんばかりに俺の唇へと噛み付いてきたアルドの口が、俺の口をこじ開けた。
ヌルリと絡みつく熱い舌と、流れ込む唾液
歯列をなぞられ、口蓋を舐め上げる舌の動きに腰が砕けそうだ
「ん、んん」
やめろ、と厚い胸板を押し返すがビクリともしない。それどころか口付けは激しくなり、下腹部を彷徨っていた手が、ゆるりと上を向き始めた俺自身へと纏わりついた。
高められる快感と、ここは公共の場だぞ!!と冷静な気持ちが鬩ぎ合う。
「っは、あ、アルド、いやだ…っ」
「嫌そうな顔してねぇけど?」
「あ、んんッ」
グチ、と鈴口を抑えられ腰が跳ねた。
これ以上は良く無いと精一杯の力で抵抗を試みるが、やはりピクリとも動かない
体格差が恨めしい
「随分と楽しそうですね?」
眦へと落ちてきたアルドの唇に睫毛を伏せると同時、聞こえてきた冷たい声
温かい湯船に浸かっている筈なのに、全身が一気に冷えていった。
「…チッ」
「っあの!これは!違っ…違うっていうか…」
「ここは公共の場ですよ」
そうです!ですよね!おっしゃる通りです!!
アルドの舌打ちは空耳だからね!だからそんなに怒らないでロワン
その周りを漂う水魔法を是非鎮めて欲しい
「さあトウヤ、こちらへ。私と共に出ましょう」
「あ、うん。そうだね、そうなんだけど」
ちょっと待って欲しいと言うか、そっとしておいて欲しいと言うか
「まだ勃ってんのに行けるわけねぇだろ」
ゴツン、とそれはもう条件反射で、アルドの脳天へと拳を落とした。
何故空気を読めないのか
アルドのその発言で、ロワンの笑顔がピクリと引き攣る。元々滲み出ていた真っ黒のオーラが更に凶悪になってる気がするのは、気のせいでは無い筈だ。
「躾が必要の様ですね」
ニコリ、と黒薔薇が咲き乱れる様なとびっきりの笑顔
件のスライム騒動が起こった洞窟の血溜まりが脳裏を過った
アルドは大丈夫でも俺は死ぬからね…?いや、それもだが、皆んなが使う浴槽を血に染めて良いわけがない。
どうしよう、どうしよう、と焼き切れそうな程まわる脳と、素知らぬ顔で余裕綽々のアルドへ対する怒りとで頭がグルグルと熱くなる。
もう、勘弁してほしい。
確かにちょっと流されかけたけど、俺は嫌だって言ったんだ!!そう言ったんだ!
流されかけたって何だ!流されてるんじゃないよ俺!しっかりしろ!!!!
この場をどう切り抜けるか、を考えていた筈が、どんどんと高まるアルドへの怒り
余裕綽々なのが、より一層ムカつく。俺はこんなに必死だというのに
そして更に高まるのが、自分への怒り
流されて気持ちよくなってるんじゃないよ俺…
沸々と溢れる怒り
アルドがフッと鼻で笑うのが見えて、何かがキレた気がした
既に一度殴っていたから、2度めのハードルは低かった。
ゴツン、と右手に響く肉と骨の感触
驚きからか、痛みからか、スルリとアルドの腕が俺から離れたので、その隙に浴槽を出て走り出した
背後から聞こえるアルドの怒鳴り声と、俺を静止するロワンの声を無視して脱衣所へと転がり込み、人生最速のスピードで服を纏い浴場を後にするのだった…
俺は知らない。何も知らない、この後何が起こっても俺のせいでは無い。後はあの2人の責任だ
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