5 / 13
第一章 帝都に立つ少女
第四話 部活説明会
しおりを挟む
「お嬢様、いい汗かかれましたか?」
「はい、七瀬さん。」
私は、日課を済まし、朝食を食べると足早に教室に向かった。教室には既に何人か通学していたが、当然にして、よそよそしさが蔓延していた。
「おはようございます。」
大きな声で挨拶をすると、それにつられてみんなが挨拶を返してくれた。私が席に着くと、前の席の子が振り向いた。茶髪で少し筋肉質の女の子だ。
「咲夜さん。」
「えーと、佐藤詩織さん。」
「そうよ。よろしくね。」
「よろしくお願いいたします。」
丁寧に会釈をするのを待たずに、
「そうそう、私見ちゃったのよね。」
「えっ、な、なにを。」
「私、剣術部に入ろうと思っていたから、金曜日にオリエンテーション終了後速攻で、道場に行ってたの。そうしたら、咲夜さん凄かったじゃない。」
「ええっ、あれ・・・。手を伸ばしたら運よく。」
詩織さんは、私の焦った言い訳を無視して
「あんなの、私でも出来ないわよ。一応私も無天流の目録を貰っているから、分かるわよ。」
「いや・・・」
無天流、剣術、弓術、槍術、柔術等総合格闘技として、帝国三大流派の一つ。後は、北辰流、一刀流の2つで、切紙、目録、印可、免許、皆伝、秘伝、口伝の階級となっている。道場を開くには免許が必要で、切紙で基本、目録で基礎を抑え、印可でいわゆる一人前、皆伝以上は一流と言われる人だ。この年齢で切紙を持っていても自慢できるレベルで、目録を持っているのは、同世代ではトップクラスと言えるだろう。階級は、身体能力でなく、技術に与えられる為、相当の努力と、才能がうかがえる。
「咲夜さん・・・。いいわ、でも、剣術部入るでしょう?」
「いえ、入りません。」
「そうよね。一緒に・・・って、なんであんな身のこなしなのに・・・。」
「入る気ないですし。剣術部の方に誘われましたが、お断りました。」
「さ、誘われた???」
「えっ・・・。」
詩織さんは、固まっていた。
「詩織、大丈夫?」
横から、ポニーテールの浅黒い、金髪のがっつり体育会って感じの男の子が入ってきた。
「えっと。加藤心くん?」
「そうだよ、俺、加藤心。詩織とはおな小だったんだ。一応、詩織と同じ道場で、俺も目録。」
「それで、詩織さんは、なぜ固まって。」
「それはだな・・・。剣術部ってわかっているか?」
「剣術をみんなで修行する部活?」
「そうだが・・・。」
「心・・・私が説明するわ。」
詩織さん復活。
「剣術部は、大人気の部活なの、最低ラインが目録レベル。試験があって、1学年20人程度しか入れないわ。毎年400人以上が受けてね。そんな大人気の部活で、120人位の部員は、学院でもトップエリートばかりよ。そんな部員からの推薦があれば、試験不要なの。」
「そんな部活なの・・・。私無理だわ~。」
「無理だわじゃないわよ。誰から推薦を貰ったの。」
「いや・・・。それは言えないと言うか。」
「誰なのよ・・。」
「教えてくれよ・・・・。」
二人は、私に迫ってくる。その頃には大体の生徒が教室に入ってきていて、私と詩織さん達との会話に耳ダンボになっている。
「えーっと」
私が、オロオロしていると。
「はーい。今日もおはよう。みんな席についてね。」
と、先生が入ってきて、朝礼を始めて、何とか難を逃れた。
「今日も、よろしくね。今日の予定は、各施設の説明と、施設利用ルールの説明と、部活説明です。廊下に並んで、順番に施設の説明を始めていくから。最終的に講堂に行って、各部活より、部活説明をしてもらいます。」
そういって、私たちは静かに廊下に並び、2時間かけて、学校内を先生が案内した。3時間目の授業開始時間になるころ、講堂に行くと、1年生の生徒が、半分程度座席について座っていた。まだ、緊張感がギンギンに蔓延しており、だべっている生徒は殆どいなかった。私たちの後ろからも生徒が来ているので、先生の誘導で席に着いた。席はA-1を最前列として、魔導科学科は後ろの方に席があった。5分ほど待っていると、全ての1年生が座席につくと、講堂が暗くなり、舞台の上にスポットライトが当てられた。
「「1年生のみなさん。ご入学おめでとうございます。」」
スポットライトを当てられた2人の白い制服の司会の生徒が、マイクを持って、部活紹介を始めていった。
「私は、3年A-2所属、放送部の神崎きららです。よろしくお願いいたします。」
と、青い髪で、小さくまわりをキラキラと輝かせた正に美少女という先輩が頭をさげると、
「ちなみに、きららは、雲に、母。要はうんもと書いてきららと読ませます。ちなみにちなみに、まわりで輝いている様に見えるのは、魔法で微細な氷を体の周りに漂わせて、乱反射させているからです。ちなみにちなみにちなみに、うんも・・・・。もとい、きららのあだ名はちっちゃい氷結女王で、元々A-1だったんだけど、このきらきらを身に着けるために勉強がおろそかになって、A-2に落ちたかわいそうな子なんです。」
そういうのは、すらっとした、体育系少女。浅黒く、茶髪で、端正な顔と、少しきついキツネ目をしている。
「この、キツネ目。」
そう言って、きらら先輩が、体育系少女に殴りつけるが、少女はスルスルと避けている。器用にも避けながら自己紹介を始めていた。
「私は、3年A-1所属、放送部の御手洗星羅です。私は、拳術部。こぶしの武術の部活ね。そこに入っています。よっと」
と言って、思いっきり殴りかかった、きらら先輩の足をひっかけ、きらら先輩は、豪快に転び舞台から落ちていった。
「ってことで、中学部つまり3年生までの生徒が、今回部活紹介をさせてもらいます。まずは、文学部から・・・。いくぞきらら」
そう言いながら、きらら先輩の首根っこを持って、舞台の袖に消えていった。文学部、工芸部、コンピューター部、地学部、物理部、化学部、生物部、お笑い研究部、放送部、漫画研究部、アニメ研究部、吹奏楽部、軽音楽部等普通の中学・高校にもある部活が順番に説明をしていった。そのほとんどが、魔導科学科、魔導医学科、魔導工学科の生徒で、魔導師科、魔導武士科の生徒は少なかった。
次に、袴を着て木刀を持つ美男美女という感じの生徒たちが入ってきた。
「剣術部です。演武をご覧ください。」
そういうと、美男美女が、木刀を持ち鋭い剣を打ち合った。それは、真剣勝負の様に見えたが、優雅で、相手の呼吸に合わせて打ち合う、見せる剣だった。単なる演武でなく、即席の演武。並大抵の剣士では出来ない、見た目とはかけ離れた努力と、才能が必要な技だった。もともと、戦いというものに積極的に興味を持つ生徒が多い学院だけに、息をのみその演武に魅せられていた。
「やめ。」
その言葉に、二人は、剣を止め、正面を見て礼をした。その瞬間、今までの部活紹介が何だったかと思われる程の拍手で講堂内が沸き返った。
「ありがとございます。我ら剣術部は、武道場で毎日稽古をしております。部活見学、体験にどうぞいらしてください。武道場の関係で、入部希望者が多い場合には、セレクションを行うことがあります。その際には、入部をご遠慮頂くことがありますので、ご了承ください。」
そういって、三人は、頭を下げ、舞台の袖に出ていった。次に出てきたのは、ぶっとりとした、生徒と、その後ろに、ごっつい体の生徒と、ヒョロヒョロとした生徒だった。
「余は、岩倉宮智仁だ。魔剣術部の副部長をやってる。部長は面倒くさいから、他の奴に任せているが、皆の者、余の魔剣術部に来るがいい。」
そういって、デブ殿下・・・は、ヒョヒョヒョヒョという品の無い笑い声を上げた。
「そうそう、えー、近衛咲夜・・・。いるか?立て。」
えっ・・・・。私?急に指名された私は、「はひっ」という変な声を上げた。
「お前は、魔力が無いな・・・。下賤な平民で魔力も持たない無能がこの学院に入り、同じ空気を吸っていると思うと吐き気がする。お前は入りたいと言っても、魔剣術部に入れてやらんからな。良いな・・・。」
と、私にすごんだ声を上げた・・・。
「はい。私魔力無いので、魔剣術部は、そもそも入る気はないです。」
はっきり答えると・・・。殿下はにらみつけた。
「あぁ?そもそも入る気はないだと・・・。入りたいのに入れてあげないというのに、負けず嫌いで、品がない・・・。」
そういいながら、震えて、刀をすっと抜いた。
「そういえば、演武もしないとな。くたばれ平民が。」
そういって、刀を私の方に向けて、すっと下した。その瞬間、刀の先から稲妻が放たれ、私の顔に向かってきた。周りはその無茶苦茶な行動を止めることができず、フリーズしてしまっている。私は、とっさに頭を下げ
「申し訳ございません殿下。私の言葉でご不興を買ってしまい。」
と、謝る間に、元々頭のあったところに電撃が通り抜け、壁にぶつかり、グワーンという大きな音が講堂内に響いた。私が頭を上げると
「はなせ。はなすんだ・・・・・。」
殿下は、警備の職員に羽交い締めにされて、舞台から引きずりだされていった。私は、何があったの??という不思議そうな顔をわざとして、着席した。入れ替わりに、高身長のマッチョな、浅黒二枚目が出てきた。彼は、すぐに大きく頭を下げた。
「魔剣術部中学部長の近衛勇です。みなさんご迷惑をおかけし申し訳ございません。特に近衛咲夜さんには、この奇跡的なタイミングが無ければ、大怪我を負わせてしまうところでした。改めて魔剣術部として謝罪の機会を頂ければと思います。」
再度頭を下げて、そそくさと舞台から降りていった。私は、何が起きたのと、全く気が付かない振りをしながら、残りの部活紹介を聞いていった。部活紹介の後、その場で今日の授業は解散になったが、私は、念のためと保健室に強制連行されていった。
「はーい。ちょっと確認させてね。私は、保険医の魔導医師、帝国軍本部付魔導中央病院より派遣されている六文院愛中尉です。よろしくね。右目からね、この指を見て。」
そういって、保険医の先生に一通り確認され。
「うーん。全く問題ないわね。帰っていいわよ。」
トントン。
「はーい。」
診察が終わったタイミングで、保健室の扉が叩かれた。
「3年A-2所属、近衛勇です。」
「勇君ね、入っていいわよ。」
「ありがとうございます。」
先生が、そう言うと、扉を開けて、勇さんと、もう2人老齢の先生と、がっちりとした体の四角顔の男性が入ってきた。三人は私の前に来ると、さっと頭を下げた。
「あのバカ殿下が大変ご迷惑をおかけした。あんなのでも、皇族だ、すまないが水に流してくれないか。」
老齢の先生は、本当にすまない顔をしていた。
「あの・・・私は、何もされてないので・・・。」
「何もって、あんな奇跡的なタイミングで、殿下に頭を下げたので、何とか助かったが、奇跡的なタイミングで、」
私の返答に、かすかに肩を震わせながら勇さんは、私に熱弁ぽく語り掛けた。ふざけているんだろう、と私の中で突っ込みつつも、
「あの・・・。えー、勇先輩。このお二人は・・・。」
「あぁ、顧問の近衛武蔵先生と、全体部長の西郷隆仁先輩だ。」
「近衛・・・先生?」
「そうだ。あと、西郷先輩だ。」
振られた西郷先輩も、深々と頭を下げた
「あぁ、咲夜さん、うちの馬鹿が大変ご迷惑をお掛た。私のできることで謝罪させてほしい。」
「わかりました。私は、元々何も怒っていませんし。謝罪頂けるのであればそれで無かったことにしましょう。」
「ありがたい。」
西郷先輩は、もう一度頭を深々と下げた。私は、居づらさマックスだったので、
「そろそろ帰ってよろしいでしょうか?」
と言ってしまった。
「当然じゃ。申し訳なかった。」
頭を下げ続ける先生は、
「先生、もう大丈夫です。」
と、無理やり体を戻し、帰ることにした。
「少しお待ちください。咲夜さんは、た・し・か、近衛寮でしたよね、何があるとは思っていませんが、念のため、近衛寮まで護衛させてください。私も近衛の分家の人間なので、近衛寮まで護衛できますので。」
「わ、わかりました。」
そういって、勇さんがついてきた。
---------------------------
バカデブ「なんで、俺様が、怒られないといけないんだ。」
バカマッチョ「そうですよね。あんな、平民の一人二人どうなろうと関係ないんですけどね。」
バカデブ「だよなー。」
細バカ「殿下、とりあえず、部活紹介なのに、あの真面目部長が怒られてないんですかね。」
バカデブ「そうだよな。むかつくよな、お前らに押さえつけさせといて、俺様の魅力で新入生をたっぷり集めてあげようとしていたのになぁ。」
ちびバカ「あいつ、辞めさせちゃえば良いんじゃないんですか。」
バカデブ「そうだな・・・。今回の責任を取らせてやめさせよう。うざったかったし。で、あの女、どうしてやろう。」
バカイケメン「殿下、あの女、近衛寮っていう、森の奥の寮に住んでいるらしいですぜ。」
バカデブ「そうか・・・・。とりあえず、絞めてこい。俺様に恥をかかせた罪を償わせろ。」
バカども「「「「はっ。」」」」
バカデブ「ぎゃはははは。結果が楽しみだ。ぎゃはははは。」
「はい、七瀬さん。」
私は、日課を済まし、朝食を食べると足早に教室に向かった。教室には既に何人か通学していたが、当然にして、よそよそしさが蔓延していた。
「おはようございます。」
大きな声で挨拶をすると、それにつられてみんなが挨拶を返してくれた。私が席に着くと、前の席の子が振り向いた。茶髪で少し筋肉質の女の子だ。
「咲夜さん。」
「えーと、佐藤詩織さん。」
「そうよ。よろしくね。」
「よろしくお願いいたします。」
丁寧に会釈をするのを待たずに、
「そうそう、私見ちゃったのよね。」
「えっ、な、なにを。」
「私、剣術部に入ろうと思っていたから、金曜日にオリエンテーション終了後速攻で、道場に行ってたの。そうしたら、咲夜さん凄かったじゃない。」
「ええっ、あれ・・・。手を伸ばしたら運よく。」
詩織さんは、私の焦った言い訳を無視して
「あんなの、私でも出来ないわよ。一応私も無天流の目録を貰っているから、分かるわよ。」
「いや・・・」
無天流、剣術、弓術、槍術、柔術等総合格闘技として、帝国三大流派の一つ。後は、北辰流、一刀流の2つで、切紙、目録、印可、免許、皆伝、秘伝、口伝の階級となっている。道場を開くには免許が必要で、切紙で基本、目録で基礎を抑え、印可でいわゆる一人前、皆伝以上は一流と言われる人だ。この年齢で切紙を持っていても自慢できるレベルで、目録を持っているのは、同世代ではトップクラスと言えるだろう。階級は、身体能力でなく、技術に与えられる為、相当の努力と、才能がうかがえる。
「咲夜さん・・・。いいわ、でも、剣術部入るでしょう?」
「いえ、入りません。」
「そうよね。一緒に・・・って、なんであんな身のこなしなのに・・・。」
「入る気ないですし。剣術部の方に誘われましたが、お断りました。」
「さ、誘われた???」
「えっ・・・。」
詩織さんは、固まっていた。
「詩織、大丈夫?」
横から、ポニーテールの浅黒い、金髪のがっつり体育会って感じの男の子が入ってきた。
「えっと。加藤心くん?」
「そうだよ、俺、加藤心。詩織とはおな小だったんだ。一応、詩織と同じ道場で、俺も目録。」
「それで、詩織さんは、なぜ固まって。」
「それはだな・・・。剣術部ってわかっているか?」
「剣術をみんなで修行する部活?」
「そうだが・・・。」
「心・・・私が説明するわ。」
詩織さん復活。
「剣術部は、大人気の部活なの、最低ラインが目録レベル。試験があって、1学年20人程度しか入れないわ。毎年400人以上が受けてね。そんな大人気の部活で、120人位の部員は、学院でもトップエリートばかりよ。そんな部員からの推薦があれば、試験不要なの。」
「そんな部活なの・・・。私無理だわ~。」
「無理だわじゃないわよ。誰から推薦を貰ったの。」
「いや・・・。それは言えないと言うか。」
「誰なのよ・・。」
「教えてくれよ・・・・。」
二人は、私に迫ってくる。その頃には大体の生徒が教室に入ってきていて、私と詩織さん達との会話に耳ダンボになっている。
「えーっと」
私が、オロオロしていると。
「はーい。今日もおはよう。みんな席についてね。」
と、先生が入ってきて、朝礼を始めて、何とか難を逃れた。
「今日も、よろしくね。今日の予定は、各施設の説明と、施設利用ルールの説明と、部活説明です。廊下に並んで、順番に施設の説明を始めていくから。最終的に講堂に行って、各部活より、部活説明をしてもらいます。」
そういって、私たちは静かに廊下に並び、2時間かけて、学校内を先生が案内した。3時間目の授業開始時間になるころ、講堂に行くと、1年生の生徒が、半分程度座席について座っていた。まだ、緊張感がギンギンに蔓延しており、だべっている生徒は殆どいなかった。私たちの後ろからも生徒が来ているので、先生の誘導で席に着いた。席はA-1を最前列として、魔導科学科は後ろの方に席があった。5分ほど待っていると、全ての1年生が座席につくと、講堂が暗くなり、舞台の上にスポットライトが当てられた。
「「1年生のみなさん。ご入学おめでとうございます。」」
スポットライトを当てられた2人の白い制服の司会の生徒が、マイクを持って、部活紹介を始めていった。
「私は、3年A-2所属、放送部の神崎きららです。よろしくお願いいたします。」
と、青い髪で、小さくまわりをキラキラと輝かせた正に美少女という先輩が頭をさげると、
「ちなみに、きららは、雲に、母。要はうんもと書いてきららと読ませます。ちなみにちなみに、まわりで輝いている様に見えるのは、魔法で微細な氷を体の周りに漂わせて、乱反射させているからです。ちなみにちなみにちなみに、うんも・・・・。もとい、きららのあだ名はちっちゃい氷結女王で、元々A-1だったんだけど、このきらきらを身に着けるために勉強がおろそかになって、A-2に落ちたかわいそうな子なんです。」
そういうのは、すらっとした、体育系少女。浅黒く、茶髪で、端正な顔と、少しきついキツネ目をしている。
「この、キツネ目。」
そう言って、きらら先輩が、体育系少女に殴りつけるが、少女はスルスルと避けている。器用にも避けながら自己紹介を始めていた。
「私は、3年A-1所属、放送部の御手洗星羅です。私は、拳術部。こぶしの武術の部活ね。そこに入っています。よっと」
と言って、思いっきり殴りかかった、きらら先輩の足をひっかけ、きらら先輩は、豪快に転び舞台から落ちていった。
「ってことで、中学部つまり3年生までの生徒が、今回部活紹介をさせてもらいます。まずは、文学部から・・・。いくぞきらら」
そう言いながら、きらら先輩の首根っこを持って、舞台の袖に消えていった。文学部、工芸部、コンピューター部、地学部、物理部、化学部、生物部、お笑い研究部、放送部、漫画研究部、アニメ研究部、吹奏楽部、軽音楽部等普通の中学・高校にもある部活が順番に説明をしていった。そのほとんどが、魔導科学科、魔導医学科、魔導工学科の生徒で、魔導師科、魔導武士科の生徒は少なかった。
次に、袴を着て木刀を持つ美男美女という感じの生徒たちが入ってきた。
「剣術部です。演武をご覧ください。」
そういうと、美男美女が、木刀を持ち鋭い剣を打ち合った。それは、真剣勝負の様に見えたが、優雅で、相手の呼吸に合わせて打ち合う、見せる剣だった。単なる演武でなく、即席の演武。並大抵の剣士では出来ない、見た目とはかけ離れた努力と、才能が必要な技だった。もともと、戦いというものに積極的に興味を持つ生徒が多い学院だけに、息をのみその演武に魅せられていた。
「やめ。」
その言葉に、二人は、剣を止め、正面を見て礼をした。その瞬間、今までの部活紹介が何だったかと思われる程の拍手で講堂内が沸き返った。
「ありがとございます。我ら剣術部は、武道場で毎日稽古をしております。部活見学、体験にどうぞいらしてください。武道場の関係で、入部希望者が多い場合には、セレクションを行うことがあります。その際には、入部をご遠慮頂くことがありますので、ご了承ください。」
そういって、三人は、頭を下げ、舞台の袖に出ていった。次に出てきたのは、ぶっとりとした、生徒と、その後ろに、ごっつい体の生徒と、ヒョロヒョロとした生徒だった。
「余は、岩倉宮智仁だ。魔剣術部の副部長をやってる。部長は面倒くさいから、他の奴に任せているが、皆の者、余の魔剣術部に来るがいい。」
そういって、デブ殿下・・・は、ヒョヒョヒョヒョという品の無い笑い声を上げた。
「そうそう、えー、近衛咲夜・・・。いるか?立て。」
えっ・・・・。私?急に指名された私は、「はひっ」という変な声を上げた。
「お前は、魔力が無いな・・・。下賤な平民で魔力も持たない無能がこの学院に入り、同じ空気を吸っていると思うと吐き気がする。お前は入りたいと言っても、魔剣術部に入れてやらんからな。良いな・・・。」
と、私にすごんだ声を上げた・・・。
「はい。私魔力無いので、魔剣術部は、そもそも入る気はないです。」
はっきり答えると・・・。殿下はにらみつけた。
「あぁ?そもそも入る気はないだと・・・。入りたいのに入れてあげないというのに、負けず嫌いで、品がない・・・。」
そういいながら、震えて、刀をすっと抜いた。
「そういえば、演武もしないとな。くたばれ平民が。」
そういって、刀を私の方に向けて、すっと下した。その瞬間、刀の先から稲妻が放たれ、私の顔に向かってきた。周りはその無茶苦茶な行動を止めることができず、フリーズしてしまっている。私は、とっさに頭を下げ
「申し訳ございません殿下。私の言葉でご不興を買ってしまい。」
と、謝る間に、元々頭のあったところに電撃が通り抜け、壁にぶつかり、グワーンという大きな音が講堂内に響いた。私が頭を上げると
「はなせ。はなすんだ・・・・・。」
殿下は、警備の職員に羽交い締めにされて、舞台から引きずりだされていった。私は、何があったの??という不思議そうな顔をわざとして、着席した。入れ替わりに、高身長のマッチョな、浅黒二枚目が出てきた。彼は、すぐに大きく頭を下げた。
「魔剣術部中学部長の近衛勇です。みなさんご迷惑をおかけし申し訳ございません。特に近衛咲夜さんには、この奇跡的なタイミングが無ければ、大怪我を負わせてしまうところでした。改めて魔剣術部として謝罪の機会を頂ければと思います。」
再度頭を下げて、そそくさと舞台から降りていった。私は、何が起きたのと、全く気が付かない振りをしながら、残りの部活紹介を聞いていった。部活紹介の後、その場で今日の授業は解散になったが、私は、念のためと保健室に強制連行されていった。
「はーい。ちょっと確認させてね。私は、保険医の魔導医師、帝国軍本部付魔導中央病院より派遣されている六文院愛中尉です。よろしくね。右目からね、この指を見て。」
そういって、保険医の先生に一通り確認され。
「うーん。全く問題ないわね。帰っていいわよ。」
トントン。
「はーい。」
診察が終わったタイミングで、保健室の扉が叩かれた。
「3年A-2所属、近衛勇です。」
「勇君ね、入っていいわよ。」
「ありがとうございます。」
先生が、そう言うと、扉を開けて、勇さんと、もう2人老齢の先生と、がっちりとした体の四角顔の男性が入ってきた。三人は私の前に来ると、さっと頭を下げた。
「あのバカ殿下が大変ご迷惑をおかけした。あんなのでも、皇族だ、すまないが水に流してくれないか。」
老齢の先生は、本当にすまない顔をしていた。
「あの・・・私は、何もされてないので・・・。」
「何もって、あんな奇跡的なタイミングで、殿下に頭を下げたので、何とか助かったが、奇跡的なタイミングで、」
私の返答に、かすかに肩を震わせながら勇さんは、私に熱弁ぽく語り掛けた。ふざけているんだろう、と私の中で突っ込みつつも、
「あの・・・。えー、勇先輩。このお二人は・・・。」
「あぁ、顧問の近衛武蔵先生と、全体部長の西郷隆仁先輩だ。」
「近衛・・・先生?」
「そうだ。あと、西郷先輩だ。」
振られた西郷先輩も、深々と頭を下げた
「あぁ、咲夜さん、うちの馬鹿が大変ご迷惑をお掛た。私のできることで謝罪させてほしい。」
「わかりました。私は、元々何も怒っていませんし。謝罪頂けるのであればそれで無かったことにしましょう。」
「ありがたい。」
西郷先輩は、もう一度頭を深々と下げた。私は、居づらさマックスだったので、
「そろそろ帰ってよろしいでしょうか?」
と言ってしまった。
「当然じゃ。申し訳なかった。」
頭を下げ続ける先生は、
「先生、もう大丈夫です。」
と、無理やり体を戻し、帰ることにした。
「少しお待ちください。咲夜さんは、た・し・か、近衛寮でしたよね、何があるとは思っていませんが、念のため、近衛寮まで護衛させてください。私も近衛の分家の人間なので、近衛寮まで護衛できますので。」
「わ、わかりました。」
そういって、勇さんがついてきた。
---------------------------
バカデブ「なんで、俺様が、怒られないといけないんだ。」
バカマッチョ「そうですよね。あんな、平民の一人二人どうなろうと関係ないんですけどね。」
バカデブ「だよなー。」
細バカ「殿下、とりあえず、部活紹介なのに、あの真面目部長が怒られてないんですかね。」
バカデブ「そうだよな。むかつくよな、お前らに押さえつけさせといて、俺様の魅力で新入生をたっぷり集めてあげようとしていたのになぁ。」
ちびバカ「あいつ、辞めさせちゃえば良いんじゃないんですか。」
バカデブ「そうだな・・・。今回の責任を取らせてやめさせよう。うざったかったし。で、あの女、どうしてやろう。」
バカイケメン「殿下、あの女、近衛寮っていう、森の奥の寮に住んでいるらしいですぜ。」
バカデブ「そうか・・・・。とりあえず、絞めてこい。俺様に恥をかかせた罪を償わせろ。」
バカども「「「「はっ。」」」」
バカデブ「ぎゃはははは。結果が楽しみだ。ぎゃはははは。」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
婚約破棄されたので聖獣育てて田舎に帰ったら、なぜか世界の中心になっていました
かしおり
恋愛
「アメリア・ヴァルディア。君との婚約は、ここで破棄する」
王太子ロウェルの冷酷な言葉と共に、彼は“平民出身の聖女”ノエルの手を取った。
だが侯爵令嬢アメリアは、悲しむどころか——
「では、実家に帰らせていただきますね」
そう言い残し、静かにその場を後にした。
向かった先は、聖獣たちが棲まう辺境の地。
かつて彼女が命を救った聖獣“ヴィル”が待つ、誰も知らぬ聖域だった。
魔物の侵攻、暴走する偽聖女、崩壊寸前の王都——
そして頼る者すらいなくなった王太子が頭を垂れたとき、
アメリアは静かに告げる。
「もう遅いわ。今さら後悔しても……ヴィルが許してくれないもの」
聖獣たちと共に、新たな居場所で幸せに生きようとする彼女に、
世界の運命すら引き寄せられていく——
ざまぁもふもふ癒し満載!
婚約破棄から始まる、爽快&優しい異世界スローライフファンタジー!
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる