31 / 32
31
しおりを挟む
幼稚園の送迎バスから降りてきた懐海が嬉しそうに愛実に縋りつく。軽く抱き返してから、週末の荷物を受け取る愛実に
「ママ! 明日はお休み! 嬉しい?」
と、いつものように訊いてくる。
バスを見送った後、ニコニコ顔で言うナツミに咲菜ちゃんママまで笑みをこぼす。その咲菜ちゃんママにナツミが、やはり満面の笑みで言う。
「今日ね、ナツミ、誕生日なの」
「そうなんだ? おめでとうだね」
「だからね、ママがケーキ作ってくれるの。咲菜ちゃんも一緒に来ちゃダメ?」
えっ? と母親同士が顔を見かわす。咲菜ちゃんママの手を取って咲菜ちゃんが、ママ、いいでしょ? と見あげている。
「わたしが作ったから、お店のケーキみたいにはいかないけど、よかったらいかがですか?」
「あぁ、失敗した……こんな日に限って夕飯の支度が全く手付かずなのよ」
困り顔の咲菜ちゃんママの後ろをタクシーが通り過ぎる。
「だったら、咲菜ちゃんだけ、家に来る? ケーキ食べたらお家までナツミと一緒に送っていくわ」
「咲菜、行く!」
「迷惑でしょう?」
「迷惑なんかじゃないわ」
少し離れたところで、車のドアがバタンと閉まる音がした。通り過ぎたタクシーが停まり、客を降ろしたようだ。二人のママがなんとなく音がしたほうを見る。
「じゃあ、そうしよ――」
愛実に視線を戻した咲菜ちゃんママが途中で言葉を切る。
「ナツミちゃんママ?」
咲菜ちゃんママの様子にナツミが愛実を見、愛実の視線の先を見る。
「ママ……?」
愛実に視線を戻したナツミが呼んでも愛実は答えない。持っていた荷物が愛実の手から滑り落ちる。
「ナツミちゃんママ、大丈夫?」
咲菜ちゃんママが呼んでも答えない。タクシーから降りた客を見つめ続けている。
「――懐空……」
不安げに愛実を見ていたナツミが、愛実の小さな声に、パッと顔を輝かせた。そしてこちらを見たまま動かない男へ向かって駆けだした。咲菜ちゃんママが慌ててナツミを止めようとするが間に合わない。
「ナツミちゃん! 行っちゃだめ! 愛実さん、しっかりして!」
懐空は愛実を見つめていたが、ナツミが近付くと腰を屈めて抱き上げた。
「パパ!」
ナツミの嬉しそうな声が響く。
「パパ?」
咲菜ちゃんママが驚いて愛実を見る。愛実は相変わらず何も言わない。じっと男を見つめている。だが、その頬が濡れているのを見て、ナツミが言うとおり、あの男はナツミちゃんの父親なのだと察した。
ナツミを抱いたまま、懐空が愛実に近づいてくる。咲菜ちゃんママが、娘の手を引いて、ケーキは今度ね、と宥めている。それじゃ、月曜日にね、と自分の家へと帰っていく。
「大人って不思議よね」
懐空に抱かれたままナツミが呟く。
「会えないって泣くのに、会えても泣くのね」
懐空の腕にしがみ付いて泣く愛実の頭をナツミが撫でた。
ナツミを降ろし、愛実の足元に落ちたままの荷物を懐空が拾うと、こっちよ、とナツミが懐空の手を引く。メソメソしたまま動こうとしない愛実に
「あみ、行くよ」
懐空が声をかけ、ナツミがもう片方の手を愛実と繋いだ。
部屋に着くころには愛実もさすがに泣き止んでいた。ナツミの世話をあれこれ焼く横で、懐空は黙って部屋の様子を見ている。本棚の前では並べられた自分の著書を眺めているようだった。
「パパ! ご本読んで!」
愛実の手から逃げ出したナツミが懐空の足に絡みつく。
「うん、どれを読もうか?」
「その一番上の!」
今、懐空が眺めていた場所だ。
「うーーん、あそこにある本は文字ばかりだよ?」
「そうなの? ママはよく見てるよ。読むって言うか見てるの」
「へぇ……」
懐空としては苦笑するしかない。本は買ってくれるけど、読んでくれなかったということか? そんなはず、ないんだけどなぁ、と思うがナツミにそれを言っても仕方ない。
「じゃあね、こっち。猫のお話」
自分で本を引っ張り出して懐空に渡す。ナツミが選んだ本は、主人公の猫が出会いと別れを繰り返し、気の遠くなるような時間を経て、初めて『愛』に巡り合い人生の意味を知る、そんな内容の絵本だった。
愛実が出した座布団に座ると、ナツミは懐空の膝に座った。すると懐空が本を広げても、それを見ることもなく、
「今日ね、ナツミ、誕生日なの」
と、懐空のほうを向いたまま言った。
「だからパパ、来てくれたんでしょ?」
しまった、と思ったがもう遅い。知っていれば何か用意できたのに。でも、この可愛い誤解を解く必要はあるだろうか?
