攻略本片手に異世界へ 〜モブは、 神様の義祖母 〜

出汁の素

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幼女編

第14話 本当の武器

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 それから、数日間朝はお兄ちゃんとの修行でバリモアさんをボコボコにし、その後部屋で、ゆっくりという日々を過ごしていると、アレックス少年が帰って来た。
 帰るとすぐに、呼びだられた。
「して、マイスタールーベックに、武器を打って貰う件はどうなった?」
「ルーベックをここに呼び話をしたところ、まずは閣下とお話をして、商会の誰に打たせるか決めるとのこと。」

 そう言うと、若者の騎士が怒鳴りだした。
「何?多少大きな商会になったからと言って、鍛治師風情が、選ぶだと。フランドル公爵家を愚弄にしているのか?」
「騎士様、勘違いされているのは、どちらでしょう。商会には、鍛治師だけでマイスターの資格を持つ職人が400に迫る程のおり、皇族、各騎士団の団長を含む幹部、貴族、トップクラスの冒険者等様々な方のお抱えとなっている職人も多数おります。その数千人の職人の中で、閣下に合う職人を選ばせて頂きます。騎士様の剣は、ミラーゼル工房のロイア副工房長の作とお見受けしますが、ミラーゼル工房も半年前より、ルーベック鍛治商会の傘下にあります。もしお抱えなら、工房から連絡が行っており、そこからもルーベックに繋ぎが取れたかと思いますが、」
「いや、」

 ベルモラムさんは、最初の勢いを失い、大粒の汗を垂らしておろおろしていいる。
「ベルモラム、お主、1年前にその剣を手にした時、両手剣の名人ミラーゼル工房主作だと。ミラーゼルをお抱えにしてやったと」
「いや、」

 ベルモラムさんは、嘘をついていたのだろう、周りの見る目が厳しくなっていく。
「はて、ミラーゼル工房主は、昨年来腰と目を痛め一年前には、ミラーゼル工房には、工房主作の物は無かったはず。また、その時、お抱えは全て辞め、治ったら見て欲しいと言われた伯爵様と、ある騎士団の団長様のみ残っていたはずです。新規に等受けられてない筈。ミラーゼル工房主は、確か先月復帰されて、後は作りたい物だけを作って過ごすと、ルーベックと話してたので、市場に出回る事は殆どないかと。」
「いや、私は騙され」

 そんなわけない。少しむかついたので、どん底に叩き込んでやることにした。
「ミラーゼル工房主は、煩い人だから、作者の銘を誤って出すとなんて、即破門に繋がるのであり得ないし、ルーベック鍛治商会が経営サポートしていたので、経営で困ってとも考えられないので、何があってんでしょうね。」

 ベルトラムさんはしょんとしてしまったので、アレックス少年が助け舟を出した。
「ジェシカ。お主、よくそこまで知ってるな。」
「当然、ルーベックの直弟子ですから、武器の鍛治師じゃないですけどね。」

 上手く話をかえている。
「そうか。ベルモラムの言は忘れて欲しい。色々な鍛治師に聞いても、マイスタールーベックの事は高く評価している。私もお会いして、鍛治師を紹介して貰えれば、マイスタールーベックに打って貰う事に拘っていない。」
「分かりました。お会い頂く日時は、バリモアさんとルーベック鍛治商会のドドリゲルに調整をお願いしましたので、バリモアさんにお聞き下さい。ただ、お会い頂く際は、今お持ちの剣を持ち、動きやすい格好でお願いします。閣下の剣の捌き、重心の動き等を見て選びますから。」
「わかった。下がってよい。」

 アレックス少年は、話を切り上げ、私を返した。見てられなかった感が強い。少しやり過ぎたかな?反省反省である。ちなみに、当然だが、私は剣を見ただけで、どの工房の誰の銘か分かるわけはない。事前にアレックス少年の周りの騎士達の武器は、紹介する鍛治師の水準調整の為に調べておいた。ミラーゼル工房主は、帝都の鍛治師ギルドの重鎮で、工房長に任せて、半分引退している。ミラーゼル工房主を落とし、弟子、孫弟子の12工房を傘下に入れたのが半年前、現状治すのが難しい症状だったが、薬師研究所での成果に見せて、特製ポーションを使い半年かけて治し、来年度から、鍛治師学校の名誉校長兼共同研究所名誉上級研究員に迎える事になっている。弟子の工房を含めめて、経営が散々で、傾きかけていたので、ミラーゼル工房主が落ちた瞬間、弟子達は簡単に傘下に入ってくれた。癖は強いが腕の良い職人が多く、ミラーゼル工房主の職人育ての腕も見込めば、良い投資だった。ミラーゼル工房のナンバースリーであるロイア副工房長は、両手剣より、片手剣が得意なので、ベルモラムさんの剣はイマイチとしか言えない。他の騎士達も50歩100歩で、剣としてまともなのは、アレックス少年位だ。しかも、ルーベックさんが、若い頃打った剣だなんて知らないだろうな。

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そして、夕方、ルーベック師匠と、ドドリゲルさんがやってきた。見るからに商人ぽい服装だ。

「おもてをあげよ。」
 謁見の間で。私は、ルーベック師匠、ドドリゲルさんの3人で並んでいた。

「マイスタールーベック、私の為に来てくれて感謝する。」
「はっ。愛弟子を人質に取られては、来ざるを得ないでしょう。」

 また、ベルモラムさんが怒鳴りだした。
「閣下に対して、人質等、高貴な方へは何も言わずとも全て従い、全てを差し出すのが筋ではないか?」

 言ってる事が無茶苦茶である。朝の仕返しか、剣に手をかけ凄んでいる。大丈夫か?
「ベルモラムやめよ。当家の恥となる、直ぐにこの部屋から出て行け。」

 ロバートさんが流石に制止した。
「ロバート様?」
「ベルモラム、そなた言ってる意味も分からんが、そなたでは、あの3人には勝てぬ。」
「なんと、素手の者達に?」
「それも分からぬか?」

 と、言った瞬間、何を考えたか、ベルモラムさんが剣を抜き飛び出して来た。短慮な復讐だろう逆ギレもいいところである。
「とやー」

 ダサい掛け声である。私が一番近かったからか、私への復讐目的か、私に向かっている。多分よけれるが、私は、まともに戦うのもバカバカしいので、瞬間的にグランデ様の神聖魔法で、ベルモラムさんの鎧の靴を溶かして、床と結合させた。

「イヤー」
 と悲鳴をあげて豪快にすっ転んだ。並んでいた場所と、私の中間点で、足が急に固定されたので、勢い良く頭からすっ転ろび、靴が脱げた格好だ。次の瞬間、私はベルモラムさんに近づく中で、靴の結合を解いて、ベルモラムさんが手放した剣を拾い、首筋に当てた。

「ベルモラム様?如何されたのですか?」(ニコッ×4)

 多分何をやったか正確に分かってるのは、ルーベック師匠だけだろう。後に人は、よく分からないけど、ベルモラムさんが、私を殺そうととしたものの、盛大にすっころび、カッコ悪い事になったとの認識だと思う。
 ベルモラム様が、何も言えず、失禁している中、アレックス少年は、頭を抱えていた。ロバートさんは目も当てられないという表情である。アレックス少年は、深呼吸をして落ち着いた声で

「ロバート、ベルモラムを引っ立てよ。ベルモラムは、分家の三男だったな。実家に連絡して、事実を正確に伝えよ。帝国最大の商会主に斬りかかり、素手の6歳児に瞬間的に無力化させられ失禁したたと。あと、帝都全ての鍛治師を敵に回そうとしたのは、誰の差し金かと問いただせ。」

 ロバートさんは、アレックス少年の下知に、納得した表情で、
 「はっ。ベルモラム。今回の失態は、貴家でも庇いきれないでしょう。仮にルーベックさんの命を奪ったら、帝都だけでなく、帝国の大半の鍛治師達は、フランドル公爵家一門との取引を止めるだろう。どんな言い訳をしても。」
「そんな~。」

 失禁しているベルトラムさんは、気の抜けた声でつぶやいた。ロバートさんは、ベルトラムさんを責め立てる様に
「そなたには、何度も言ったはずだ、考え方、態度を改めよ、浅慮で行動するなと。本日をもってフランドル公爵家騎士団から除名とする。これは帝国全騎士団に通達するからな。」

 ベルトラムさんは、ロバートさんの言葉に力をなくしている。うなだれていた。アレックス少年は、ルーベック師匠を向き
「マイスタールーベック、お恥ずかしい所をお見せした。また、大変失礼した。」
「いや、ヒヤヒヤしましたが、ジェシカでなくとも、一端の鍛治師であれば、迷宮にも潜りますからあの程度であれば、誰でも対処出来るでしょう。気になさらずに。」
「そう言って貰えるとありがたい。ここは臭くなった。客間に移ろう。護衛はいらんから、ここの処理を頼む。」
「はっ。」

 そう言うと、本館の客間に向かった。本館の客間は、天井が高く、ダンスを踊れるくらいの場所があった。
「広ーい。」
「あぁ、貴族館の本館の客間は、お茶会で楽団を呼んで演奏させても良いように、広いスペースを確保しているんだ。ダンスのレッスンとかも、客間でやる家は多いらしい。その為、そのスペースの床も絨毯を敷いてない。」

 と、アレックス少年は自慢げに説明してくれた。多分、知識を披露したがる年頃なのに、その機会がないのだろう。良い感じで成長すれば、イケメンエリートなのに、性格ねじ曲がってしまわないか心配だよおばあちゃんは。そんな感じで、雰囲気をかえようとしていた矢先、ルーベック師匠がドスの効いた声で
「さて、座って話をしようか。」

 と言い、ソファにドカンと座り、アレックス少年を見据えた。部屋の空気は一気に張り詰めた
「ジェシカから一応聞いたが、うちのジェシカを攫うとはどういう了見だ。」
「えっ」

 ルーベック師匠は、ドスを効き過ぎたに、アレックス少年は、全身が汗を垂らし、震え始めた。ルーベック師匠は、本気で怒ってるし、元々職人で喧嘩っ早いからなー。数秒の間があっただろうか、アレックス少年は、唾を飲み込み、ルーベック師匠に、怯えながらも、ハッキリとした口調で

「マイスタールーベック、申し訳ございませんでした。」
「はぁ?謝れと言ってない、なぜやったのかを聞いているんだが?」

 ひゃー。ルーベック師匠怖~。

「失礼した。私は彼女の魔道具を見て、貴方との繋がりを知り、詳しく聞く為に館へと連れてきた。」

 アレックス少年は、何とか答えている。少年には相当なプレッシャーだろうが、頑張れ。

「何故、私なんだ。」
「それは、帝国最大の鍛治師集団のドンと言うこともありますが、この私の剣の鍛治師だったからです。」

 アレックス少年は、この剣がルーベック師匠の銘だと知っていたらしい。へー
「そうか、知っていたのか。その剣には銘を彫り込んでない筈だが。」
「それは、祖父から聞きました。」

 その言葉を聞いて、ルーベック師匠は天井を眺めた、視線はその先を見ているようだ、そして、今までの口調が嘘だったかのように穏やかな声で
「そうか。レイバー・フランドル前公爵様か・・・。亡くなって一年になるかな。」
「はい、祖父が現役時代に貴方の師であるマイスターベールスモンドをお抱えにし、一番弟子だった貴方に、12本の魔剣を作って貰ったと。生前伺いました。この剣は、その中の1つ、炎の魔剣です。」
「あぁ、その時、前公爵様から、何かあったら世話になると思うが、子や孫が舐めた口聞いていたら、ボコってくれと言われたからな。すまんな。」

 ルーベック師匠の師匠とと、アレックス少年のおじい様が、お抱えの中で、ルーベック師匠もよく知っていたんだ。へー。知らなかった。アレックス少年は落ち着いた表情に戻り
「いえ。」
「で、閣下のこの魔剣を打ち直せば良いのか?」
「いえ、私には、まだこの魔剣は使いこなせません。私に会った剣をお願いします。」
「そうだな、魔剣は魔剣たる機能を持たせる為に、剣としての機能を制限しているからな。」
「そうです。魔剣の魔剣たる所以は、魔法を剣に宿す事。私のレベルと、魔力ではまだ。」

 魔剣、それは、剣に魔法の力を宿させた、剣と魔道具の両方の性格を持った武器。十分な魔法性能を持たせるには、素材の制約や、魔法陣の埋込等により、剣の性能に特化した剣よりも剣としての性能が落ちるのが一般的であるが、使いこなせれば、数倍の力を発揮できると言われている。

「うーん。普通の剣か。うー。そうだな?ジェシカ。」
「なんでしょう。何か悪い予感しか、しないのですが。」

 やばい気がする。何かさせられるかも。
「いい感してるな。剣でも打ってみるか?」
「は?私は、剣打ちでは無いのですが。」

 やっぱりである。師匠は私に剣を打たせたがっていたから、私に打たせるきっかけに使おうとしてる。どうしようかな?
「大丈夫だ、多分。1週間も打てば一人前の鍛治師レベルにはなる。」
「はぁ。そうでしょうけど、どこで打てば。」
「ドドリゲルの店の裏に工房がある。その使えばいいんじゃ無いか?一応、ルーベック工房の分工房として、お前を工房長に登録しといてあるから。まだ市民学校入学まで時間あるし。」

 あっ、外堀埋められてる・・・。アレックス少年の頑張りにも報いてあげたいし
「えー。うー。しょうがないか、わかったわ。」
「そうか、頼んだぞ。」

 と、私と、師匠のやり取りを見ていた当事者のアレックス少年が口を開いた
「あのー。」
「「なにか?」」
「いや、1週間で一人前って。」

 事実、グランデ様に使徒であり、カグラ様の寵愛を受け、攻略本で色々な情報を完璧につかんでいる私が1週間頑張れば、簡単に一人前になるだろう。
「ああ、少なくとも半月でもあれば、まともな剣打てるでしょう。」
「まともって?」

 アレックス少年の心配は分かるが、出来るんだからしょうがない。
「商品として、どこにおいても恥ずかしくないレベルの剣。」
「ジェシカさんって、6歳ですよね。」
「そうですが。」
「ではなぜ。」 

 そう何故って思うよね・・・。
「この子は特別ですから。」
「でも、」
「まあ、ダメだったら私が打つので。安心していて下さい。」
「はぁ。よろしくお願いします。」

 一応、ルーベック師匠の保証で納得頂けた。
「て、ことでだ。とりあえず、素振りを型を意識した時と、スピードを意識した時、力強さを意識した時それぞれ10回づつお願い出来るかな?」
「わかりました。」

 アレックス少年は、魔剣を持ち、素振りを見せた。型は綺麗でお手本のようなものだったが、スピードを意識すると途端に形が崩れた。当然だが、足腰の筋肉がまだついておらず、踏ん張れきれてない。これでは、剣に振り回されている状況だ。力を入れた時は、さらにひどい、力み過ぎて、見れたもんじゃなかったし、剣をハンマーと勘違いしているようだ。

「閣下は誰に剣を学んでいる?」
「親衛騎士団のトレーニングに参加して、剣を学んでいるが。」
「そうか、大人と混ざってやっているのであれば、こうなるか。しかも、親衛騎士団ではな。」

 帝国軍には、多くの騎士団があり、その中でも、最も誉高いのが、王弟リッチモンド皇子が率いる親衛騎士団と呼ばれる帝室の警護をする騎士団である。基本的に貴族の子弟からなり、実践経験は少なく、儀礼を重んじている。その為、型の訓練に特化し、剣の腕は、玉石混交と言った感じで、実践的な能力のトレーニングには不足しているだろう。また、筋肉がしっかりしている大人と、しっかりしてない子供では鍛え方が違う。ルーベック師匠は、悩んだ末

「そうか・・・。嬢ちゃん。閣下を嬢ちゃんの朝練に付き合わせて、鍛えてやれ。」
「はい?私の朝練って、閣下は殆どこの館には居ないのよ。」
「ここにいる時だけでいい。ダイアンも朝練の結果だと思うが、鍛冶師と言うより、冒険者になった方が稼げそうな位戦闘力がついている。」
「そうですか・・・。わかりました。朝4時から」

