10 / 120
第1部 示される能力(ちから)
10 ひなた は単身不妊中
しおりを挟む
お米って、こんなに美味しいものだったんだ――マスターが作ってくれたお粥を食べて雷雅が思う。そりゃあ、白飯は嫌いじゃないけれど、惣菜を引き立たせ、お腹を満たす役割を果たしているのだと思い込んでいた。惣菜がなければ食べられないと思い込んでいた。
「おにぎりと同じで、塩加減が大事でございます」
美味いと絶賛して食べる雷雅に、マスターが気恥ずかし気に微笑んだ。
「なんだ、ライガ、塩握りは嫌いか?」
横からひなたが茶々を入れる。もちろんひなたもお粥を口に運んでいる。
「そう言えば、塩握りって食べたことない。いつも具が何かを気にしてるもん」
「そうか。まぁ、わたしもそうだ。ちなみにわたしは天むすが好きだ。あのエビがプリッと――」
「判りましたから、黙って食べましょうよっ!」
放っておくと何を言い出すか判らないひなたを黙らせて、熱いお粥をふうふう吹く。
お粥が目の前に出されたときは、何も欲しくないと思ったのに一口食べた途端、とんでもなく空腹だったと気が付いた。さすがに吐き気はなくなっていたけれど、なんだか胃が落ち着かない。だけどせっかくマスターが作ってくれた、少しでも食べなくちゃ、そう思って食べだしたのに、何も入っていないお粥がこんなにも美味しいなんて!
「佃煮などもあるのですが、今は消化の良い物だけで我慢なさってください。胃が驚いてしまいますからね」
そう言ってマスターは薄めのお茶も出してくれた。そう言えば、帰ってすぐに出されたお茶も薄かった気がする。それにあれは温かった。マスターの心遣いにはいつも恐れ入る。
「マスター、『陽だまり』を始めて何年くらい経つの?」
思い付きで雷雅が質問する。
「ひなたお嬢さまがご結婚なさってからですから、かれこれ三年でしょうか」
「へぇ、物凄く板についてる感じがしますよね」
「そうでございますか?」
マスターがうっすら笑う。
「マスターは狩人を引退してから、わたしの生家木陰で執事をしていたんだ」
ねっ、とひなたがマスターに微笑む。
「はい、狩人をやめ、どうしたものか路頭に迷っていたわたくしに、木陰家のご当主が手を差し伸べてくださいました」
「わたしが生まれて人手が足りなくなっていたんだ。何しろ赤ん坊のわたしは泣いては誰かの影を消してしまったり、手がかかる子だったらしい」
「そうでございましたねぇ……でも、お嬢さまのお世話は楽しゅうございましたよ。何をなさるか判らないところがございましたから、一時も目が離せない。ドキドキハラハラの連続です。充実した日々でした――それにすぐお腹が空いたと言い出されるので、お料理も一通りできるようになりました。それが今、役に立っております」
「マスターがひなたさんの子守をしたんだ?」
雷雅の質問に、マスターとひなたが顔を見かわし微笑みあう。
「わたしはマスターのことを爺やと呼んでいた。で、神影家に嫁ぐにあたり、父は爺やをわたしにつけて送り出した」
「旦那様はお嬢さまが神影家で肩身の狭い思いをなさることのないよう気遣ったのです」
「ま、初日に神影のババアと大喧嘩して、あの家から飛び出した。すぐにこのビルに移って、それから一度も神影には帰っていない」
「神影のババア?」
「うん、煌一のお祖母ちゃん。八十近いと思うけど驚くほど元気――わたしを嫁とは認めないって言うから、わたしは嫁ではなく煌一の妻です、と言ってやった」