「うん……でもごめんね。慌ててきたからプレゼント、忘れちゃった――明日、一緒に買いに行こうか? 何がいいかな?」
するとナツミが目を見開く。
「明日? 明日もパパに会えるの?」
「うん、明日も明後日も、ずーーっと―― ママとナツミと、三人一緒だ」
「パパ!」
立ち上がったナツミが懐空に抱きつく。それを懐空が抱きとめる。
「あれ? ナツミも涙、出てきた。嬉しくっても泣くのね――ね、パパ、早く読んで」
ニコッと笑ってから懐空に背中を向けて膝に座るナツミを包み込み、懐空は本のページを捲った――
膝に座ったまま、腕にしがみ付いて眠ってしまったナツミを起こさないようベッドに運ぶ。ナツミの寝顔を眺めている懐空を残し、愛実はキッチンに向かった。
あみ、行くよ。そう言ったきり懐空は愛実に話しかけてこない。
懐空がここに来たのが偶然だとは思えない。それにたぶん、ナツミのことも判っていた。駆け寄ってくるナツミに一瞬、戸惑った顔をしたが、すぐに笑顔で抱きあげた。
杉山涼成から聞いたのだろうか? でも真由美は愛実の住所は教えていないと言っていた。だったらどうしてここが判ったのだろう?
通り過ぎたタクシーは急に停まったように思える。意識して見ていたわけじゃないから、はっきりとは言えないが、車窓から愛実を見かけ、慌てて停めたのだと思った。
だったら、偶然? でも、なんでこんなところを懐空が通る? それに、ずっと一緒だとナツミに言っていた。
ずっと一緒……懐空はわたしを迎えに来た? 愛実は思わず目を閉じた。
襖がそっと閉められる音がする。寝室にいた懐空が来たのだ。慌てて愛実は薬缶に水を入れ始める。
「お茶も淹れないでごめん。コーヒーのほうがいいかな……」
後ろに近づいた気配にそっと抱き締められた。その腕に、だんだん力が籠められる。
「……あみ、一人にさせてしまった。ごめんね」
耳元で囁く懐かしい声に愛実の息が止まる。責められると思っていた。なぜ居なくなった、そう言われると思っていた。
「戻ってきてくれるよね?」
優しい懐空、落ち着いた声で包み込んでくれる懐空……
「いやよ――」
愛実の答えに懐空が緊張する。
「お願いされても帰らない……帰って来い、って言って。なに考えてるんだって叱って」
その言葉に懐空の緊張が和らぐ。そして愛実に頬を摺り寄せる。
「戻って来い、あみ。おまえが居るところはここじゃない。僕が居るところだ」
とうにあふれ始めていた薬缶が愛実の手から落ちて、シンクで大きな音を立てる。振り向いた愛実が懐空の首に腕を回す。
「会いたかった――ずっと会いたかったの」
何も言わず愛実を抱き返すだけの懐空に、泣きじゃくりながら愛実が訴える。
「何度も後悔した。なんて馬鹿だったんだろうって――わたし、懐空のところに戻っていいのね? 懐空の邪魔にならないのね?」
懐空を見ると、穏やかに笑んだまま愛実を見つめている。
「ナツミもいるの。ナツミも一緒よね? ナツミがいたら迷惑にならない?」
懐空が返事をすることはない。こんな状態の愛実に話すより、もっと落ち着いてから話そうと思っている。それに、ナツミには用意しそこなったプレゼントだが、愛実にはちゃんと用意してある。それを渡す時が来るのを懐空はじっと待っている。
コーヒーは僕がするからと、愛実を座らせる。シンクに放り出された薬缶に水を張り直し、コンロに掛ける。
コーヒー豆がしまってある場所も、ドリッパーやフィルター、コーヒーサーバーもすぐに見つかった。愛実の収納の癖は、一緒に暮らしていた時と変わっていない。
そんな懐空を眺めながら愛実が問う。
「なぜここが判ったの?」
「うん……真由美さんに教えて貰った」
「真由美に?」
「真由美さんの連絡先は杉山先生が教えてくれた」
「そう……」
「真由美さんにお礼しなくちゃね」
「うん……」
コーヒーの香りが漂い始めると、
「お茶菓子、買ってくるの忘れた」
と懐空が呟いた。
「いらないわよ、そんなの」
「おや、甘いもの大好きなあみさんが珍しい――駅前で何か買おうって思ってたんだ。でも、気持ちが急いて忘れてしまった」
コーヒーを淹れ終わり、懐空が愛実の隣に座る。
「懐空……」
「うん?」
「――本当に、戻っても大丈夫?」
「うん……」
懐空がコーヒーを口に含む。
「結婚しよう、あみ。すぐにでも」
「えっ?」
「明日、届を出してもいい。もちろんナツミの認知もする」
「明日だなんて。そんなに急がなくても……お母さんにも挨拶してないのに」
「母は了解しているから心配ない。って言うか、母さんも結婚した。一週間経つかな」
「え? ええっ?」
「相手は言わなくても判ると思うけど、杉山涼成」
ぽかんと愛実が懐空を見た。
「ママ! 明日はお休み! 嬉しい?」
と、いつものように訊いてくる。
バスを見送った後、ニコニコ顔で言うナツミに咲菜ちゃんママまで笑みをこぼす。その咲菜ちゃんママにナツミが、やはり満面の笑みで言う。
「今日ね、ナツミ、誕生日なの」
「そうなんだ? おめでとうだね」
「だからね、ママがケーキ作ってくれるの。咲菜ちゃんも一緒に来ちゃダメ?」
えっ? と母親同士が顔を見かわす。咲菜ちゃんママの手を取って咲菜ちゃんが、ママ、いいでしょ? と見あげている。
「わたしが作ったから、お店のケーキみたいにはいかないけど、よかったらいかがですか?」
「あぁ、失敗した……こんな日に限って夕飯の支度が全く手付かずなのよ」
困り顔の咲菜ちゃんママの後ろをタクシーが通り過ぎる。
「だったら、咲菜ちゃんだけ、家に来る? ケーキ食べたらお家までナツミと一緒に送っていくわ」
「咲菜、行く!」
「迷惑でしょう?」
「迷惑なんかじゃないわ」
少し離れたところで、車のドアがバタンと閉まる音がした。通り過ぎたタクシーが停まり、客を降ろしたようだ。二人のママがなんとなく音がしたほうを見る。
「じゃあ、そうしよ――」
愛実に視線を戻した咲菜ちゃんママが途中で言葉を切る。
「ナツミちゃんママ?」
咲菜ちゃんママの様子にナツミが愛実を見、愛実の視線の先を見る。
「ママ……?」
愛実に視線を戻したナツミが呼んでも愛実は答えない。持っていた荷物が愛実の手から滑り落ちる。
「ナツミちゃんママ、大丈夫?」
咲菜ちゃんママが呼んでも答えない。タクシーから降りた客を見つめ続けている。
「――懐空……」
不安げに愛実を見ていたナツミが、愛実の小さな声に、パッと顔を輝かせた。そしてこちらを見たまま動かない男へ向かって駆けだした。咲菜ちゃんママが慌ててナツミを止めようとするが間に合わない。
「ナツミちゃん! 行っちゃだめ! 愛実さん、しっかりして!」
懐空は愛実を見つめていたが、ナツミが近付くと腰を屈めて抱き上げた。
「パパ!」
ナツミの嬉しそうな声が響く。
「パパ?」
咲菜ちゃんママが驚いて愛実を見る。愛実は相変わらず何も言わない。じっと男を見つめている。だが、その頬が濡れているのを見て、ナツミが言うとおり、あの男はナツミちゃんの父親なのだと察した。
ナツミを抱いたまま、懐空が愛実に近づいてくる。咲菜ちゃんママが、娘の手を引いて、ケーキは今度ね、と宥めている。それじゃ、月曜日にね、と自分の家へと帰っていく。
「大人って不思議よね」
懐空に抱かれたままナツミが呟く。
「会えないって泣くのに、会えても泣くのね」
懐空の腕にしがみ付いて泣く愛実の頭をナツミが撫でた。
ナツミを降ろし、愛実の足元に落ちたままの荷物を懐空が拾うと、こっちよ、とナツミが懐空の手を引く。メソメソしたまま動こうとしない愛実に
「あみ、行くよ」
懐空が声をかけ、ナツミがもう片方の手を愛実と繋いだ。
部屋に着くころには愛実もさすがに泣き止んでいた。ナツミの世話をあれこれ焼く横で、懐空は黙って部屋の様子を見ている。本棚の前では並べられた自分の著書を眺めているようだった。
「パパ! ご本読んで!」
愛実の手から逃げ出したナツミが懐空の足に絡みつく。
「うん、どれを読もうか?」
「その一番上の!」
今、懐空が眺めていた場所だ。
「うーーん、あそこにある本は文字ばかりだよ?」
「そうなの? ママはよく見てるよ。読むって言うか見てるの」
「へぇ……」
懐空としては苦笑するしかない。本は買ってくれるけど、読んでくれなかったということか? そんなはず、ないんだけどなぁ、と思うがナツミにそれを言っても仕方ない。
「じゃあね、こっち。猫のお話」
自分で本を引っ張り出して懐空に渡す。ナツミが選んだ本は、主人公の猫が出会いと別れを繰り返し、気の遠くなるような時間を経て、初めて『愛』に巡り合い人生の意味を知る、そんな内容の絵本だった。
愛実が出した座布団に座ると、ナツミは懐空の膝に座った。すると懐空が本を広げても、それを見ることもなく、
「今日ね、ナツミ、誕生日なの」
と、懐空のほうを向いたまま言った。
「だからパパ、来てくれたんでしょ?」
しまった、と思ったがもう遅い。知っていれば何か用意できたのに。でも、この可愛い誤解を解く必要はあるだろうか?
「うん……でもごめんね。慌ててきたからプレゼント、忘れちゃった――明日、一緒に買いに行こうか? 何がいいかな?」
するとナツミが目を見開く。
「明日? 明日もパパに会えるの?」
「うん、明日も明後日も、ずーーっと―― ママとナツミと、三人一緒だ」
「パパ!」
立ち上がったナツミが懐空に抱きつく。それを懐空が抱きとめる。
「あれ? ナツミも涙、出てきた。嬉しくっても泣くのね――ね、パパ、早く読んで」
ニコッと笑ってから懐空に背中を向けて膝に座るナツミを包み込み、懐空は本のページを捲った――
膝に座ったまま、腕にしがみ付いて眠ってしまったナツミを起こさないようベッドに運ぶ。ナツミの寝顔を眺めている懐空を残し、愛実はキッチンに向かった。
あみ、行くよ。そう言ったきり懐空は愛実に話しかけてこない。
懐空がここに来たのが偶然だとは思えない。それにたぶん、ナツミのことも判っていた。駆け寄ってくるナツミに一瞬、戸惑った顔をしたが、すぐに笑顔で抱きあげた。
杉山涼成から聞いたのだろうか? でも真由美は愛実の住所は教えていないと言っていた。だったらどうしてここが判ったのだろう?
通り過ぎたタクシーは急に停まったように思える。意識して見ていたわけじゃないから、はっきりとは言えないが、車窓から愛実を見かけ、慌てて停めたのだと思った。
だったら、偶然? でも、なんでこんなところを懐空が通る? それに、ずっと一緒だとナツミに言っていた。
ずっと一緒……懐空はわたしを迎えに来た? 愛実は思わず目を閉じた。
襖がそっと閉められる音がする。寝室にいた懐空が来たのだ。慌てて愛実は薬缶に水を入れ始める。
「お茶も淹れないでごめん。コーヒーのほうがいいかな……」
後ろに近づいた気配にそっと抱き締められた。その腕に、だんだん力が籠められる。
「……あみ、一人にさせてしまった。ごめんね」
耳元で囁く懐かしい声に愛実の息が止まる。責められると思っていた。なぜ居なくなった、そう言われると思っていた。
「戻ってきてくれるよね?」
優しい懐空、落ち着いた声で包み込んでくれる懐空……
「いやよ――」
愛実の答えに懐空が緊張する。
「お願いされても帰らない……帰って来い、って言って。なに考えてるんだって叱って」
その言葉に懐空の緊張が和らぐ。そして愛実に頬を摺り寄せる。
「戻って来い、あみ。おまえが居るところはここじゃない。僕が居るところだ」
とうにあふれ始めていた薬缶が愛実の手から落ちて、シンクで大きな音を立てる。振り向いた愛実が懐空の首に腕を回す。
「会いたかった――ずっと会いたかったの」
何も言わず愛実を抱き返すだけの懐空に、泣きじゃくりながら愛実が訴える。
「何度も後悔した。なんて馬鹿だったんだろうって――わたし、懐空のところに戻っていいのね? 懐空の邪魔にならないのね?」
懐空を見ると、穏やかに笑んだまま愛実を見つめている。
「ナツミもいるの。ナツミも一緒よね? ナツミがいたら迷惑にならない?」
懐空が返事をすることはない。こんな状態の愛実に話すより、もっと落ち着いてから話そうと思っている。それに、ナツミには用意しそこなったプレゼントだが、愛実にはちゃんと用意してある。それを渡す時が来るのを懐空はじっと待っている。
コーヒーは僕がするからと、愛実を座らせる。シンクに放り出された薬缶に水を張り直し、コンロに掛ける。
コーヒー豆がしまってある場所も、ドリッパーやフィルター、コーヒーサーバーもすぐに見つかった。愛実の収納の癖は、一緒に暮らしていた時と変わっていない。
そんな懐空を眺めながら愛実が問う。
「なぜここが判ったの?」
「うん……真由美さんに教えて貰った」
「真由美に?」
「真由美さんの連絡先は杉山先生が教えてくれた」
「そう……」
「真由美さんにお礼しなくちゃね」
「うん……」
コーヒーの香りが漂い始めると、
「お茶菓子、買ってくるの忘れた」
と懐空が呟いた。
「いらないわよ、そんなの」
「おや、甘いもの大好きなあみさんが珍しい――駅前で何か買おうって思ってたんだ。でも、気持ちが急いて忘れてしまった」
コーヒーを淹れ終わり、懐空が愛実の隣に座る。
「懐空……」
「うん?」
「――本当に、戻っても大丈夫?」
「うん……」
懐空がコーヒーを口に含む。
「結婚しよう、あみ。すぐにでも」
「えっ?」
「明日、届を出してもいい。もちろんナツミの認知もする」
「明日だなんて。そんなに急がなくても……お母さんにも挨拶してないのに」
「母は了解しているから心配ない。って言うか、母さんも結婚した。一週間経つかな」
「え? ええっ?」
「相手は言わなくても判ると思うけど、杉山涼成」
ぽかんと愛実が懐空を見た。
10
あなたにおすすめの小説
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる