むのう〜婚約破棄された公爵令嬢は、いつのまにか東京で最強となる。

出汁の素

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第一章 帝都に立つ少女

第十二話 殿下の婚約者候補

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「義仁殿下は明日から復帰される。」

 木曜日の夜、直人さんが武人叔父様と一緒に近衛寮に突然帰って来て夕食の場でみんなに告げた。

「直人、それで、殿下は大丈夫なのか?」

 智人さんは、直人さんに焦るように聞いたが、

「あぁ、落ち着きは取り戻している。一生分泣かれたと仰っていた。」

 直人さんは、沈痛な顔をしていた。政略結婚での婚約であるが、仲睦まじかったと有名であり、義仁殿下は、本当につらいお気持ちだったんと容易に想像できた。

「直人くん。お疲れ様だったね。智人くん。先に労うのが基本でしょう。あんたはだから脳筋扱いなんだよ。」
「玲子さん。智人さんは脳筋では。」
「わかってるわよ。物の例えよ物の例え。本当に脳筋なら、死ね程鍛え直してるわよ。」
「ごめんなさい。」

 玲子さんの厳しい指導に、智人さんは、素直に謝ると、玲子さんは大笑いし、智人さんを除くみんなが釣られて笑った。勇さんは、肩を震わせながら笑いを堪えているのが面白かった。その中で武人叔父様だけが、厳しい顔だった。私も含めてみんなで、不在時にあったことなど色々話していると、話を静かに聞いていた武人叔父様が、ゆっくりみんなを見た。

「で、義仁様だが、婚約者が現状不在となった。」

 唐突に何を・・・という雰囲気で、和気あいあいとなっていたその場の空気が一変した。そして私を見据えた。

「そこで、宮家から咲夜、君に婚約の打診があった。これは、仮の婚約者で、お互いに自由に解除できるものだそうだ。」

 直人さんも嘘!という顔をしており、知らなかった様だった。みんなは、顔を見合わせながら、戸惑いを隠せなかった。その中でも、智人さんがさっきまでの脳筋ぽい発言を封印し、真面目な顔になっていた。

「言い方悪いですが、傷物同士と言うことですか?ですが、咲夜は。」
「そうだ、公表はしないが、内定はしているとの情報を流し義仁殿下に要らねプレッシャーを避けるだめだ。すまない。」

 武人叔父様は、厳しい顔を崩さず、本当に申し訳なさそうな顔をしていた。私は、一度深呼吸して

「すまないと言われましても。無理です。今一応平民で、」
「では、候補は定まっているとの情報にしよう。候補者だけに候補であることを伝えていることも。」
「はい。」

 私の意見も途中で遮られ、武人叔父様が震えた声を絞り出した。私の気持ちって。華族には、自由は無いのね。私は半分諦めつつ、受け入れることにした。選択肢ないし。

「お父様最低です。」
「すまん、でもな」
「でもでもなんでも無い。お父様は、最低です。人として。」

 私の為に、玲子さんが必死に怒ってくれている。それがうれしかった。そんな中、直人さんが、玲子さんにふときいたことが印象に残っていた。

「お姉様、華族って人なんですかね。」
「社会の歯車だろう。我々なんて。」
「そうですよね。」
「例え歯車であっても、言い方、調整の仕方があるだろう。妥協したふりとかやめなさい。」
「ごめんなさい。」

 直人さんは、色々な感情が一杯って感じだった。玲子さんは一通り怒り散らした後で、武人叔父様に最後の質問をした。

「公爵様は何と仰っておられるのですか?」
「まだ、伝えておらん。」
「は?」
「公爵様は、話せば殺されるだろう。」
「あー?公爵様は、二つ名を鬼公爵。公爵后様は、破軍姫ですわよね。」

 みんなで頭を抱えた。

「あぁ、今は穏やかだが、マジで怖いぞ。昔のことを思い出すと、泣きそうだ。週末、公爵邸に行くぞ。咲夜以外、全員忘れるなよ。」

 みんな、頭を抱えて、夜が更けるまでリビングで話を続けていた。翌日、授業の後、二回目の軍務に向った。ダンジョンは再開され、早苗さんは笑顔で復帰していた。私は、事が起きた後で早苗さんを助けたことになっており、死ね程感謝された。軍務自体は、先週と同じ内容で、何事もなく済み。私は軍務の後、寮に戻らず、1人公爵邸に戻った。邸宅に戻ると、祖父母がいつもの様に温かく迎えてくれた。いつものリビングでなく、掘りごたつの部屋に連れていかれた。こたつはついていなかったが、机の上には、一年中とれるようになったみかんが、籠に入ってた。三人でお茶をすすっていると、祖父が唐突に、優しい声で私に問いかけた。

「桜。話はきいている。あなたはどうしたい?あなたのお母さん藤子の結婚については、当時陛下の指示を受け入れて失敗した。あなたが失敗ではなく、婿が最低だった。あやつは、陛下のパーティメンバーで命を何度も救い覚えめでたい。何の証拠も無い中では排除できない。だが、あなたには幸せになって欲しい。あなたが決めなさい。」「そうよ。お爺ちゃんと、お婆ちゃんは、いつまでもあなたの味方よ。」

 私が答えられず、震えていると、2人は、私のところに来てゆっくり抱きしめてくれた。

「あの、バカ武人、来たら鍛え直してくれるわ。」

 抱きしめながら、お爺様の闘気が感じされるような声を聴くと、私は何故か

「お爺様。お願いがあります。今から、道場で私に刀を教えて下さい。」

 とお願いをしていた。

「そうか。そうか。わかった・・・。」

 私のお願いに、悩むことなく答えてくれた。お爺様は、近衛流総帥にして、2人しか居ない口伝の継承者だった。私がまともに戦える相手ではないが、先日の恐怖を含め、自分を強くしたいという心があふれていたのかもしれない。着替えて道場に入ると、正座をして待っていてくれた。私は壁にかけてあった木刀を取り、お爺様の前に正座した。

「お願いします。」

 私が頭を下げると、お爺様も笑顔で頭を下げた。二人立ち上がり木刀を構えると、今までの空気が一変し、道場ざ緊張感に包まれた。

「始めようか。」
「はい。」

 私は、お爺様に仕掛けると、お爺様は笑顔で一歩も動かず私の剣を受け弾いた。私は有らん限りの剣を時間を忘れて1時間ほど撃ちつづてたがお爺様は、一歩も動くことなく弾き続けた。圧倒的な差を思い知らされた。

「こんなものかねえ。」
「そうじゃのう。」
「ありがとうございました。」

 お婆様が立ち上がり、少し大きな声で私達に呼びかけ、私達は答え、木刀を置いて挨拶を交わした。私がお爺様の分も取って木刀を壁にかけて出口に行くとお爺様とお婆様が待っていてくれた。

「明日から土日修行に来るか?」
「美味しいご飯用意しますからね。」
「はい。」

 優しい祖父母の言葉に、私は笑顔で答え、お婆様とお風呂に入り、ゆっくりと寝た。朝、日が昇る少し前、いつもの様に目を覚ました。私は身支度をし道場に行くといつもの様にお爺様と、お婆様が剣を打ち合っていた。私が超えられない壁を幾つも超えているレベルの試合をいつもの様にやっていた。わたしでは絶対に超えられ無い、ジョブによる能力成長という壁。無能な私には絶対的に届かない世界だった。それを見る度に不甲斐なさ、やるせなさに心を蝕まれていく気がした。

 私が道場に入ると、二人が手を止めた。

「おはよう。さくら」
「おはよう、よく寝られたか?」
「おはようございます。お爺様、お婆様。お陰様でよく寝られました。」
「それは、良かった。」

 祖父母はいつもの様に、私を優しく迎えてくれ、死ぬ程厳しい手合いを行った。私がシャワーを、浴びてリビングに行くと祖父母が先に食事を始めていた。

「さくら。今日武人来るそうだ。」
「さくらは、その時リビングの隣の部屋にいなさい。」
「はい。」

 祖父母は、何を考えているか分からなかったが、指示に従うことにした。食事を終えて、部屋でゆっくり勉強をしていると、

トントン

「はーい。」
「お嬢様、武人様、玲子様、智人様、直人様、勇様がいらっしゃいました。」
「はーい。」

 メイドさんが呼びに来てくれたので、リビングの隣の部屋に移動し、レンズにリビングの画像を投影できるディスプレイグラスと、イヤホンをつけて、用意して貰ったクッキーと紅茶をゆっくりと嗜んだ。

「伯父様、お忙しいところお時間を頂きありがとうございます。」
「いやいや、忙しいなんて、実務は皆んなに任せて、半隠居生活だよ。」

 お爺様、陛下に苦言を出来る元老院での仕事がメインで、近衛家の出資先の運営や、公務等は各地方の代行や、分家等に任せているから、そこまで忙しくしてない。工場や、農場、運送等は、ロボとAIがほぼほぼ仕事をしてくれるので、研究や契約、取引だけ人がやれば良く、報告内容も少なく、更にAIがまとめたものをチェックすれば良いので簡素で近衛家の管理も大して忙しくなかったりする。私には、セミリタイアしたおじいちゃんって感じしかないが、お爺様は、いつも私には見せない厳しい顔をしていた。

「武人。で、用件は何だね。」
「あの・・・・。」
「は?」

 明らかに、武人叔父様がビビッて震えていた。こんな叔父様を見るのも初めてで、玲子さん達も震えた顔をしていた。

「はっきりせんか。どうせ、さくらのことだろう。」
「えっ!はい。」

 武人叔父様は、お爺様が知っていることにびっくりしていた。

「聖護院宮の悪餓鬼が、相談に来たわい。うちのさくらを、義仁の婚約者にして欲しいと言ってたわ。正式発表は、さくらの大学卒業でどうかだと。舐めてんのかあの餓鬼は?」
「伯父上。いや。」
「あぁ?」

 武人叔父様がビビり震えが目に見えて分かるほどだった。

「あなた。武ちゃんが震えてますわよ。忠仁親王を半べそかかせたばかりなのに。勇仁親王も震えて助けに来ませんでしたけど。」
「そうだな。すまんな、大人げない。」

 いつも思うけど、お爺様、お婆様に弱すぎですわ。勇仁殿下も震えるってどんだけなんだろう?

「でだ。武人、どうしたい?」
「伯父上、わ、私としては、咲夜の為には、殿下との婚約は進めた方が、」
「前にあんなことがあったのにか?」
「いやあの。」
「どうなんだ?」
「どうなんでしょう?」

 こ、これは、いわゆる「私のために争わないでチャーンス」か。お爺様だけでなく、お婆様も武人さんに、圧力をかけている。私は、今にも飛び出て、「私のために争わないで」と叫びたくなったが、気持ちを抑え、その続きを観た。

「でしゅが、伯父上、咲夜は、このまま問題なく大学まで卒業すれば、桜に戻って、華族として生きていく必要がありましゅ。しょの為には、婚約者候補を。」
「そうか、では、婚約者とするのは、大学卒業後で良いのだな?」
「はい。」

 カミカミだった武人叔父様がなんとか落ち着いてきた。

「で、それまでどうするんだ?」
「ひゃい。そ、それまでは、匿名のこんにゃくしゃ候補として、両家と、陛下のみの間での仮約定とし、両家でいつでもほぎょに出来る様に考えてましゅ。」

 お爺様は、一瞬考えて、

「そうか、陛下と、殿下はそれで?」
「了解をとってあります。」
「そうか。」

 お爺様は、カメラの方を向き。

「で、桜はどうする?」

 私に振るか?叔父様達は、昨日の軍務の後、疲れて寮で寝ていると思っている筈で、私がこちらに来ていることは知らない。その為に、叔父様達は、キョトンとした顔をした。私は、何杯目かの紅茶を置き、隣の部屋の扉を開けた。

「お爺様、何故私に振るのですか?」
「ほほほほ。桜、貴女が決めるべき話かと思ってな。」

 お爺様に対して、私は呆れて笑みを見せた。武人叔父様達は、まだ頭の整理が出来ていなかった。

「お爺様、わ、私は、」

 私は、受け入れる事にした。どうせ、モテモテの殿下である、10年後までには、いい人を作って破棄されるだろう。それまで、私はと言うか、私の肩書きは防波堤として使われる。それで、殿下の為、近衛公爵家の為になるのではと、私は自分の真意を伝えて。

 この件は、某公爵令嬢を婚約者候補とするとして、四十九日が過ぎた一学期の終業式の時期に宮内省から公表される事で決まった。

 ちなみに、この後、武人叔父様達は、お爺様とお婆様に道場でいつものようにボコボコにされてました。

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お爺様「それにしても、桜は、なんであんな判断をしたんだろうな?」
お婆様「そうですわね・・・。私たちを含めて、みんなに迷惑をかけないためですよ。優しい子ですから。」
お爺様「そうじゃな・・・。そんな子だから、わしらが守ってやらんとな・・・。藤子が残した子じゃからな。」
お婆様「そうですわね・・・。私達が元気なうちは。」
お爺様「そうじゃな・・・。ばあさんや、頑張ろうな。それにしても、あの子は、なんであんな強いんじゃ?」
お婆様「そうですわね・・・。ジョブを持っているのであれば説明つきますが、反応力とか、瞬発力とか常人の限界に近いですわね。」
お爺様「そうじゃな・・・。人間として、成熟しているならともかく、子供じゃからな・・・。」
お婆様「そうですわね・・・。あの年齢ですと、説明がつきませんわね・・・。あの子の本気を知っている人は少ないからごまかせてますがね。」
お爺様「そうじゃな・・・。あの子には、何か隠されたものがあるんじゃろうな。」
お婆様「そうですわね・・・。それはともかく、この言い方やめません?私達まだそんな歳じゃないですわよ。」
お爺様「そうじゃな・・・。ジジババごっこは辞めるか。」
お婆様「そうですわね・・・。これを機会に、ごっこは辞めて、本気であの子の為に動き始めましょうか。調査はそろそろ終わりそうですし。」
お爺様「そうじゃな・・・。尻尾をなかなか掴めなかったがな、娘達が微妙に無能で良かったよ。そろそろ本気で道沖を潰すか。」
お婆様「そうですわね・・・。時間をかけて、着実に、高校卒業するころまでには。復讐を終える様に。」
お爺様「そうじゃな・・・。」
お婆様「そうですわね・・・。」
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