 アレックス少年が、朝練に参加することが決まった。

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 翌朝4時、私が離れの前の庭で柔軟体操を始めると、アレックス少年が起きてきた。ちなみにバリモアさんは、初日出てきたが、二日目以降は起きてこなかった。

「アレックス閣下、まずは、素振りを行います。この木の剣を持ってください。」
「あぁ、」

「フォームを意識してまず、200回。」
「200回?」
「そうです。フォームを崩さない様にね。」(ニコッ)

 そう言うと、アレックス少年は、素直に素振りを始めた。150回を超えると疲れてきたか、腕が落ちてきている。
「閣下、頑張ってください。」

 なんとか、200回をこなすと
「次に、瞑想します。魔力を巡らして。」
「えっ?」

 アレックス少年は、ポカンとしている。瞑想したことないのかな?混乱しているようなので、手を取って教えてあげた。将来イケメンの可愛い少年なので、ある種役得では無いかと感じることはあるが、雑念は脱ぎ去り、瞑想に集中した。

「次は、試合形式で剣の打ち合いをします。まずは、魔法禁止で。」
「はい。」
「この石が地面に着いたら始めます。負けと言うか、有効打を与えたら終了です。」

 そう言って、小石を大きく上にあげた。小石が飛び、地面に着いた瞬間、私は、アレックス少年に突っ込んだ。アレックス少年は、虚を突かれたか、私の剣を受けようと構えた。少年の足がが止まっている。私は、剣を少年の剣に下からの当て、脇が少し上がった瞬間、胴に蹴りを入れた。私の蹴りでひるんだ隙に私は、剣を少年の胴に叩きつけた。

「うっ。」
 少年は痛みで剣を落としてしまった。

「閣下。大丈夫ですか。」
「私は、秒殺されたのか。」
「えぇ。実力は閣下の方が上かと思いますが、経験が違います。多分、閣下の訓練は実践では役に立たない訓練にしかなってないと思います。」
「そうなのか・・・。」

 と言いつつ、6時まで徹底的にしごいた。魔法込みにした時には、無詠唱に驚き、手も足も出なくなっていた。

「お疲れ様でした。」

 アレックス少年は、横たわっている。

「ジェシカちゃん。君は平気なのは。」
「何がです。」
「このトレーニングは辛くないのか?」
「3歳からやっているので、普通です。いつもはお兄ちゃん達にボコボコにされるので、まだ楽な方です。」
「そうか。」

 そう言って、アレックス少年は、意識を失った。私は、アリアさんを呼びに行き、アレックス少年をおこして、服を着替えさせ、皇宮に送った。
 はぁ、今日やった通り修行していけば、アレックス少年は確実に強くなる。センスは私の何倍もいいし、身体能力も高い。単に今までの修行内容が悪かっただけ。確実にこなして、身につけていけば、私が打つ剣よりも何倍も、彼の武器になるだろう。問題は、騎士見習いの試験まで、私がここに拘束される事くらいかな。いやだ~り

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 私は、朝食を食べた後、アリアさんと一緒にドドリゲルさんの商店に向かった。店の前まで来たので、アリアさんが買い物に行き、私は一人店に行った。店先には青年が一人店番に立っていた。

「ドドリゲルさんに会いに来たんですが。」
「へ?君誰?見た目町娘って感じだけど、子供が来るところじゃないよ。」

 と、高圧的に言ってきた
「ドドリゲルさんとお約束があるんですが、私はジェシカです。」
「ジェシカちゃんか。ドドリゲル様が、あなたみたいな子供とお約束があるわけないじゃない。」
「でも、工房で剣を打たないと。」
「工房で、僕ですらまだ、剣を打たせて貰えず、店舗研修に出されているのに、お嬢ちゃんが打つって。今日は大事なお客様がいらっしゃるんだ。帰った帰った。」

 ドドリゲルさん。細かい説明してないのね。面倒くさいなぁ。
「あなたは、何処の工房なの?」
「おお、俺は、ビザンチン工房だ。次期工房主となる男だ。」

 ビザンチン工房は、中堅の工房で、工房主のビザンチンのまだ30代後半で現役バリバリの筈だ

「ビザンチンさんの息子さんなの?」
「お嬢ちゃん、変な言い方するな。親方には息子はいなくてな、娘さんのプリンちゃんと結婚するんだ。」
「婚約してるんだ~。」
「いや。彼女はまだ俺の魅力に気づいてないが、すぐに気づくんだ。」

 あぁ痛い系の子なのね。見た目は、浅黒くて、筋肉質でカッコいいけど、痛い系だとな~。

「そんなことはいいから、すぐに出て行くんだ。」
「でも、」

 と揉めているとと、一台の荷馬車が店の前に止まった。

「ちわーす。」

 入ってきたのは、背の低い商人服を着た小綺麗なおじさんだった。

「リーマウスさん。お久しぶりです。」
「あっ、ガリカス君。ドドリゲルさんいるかな?商品持ってきたんだけど。」
 リーマウスさん。ルーベック商会の荷物運び担当だ。工房や店を回って、商品や、素材の入出荷をしている。ガリカス君と呼ばれた、新人鍛治師からしたら、頭が上がらない人の1人だ。

「あっ、お久しぶりです。リーマウスさん。」
「えっ?ジェシカお嬢様。」
「ジェシカお嬢様?」
 リーマウスさんが私をお嬢様と呼んだことにガリカス君は、驚き変な声を上げた。

「そうか、ガリカス君は知らないよな。ジェシカお嬢さまは、私が修行した、ガルガンディ商会のお嬢様で、ルーベック商会主の直弟子だよ。そうか、材料持ってこいって、お嬢様が来てるからか。」
「は?」
 ガリカス君が固まっている。

「は?じゃないよ。ガリカス君。君は鍛治師ギルドで、入門したばかりのFクラスだよな。お嬢様は、専用の釜を貰ったBクラスだ、多分ここの分工房は工房長が居ないから、お嬢様が工房長になるだろう。そうするとAクラス登録となる。門下は違うとはいえ、明らかに上級者だ。失礼な事してないだろうな。ただでさえ、ガルガンディ商会のお嬢様だ、ルーベック鍛治商会の恩人だ。変な事すると商会中で爪弾きになるぞ。」
「えっ。」
 ガリカス君が、まだ固まっている。


「変なことしてないだろうな。」
「いや。」

 ガリカス君が、泣きそうだ。

「クスクスクス。」
「はっはっはー。」

 リーマウスさんと、私が声を上げて笑っていると、ガリカス君が、目に涙を浮かべながら、硬直しつつ、驚いている。

「ガリカス君、嘘だよ。そんなんで爪弾きにさせるほど、うちの商会は小さくないぞ。」
「そうそう。」

 ガリカス君が、何か分かたないが、安心した表情に戻っていった。だが、ガリカス君の一言で、私達は呆気にとらわれた。

「はー。よかった。酷いですよ嘘なんて。こんな小さな子がAクラスなんて。」
「「??」」
「何か?」

 ガリカス君君は、やっぱりわかっていなかった。
「いや、私この分工房の工房長だよ。そこは本当。」
「そうそう。」
「うっそー」

 と、騒いでいると、奥からドドリゲルさんがやってきた。
「うるさいなぁ。」
「あっ、ドドリゲルさん。」
「ジェシカお嬢様、リーマウス。」
「おはようございます。」
「よう。持ってきたぜ。」

 ドドリゲルさんが私にお嬢様と呼んでいるのを見て、ガリカス君は、やってはいけないをやってしまった事を確認した。
「ジェシカお嬢様は、こちらへ。リーマウス、荷物は、工房の素材庫に運び込んで下さい。」
「あいよ。」
「ガリカス君、ジェシカお嬢様に失礼無かったよね。ルーベックさんに殺されるよ。」
「マジっすか?」
「マジだよ。」

ガリカスさんの、黒髪が真っ白になった様に見えた気がする。
「まあ、とりあえず行きましょうか?」

私達は、ガリカスさんを置いて、工房に向かった。

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工房の扉を開けてみると、2ライン分の作業スペースがあった。ずっと使っていなかったらしく、棚等も無く、単に釜と場所、木の板が数十枚がある位で、だだっ広い工房に見えた。ドドリゲルさんは、私に鍵束を差し出して

「これが、こちらの鍵になります。自由にお使い下さい。本来なら、日にCランク以上のブレードソード3本と、ナイフ10本をお願いしたいですが、免除と聞いておりますので、入荷は不用意です。」

 工房1つのノルマはそんなものだろう。だが、私には、そんなものは関係ない様になっている。

「わかったわ、ありがとう。そういえば、地下室ってあったっけ?」
「あの扉から、降りれます。素材庫になってます。隣の扉には、鍵のかかる倉庫が5つありますが、1つしか使ってません。お渡しした鍵束に全ての鍵があります。スペアは私と、ルーベックさんが持っていて、使用していない倉庫の鍵は、私は持っていませんので、管理をご注意下さい。」

 ドドリゲルさんが、扉を指さして言った。

「ありがとう。では準備して始めるわね。」
「食事は、商会の食堂をお使い下さい。朝昼晩用意しておりますし、おやつや軽食も用意できます。お部屋は、最上階に用意しており、妻のホホリゲルが、服を含めて準備してます。妻は今買い物に行ってますので、お昼時に挨拶に伺います。」
「ホホリゲルさん、お久しぶりですね。私から、お昼時に挨拶させていただくわね。」
「わかりました。何かあったら仰って下さい。」
「分かったわ。」

 確認が終わる頃に、リーマウスさんが入荷を終えて、地下室から出てきた。

「ドドリゲルさん。終わったぜ。」
「リーマウスさんありがとう。お疲れ様。」
「ドドリゲルさん、チェックはどうする。お嬢様がやるのか?」
「私が見ましょう。では、行きましょう。」

 と言って、ドドリゲルさん達は、素材庫に入っていった。私は、その間に、神像を祀る作業をしていた。端に置いてある板を切って、釘打ちをし、工房の壁の高い所に神棚を作り、祀る。その一連の作業は、神聖魔法を無駄遣いして、チョチョイーとこなした。あと、作業台やら、机やら、棚やらを作って並べた。一応、家具商会の中位ブランドの規格に合わせてた物だ。規格は、私が原型を作ったので、頭に入っており、時間をかければ自分で作れるので、神聖魔法で作った。神聖魔法では、鍛冶や工作については、自分で作れる物しか作れないので、私の腕では、高級、最高級ブランドはまだ難しかった。

「準備も出来たし、作業をやりますか?」

と釜の火起しを始めると、素材庫から、2人が出て来た。

「何だ?」 
「いつの間に」

 2人は、地下から出て来るなり、今までなかった物が並んでいる事に驚いた。しかも、家具商会の規格品、2人とも代理販売で取り扱っているのでよく知っている。庶民には高級で、嫁入り道具の定番化しつつあり、貴族には、使用人室や書庫等コストを抑えて大量発注を受け、現在一番人気の中位ブランドの製品。受注生産で、2ヶ月待ちとなっているものが、いつの間にか揃っている。

「お嬢様、これは。」
「あぁ、木があったので、作ったのまずかった?」
「え、いや。お嬢様、家具をお作りに。」
「え、まぁ。このクラスまでだけどね。」
「このクラスって。」 
「高級ブランド以上は、流石ね。」(ニコッ)

 いつもの通り、ドドリゲルさんの目が点になっていたが、気にしないことにしているし、何とか笑顔で乗り切っている。。

「まぁ、そうそう、チェック終わりました。ご自由にお使いください。」
「ありがとうこざいます。ドドリゲルさん。リーマウスさん。」
 そう言うと2人は出ていった。

 私は、地下の素材室に行った。素材は3級素材。つまり、純度が低い素材ばかりだ。私は、まず、各素材を片っ端から、神聖魔法で特級素材まで純度を高め、不純物も纏めていった。神聖魔法で、負荷としては、

抽出・高純度化 〈 製造・変形 〈 化合・分解 〈 核融合・核分裂 〈 生物成長促進・活性化(植わってる) 〈〈〈 生物修復・活性化(植わってない)

 となる。修行した今なら、時間をかければ、1日で山1つ位特級素材のインゴットにする事が出来る。その為、ものの5分で作業は終わった。

「うーん。取り敢えず、終わった。この部屋、レンガ壊れて、土が見えてるじゃん。レンガ直そうか、」

 そう、この部屋は、商会が買い取る前からあったらしく、壁のレンガが壊れ、土が見えている。

「?確か、土って炭素や鉄やアルミやなんかが含まれていたよね。」

 と思い、土に神聖魔法をかけると、鉄を抽出できた。作物を作らないから、大丈夫だろう。

「特定の土への魔法で、鉄が取れるなら、大地をターゲットにやったらどうなるんだろう?オリハルコンとかも、とるんじゃないかな?」

 多分考えては、いけない事だったのだろう。魔法と共に、一気に意識を失った。

「あれ?」
 地下室なので時間は分からないが、多分魔力の負荷に耐えられなかった。ターゲットが大きすぎたて、大量の魔力が流れ、耐えられずに意識を失ったんだ。属性魔法なら、下手をすると、死んだり、魔法回路が焼き切れたりする。神聖魔法でよかった、神様ありがとう。って感じだ。

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 と、意識を整理して、あたりを見ると、目の前に、50本近くのインゴットごならんでいた。もしやと思い鑑定すると、オリハルコンだった。
 世界の年間生産量が剣一本分に満たないとされているオリハルコンは。インゴット一本で、数十億ゴールドの値が付くと言われている。オリハルコンは最良の魔剣の材料であり、軽く粘りもあり、強度も鋼を優に超える。熱にも強い為加工がとても難しく、鍛治の神聖魔法でしか扱えないとまで、言われている。そんな物が50本。取り敢えず、鍵のかかる倉庫に移そうと、上に上がると日が落ちかけていた。

「あぁ、夕方か、今日は素材だけでおわったな。」

 と呟き、オリハルコンを片付けた後、工房に鍵をかけて、食堂に行った。

「ホホリゲルさん、お久しぶりです。よろしくお願いします。」
「ジェシカお嬢様、お久しぶりです。面倒は私に任せて下さい。」

 私は、ホホリゲルさんと話しながら、食事をとり、部屋に向かった。私のお部屋はメルヘンに仕上がっていた。

「まじかー。」

 ホホリゲルさん達、結婚以来子供がまだ、出来ていないから、楽しんでやってるのね。ドドリゲルさんも、ホホリゲルさんもお子さんを欲しがってたからね。神聖魔法で流石に子供は作れないけど、と、私は攻略本を開いてら色々検索した。

 翌日、朝食時に、ドドリゲルさんに、リストを渡して、

「これを集めて欲しいの。薬研と、すり鉢、ビーカー等のセットも用意してもらえますか?」
「はっ、はい。」
「費用は、お兄ちゃんの給料から引いといて下さい。」

 ドドドリゲルさんは、何を渡されたんだろうと思い、リストをみて、眉をひそめて、

「よろしいですが、これで何を?」
「秘密よ。悪い事にはならないわ。」
「それなら良いですが。」

 そう言うと、ドドリゲルさんは、リストを胸にしまった。

 工房2日目、本格的に剣鍛治の練習を始めた。鑑定板を見ながら、丁寧に打っていく、答え合わせをしながらなので、出来上がる物は、それなりのものとなる。
 初めはナイフから、鍛治師のセオリーらしい。鍛治学校のテキストに則って練習していく。と言っても、神像作りで鋳造であれば問題なく出来る。練習は鍛造の基礎だ。刀鍛冶で、バンバン叩いてるあんな奴だ。
「エアー」
「ドスコーイ」
「チェストー」

 色々な掛け声で打ってみるが、どの程度が正解かわからない。属性魔法の筋力強化で、腕の筋肉を高めてやっているが、強すぎると剣が歪むし、弱いと意味がない。その為、鑑定板で、モニタリングしながらやる事にした。最近万能化している私な鑑定板は、歪みと鍛造度を教えてくれる。昼までに何十回も打ち直し、やっとCランクの物が出来た。

 お昼なので、食堂に行くと、ドドリゲルさんがいた。
「ドドリゲルさん。これ作ったのですが。」

 と私は、ドドリゲルさんに作ったナイフを見せた。ドドリゲルさんは、じっと眺め、
「ナイフの刃ですよね。良い出来だと思いますが、柄が無いと危ないのでは?」
「は?」

 私は、すっかり忘れていたが、この世界では柄と刃はセットで作られる。前世の刀の仕組みと勘違いしていた。
「お嬢様、剣は、鍛治師が刃と柄、鞘を作り細工師が柄に細工をしていきます。刃だけなんてあり得ません。」

 私は、ふと思いつき、紙を出してきて、絵を描き出した。基本的に、刀と同じ構造だが、剣に合うようにリバイスそたものだ。
「こうやって、刃のサイズをいくつかに統一し、柄に刺す形にすれば、細工師と、鍛治師の分業が簡単になる。刃と柄は、この「はばき」って呼べば良いかな?この構造でくっつける。こうすれば生産性が上がって、みんなの仕事も楽にならない?」

 うーむ。とドドリゲルさんは、悩み、口を開いた。

「お嬢様、これは革新的な工夫です。生産性が何割か向上するし、特許を得れば、莫大な利益につながります。商人としては、在庫を多く抱えずにバリエーション豊かな商品提供できるのがいい。でも、口惜しいのが、私がこれを推進出来ない事です。ここでお嬢様と。」
「何言ってるの。ここで、これを進めないわよ。」
「は?」

 ドドリゲルの目が点になって、肩が震えだしている。
「この工夫で、お嬢様の名声も、」
「名声?どうでも良いわよ。こんなの、研究所に送って、叩いて貰って、商品化よ。」
「なんて、勿体ない。」
「勿体って、私は、6歳児で遊び盛りなの。何が楽しくて、工房に篭って剣を打ってなきゃいけないの。」
「ですが、」

 ドドリゲルさんは、勘違いしている。旧態依然とした組織的な人間は、出世、名声、栄誉を求めるが、女の子にそんなものは邪魔でしかない。私はそんなもの求めていない。

「女の子はね。遊んで、恋をして、オシャレして、楽しく過ごしたいの。」
「でも、」
「その為の金儲けはするけど、」
「でも、仕事に生きるのでなくて、生きるために仕事をするの。」
「でも、その才能は、」

 言い争いをしていると、奥からホホリゲルさんが走ってきた。
「あなた。」
「ホホ。」
「声が大きすぎるわよ。」
「はっ」
「よく知りませんが、あなたは、6歳の女の子に何を言ってるのですが?冷静になって考えて下さい。しかも、言い負けるってあんた、一から修行し直しです。」
「すまない。ホホ。」

 ホホリゲルさんにかかれば、ドドリゲルさんは形無しだ。

「ドドさん。あなたは、もしお嬢様が自分の娘でも、同じことが言えますか?お嬢様は、ただでさえ、朝からあんな地獄の様な修行を毎日して、お勉強もし、仕事も大人以上にしてるんですよ。お金に困ってる訳でもなく、鍛治師になりたい訳でもなく、唯加護があったからと言うだけで、単なる大人の期待だけで、周りの子が朝から晩まで遊んでるのにね。こんな子にこれ以上酷なこと言うの?」

 いやいや、半分好きでやってんだけどとは言えず、取り敢えず乗っかる事にした私は

「ありがとう、ホホリゲルさん。私は私は」(泣き真似)

「すまん。このすまんはお嬢様にだ。商人として、利益に目が眩んで、お嬢様ののことを考えなかった。本当にすまん。お嬢様のアイデアは、研究所に送っとく。ルーベック商会主を通してのルートに載せるしか無いが、良いか?」
「大丈夫です。これで鍛治師みなさんが多少でも楽になれば良いのですが。」
「そう言って貰えるのが一番だろう。」
「ホホリゲルさんありがとうございました。お礼に、そう私が初めてまともに作ったナイフに、柄を付けてお送りします。」
「ジェシカお嬢様。ありがとうございます。光栄です。」
「ドドリゲルさんにも、護身用の剣を用意します。商売の宣伝になる様なものをね。」(ニコッ)
「はい。」

 ドドリゲルさんは、一瞬戸惑った表情を見せた。何か感が働いたんだろう。それが正解だったのは、後で知る事になる。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------


 午後に入り、鋼で練習を始めた。攻略本で、最高級の玉鋼の配合を調べ作り、神聖魔法で、鋳造し、打ち込んでいく。素材のせいで鋳造した瞬間にランクBと、悲しくなる感じだが、鑑定板を見ながら整え、ランクAに仕上げた。これ以上は、スキルを得てかないと厳しい。取り敢えず、ガツガツランクAのナイフを10本と、鞘、柄、はばきを11つづ作ったところで、夕方になった。速さとしては異常だが、私は標準を知らないので、この速度に疑問を持たなかった。

「ドドリゲルさん。次はこんなの作ったよ。」
ドドリゲルさんは、びっくりした顔で

「は?こんなスピードで、試作品を作るなんて、才能が、」
「いや、単なる練習です。鋼のナイフです。どうでしょう?」
「どうでしょうって。」
 ドドリゲルさんは、じっと眺めて、ため息をついた。

「お嬢様。昼に初めて作ったなんて嘘をつかれたでしょう。大人をからかうのは辞めて頂きたい。これはAクラス、商店主でも1日は掛かる最上級品、それを半日でなんて私でも嘘だと分かりますよ。」
「えっ、私今日初めてだし、一応10本作りましたが。」
「は?10本」
 と、作ったナイフを柄、はばき、鞘を付けて並べた。

「しかも全てAクラス。」
「はい。素材にこだわりましたから。」
「素材って?」
「玉鋼の最高級品を作って素材にしました。」

 やっぱりドドリゲルさんが目が点になっている。慣れて欲しいものだ。
「玉鋼って…、並の玉鋼でも鋼の数倍の価値があるはず。最高級って。」
「最高級なら、形を整えるだけでBランク、私の腕ではAランクがせいぜいです。もっと修行しないと。」
「はぁ。それって、素材加工技術がとても凄いってことですか?」
「うーん。どうでしょうね?」(ニコッ)
「ゴホン。まぁ、それで、これどうしますか?」
「ホホリゲルさんの以外は研究所に送って下さい。」
「わかりました。」
「明日からは、剣で徹底的に訓練ですね。」

頑張って下さい。
 そして私は、懸命に週末まで剣を打ち続けた。神の使徒+寵愛であり得ないスピードで、剣打ちの基本スキルである、剣鍛治師、鍛造、微調整、組み上げ等を身につけて、中級レベルまで引き上げ、応用スキルである、鉄鍛治、鋼鍛治、オリハルコン鍛治も身につけた。それで、ギリギリのタイミングで納得いくレベルの剣を作り上げた。


-----------------------------------------------------------------------------------------------------
「閣下、こちらです。」

 週末皇宮が帰ってきたアレックス少年な、剣を差し出した。

「これは。」

 見た目は、ほぼ普通の剣だ。剣身と、柄を別に作っているので、若干柄と、剣身の素材の違いが目立つだけだ。

「なんだこの剣は、これがルーベック鍛治商会の答えか、閣下を舐めているのか?剣を持ってとっとと消えろ。舐めているルーベック鍛治商会なんぞ、当家がその気になればすぐに潰せるのだぞ。」
 ベルトラムさんの代わりに入った青年剣士。ドマラスさんが怒鳴りつける。どこまでダメな者をつけられたんだ。多分、利権を得ようと難癖でもつけたいんだろう。

「ドマラス、貴様はこの剣価値が分からぬか?」
「は?」
ロバートさんが本気で怒っている。

「ベルトラム同様。騎士として生きていく価値は無いな。」
「何を。」
他の騎士を含め、ドマラスさんは、ボケーっとしている。

「ロバート。まともな剣を持ったことの無い者にこの価値は分からないでしょう。」
「閣下。」

「ジェシカ、ルーベック鍛治商会の返答として、最高の剣を頂戴し、感謝する。」
「閣下にこの剣の価値をご理解頂き、感謝いたします。」
「閣下、何故そこまで。」

 ドマラスさんは、納得いかない様で、閣下に盾突きかけてる。ロバートさんのイラついた顔とか見えてないのか?

「そちには分からぬか。この剣は、皇帝陛下が代々受け継がれている聖剣エクスカリバーとほぼ同じ素材で作られているだろう。この鈍い輝きと、漂わせる魔力は再現不能と言われてきたものだ。鞘や柄は使いやすさ重視の素材を使ったもの。嵌めされた魔石は最高純度のものゆえ、この小ささで、魔剣として十二分な性能を発揮するだろう。このサイズは、私の体格に合わせたもの。これだけの素材、性能の剣を1週間も満たずに用意するとは、ルーベック鍛治商会の能力に感服する他ないだろう。」
「えっ。」

 ドマラスさんは、意味が分からないという顔をしている。

「閣下のご慧眼いたみいります。我が師、ルーベックは、亡き前フランドル公爵様への弔いの意を込め、当商会の研究所の秘匿技術を用い用意致したもの。素材だけで億では済まないと聞いております。」
「億ではすまない…。」

 ドマラスさんは、口にした言葉が金額の話だったので、少しイラっとしたが、顔色を変えずにいた。

「そうか、例の件も承諾したと伝えてくれ。大変なお釣りを払わねばいけないだろうが、祖父の弔いとして、受け取らせて頂く。」
「ありがとうございます。」
「あと、修行の方も、明日また見てくれ。」
「ルーベック師より、試験まで付き添うよう言われてますので。」
「感謝する。」
「ジェシカ殿。当家の無礼、失礼した。」
「いえ、この剣は難しい剣ですので。」(ニコッ×3)
「すまぬな。」

 そう言うと、アレックス少年は、ドマラスさんの方を見た

「ドマラス!其方に見せてつかわす。剣を構えよ。」
「はっ」

 ドマラスさんは剣を構えて、アレックス少年が対峙した。

「いくぞ、受けてみよ。」

と言って、アレックス少年が斬りつけると、ドマラスさんは、自身の剣を抜きまともに受けた。
 その瞬間、剣が真っ二つに切れ剣先が、悲しい音を立てて地面に落ちた。

「こういうことだ。ジェシカさん、下がって良いぞ。」
「はっ。」

 そう言って、私は離れに戻った。因みに、ドマラスさんの剣は、鋳造の粗悪にもので、優秀な剣士なら、鋼の剣でも斬り裂けるものだった。また、剣の素材の情報と、同じタイプの剣、オリハルコンやミスリル、最高級玉鋼を研究所に送ってもらってえる。この素材技術は、ルーベック鍛治商会の名声をこの上なく高めることとなった。

 だが、アレックス少年にとっては、この武器でなく、私が付き合って行った修行が、将来の糧になることとなるのだが、それは後に分かることとなる。
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