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番外編 伯爵家を追い出されたそのあとで
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伯爵家を追い出された二人は、すぐに寝食を確保することができた。
伯爵家にいたとき、テューネのその美しい容姿からたくさんの見合いの話が来ていたのだ。
記憶を頼りに、爵位の高い順に屋敷を訪ねた。
高位貴族には門前払いをされたが、男爵家のうちの一人が屋敷に招き入れてくれた。
「そのつもりでうちに来たのではないの?」
「でも結婚するまではそういうことは・・・」
と頬を染める。
「そうだね。じゃあ、婚約者でもないし、泊まってもらうのは外聞が悪いから帰ってくれる?」
「そんな!ここを出ても行くところがありませんわ。いずれ結婚するのですから置いてくださいませ。」
そして身体を差し出した。結婚すれば同じことだ、それにこうすることで結婚を揺るぎのない物にしておきたい。
伯爵家を追い出された今、貴族に結婚してもらわないと平民になって暮らすしかない。もう後がなかった。
母親も居場所が見つかりホッとしたように、男爵家で以前と同じようにゆったりと生活をしていた。使用人が眉をしかめるのにも気にせず、女主人ぶっていた。
ここの当主は領地に戻っており、嫡男だけが屋敷に残っていた。そのため坊ちゃんはいいように騙されていると使用人たちは心配していた。
2週間ほどたち、朝食の席でその男爵家の嫡男が言った。
「今日中に出て行ってもらえるかな?」
「なにをおっしゃるの?!」
「2週間も世話をしたのだから十分じゃない?その間に今後について考える暇も、仕事を探す暇もあっただろ?」
それを聞いて周りで控えている使用人たちはほっと胸をなでおろしていた。馬鹿な女にたぶらかされずに良かったと。
「あなたと結婚するんでしょう?!」
「あははは、まさか。伯爵家を追い出された君なんかお荷物に過ぎないよ。そりゃあ、顔だけはかわいいから一度はって思うけど、それだけ。姉の婚約者を薬でどうにかしようとする歪んだ女が本気でうちに嫁げるとでも思ったわけ?」
あまりにもの屈辱に顔が真っ赤になる。
「娘を傷ものにして責任は取ってもらいます!!」
「傷ものって・・・僕は娼婦だと思っていたんだけど?暖かいベッドと食事と引き換えに商売したわけでしょ?」
「ひどいですわ!!」
「僕は初めから婚約するとも結婚するとも言ってないよ。君たちが行くところがないっていうからしばらく宿を提供しただけ、そして君が代金代わりに払えるもので払ってもらっただけだ。払いたくなければ出て行っていいとも言ったよね?君が選んだんだよ」
納得できず、騙されたと騒ぐ二人は護衛たちに抱えられるようにして屋敷から掘り出された。
その後は受け入れてくれる家はなく、二人は元の伯爵家やありえない事にステファンとエヴェリーナの屋敷にまで縋ってきた。どちらからも門前払いをされ、ようやく貴族として生きていくのは不可能であることを理解した。
テューネは平民の間では目立つほどの可愛い顔立ちだった。
一部の者には、性格の悪さなど問われない、あっという間に目を付けられ街から姿を消した。
娘を失って生きる気力をなくした母親は、生活力もなくどんどん弱っていき最後は教会が運営する養護院の世話になった。
その後、テューネがどうなったかは誰も知ることはなかった。
伯爵家にいたとき、テューネのその美しい容姿からたくさんの見合いの話が来ていたのだ。
記憶を頼りに、爵位の高い順に屋敷を訪ねた。
高位貴族には門前払いをされたが、男爵家のうちの一人が屋敷に招き入れてくれた。
「そのつもりでうちに来たのではないの?」
「でも結婚するまではそういうことは・・・」
と頬を染める。
「そうだね。じゃあ、婚約者でもないし、泊まってもらうのは外聞が悪いから帰ってくれる?」
「そんな!ここを出ても行くところがありませんわ。いずれ結婚するのですから置いてくださいませ。」
そして身体を差し出した。結婚すれば同じことだ、それにこうすることで結婚を揺るぎのない物にしておきたい。
伯爵家を追い出された今、貴族に結婚してもらわないと平民になって暮らすしかない。もう後がなかった。
母親も居場所が見つかりホッとしたように、男爵家で以前と同じようにゆったりと生活をしていた。使用人が眉をしかめるのにも気にせず、女主人ぶっていた。
ここの当主は領地に戻っており、嫡男だけが屋敷に残っていた。そのため坊ちゃんはいいように騙されていると使用人たちは心配していた。
2週間ほどたち、朝食の席でその男爵家の嫡男が言った。
「今日中に出て行ってもらえるかな?」
「なにをおっしゃるの?!」
「2週間も世話をしたのだから十分じゃない?その間に今後について考える暇も、仕事を探す暇もあっただろ?」
それを聞いて周りで控えている使用人たちはほっと胸をなでおろしていた。馬鹿な女にたぶらかされずに良かったと。
「あなたと結婚するんでしょう?!」
「あははは、まさか。伯爵家を追い出された君なんかお荷物に過ぎないよ。そりゃあ、顔だけはかわいいから一度はって思うけど、それだけ。姉の婚約者を薬でどうにかしようとする歪んだ女が本気でうちに嫁げるとでも思ったわけ?」
あまりにもの屈辱に顔が真っ赤になる。
「娘を傷ものにして責任は取ってもらいます!!」
「傷ものって・・・僕は娼婦だと思っていたんだけど?暖かいベッドと食事と引き換えに商売したわけでしょ?」
「ひどいですわ!!」
「僕は初めから婚約するとも結婚するとも言ってないよ。君たちが行くところがないっていうからしばらく宿を提供しただけ、そして君が代金代わりに払えるもので払ってもらっただけだ。払いたくなければ出て行っていいとも言ったよね?君が選んだんだよ」
納得できず、騙されたと騒ぐ二人は護衛たちに抱えられるようにして屋敷から掘り出された。
その後は受け入れてくれる家はなく、二人は元の伯爵家やありえない事にステファンとエヴェリーナの屋敷にまで縋ってきた。どちらからも門前払いをされ、ようやく貴族として生きていくのは不可能であることを理解した。
テューネは平民の間では目立つほどの可愛い顔立ちだった。
一部の者には、性格の悪さなど問われない、あっという間に目を付けられ街から姿を消した。
娘を失って生きる気力をなくした母親は、生活力もなくどんどん弱っていき最後は教会が運営する養護院の世話になった。
その後、テューネがどうなったかは誰も知ることはなかった。
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