30 / 39
裏切り?
しおりを挟む
公爵邸でも興奮は止まなかった。
こそこそと小さい鳥がアリスのポケットに入っていくのには誰も気が付かなった。
アリスはポケットの中で踏ん反りかえっているケルンを感謝とともにほめたたえた。
『やるときはやるのよ、僕は』
「できる子だったのね!高級お菓子たくさん用意するわ」
『やったあ!でもまだ気を抜いてはいけないよ。あの女はまだ行方不明なんだからね。それに屋内にいたものはまだ催眠状態の者もいる。』
「そうね、お父様に伝えるわ。」
倒れている敵兵を捕縛したり、正気に戻ったものも念のため拘束したりと屋敷内もまだまだ騒がしい状況だ。公爵は騎士団長とともに指揮を執っており、アリスはエルネストにそれを伝え、王宮にも伝令が走った。
ざわめきが収まらない公爵邸に、兄のクリストフが走り込んできた。
研究所で解毒作用のある成分を抽出したり、解毒剤入りの酒や菓子を作るなど重要な任務についていたが、公爵邸襲撃の知らせを聞いて飛んできた。
「良かった、みんなご無事で。」
「ああ、ひとまず安心だ。お前も含めこれから王宮へ行く。まだ狙われる可能性もある、警備体制の整った王宮へ行くぞ。」
「わかりました。今回の救出劇はアリスが?」
「ああ、アリスのおかげでマルティーヌとルイスの命が守られたのだ。」
「アリスがそれほど魔法が使えるとは知らなかった。巷でうわさの女神さまもアリスのことじゃないのですか?」
笑顔で尋ねるクリストフに思わずエルネストはうなづいた。
「あ、いや違う。別人だ。」
慌てて否定した。
「家族なんですから隠さなくてもいいじゃないですか」
キンッと鋭い金属音がした。
アリスが小剣を構え、アリスに近づこうとするクリストフが持つ物をはじいた。
クリストフの手には魔道具が握られていた。
「クリストフ?!」
「兄上?!」
アリスにはじかれたクリストフは、驚き固まっているルイスに近寄るとナイフを喉元に突きつけた。
「ねえ、アリス。さっきの竜を呼んでくれないかな」
「・・・」
「兄上!どうしたの?!」
クリストフはもがくルイスを容赦なく拘束する。
エルネストも周りにいる騎士も動けなかった。
クリストフの腕から精神干渉を跳ね返すための腕輪が消えていた。
「なんのことですか。私と竜が関係あるとでも?」
「これでもとぼけられるのかな」
ためらいなくナイフがルイスの太ももに振り下ろされた。
ルイスのこらえるようなうめき声とエルネスト、マルティーヌの叫び声が屋敷に響いた。
にやにや笑うクリストフはもう一度ナイフを振り上げた。
その時、アリスのポケットの中からケルンが飛び出した。
「ケルン!」
叫び声むなしくケルンは小鳥から優美な光の鳥に変化し、外に飛び出すとさらに雄大な竜の姿に変身した。夜空に竜の咆哮が響き渡った。
こそこそと小さい鳥がアリスのポケットに入っていくのには誰も気が付かなった。
アリスはポケットの中で踏ん反りかえっているケルンを感謝とともにほめたたえた。
『やるときはやるのよ、僕は』
「できる子だったのね!高級お菓子たくさん用意するわ」
『やったあ!でもまだ気を抜いてはいけないよ。あの女はまだ行方不明なんだからね。それに屋内にいたものはまだ催眠状態の者もいる。』
「そうね、お父様に伝えるわ。」
倒れている敵兵を捕縛したり、正気に戻ったものも念のため拘束したりと屋敷内もまだまだ騒がしい状況だ。公爵は騎士団長とともに指揮を執っており、アリスはエルネストにそれを伝え、王宮にも伝令が走った。
ざわめきが収まらない公爵邸に、兄のクリストフが走り込んできた。
研究所で解毒作用のある成分を抽出したり、解毒剤入りの酒や菓子を作るなど重要な任務についていたが、公爵邸襲撃の知らせを聞いて飛んできた。
「良かった、みんなご無事で。」
「ああ、ひとまず安心だ。お前も含めこれから王宮へ行く。まだ狙われる可能性もある、警備体制の整った王宮へ行くぞ。」
「わかりました。今回の救出劇はアリスが?」
「ああ、アリスのおかげでマルティーヌとルイスの命が守られたのだ。」
「アリスがそれほど魔法が使えるとは知らなかった。巷でうわさの女神さまもアリスのことじゃないのですか?」
笑顔で尋ねるクリストフに思わずエルネストはうなづいた。
「あ、いや違う。別人だ。」
慌てて否定した。
「家族なんですから隠さなくてもいいじゃないですか」
キンッと鋭い金属音がした。
アリスが小剣を構え、アリスに近づこうとするクリストフが持つ物をはじいた。
クリストフの手には魔道具が握られていた。
「クリストフ?!」
「兄上?!」
アリスにはじかれたクリストフは、驚き固まっているルイスに近寄るとナイフを喉元に突きつけた。
「ねえ、アリス。さっきの竜を呼んでくれないかな」
「・・・」
「兄上!どうしたの?!」
クリストフはもがくルイスを容赦なく拘束する。
エルネストも周りにいる騎士も動けなかった。
クリストフの腕から精神干渉を跳ね返すための腕輪が消えていた。
「なんのことですか。私と竜が関係あるとでも?」
「これでもとぼけられるのかな」
ためらいなくナイフがルイスの太ももに振り下ろされた。
ルイスのこらえるようなうめき声とエルネスト、マルティーヌの叫び声が屋敷に響いた。
にやにや笑うクリストフはもう一度ナイフを振り上げた。
その時、アリスのポケットの中からケルンが飛び出した。
「ケルン!」
叫び声むなしくケルンは小鳥から優美な光の鳥に変化し、外に飛び出すとさらに雄大な竜の姿に変身した。夜空に竜の咆哮が響き渡った。
113
あなたにおすすめの小説
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても
千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。
鏑木 うりこ
恋愛
クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!
茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。
ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?
(´・ω・`)普通……。
でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)今月は2冊出版!
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました
水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。
求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。
そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。
しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。
ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが……
◆なろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる