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1章 夢見る村
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カッチーはババロフを見ると一瞬イヤそうな顔をしたが、ピエッチェとクルテも一緒と知ると嬉しそうな顔になった。
「俺は招かれざる客だな」
ババロフが苦笑する。
慌てて言い訳するのはカッチーだ。
「そうじゃないよ。ババロフのところに来いって言われるんじゃないかと思って」
「なんだ、俺のところはそんなに居心地が悪かったか?」
「……いいや、楽しかったよ。みんな一緒でさ。だから困るんだ」
「困る?」
「俺、この家、守んなきゃだから」
「ふむ……」
ババロフがカッチーを見詰め黙り込む。
外観だけでなく、カッチーの家は内装もそれなりに贅沢なものだった。しっかりした造り、置かれた家具も安物とは思えない。しかも、誰も住んでいないはずなのに掃除が行き届いている。
「毎日掃除しに来てるね?」
クルテがカッチーに微笑んだ。
通された部屋は大きな暖炉があり、凝った彫刻のあるテーブル、ゆったりとクッションの効いたソファーが置かれていた。
ソファーに腰を降ろすとカッチーが言った。
「母ちゃんに言われてるんだ、この家を守れって」
「おまえの気持ちも判らないでもない。でもな、カッチー、住むところだけじゃ食っていけないぞ。それにこれだけの家だ、維持していくにも金がかかる。そろそろあちこち傷みが出てるんじゃないのか?」
ババロフが諭すように言った。
「温泉が戻ってきたってことは、この村を訪れる人間が増えるってことだ。中にはここに住みたいってのも出てくる――この家なら欲しがる金持ちがきっといる。結構な金額になるはずだ。その金を元手に、これからの暮らしを立てることを考えたらどうだ?」
「でも、母ちゃんが……」
「冷たいようだが、おまえの母ちゃんはもうあの世に行っちまった。それにな、母ちゃんだっておまえに辛い思いをさせたくないはずだ」
ババロフの言うことももっともだと、カッチーも思っているのだろう、俯いて黙り込んでしまった。
いい家だよねぇ、と言ったのはクルテだ。
「カッチーの親御さんって金持ちだったんじゃないの?」
答えたのはババロフだ。
「カッチーの父親は王に仕える騎士でな。休暇で温泉に来た時、カッチーの母親と知り合って一緒になった。お勤めの時は長く留守にしてたけど、カッチーの母親を大事にしてたよ。まぁ、この村じゃ飛び切り裕福だったし、カッチーの母親も幸せに暮らしてた。でもよ、父親が死んでからは収入もなくなった。蓄えで、なんとか切り盛りしてたんだと思う」
「王に仕える騎士? それって貴族なんじゃないの?」
「そう言うことになるな」
「お父さんの実家がカッチーを引き取るとは言ってこなかったんだ?」
「うーーん……」
ババロフが困った顔をする。クルテがそれを見て、
「なるほどね」
と言った。
察しの悪いピエッチェが『なるほどって?』と言おうとしたが、その前にクルテの声が頭の中に響いた。
(カッチーの母ちゃんは正妻じゃなかったってことだ)
言おうとしていた言葉をぐっと飲み込んだピエッチェだ。
こんな話をしに来たんじゃなかったとババロフが苦笑する。
「よく考えるといいよ、カッチー。で、家を売るとか、うちに来るとかって気持ちになったら、いつでも俺に相談してくれ――クルテがカッチーに話があるって言うんで来たんだ」
それを聞いてカッチーが俯いていた顔を上げ、クルテを見た。ニッコリとクルテが笑む。
「カッチー、ピエッチェがおまえを弟子にするって言ってる。どうする?」
「えっ?」
驚いたカッチーとババロフがピエッチェを見た。
「え、いや……いやじゃなければ、の話だ」
クルテの言葉に驚いているのはピエッチェも同じ、弟子にするなんて言ってないし考えてもいない。だがそうも言えない。慌ててクルテに話を合わせて取り繕った。
「本当に弟子にしてくれるんですか!?」
カッチーが目を輝かせ、
「それじゃあ村に残る気になってくれたのか?」
ババロフも喜んでいる。
「いいや、弟子になるならカッチーは僕たちと一緒に旅に出る。それが条件。どうする、カッチー?」
「旅……この村を出る?」
途端にカッチーが沈み、ババロフも明白にがっかりする。
気にする様子もなくクルテが続けた。
「うん、この村を出る――弟子と言ってもはっきり言って従者だ。下働きをして貰いたい。まぁ、そんなに難しいことはさせないから心配しなくていいし、給金も払う。給金の一部はババロフに送る。その金で、ババロフにこの家の維持管理をして欲しいんだ……どうだろう、ババロフ? いくら金が必要?」
「え、ええっ?」
驚いて素っ頓狂な声を出すババロフをカッチーが見詰める。そんなカッチーにババロフが問う。
「おまえ、この人たちと旅に出たいか?」
「……旅なんかしたことない。だから旅がしたいかどうかは判らない。でも、剣の鍛錬はしたい。ピエッチェみたいに魔物を退治できるようになったらこの村に戻ってくる。戻ってきて、今度は俺がこの村を守りたい――旅に出るのに気掛かりなのは、この家だけなんだ」
ババロフが溜息を吐き、クルテを見る。
「そういう事なら未来の英雄の家の管理を任されるなんて、名誉なことだと引き受けるしかないな」
と笑った。
そのあと事務的な取り決め……カッチーの給金とかババロフに支払う額とか、をしたが、これはすぐに済んだ。ババロフもカッチーも全てクルテに任せると言ったからだ。ピエッチェは口出ししたいが頭の中にクルテの『黙ってろ』という声が何度も響き、黙っているしかなかった。
朝食は、まだ配給の食糧を取りに行っていなかったカッチーも一緒にピエッチェとクルテの部屋で摂ることにした。
「ババロフは久々の親子水入らずを楽しんでよ」
旅のあれこれを話しながら三人で食事した後、支度してくるとカッチーはいったん自宅に帰っていった。
二人きりになった部屋でピエッチェが苦情を言い始める。
「おまえって、一切、俺に相談なしだな」
するとクルテがクスッと笑った。
「相談して欲しかったか? わたしの提案に反対したかったとでも? 何か問題があったのか?」
「いや、そうじゃなくって、いきなりババロフやカッチーの前で言われたら、驚くし、対処に困るってことだ」
「ならば相談ではなく打ち合わせがしたかったってことだな?」
「うーーん、なんか打ち合わせってのとも違うような?」
「はっきりしないヤツだ……少し寝ておけ。昨夜、ロクに寝てないんだから」
「なんか目が冴えて、眠くないぞ? それにおまえは?」
「わたしのことは気にするな――いいから寝台に横になれ」
何か腑に落ちないものを感じながらピエッチェが寝台に潜り込む。
「おまえって、煩いことを言う割には素直だよな……眠くなってきただろう?」
クルテの声が遠くなる。あっという間に眠ってしまったピエッチェだ。
ピエッチェがノックの音で目を覚ました時、部屋にクルテは居なかった。ノックしたのはカッチーだ。
「クルテさんは?」
「いや、俺、寝てたから」
「大活躍したあとですもんね。疲れてて当然です」
心なしかカッチーの態度が変わってきたような気がする。今までさん付けて呼ばれてたっけ?
そんな事よりクルテはどこに行ったんだろう? 心の中で呼びかけるが返事はない。精神体になってるってわけではなくて、この部屋には居ないってことか――
ほどなく、重そうな袋を持ってクルテが帰ってきた。
「おまえ、どこ行ってたんだよ。心配したじゃないか」
ピエッチェの苦情にクルテが擽ったそうな顔で笑う。
「ピエッチェが僕の心配? ちょっと嬉しいかも」
わたしを心配する前に自分の心配をしたらどうだ? いつものクルテならそう答えそうなのにと思ってピエッチェが気付く。そうかカッチーが一緒だからか……
クルテが持ち帰ったのは金が入った袋だった。そんな大金どうしたんだ? と言おうとするとクルテに先を越される。
(黙っとけ、文無し!)
文無しなのは事実だが、ムカつくのはなぜだろう?
「カッチー、悪いけどババロフを呼んできてくれる? 宿賃と一回目の支払いを済ませたら出発する」
「はいっ! クルテさん」
すぐさま動くカッチー、やる気満々と言ったところか。
カッチーが部屋を出ると、
「そんな金、どうしたんだよ?」
遠慮なくピエッチェが口にした。
「女神の森から持ってきた」
「女神の森?」
「預けておいた金。精霊とは古馴染だと言ったはず」
「預けておいた? って、そんな金、どうしておまえが持ってる?」
「ピエッチェ、おまえ、面倒。いちいち説明を求めるな――ババロフへの支払い、カッチーの給金、今夜からの飯代、宿賃、いろいろ入用なんだからつべこべ言うな。むしろ、ありがたがるところだ」
「盗んできたんじゃないだろうな?」
するとクルテがジロリとピエッチェを見た。
「そんな心配は無用。盗んでなんかいない――だがピエッチェ。これから先は『たかが盗み』と思えるようになっておかないと乗り越えられないぞ」
「どういう意味だ?」
「王位を取り返すんだろう? そのためには意に反することや薄汚いことだって、しなくちゃならない時もあるってことだ――精霊にババロフへの二回目以降の支払いと監視も頼んでおいた」
「二回目以降と監視って?」
「ババロフとは三月ごとに送金するって約束だ。精霊が、誰かを人間に化けさせて金をババロフに届けさせる。それと、ババロフなら大丈夫だと思うが、カッチーの家をちゃんと管理するかどうか監視するんだ」
「おまえ、いったい幾ら貯め込んでたんだよ? てか、人間に化けさせるって?」
「他人の持ち金を知りたいのか? おまえ、卑しいヤツだな――多分、リスあたりに化けさせるんじゃないかな? まぁ、精霊は楽しそうだと言って引き受けた。問題ない」
「それはそうと、クルテって偽名だろ? 祝福を受けた時、真の名でなければ祝福も呪いも効力がないって精霊が言ってた。クルテってのが偽名だからゴゼリュスの魔力が効かなかったんだよな? おまえもゴゼリュスって名前が判るまで動かなかった」
「おまえのピエッチェだって偽名じゃないか。そうだ、念のため言っておく。真の名カテロヘブは不用意に漏らすな」
「うん、いろいろな意味で偽名を名乗る必要があるのはよく判った――おまえ、本当はなんて名前なんだ?」
「それを知ってどうする?」
「なんだか騙されてるみたいで気分が悪いんだよ。おまえ、嘘つきだよな。名前だけじゃない、自分を魔物だって言ったけど本当か? おまえは『精霊の名において』って詠唱した。ゴゼリュスは『精霊の矢』って言った。だいたいおまえ、精霊は苦手だって言ったのに、いろいろ頼んだりして信用しきってるよな」
「説明したって、おまえに理解できると思えない――カッチーとババロフが来た。おまえは余計なことを言わずに黙ってろ。口出しするな」
ムッとしたが扉が開く気配に黙ってしまったピエッチェだ。
約束とは別に準備金という名目でクルテがババロフに金を渡した。固辞するババロフに
「温泉が戻ったからと言ってすぐに客も戻ってくるわけじゃない。それに空き家になっていた家屋には修理が必要なものも多いだろう。そういった費えに使うといい」
と、クルテに言わされたピエッチェ、感激し、感謝を述べるババロフに気拙さから答えられずにいると、却ってババロフには寛大と見えたらしく、さらに感激されるという悪循環に陥っていた。
ババロフはカッチーにも『しっかりピエッチェさまのお役に立つんだぞ。自分の幸運に感謝を忘れちゃあならん』などと説教し、さらにピエッチェを気拙くさせた。
村を発つときには牛を牽いて街に出かけた者を除いて、村人総出で街道まで見送られた。村の出口の街道は女神の森に入るところからだ。
ババロフが執拗いほど感謝の言葉を述べてから最後にカッチーの手を握り締め『頑張るんだぞ』と涙ながらに別れを惜しんだ。
ジャノは貰った辞書を胸に抱いてクルテを見詰めていたが『頼んだよ』とクルテに言われ、やっぱり涙を浮かべて頷いた。
涙なみだの別れが展開される中、『クルテ、行っちゃうの?』と呟いたのはババロフの家で共同生活をしていた最年少、三歳の幼女だ。帰ってきた母親に抱かれてニコニコとクルテを見ていた。頭を下げる母親に抱かれたまま、『クルテ、バイバイ』と手を振り、クルテも笑顔で手を振った。
村を離れてからもポロポロ涙が止まらないカッチーに、ピエッチェが苦情を言ったのは女神の森の中間あたりだ。
「そんなに辛いなら村に帰ったらどうだ?」
「はい、すいません」
カッチーがズルズルと鼻を啜る。クルテが『そんなこと言ったら可哀想だよ』とでも言うかと思ったが何も言ってこない。肩透かしを食らった気分のピエッチェだ。
それでなくても村を出てからと言うものクルテは無言だ。とうとう森を抜け、周囲が開けた草原になる。と、道の脇に例の道標があるのに気が付いたピエッチェが足を止めた。
(森の中に有ったなんて言うなよ)
途端にクルテの声が聞こえてくる。もちろん頭の中で、だ。
(さっき、ついでだから戻しておいたんだ)
(おまえ、こんな重いもの、一人で運べたのか?)
(わたしを誰だと思っている?)
(さぁな、俺はおまえの真の名を知らない)
「あれ? この道標、なくなってたのに」
ピエッチェの様子から、カッチーも道標に目をやり立ち止まる。ピエッチェから見るとわざとらしく、カッチーから見れば自然と、クルテもカッチーに並んで足を止めた。
「真っ直ぐ行くとグリュンパ……ほかの街には行けない?」
村を出て、初めてクルテが口を開いた。
「もう少し先に脇道があって、そっちに行くとデレドケって街に出られます」
「デレドケから先は?」
「デレドケからはモフッサ街道、ギュリューとかセレンヂュゲを通って王都に行けます」
「グリュンパからは都に行けないんだ?」
「都に行くならグリュンパからのほうが近いし、道もいいからお勧めです。デレドケってあんまり評判がよくないんすよね。酒場がたくさんあって昼間も酔っ払いが歩いてるような街なんです」
「ふぅん、どんな商売が盛ん?」
「デレドケですか? 鍛冶屋が多くて農具や武具を作ってます。小売りもしてるけど、もっと大きな街や王都に卸してるって話です」
「宿屋はある?」
「はい、一軒だけあります。農具や武具を買い入れに来る商人もいますから。けっこう立派な宿で、宿賃が高くて飯は朝だけ、でも旨いって評判です」
「そっか、それじゃあデレドケに行こう――それからさ、言葉遣いなんだけど、今までと同じでいいよ」
「いや、クルテさん! デレドケはお勧めできないって言ったのに!」
歩き出したクルテにカッチーが慌てる。
「ピエッチェさんも考え直すようクルテさんに言ってくださいよ」
「んー、クルテは言い出したら聞かないからなぁ……てかさ、カッチー、俺にも遠慮は不要だ。クルテが言うように今まで通りでいいんだぞ」
「だって、俺、弟子だし……どうしよう?」
立ち尽くしてカッチーが俯く。どうも考え事をするとき、俯くのがカッチーの癖らしい。
ピエッチェがカッチーをチラリと見てから先を行くクルテを追った。追いつくとクルテがピエッチェを見てニヤッと笑った。
「待ってくださいよぉ!」
置いていかれたことに気付いたカッチーの、情けない声が聞こえて来た。
「俺は招かれざる客だな」
ババロフが苦笑する。
慌てて言い訳するのはカッチーだ。
「そうじゃないよ。ババロフのところに来いって言われるんじゃないかと思って」
「なんだ、俺のところはそんなに居心地が悪かったか?」
「……いいや、楽しかったよ。みんな一緒でさ。だから困るんだ」
「困る?」
「俺、この家、守んなきゃだから」
「ふむ……」
ババロフがカッチーを見詰め黙り込む。
外観だけでなく、カッチーの家は内装もそれなりに贅沢なものだった。しっかりした造り、置かれた家具も安物とは思えない。しかも、誰も住んでいないはずなのに掃除が行き届いている。
「毎日掃除しに来てるね?」
クルテがカッチーに微笑んだ。
通された部屋は大きな暖炉があり、凝った彫刻のあるテーブル、ゆったりとクッションの効いたソファーが置かれていた。
ソファーに腰を降ろすとカッチーが言った。
「母ちゃんに言われてるんだ、この家を守れって」
「おまえの気持ちも判らないでもない。でもな、カッチー、住むところだけじゃ食っていけないぞ。それにこれだけの家だ、維持していくにも金がかかる。そろそろあちこち傷みが出てるんじゃないのか?」
ババロフが諭すように言った。
「温泉が戻ってきたってことは、この村を訪れる人間が増えるってことだ。中にはここに住みたいってのも出てくる――この家なら欲しがる金持ちがきっといる。結構な金額になるはずだ。その金を元手に、これからの暮らしを立てることを考えたらどうだ?」
「でも、母ちゃんが……」
「冷たいようだが、おまえの母ちゃんはもうあの世に行っちまった。それにな、母ちゃんだっておまえに辛い思いをさせたくないはずだ」
ババロフの言うことももっともだと、カッチーも思っているのだろう、俯いて黙り込んでしまった。
いい家だよねぇ、と言ったのはクルテだ。
「カッチーの親御さんって金持ちだったんじゃないの?」
答えたのはババロフだ。
「カッチーの父親は王に仕える騎士でな。休暇で温泉に来た時、カッチーの母親と知り合って一緒になった。お勤めの時は長く留守にしてたけど、カッチーの母親を大事にしてたよ。まぁ、この村じゃ飛び切り裕福だったし、カッチーの母親も幸せに暮らしてた。でもよ、父親が死んでからは収入もなくなった。蓄えで、なんとか切り盛りしてたんだと思う」
「王に仕える騎士? それって貴族なんじゃないの?」
「そう言うことになるな」
「お父さんの実家がカッチーを引き取るとは言ってこなかったんだ?」
「うーーん……」
ババロフが困った顔をする。クルテがそれを見て、
「なるほどね」
と言った。
察しの悪いピエッチェが『なるほどって?』と言おうとしたが、その前にクルテの声が頭の中に響いた。
(カッチーの母ちゃんは正妻じゃなかったってことだ)
言おうとしていた言葉をぐっと飲み込んだピエッチェだ。
こんな話をしに来たんじゃなかったとババロフが苦笑する。
「よく考えるといいよ、カッチー。で、家を売るとか、うちに来るとかって気持ちになったら、いつでも俺に相談してくれ――クルテがカッチーに話があるって言うんで来たんだ」
それを聞いてカッチーが俯いていた顔を上げ、クルテを見た。ニッコリとクルテが笑む。
「カッチー、ピエッチェがおまえを弟子にするって言ってる。どうする?」
「えっ?」
驚いたカッチーとババロフがピエッチェを見た。
「え、いや……いやじゃなければ、の話だ」
クルテの言葉に驚いているのはピエッチェも同じ、弟子にするなんて言ってないし考えてもいない。だがそうも言えない。慌ててクルテに話を合わせて取り繕った。
「本当に弟子にしてくれるんですか!?」
カッチーが目を輝かせ、
「それじゃあ村に残る気になってくれたのか?」
ババロフも喜んでいる。
「いいや、弟子になるならカッチーは僕たちと一緒に旅に出る。それが条件。どうする、カッチー?」
「旅……この村を出る?」
途端にカッチーが沈み、ババロフも明白にがっかりする。
気にする様子もなくクルテが続けた。
「うん、この村を出る――弟子と言ってもはっきり言って従者だ。下働きをして貰いたい。まぁ、そんなに難しいことはさせないから心配しなくていいし、給金も払う。給金の一部はババロフに送る。その金で、ババロフにこの家の維持管理をして欲しいんだ……どうだろう、ババロフ? いくら金が必要?」
「え、ええっ?」
驚いて素っ頓狂な声を出すババロフをカッチーが見詰める。そんなカッチーにババロフが問う。
「おまえ、この人たちと旅に出たいか?」
「……旅なんかしたことない。だから旅がしたいかどうかは判らない。でも、剣の鍛錬はしたい。ピエッチェみたいに魔物を退治できるようになったらこの村に戻ってくる。戻ってきて、今度は俺がこの村を守りたい――旅に出るのに気掛かりなのは、この家だけなんだ」
ババロフが溜息を吐き、クルテを見る。
「そういう事なら未来の英雄の家の管理を任されるなんて、名誉なことだと引き受けるしかないな」
と笑った。
そのあと事務的な取り決め……カッチーの給金とかババロフに支払う額とか、をしたが、これはすぐに済んだ。ババロフもカッチーも全てクルテに任せると言ったからだ。ピエッチェは口出ししたいが頭の中にクルテの『黙ってろ』という声が何度も響き、黙っているしかなかった。
朝食は、まだ配給の食糧を取りに行っていなかったカッチーも一緒にピエッチェとクルテの部屋で摂ることにした。
「ババロフは久々の親子水入らずを楽しんでよ」
旅のあれこれを話しながら三人で食事した後、支度してくるとカッチーはいったん自宅に帰っていった。
二人きりになった部屋でピエッチェが苦情を言い始める。
「おまえって、一切、俺に相談なしだな」
するとクルテがクスッと笑った。
「相談して欲しかったか? わたしの提案に反対したかったとでも? 何か問題があったのか?」
「いや、そうじゃなくって、いきなりババロフやカッチーの前で言われたら、驚くし、対処に困るってことだ」
「ならば相談ではなく打ち合わせがしたかったってことだな?」
「うーーん、なんか打ち合わせってのとも違うような?」
「はっきりしないヤツだ……少し寝ておけ。昨夜、ロクに寝てないんだから」
「なんか目が冴えて、眠くないぞ? それにおまえは?」
「わたしのことは気にするな――いいから寝台に横になれ」
何か腑に落ちないものを感じながらピエッチェが寝台に潜り込む。
「おまえって、煩いことを言う割には素直だよな……眠くなってきただろう?」
クルテの声が遠くなる。あっという間に眠ってしまったピエッチェだ。
ピエッチェがノックの音で目を覚ました時、部屋にクルテは居なかった。ノックしたのはカッチーだ。
「クルテさんは?」
「いや、俺、寝てたから」
「大活躍したあとですもんね。疲れてて当然です」
心なしかカッチーの態度が変わってきたような気がする。今までさん付けて呼ばれてたっけ?
そんな事よりクルテはどこに行ったんだろう? 心の中で呼びかけるが返事はない。精神体になってるってわけではなくて、この部屋には居ないってことか――
ほどなく、重そうな袋を持ってクルテが帰ってきた。
「おまえ、どこ行ってたんだよ。心配したじゃないか」
ピエッチェの苦情にクルテが擽ったそうな顔で笑う。
「ピエッチェが僕の心配? ちょっと嬉しいかも」
わたしを心配する前に自分の心配をしたらどうだ? いつものクルテならそう答えそうなのにと思ってピエッチェが気付く。そうかカッチーが一緒だからか……
クルテが持ち帰ったのは金が入った袋だった。そんな大金どうしたんだ? と言おうとするとクルテに先を越される。
(黙っとけ、文無し!)
文無しなのは事実だが、ムカつくのはなぜだろう?
「カッチー、悪いけどババロフを呼んできてくれる? 宿賃と一回目の支払いを済ませたら出発する」
「はいっ! クルテさん」
すぐさま動くカッチー、やる気満々と言ったところか。
カッチーが部屋を出ると、
「そんな金、どうしたんだよ?」
遠慮なくピエッチェが口にした。
「女神の森から持ってきた」
「女神の森?」
「預けておいた金。精霊とは古馴染だと言ったはず」
「預けておいた? って、そんな金、どうしておまえが持ってる?」
「ピエッチェ、おまえ、面倒。いちいち説明を求めるな――ババロフへの支払い、カッチーの給金、今夜からの飯代、宿賃、いろいろ入用なんだからつべこべ言うな。むしろ、ありがたがるところだ」
「盗んできたんじゃないだろうな?」
するとクルテがジロリとピエッチェを見た。
「そんな心配は無用。盗んでなんかいない――だがピエッチェ。これから先は『たかが盗み』と思えるようになっておかないと乗り越えられないぞ」
「どういう意味だ?」
「王位を取り返すんだろう? そのためには意に反することや薄汚いことだって、しなくちゃならない時もあるってことだ――精霊にババロフへの二回目以降の支払いと監視も頼んでおいた」
「二回目以降と監視って?」
「ババロフとは三月ごとに送金するって約束だ。精霊が、誰かを人間に化けさせて金をババロフに届けさせる。それと、ババロフなら大丈夫だと思うが、カッチーの家をちゃんと管理するかどうか監視するんだ」
「おまえ、いったい幾ら貯め込んでたんだよ? てか、人間に化けさせるって?」
「他人の持ち金を知りたいのか? おまえ、卑しいヤツだな――多分、リスあたりに化けさせるんじゃないかな? まぁ、精霊は楽しそうだと言って引き受けた。問題ない」
「それはそうと、クルテって偽名だろ? 祝福を受けた時、真の名でなければ祝福も呪いも効力がないって精霊が言ってた。クルテってのが偽名だからゴゼリュスの魔力が効かなかったんだよな? おまえもゴゼリュスって名前が判るまで動かなかった」
「おまえのピエッチェだって偽名じゃないか。そうだ、念のため言っておく。真の名カテロヘブは不用意に漏らすな」
「うん、いろいろな意味で偽名を名乗る必要があるのはよく判った――おまえ、本当はなんて名前なんだ?」
「それを知ってどうする?」
「なんだか騙されてるみたいで気分が悪いんだよ。おまえ、嘘つきだよな。名前だけじゃない、自分を魔物だって言ったけど本当か? おまえは『精霊の名において』って詠唱した。ゴゼリュスは『精霊の矢』って言った。だいたいおまえ、精霊は苦手だって言ったのに、いろいろ頼んだりして信用しきってるよな」
「説明したって、おまえに理解できると思えない――カッチーとババロフが来た。おまえは余計なことを言わずに黙ってろ。口出しするな」
ムッとしたが扉が開く気配に黙ってしまったピエッチェだ。
約束とは別に準備金という名目でクルテがババロフに金を渡した。固辞するババロフに
「温泉が戻ったからと言ってすぐに客も戻ってくるわけじゃない。それに空き家になっていた家屋には修理が必要なものも多いだろう。そういった費えに使うといい」
と、クルテに言わされたピエッチェ、感激し、感謝を述べるババロフに気拙さから答えられずにいると、却ってババロフには寛大と見えたらしく、さらに感激されるという悪循環に陥っていた。
ババロフはカッチーにも『しっかりピエッチェさまのお役に立つんだぞ。自分の幸運に感謝を忘れちゃあならん』などと説教し、さらにピエッチェを気拙くさせた。
村を発つときには牛を牽いて街に出かけた者を除いて、村人総出で街道まで見送られた。村の出口の街道は女神の森に入るところからだ。
ババロフが執拗いほど感謝の言葉を述べてから最後にカッチーの手を握り締め『頑張るんだぞ』と涙ながらに別れを惜しんだ。
ジャノは貰った辞書を胸に抱いてクルテを見詰めていたが『頼んだよ』とクルテに言われ、やっぱり涙を浮かべて頷いた。
涙なみだの別れが展開される中、『クルテ、行っちゃうの?』と呟いたのはババロフの家で共同生活をしていた最年少、三歳の幼女だ。帰ってきた母親に抱かれてニコニコとクルテを見ていた。頭を下げる母親に抱かれたまま、『クルテ、バイバイ』と手を振り、クルテも笑顔で手を振った。
村を離れてからもポロポロ涙が止まらないカッチーに、ピエッチェが苦情を言ったのは女神の森の中間あたりだ。
「そんなに辛いなら村に帰ったらどうだ?」
「はい、すいません」
カッチーがズルズルと鼻を啜る。クルテが『そんなこと言ったら可哀想だよ』とでも言うかと思ったが何も言ってこない。肩透かしを食らった気分のピエッチェだ。
それでなくても村を出てからと言うものクルテは無言だ。とうとう森を抜け、周囲が開けた草原になる。と、道の脇に例の道標があるのに気が付いたピエッチェが足を止めた。
(森の中に有ったなんて言うなよ)
途端にクルテの声が聞こえてくる。もちろん頭の中で、だ。
(さっき、ついでだから戻しておいたんだ)
(おまえ、こんな重いもの、一人で運べたのか?)
(わたしを誰だと思っている?)
(さぁな、俺はおまえの真の名を知らない)
「あれ? この道標、なくなってたのに」
ピエッチェの様子から、カッチーも道標に目をやり立ち止まる。ピエッチェから見るとわざとらしく、カッチーから見れば自然と、クルテもカッチーに並んで足を止めた。
「真っ直ぐ行くとグリュンパ……ほかの街には行けない?」
村を出て、初めてクルテが口を開いた。
「もう少し先に脇道があって、そっちに行くとデレドケって街に出られます」
「デレドケから先は?」
「デレドケからはモフッサ街道、ギュリューとかセレンヂュゲを通って王都に行けます」
「グリュンパからは都に行けないんだ?」
「都に行くならグリュンパからのほうが近いし、道もいいからお勧めです。デレドケってあんまり評判がよくないんすよね。酒場がたくさんあって昼間も酔っ払いが歩いてるような街なんです」
「ふぅん、どんな商売が盛ん?」
「デレドケですか? 鍛冶屋が多くて農具や武具を作ってます。小売りもしてるけど、もっと大きな街や王都に卸してるって話です」
「宿屋はある?」
「はい、一軒だけあります。農具や武具を買い入れに来る商人もいますから。けっこう立派な宿で、宿賃が高くて飯は朝だけ、でも旨いって評判です」
「そっか、それじゃあデレドケに行こう――それからさ、言葉遣いなんだけど、今までと同じでいいよ」
「いや、クルテさん! デレドケはお勧めできないって言ったのに!」
歩き出したクルテにカッチーが慌てる。
「ピエッチェさんも考え直すようクルテさんに言ってくださいよ」
「んー、クルテは言い出したら聞かないからなぁ……てかさ、カッチー、俺にも遠慮は不要だ。クルテが言うように今まで通りでいいんだぞ」
「だって、俺、弟子だし……どうしよう?」
立ち尽くしてカッチーが俯く。どうも考え事をするとき、俯くのがカッチーの癖らしい。
ピエッチェがカッチーをチラリと見てから先を行くクルテを追った。追いつくとクルテがピエッチェを見てニヤッと笑った。
「待ってくださいよぉ!」
置いていかれたことに気付いたカッチーの、情けない声が聞こえて来た。
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元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
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かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
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俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
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[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
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