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意外にもできる男
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我に返ったエミリアが「不採用」と告げると、自分は法学を修習しているうえに、王宮で官吏の職に就いていたため書類の作成なども得意だと猛アピールをしてきた。しかも給金はわずかで良いという。
ディックは、こんな人材は二度とこないと雇用に乗り気だ。
とりあえず3日間はレイノー国に滞在するとのことで、明日返事をすることになった。
あれから逃げてきて、なんで雇わないといけないのか。なぜこんなことになっているのか。エミリアはため息をついた。
翌日、神妙な顔をしてヨハンが現れた。
ただ採用の合否を告げるだけなのに、死刑執行を待つような顔だ。
「バランド様、今回の採用結果について・・・誠に残念ですが・・・」
「エミリア様!無償で!無給で働かせていただきます!ですからここで働かせてください。」
ヨハンは机越しに身を乗り出し必死でアピールしてくる。
「で、ですから残念ですが採用・・・」
「エミリア様~!」
「もう、うるさいです!採用だと言ってるでしょう!」
半泣きのヨハンはキョトンとして
「え?さい・・よう…採用?!」
「そうです!本当に!非常に!残念な事ですが、バランド様に来ていただくことになりました!」
ヨハンは目を丸くしたのち、ボロボロボロッと涙を落とし
「ありがとうございます・・・エミリア様。一生、一生幸せにします!」
俯いてそういうヨハンが怖い。
「・・・やっぱり不採用にします。」
「うわあ、すいません。働きます、ちゃんと働きます!」
採用時点でこの騒ぎ、今後が思いやられる。
エミリアは即、不採用と判断をした。
しかしこんな人材が他に応募してくることはないと、ディックに思いきり説得され、事業所を守るためには公私混同しないようにも説得された。
エミリアは事業所の為に涙を飲んで、専門事務員としては優秀であろうヨハンの採用を決めたのだ。
他に応募の見込みがなく、業務上すぐにでも欲しい人材。
私的な感情を封印しての決断だったが、即後悔だった。
翌日も滞在するはずだったが、ヨハンはこちらに移住する準備を整えてくると言ってさっさと帰国して行った。
そして三日後、荷物を持ってやってくるとエミリアの家の近くに家を借りてこの国の住民になった。
意外にも・・・ヨハンは即戦力だった。
エミリアからおおよその話を聞くと一枚の書類を作成した。
「こちらを観光開始前に説明し、サインをしていただくのはいかがでしょうか。」
その書類にはこれまで口頭で説明していたような注意点だけではなく、禁止事項や約束事が細かく書かれ、契約を破った場合の責任の有無、トラブル時の対応などもきちんと定められていた。
こちらの注意を聞かずトラブルが発生した場合、こちらは免責の上、損害賠償を求めることもあり得ると説明されていた。
強い文言ではないかと思ったが、通常の観光では起こりえないことで、逆にこれに文句を言うような客は受けない方がよいという。
エミリアは内心感心しながらも、しぶしぶといった表情で
「バランド様・・・来ていただいてよかった・・・ようです。」
そう言った。
ヨハンは嬉しそうに
「私の事はヨハンとお呼びください!私はあなたの部下ですから!」
「・・・いえ。専門家としてきていただいておりますので。敬意を表させていただきます。」
(仕事はこんなにできるのに・・・)
王宮の官吏の仕事を辞めてきたヨハン、優秀でおそらく高給取りだったに違いないのに、こんないつ潰れるかわからない所にくるなんてもったいなさすぎる。
「バランド様、今日はもう終業でよろしいですわ。ここにも毎日来ていただかなくて大丈夫です。トラブル時や契約時、書類作成時の相談時に連絡いたしますので・・・」
「いえ!実務を知らないと対処が難しくなりますので毎日きます!受付でも雑用でも何でもいたします。・・・二人きりにさせられませんから。」
ちらっとディックを見て、最後はごにょごにょとつぶやいた。
別の日、
「ちょっと拝見しますね。」
ヨハンはこれまでの顧客リストをパラパラ見ながら何かメモを取っていた。
そして業務終了後、年齢や性別。客同士の関係性などリストにしたものを見せられた。
「このような情報をまとめておくといずれ役立つと思います。できればエミリア様がお客様に感じた事や聞いたことを書いておいたり、満足度や行きたい場所など聞き取り調査をしておくと、今後の観光案内ルートの提案にも役立つと思いますし。」
年代ごとの好みや夫婦、家族、友人その関係によっても好まれるものは変わるだろう。それをいかすよう教えてくれる。
「・・・。」
ちょろいだとか、バカだとか・・・思っていたことを心の中で詫びた。
「バランド様・・・凄いですわ。ありがとうございます。私は目の前の事に必死で全然考えもつきませんでした。これからも色々教えていただけると助かります。」
「お任せください!」
(はああぁぁ!神様聞きました?エミリア様が認めてくれましたよ!!神様、挽回のチャンスを与えて下さりありがとうございます!)
ヨハンは天にも昇る気持ちだった。
ディックは、こんな人材は二度とこないと雇用に乗り気だ。
とりあえず3日間はレイノー国に滞在するとのことで、明日返事をすることになった。
あれから逃げてきて、なんで雇わないといけないのか。なぜこんなことになっているのか。エミリアはため息をついた。
翌日、神妙な顔をしてヨハンが現れた。
ただ採用の合否を告げるだけなのに、死刑執行を待つような顔だ。
「バランド様、今回の採用結果について・・・誠に残念ですが・・・」
「エミリア様!無償で!無給で働かせていただきます!ですからここで働かせてください。」
ヨハンは机越しに身を乗り出し必死でアピールしてくる。
「で、ですから残念ですが採用・・・」
「エミリア様~!」
「もう、うるさいです!採用だと言ってるでしょう!」
半泣きのヨハンはキョトンとして
「え?さい・・よう…採用?!」
「そうです!本当に!非常に!残念な事ですが、バランド様に来ていただくことになりました!」
ヨハンは目を丸くしたのち、ボロボロボロッと涙を落とし
「ありがとうございます・・・エミリア様。一生、一生幸せにします!」
俯いてそういうヨハンが怖い。
「・・・やっぱり不採用にします。」
「うわあ、すいません。働きます、ちゃんと働きます!」
採用時点でこの騒ぎ、今後が思いやられる。
エミリアは即、不採用と判断をした。
しかしこんな人材が他に応募してくることはないと、ディックに思いきり説得され、事業所を守るためには公私混同しないようにも説得された。
エミリアは事業所の為に涙を飲んで、専門事務員としては優秀であろうヨハンの採用を決めたのだ。
他に応募の見込みがなく、業務上すぐにでも欲しい人材。
私的な感情を封印しての決断だったが、即後悔だった。
翌日も滞在するはずだったが、ヨハンはこちらに移住する準備を整えてくると言ってさっさと帰国して行った。
そして三日後、荷物を持ってやってくるとエミリアの家の近くに家を借りてこの国の住民になった。
意外にも・・・ヨハンは即戦力だった。
エミリアからおおよその話を聞くと一枚の書類を作成した。
「こちらを観光開始前に説明し、サインをしていただくのはいかがでしょうか。」
その書類にはこれまで口頭で説明していたような注意点だけではなく、禁止事項や約束事が細かく書かれ、契約を破った場合の責任の有無、トラブル時の対応などもきちんと定められていた。
こちらの注意を聞かずトラブルが発生した場合、こちらは免責の上、損害賠償を求めることもあり得ると説明されていた。
強い文言ではないかと思ったが、通常の観光では起こりえないことで、逆にこれに文句を言うような客は受けない方がよいという。
エミリアは内心感心しながらも、しぶしぶといった表情で
「バランド様・・・来ていただいてよかった・・・ようです。」
そう言った。
ヨハンは嬉しそうに
「私の事はヨハンとお呼びください!私はあなたの部下ですから!」
「・・・いえ。専門家としてきていただいておりますので。敬意を表させていただきます。」
(仕事はこんなにできるのに・・・)
王宮の官吏の仕事を辞めてきたヨハン、優秀でおそらく高給取りだったに違いないのに、こんないつ潰れるかわからない所にくるなんてもったいなさすぎる。
「バランド様、今日はもう終業でよろしいですわ。ここにも毎日来ていただかなくて大丈夫です。トラブル時や契約時、書類作成時の相談時に連絡いたしますので・・・」
「いえ!実務を知らないと対処が難しくなりますので毎日きます!受付でも雑用でも何でもいたします。・・・二人きりにさせられませんから。」
ちらっとディックを見て、最後はごにょごにょとつぶやいた。
別の日、
「ちょっと拝見しますね。」
ヨハンはこれまでの顧客リストをパラパラ見ながら何かメモを取っていた。
そして業務終了後、年齢や性別。客同士の関係性などリストにしたものを見せられた。
「このような情報をまとめておくといずれ役立つと思います。できればエミリア様がお客様に感じた事や聞いたことを書いておいたり、満足度や行きたい場所など聞き取り調査をしておくと、今後の観光案内ルートの提案にも役立つと思いますし。」
年代ごとの好みや夫婦、家族、友人その関係によっても好まれるものは変わるだろう。それをいかすよう教えてくれる。
「・・・。」
ちょろいだとか、バカだとか・・・思っていたことを心の中で詫びた。
「バランド様・・・凄いですわ。ありがとうございます。私は目の前の事に必死で全然考えもつきませんでした。これからも色々教えていただけると助かります。」
「お任せください!」
(はああぁぁ!神様聞きました?エミリア様が認めてくれましたよ!!神様、挽回のチャンスを与えて下さりありがとうございます!)
ヨハンは天にも昇る気持ちだった。
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