「ひなたさんらしいですね」
「そしたらさ、ババアったら『出て行け』って言うから、出て行ってやったさ――婚姻届は受理されてる。ババアに勝ち目はない」
「お祖母さん、ひなたさんと煌一さんを離婚させようとしてるんですか?」
「なんでも、わたしの家柄がご不満らしい。それに卵焼きが作れないのも気に入らないってさ。『卵焼き一つ作れないなんて!』って叫んだと思ったら、嫁と認めないって言ったからね。ま、煌一がわたしにゾッコンなんだから祖母さんが何をしようと無駄だよ」
卵焼きなら僕だって作れるのにと内心思う雷雅、それは口にせず
「煌一さん、ひなたさんにゾッコンなんですか?」
と言ってみる。
むしろひなたさんが煌一さんにゾッコンで、煌一さんはなんとか逃げようとしていない? そう思った雷雅だが、言えばひなたの反撃が恐ろしい。
「初めて会ったのは煌一が神影家の跡取りと決められた披露目のパーティーだ。わたしは社会勉強で連れていかれた。そのパーティーで『退屈してるんじゃ?』と話しかけてきたのが煌一だった。『退屈しているのはあなたでしょう?』そう答えたわたしに『そうだね、失礼した』と煌一は笑った」
「その時、二人は何歳だったの?」
「煌一が十五、わたしが十歳」
なんと言っていいか判らない雷雅、その年齢でそんな会話? それともいい家柄の子どもはそんな感じなのか? うん、煌一はもちろん、ひなたもいい家柄の生まれだってのはよく判った。それにどっちもお金持ちだ。きっとそうだ。爺やのいる家のお嬢さん、マスターがひなたをお嬢さまと呼ぶのも納得だ。目を白黒させている雷雅をマスターがクスッと笑った。
「次に会ったのは、煌一のお祖父さまのご葬儀。わたしが十五、煌一は二十で大学二年――で、その時、煌一がわたしに一目惚れした」
ひなたさんが一目惚れしたんじゃなくって? と一瞬思ったが、『陽だまり』に来た時の煌一を思い出して、それは違うかと思う雷雅だ。ぼさぼさの髪に無精ひげ、草臥れたスーツ。一目惚れなら見た目からだろうし、自分でも見た目重視とひなたは言っていた。
でもさっき、ビルの屋上で見た影は、どことなくかっこよかった。声だけで、姿は影としか言えないけれど、雰囲気がかっこよかった……
「そう言えば、さっき屋上でいろいろ指示を出していた影は煌一さんですよね?」
「うん、そうだよ」
「本体はいなかったみたいだけど?」
「ライガ、やっぱりおまえ、馬鹿だな――煌一は京都に行っているって説明したじゃないか」
「影って、本体からそんなに遠く離れられるんだ?」
「能力によるよ――わたしでも京都くらいなら行けるけど、九州となると難しい。沖縄は無理だ」
「煌一さんは沖縄まで行ける?」
もちろんと、ひなたが笑う。
「煌一さんってさ、僕が助けられた日以来、顔を見ないんだけど、毎晩遅いとか?」
「毎晩遅い?」
「でなければ、泊りがけの仕事や出張が多い? ひょっとして単身赴任?」
フフン、とひなたが笑い、嫌な予感に雷雅が震える。雷雅の顔をニヤリと見ながらひなたが言った。
「ライガ、その単身フニンのフニンという字は不妊治療のフニンではあるまいな?」
「違いますっ! 常識でモノ言ってください」
「おや、非常識と言われてしまった――ま、煌一は出張が多いし、仕事が忙しくって自宅に戻れない日も多い。そもそもここに住んでない」
「やっぱり単身赴任ですか?」
「うん、お陰でわたしも単身不妊」
「そういう展開は止してください、ひなたさん」
「ま、煌一は神影家本宅に今も住んでいる」
「あ……別居中? 離婚調停中ですか?」
「ライガ、口を慎まないと張り倒すぞ――煌一も一度はこっちに来たんだけれど、ババアに連れ戻された。外聞が悪いから家を出るなら離婚しろ、離婚したくないなら家に戻って言うことを聞けだと。もちろんわたしは無視を決め込んだ」
「へぇ、それで?」
「煌一だけでも本家に戻るなら離婚は許してやる。でも、戻らなければ廃嫡するって脅されたんだ――廃嫡、一般的には跡取りと認めないって意味なんだけど、我らの場合、影の一族からの追放、下手をすれば人知れず消される場合もある」
人知れず消される? ぞっとしながら雷雅が言う。
「それじゃあ、煌一さんは泣く泣く本家に?」
「うん、ま、そんなところだな。で、煌一は自分の目の届かないところでわたしが何をしでかすか、つまり、わたしが浮気するんじゃないかと冷や冷やしてる」
「って、ひなたさん、浮気っぽいんですか?」
「若い男を引っ張り込むのがわたしの趣味だ」
「はいぃいっ!?」
「冗談だ。ライガ、おまえ、自分が若い男のうちに入ると思っただろう?」
「いや、いや、いや……」
さらにひなたがニンマリ笑う。
「おまえが望むなら、数に入れてやらなくもないぞ?」
「冗談は、やめっ!」
「冗談? ライガ、本当に冗談でいいのか? おまえ、どこかで期待してるんじゃないのか? ほら、今、視線がわたしのむ――」
「わーーーーーっ!!!!」
叫び出すライガ、マスターがカウンターのほうで『お嬢さま、おふざけが過ぎますよ』と窘める。それでもクスクスと笑い、ひなたは声を出してケラケラ笑っている。
「しかしライガ、おまえには目覚めて貰わないとな」
「目覚めって……僕、初恋もまだなんです」
泣き出しそうな雷雅をさらにひなたが笑う。
「そうか、初恋もまだか? 晩熟だなぁ――でも、安心しろ。何も初体験しろとは言ってない。陽の一族として覚醒して欲しいだけだ」
ひなたの言葉に、雷雅の顔が真っ赤に染まる。ひなたの、わざと誤解させる物言いにまた引っかかってしまった――
「闇が出現したからには陽の能力が必ず必要となる。ライガ、期待しているよ」
「でも、いったい何をしたら?」
「うん、そのうち煌一から指示が出る。それを待つしかないな。何しろ陽の一族が見つかったのは久しいことだ。わたしの知識では心もとない」
ひなたが滅多にしない真面目な顔をした。
「おにぎりと同じで、塩加減が大事でございます」
美味いと絶賛して食べる雷雅に、マスターが気恥ずかし気に微笑んだ。
「なんだ、ライガ、塩握りは嫌いか?」
横からひなたが茶々を入れる。もちろんひなたもお粥を口に運んでいる。
「そう言えば、塩握りって食べたことない。いつも具が何かを気にしてるもん」
「そうか。まぁ、わたしもそうだ。ちなみにわたしは天むすが好きだ。あのエビがプリッと――」
「判りましたから、黙って食べましょうよっ!」
放っておくと何を言い出すか判らないひなたを黙らせて、熱いお粥をふうふう吹く。
お粥が目の前に出されたときは、何も欲しくないと思ったのに一口食べた途端、とんでもなく空腹だったと気が付いた。さすがに吐き気はなくなっていたけれど、なんだか胃が落ち着かない。だけどせっかくマスターが作ってくれた、少しでも食べなくちゃ、そう思って食べだしたのに、何も入っていないお粥がこんなにも美味しいなんて!
「佃煮などもあるのですが、今は消化の良い物だけで我慢なさってください。胃が驚いてしまいますからね」
そう言ってマスターは薄めのお茶も出してくれた。そう言えば、帰ってすぐに出されたお茶も薄かった気がする。それにあれは温かった。マスターの心遣いにはいつも恐れ入る。
「マスター、『陽だまり』を始めて何年くらい経つの?」
思い付きで雷雅が質問する。
「ひなたお嬢さまがご結婚なさってからですから、かれこれ三年でしょうか」
「へぇ、物凄く板についてる感じがしますよね」
「そうでございますか?」
マスターがうっすら笑う。
「マスターは狩人を引退してから、わたしの生家木陰で執事をしていたんだ」
ねっ、とひなたがマスターに微笑む。
「はい、狩人をやめ、どうしたものか路頭に迷っていたわたくしに、木陰家のご当主が手を差し伸べてくださいました」
「わたしが生まれて人手が足りなくなっていたんだ。何しろ赤ん坊のわたしは泣いては誰かの影を消してしまったり、手がかかる子だったらしい」
「そうでございましたねぇ……でも、お嬢さまのお世話は楽しゅうございましたよ。何をなさるか判らないところがございましたから、一時も目が離せない。ドキドキハラハラの連続です。充実した日々でした――それにすぐお腹が空いたと言い出されるので、お料理も一通りできるようになりました。それが今、役に立っております」
「マスターがひなたさんの子守をしたんだ?」
雷雅の質問に、マスターとひなたが顔を見かわし微笑みあう。
「わたしはマスターのことを爺やと呼んでいた。で、神影家に嫁ぐにあたり、父は爺やをわたしにつけて送り出した」
「旦那様はお嬢さまが神影家で肩身の狭い思いをなさることのないよう気遣ったのです」
「ま、初日に神影のババアと大喧嘩して、あの家から飛び出した。すぐにこのビルに移って、それから一度も神影には帰っていない」
「神影のババア?」
「うん、煌一のお祖母ちゃん。八十近いと思うけど驚くほど元気――わたしを嫁とは認めないって言うから、わたしは嫁ではなく煌一の妻です、と言ってやった」
「ひなたさんらしいですね」
「そしたらさ、ババアったら『出て行け』って言うから、出て行ってやったさ――婚姻届は受理されてる。ババアに勝ち目はない」
「お祖母さん、ひなたさんと煌一さんを離婚させようとしてるんですか?」
「なんでも、わたしの家柄がご不満らしい。それに卵焼きが作れないのも気に入らないってさ。『卵焼き一つ作れないなんて!』って叫んだと思ったら、嫁と認めないって言ったからね。ま、煌一がわたしにゾッコンなんだから祖母さんが何をしようと無駄だよ」
卵焼きなら僕だって作れるのにと内心思う雷雅、それは口にせず
「煌一さん、ひなたさんにゾッコンなんですか?」
と言ってみる。
むしろひなたさんが煌一さんにゾッコンで、煌一さんはなんとか逃げようとしていない? そう思った雷雅だが、言えばひなたの反撃が恐ろしい。
「初めて会ったのは煌一が神影家の跡取りと決められた披露目のパーティーだ。わたしは社会勉強で連れていかれた。そのパーティーで『退屈してるんじゃ?』と話しかけてきたのが煌一だった。『退屈しているのはあなたでしょう?』そう答えたわたしに『そうだね、失礼した』と煌一は笑った」
「その時、二人は何歳だったの?」
「煌一が十五、わたしが十歳」
なんと言っていいか判らない雷雅、その年齢でそんな会話? それともいい家柄の子どもはそんな感じなのか? うん、煌一はもちろん、ひなたもいい家柄の生まれだってのはよく判った。それにどっちもお金持ちだ。きっとそうだ。爺やのいる家のお嬢さん、マスターがひなたをお嬢さまと呼ぶのも納得だ。目を白黒させている雷雅をマスターがクスッと笑った。
「次に会ったのは、煌一のお祖父さまのご葬儀。わたしが十五、煌一は二十で大学二年――で、その時、煌一がわたしに一目惚れした」
ひなたさんが一目惚れしたんじゃなくって? と一瞬思ったが、『陽だまり』に来た時の煌一を思い出して、それは違うかと思う雷雅だ。ぼさぼさの髪に無精ひげ、草臥れたスーツ。一目惚れなら見た目からだろうし、自分でも見た目重視とひなたは言っていた。
でもさっき、ビルの屋上で見た影は、どことなくかっこよかった。声だけで、姿は影としか言えないけれど、雰囲気がかっこよかった……
「そう言えば、さっき屋上でいろいろ指示を出していた影は煌一さんですよね?」
「うん、そうだよ」
「本体はいなかったみたいだけど?」
「ライガ、やっぱりおまえ、馬鹿だな――煌一は京都に行っているって説明したじゃないか」
「影って、本体からそんなに遠く離れられるんだ?」
「能力によるよ――わたしでも京都くらいなら行けるけど、九州となると難しい。沖縄は無理だ」
「煌一さんは沖縄まで行ける?」
もちろんと、ひなたが笑う。
「煌一さんってさ、僕が助けられた日以来、顔を見ないんだけど、毎晩遅いとか?」
「毎晩遅い?」
「でなければ、泊りがけの仕事や出張が多い? ひょっとして単身赴任?」
フフン、とひなたが笑い、嫌な予感に雷雅が震える。雷雅の顔をニヤリと見ながらひなたが言った。
「ライガ、その単身フニンのフニンという字は不妊治療のフニンではあるまいな?」
「違いますっ! 常識でモノ言ってください」
「おや、非常識と言われてしまった――ま、煌一は出張が多いし、仕事が忙しくって自宅に戻れない日も多い。そもそもここに住んでない」
「やっぱり単身赴任ですか?」
「うん、お陰でわたしも単身不妊」
「そういう展開は止してください、ひなたさん」
「ま、煌一は神影家本宅に今も住んでいる」
「あ……別居中? 離婚調停中ですか?」
「ライガ、口を慎まないと張り倒すぞ――煌一も一度はこっちに来たんだけれど、ババアに連れ戻された。外聞が悪いから家を出るなら離婚しろ、離婚したくないなら家に戻って言うことを聞けだと。もちろんわたしは無視を決め込んだ」
「へぇ、それで?」
「煌一だけでも本家に戻るなら離婚は許してやる。でも、戻らなければ廃嫡するって脅されたんだ――廃嫡、一般的には跡取りと認めないって意味なんだけど、我らの場合、影の一族からの追放、下手をすれば人知れず消される場合もある」
人知れず消される? ぞっとしながら雷雅が言う。
「それじゃあ、煌一さんは泣く泣く本家に?」
「うん、ま、そんなところだな。で、煌一は自分の目の届かないところでわたしが何をしでかすか、つまり、わたしが浮気するんじゃないかと冷や冷やしてる」
「って、ひなたさん、浮気っぽいんですか?」
「若い男を引っ張り込むのがわたしの趣味だ」
「はいぃいっ!?」
「冗談だ。ライガ、おまえ、自分が若い男のうちに入ると思っただろう?」
「いや、いや、いや……」
さらにひなたがニンマリ笑う。
「おまえが望むなら、数に入れてやらなくもないぞ?」
「冗談は、やめっ!」
「冗談? ライガ、本当に冗談でいいのか? おまえ、どこかで期待してるんじゃないのか? ほら、今、視線がわたしのむ――」
「わーーーーーっ!!!!」
叫び出すライガ、マスターがカウンターのほうで『お嬢さま、おふざけが過ぎますよ』と窘める。それでもクスクスと笑い、ひなたは声を出してケラケラ笑っている。
「しかしライガ、おまえには目覚めて貰わないとな」
「目覚めって……僕、初恋もまだなんです」
泣き出しそうな雷雅をさらにひなたが笑う。
「そうか、初恋もまだか? 晩熟だなぁ――でも、安心しろ。何も初体験しろとは言ってない。陽の一族として覚醒して欲しいだけだ」
ひなたの言葉に、雷雅の顔が真っ赤に染まる。ひなたの、わざと誤解させる物言いにまた引っかかってしまった――
「闇が出現したからには陽の能力が必ず必要となる。ライガ、期待しているよ」
「でも、いったい何をしたら?」
「うん、そのうち煌一から指示が出る。それを待つしかないな。何しろ陽の一族が見つかったのは久しいことだ。わたしの知識では心もとない」
ひなたが滅多にしない真面目な顔をした。
10
あなたにおすすめの小説
あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。
NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。
中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。
しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。
助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。
無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。
だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。
この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。
この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった……
7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか?
NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。
※この作品だけを読まれても普通に面白いです。
関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】
【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる