313 / 434
17章 選択された祖国
5
しおりを挟む
カッチーの身分をどうするか? クルテの身分をどう説明するかよりも難問に思えた。母親がピエッチェの叔母にあたるのは間違いないだろう。そして多分、父親はローシェッタの上流貴族だ。父親が誰であるかはっきりすれば、そちらの意向も無視できない。一方的にザジリレン王家に繋がる者だと、主張するのは間違いだ。それに何よりピエッチェは、カッチーの意思を尊重したいと思っていた。
「俺の弟子だよ、トロンペセス。おまえの孫弟子ってことだ」
ここでも迂闊なことは言えずに、そう誤魔化したピエッチェだ。これにはトロンペセスが擽ったそうな顔をした。
「なんと! カテロヘブさまが弟子をお取りになったって? それほどの腕前でしたかな?……でも、あの若者の太刀筋、確かにわたしが王子さまにお教えしたものと同じでした」
憎まれ口を叩くものの、嬉しそうだ。
細かい話をし、トロンペセスが警備隊本部に帰っていったのはそろそろ夕食の時刻と言う頃、
「この格好で、宿の従業員に見られるわけにはいきません」
顔を顰めて物乞いから買ったローブに袖を通しながらトロンペセスが言った。
「戻ったら、すぐに不採用を言い渡してカッチーを帰しますよ。警備隊では勿体ないとでも言えば、みな納得するでしょう」
それから少し考えて、
「彼、馬には乗れるのですか?」
と訊いた。
練習中だよ、とピエッチェが答えると、
「だったら、王都に行って騎士隊の採用試験を受けろと言います。彼なら立派な騎士になるでしょう――では、いずれまた」
笑顔を見せて帰っていった。
「このご時世に、騎士を目指す者が居るのでしょうか?」
ラクティメシッスが苦笑する。戦争が始まれば、必ず騎士は戦場に赴く――
カッチーが戻ってきたのは、宿の給仕係が配膳を終える頃だった。
「いいタイミングね」
マデルが笑顔でカッチーを出迎えた。
食事中の話題はもちろん明日からの行動計画、ローシェッタに行くルートはすぐに決まった。ミテスクの森を抜け封印の岩を超える、ザジリレン入国時の逆を行く。
「あの時、お馬さんが飛べるって判ってたら楽だったんですけどね」
ラクティメシッスが苦笑する。するとクルテがスプーンで掬ったプディングを眺めながら言った。
「ワッテンハイゼまでカッチーを乗せて走ったことで魔力が目覚めたのかも?――んー、これが卵と牛乳だなんて、やっぱり納得できない」
横からマデルが『今度、一緒に作ってみようか?』と言って、クルテが嬉しそうに頷いた。
「なるほど、お嬢さんの言う通りかもしれませんね。何しろあのお馬さんには驚かされっぱなしで……魔物になって間もないんでしたっけ? 赤ちゃんと同じかな。赤ちゃんって、毎日成長してるのが目に見えるほどらしいから」
「ラスティンさんは子ども、何人くらい欲しいんですか?」
なんの気なしに訊いたのはカッチー、チラリとマデルを見てラクティメシッスが答えた。
「何人でもと言いたいところですが、授かりものですからね。まぁ、最低一人は欲しいけど、できなきゃできなくてもいいかな」
「えっと、跡取りが必要ってことですよね?」
カッチーも馬鹿なことを訊いたと思ったのだろう。それでも急に話を変えれば土壺に嵌ると考えたのか、話題を変えずにいた。
「いいえ、いざとなったら妹の子を継承子に指名することもできますし――って、そうそう、妹で思い出した。昨日部下から連絡があったんですがね」
ラクティメシッスが慌てたようにピエッチェを見る。
「フレヴァンスの馬鹿、父上が何もできない、わたしも留守、それをいいことに勝手なことをしてしまいました」
「俺に言うってことはザジリレンに宣戦布告したとか?」
「いえ、ザジリレン国王に結婚の申し込みをしたそうです」
「へっ? ザジリレン国王って、俺?」
「他に誰が居るんですよ?――開戦するかもって時になにを考えてるんだか。まぁ、カテロヘブ王が不在なのは諸国に知れ渡っていますから、それを理由にザジリレンは断ってくるか、返答を先延ばしにすると見込んでいます。帰国し次第、わたしの名で丁重にお詫びして撤回しますのでご心配には及びません」
「それじゃあ、早くララティスチャングに行かなきゃですね」
笑ったらいいのか呆れたらいいのか迷ったけれど、ここは心配そうな顔をするところだと、判断したかのようなカッチーだ。
話はローシェッタに入国してからのことに移る。真っ直ぐララティスチャングに向かうのはいいとして、置き去りになっている問題も多々あった。
「王家を狙うヤツのことは後回しにしましょう。ザジリレン側の首謀者と同時に断罪しなければ、そちらを逃がしてしまうことになり兼ねません」
ラクティメシッスの考えに、ピエッチェも同意だ。
「ジランチェニシスはどうするのか決まったのか?」
「それが、相変わらずノホメの所在も素性も不明で……クサッティヤの家族も青くなって探し回っているらしいんですが見つかっていません。ジランチェニシスの父親か母親、どちらか判ればいろいろ判ってくると思うんですが、そちらも進展がありません」
ジランチェニシスの母親は前ザジリレン王の叔母と判っているが、それをラクティメシッスには告げていない。どうして判ったか説明ができないし、父親が誰かによって面倒な国際問題に発展しかねない。だから迂闊には教えられなかった。
父親が判ればおのずから母親の素性も判るのではないか? そうなればラクティメシッスからピエッチェに何かしらの相談があるはずだ。ローシェッタの事情や考えを聞いてからこちらの出方を考えても遅くない。どちらにしろ失われた王女、ザジリレンでは最初からいなかった王女に拘るつもりはない。
同じ『失われた王女』の子だとしても、カッチーについてはそうはいかない。自分の家臣にと考え、カッチー本人もピエッチェについていくと決めている。だからザジリレンで引き立てたいとは思うものの、従弟であるカッチーの処遇は悩みどころだ。ローシェッタ出身のカッチーを重用するには、カッチー自身の素養と確かな身元が必要だ。失われた王女の子だと主張するのは簡単だが、その根拠を示すのは難しい。
それにマデルが言っていた『孫を探している貴族』も気になる。もしも本当にカッチーがその貴族の孫だったら? とうとうコゲゼリテに孫がいると突き止めた貴族がカッチーの復籍を求めてきたら? 孫を探しているのは継承させるためだと聞いている。明らかになれば必ずカッチーの身柄を要求してくる。
もちろん、カッチーがその貴族の孫と決まったわけでもない。ひょっとしたら別の誰かを既に見つけているかもしれない。いっそ、世間話を装ってマデルに探りを入れてみるか? そう思ったがやめたピエッチェだ。カッチーが同席している。下手なことはしないほうがいい。
「それでララティスチャングに帰ったら、まずしなくてはならないのは王権の移譲になると思います」
ラクティメシッスが難しい顔で言った。
ローシェッタ国王、つまりラクティメシッスの父親が倒れたと聞いて何日経った?
「父上のご容体は?」
ピエッチェも難しい顔で訊いた。
「未だ意識が戻らないようです。早く帰国しろと矢のような催促が来ていたので、その点は好都合なんですけどね」
これにはラクティメシッス、苦笑した。
「ただねぇ……軍を動かすには王命が必要、でもわたしはできればまだ即位したくない」
そうか、王権の移譲ってことは現王を退位させ、王太子ラクティメシッスが即位するってことになるのか。
「いっそ、ザジリレンに倣って国王代理でも置いてみたら?」
「わたしもね、それは考えてないでもないんですよ。何しろ、意識はなくてもまだ父は存命なんです。無視したくありません。誰にも無視させない」
最後の一言はいつになく強い口調だ。
フワフワと穏やかで優しい風情、平気で軽口を叩くラクティメシッスの本質は強く厳しい。そんなこと判っていた。気が付いていた。でもそれを改めて強く感じた。
「まぁ、そのあたりは王宮に戻ってから重臣たちの顔色を見て考えますよ。わたしの即位を歓迎する者ばかりではありませんから。皮肉ですね、その人たちが味方に思えてくる」
自嘲気味に笑うラクティメシッス、王太子である彼の即位を阻むものがいる? そのあたりをもっと訊きたかったが、
「でもご安心を。軍を動かす権限は必ず手に入れます」
と言われ、追及するのは今でなくてもいいと考え直した。だいたい、他国の継承問題を聞き出そうなんて間違っている……かもしれない。
「それでピエッチェ、ミテスク村から封印の岩越えでトロンバに派兵するってことでいいんですよね?」
「うん。そうして欲しいと思っている」
「それでですね、安請け合いしたはいいけど……まぁ、軍は動かせるんだけど、さすがに理由もなしにってわけにはいかなくて。あれからいろいろ考えたんだけど、何も思いつかなくて。ピエッチェはどう考えているんですか?」
「あれ、言ってなかったか? いや、言わなくても判ってると思ってた――ザジリレンは王都に終結させた兵を、ローシェッタとの国境コッテチカに向かわせている。それを根拠に宣戦布告、まずはトロンバに奇襲をかける」
「ちょっと! ちょっと待ってください。ローシェッタとザジリレンを戦争状態にする気なんですか?」
「あぁ。で、トロンバの警護隊は敗戦、捕虜としてローシェッタ軍に吸収される。それをトロンバ街道で繰り返す」
「あっ?」
「ザジリレン国軍はコッテチカから慌てて王都に戻ろうとするが、そこはジジョネテスキの腕次第、そう簡単に帰都できない――トロンバを皮切りにローシェッタ軍は戦勝を続け、軍も兵力も拡大していく。膨大な兵力になったローシェッタが王都に着いても国軍は留守。ローシェッタの勝利だ」
「いや、だってピエッチェ。あなたが自国民を犠牲にする?」
「犠牲になんかしない。なんのためにトロンペセスが有志を集めた? どこであろうと戦場にはしない。戦ったことにして、勝敗が付いたことにして、捕縛したことにして……全て芝居だ」
「はっ!?」
呆れかえったラクティメシッス、でもすぐに、いつものように笑いだす。
「まったく、堅実に見えて実は大胆。お手本通りにしか行動しないと思っていると足を掬われる――ピエッチェ、あなたは面白い人だ」
「誉め言葉と受け取っておくよ」
ピエッチェがニヤリと笑う。
「しかしピエッチェ、それではザジリレンがローシェッタに蹂躙されたことになります。そのあたりはどう考えているんですか?」
「うん、そこで相談なんだが……」
ピエッチェが声を潜める。心理的なものだ。
「正式な宣戦布告は必要ない。戦争を仕掛けると、脅せればいいんだ」
「俺の弟子だよ、トロンペセス。おまえの孫弟子ってことだ」
ここでも迂闊なことは言えずに、そう誤魔化したピエッチェだ。これにはトロンペセスが擽ったそうな顔をした。
「なんと! カテロヘブさまが弟子をお取りになったって? それほどの腕前でしたかな?……でも、あの若者の太刀筋、確かにわたしが王子さまにお教えしたものと同じでした」
憎まれ口を叩くものの、嬉しそうだ。
細かい話をし、トロンペセスが警備隊本部に帰っていったのはそろそろ夕食の時刻と言う頃、
「この格好で、宿の従業員に見られるわけにはいきません」
顔を顰めて物乞いから買ったローブに袖を通しながらトロンペセスが言った。
「戻ったら、すぐに不採用を言い渡してカッチーを帰しますよ。警備隊では勿体ないとでも言えば、みな納得するでしょう」
それから少し考えて、
「彼、馬には乗れるのですか?」
と訊いた。
練習中だよ、とピエッチェが答えると、
「だったら、王都に行って騎士隊の採用試験を受けろと言います。彼なら立派な騎士になるでしょう――では、いずれまた」
笑顔を見せて帰っていった。
「このご時世に、騎士を目指す者が居るのでしょうか?」
ラクティメシッスが苦笑する。戦争が始まれば、必ず騎士は戦場に赴く――
カッチーが戻ってきたのは、宿の給仕係が配膳を終える頃だった。
「いいタイミングね」
マデルが笑顔でカッチーを出迎えた。
食事中の話題はもちろん明日からの行動計画、ローシェッタに行くルートはすぐに決まった。ミテスクの森を抜け封印の岩を超える、ザジリレン入国時の逆を行く。
「あの時、お馬さんが飛べるって判ってたら楽だったんですけどね」
ラクティメシッスが苦笑する。するとクルテがスプーンで掬ったプディングを眺めながら言った。
「ワッテンハイゼまでカッチーを乗せて走ったことで魔力が目覚めたのかも?――んー、これが卵と牛乳だなんて、やっぱり納得できない」
横からマデルが『今度、一緒に作ってみようか?』と言って、クルテが嬉しそうに頷いた。
「なるほど、お嬢さんの言う通りかもしれませんね。何しろあのお馬さんには驚かされっぱなしで……魔物になって間もないんでしたっけ? 赤ちゃんと同じかな。赤ちゃんって、毎日成長してるのが目に見えるほどらしいから」
「ラスティンさんは子ども、何人くらい欲しいんですか?」
なんの気なしに訊いたのはカッチー、チラリとマデルを見てラクティメシッスが答えた。
「何人でもと言いたいところですが、授かりものですからね。まぁ、最低一人は欲しいけど、できなきゃできなくてもいいかな」
「えっと、跡取りが必要ってことですよね?」
カッチーも馬鹿なことを訊いたと思ったのだろう。それでも急に話を変えれば土壺に嵌ると考えたのか、話題を変えずにいた。
「いいえ、いざとなったら妹の子を継承子に指名することもできますし――って、そうそう、妹で思い出した。昨日部下から連絡があったんですがね」
ラクティメシッスが慌てたようにピエッチェを見る。
「フレヴァンスの馬鹿、父上が何もできない、わたしも留守、それをいいことに勝手なことをしてしまいました」
「俺に言うってことはザジリレンに宣戦布告したとか?」
「いえ、ザジリレン国王に結婚の申し込みをしたそうです」
「へっ? ザジリレン国王って、俺?」
「他に誰が居るんですよ?――開戦するかもって時になにを考えてるんだか。まぁ、カテロヘブ王が不在なのは諸国に知れ渡っていますから、それを理由にザジリレンは断ってくるか、返答を先延ばしにすると見込んでいます。帰国し次第、わたしの名で丁重にお詫びして撤回しますのでご心配には及びません」
「それじゃあ、早くララティスチャングに行かなきゃですね」
笑ったらいいのか呆れたらいいのか迷ったけれど、ここは心配そうな顔をするところだと、判断したかのようなカッチーだ。
話はローシェッタに入国してからのことに移る。真っ直ぐララティスチャングに向かうのはいいとして、置き去りになっている問題も多々あった。
「王家を狙うヤツのことは後回しにしましょう。ザジリレン側の首謀者と同時に断罪しなければ、そちらを逃がしてしまうことになり兼ねません」
ラクティメシッスの考えに、ピエッチェも同意だ。
「ジランチェニシスはどうするのか決まったのか?」
「それが、相変わらずノホメの所在も素性も不明で……クサッティヤの家族も青くなって探し回っているらしいんですが見つかっていません。ジランチェニシスの父親か母親、どちらか判ればいろいろ判ってくると思うんですが、そちらも進展がありません」
ジランチェニシスの母親は前ザジリレン王の叔母と判っているが、それをラクティメシッスには告げていない。どうして判ったか説明ができないし、父親が誰かによって面倒な国際問題に発展しかねない。だから迂闊には教えられなかった。
父親が判ればおのずから母親の素性も判るのではないか? そうなればラクティメシッスからピエッチェに何かしらの相談があるはずだ。ローシェッタの事情や考えを聞いてからこちらの出方を考えても遅くない。どちらにしろ失われた王女、ザジリレンでは最初からいなかった王女に拘るつもりはない。
同じ『失われた王女』の子だとしても、カッチーについてはそうはいかない。自分の家臣にと考え、カッチー本人もピエッチェについていくと決めている。だからザジリレンで引き立てたいとは思うものの、従弟であるカッチーの処遇は悩みどころだ。ローシェッタ出身のカッチーを重用するには、カッチー自身の素養と確かな身元が必要だ。失われた王女の子だと主張するのは簡単だが、その根拠を示すのは難しい。
それにマデルが言っていた『孫を探している貴族』も気になる。もしも本当にカッチーがその貴族の孫だったら? とうとうコゲゼリテに孫がいると突き止めた貴族がカッチーの復籍を求めてきたら? 孫を探しているのは継承させるためだと聞いている。明らかになれば必ずカッチーの身柄を要求してくる。
もちろん、カッチーがその貴族の孫と決まったわけでもない。ひょっとしたら別の誰かを既に見つけているかもしれない。いっそ、世間話を装ってマデルに探りを入れてみるか? そう思ったがやめたピエッチェだ。カッチーが同席している。下手なことはしないほうがいい。
「それでララティスチャングに帰ったら、まずしなくてはならないのは王権の移譲になると思います」
ラクティメシッスが難しい顔で言った。
ローシェッタ国王、つまりラクティメシッスの父親が倒れたと聞いて何日経った?
「父上のご容体は?」
ピエッチェも難しい顔で訊いた。
「未だ意識が戻らないようです。早く帰国しろと矢のような催促が来ていたので、その点は好都合なんですけどね」
これにはラクティメシッス、苦笑した。
「ただねぇ……軍を動かすには王命が必要、でもわたしはできればまだ即位したくない」
そうか、王権の移譲ってことは現王を退位させ、王太子ラクティメシッスが即位するってことになるのか。
「いっそ、ザジリレンに倣って国王代理でも置いてみたら?」
「わたしもね、それは考えてないでもないんですよ。何しろ、意識はなくてもまだ父は存命なんです。無視したくありません。誰にも無視させない」
最後の一言はいつになく強い口調だ。
フワフワと穏やかで優しい風情、平気で軽口を叩くラクティメシッスの本質は強く厳しい。そんなこと判っていた。気が付いていた。でもそれを改めて強く感じた。
「まぁ、そのあたりは王宮に戻ってから重臣たちの顔色を見て考えますよ。わたしの即位を歓迎する者ばかりではありませんから。皮肉ですね、その人たちが味方に思えてくる」
自嘲気味に笑うラクティメシッス、王太子である彼の即位を阻むものがいる? そのあたりをもっと訊きたかったが、
「でもご安心を。軍を動かす権限は必ず手に入れます」
と言われ、追及するのは今でなくてもいいと考え直した。だいたい、他国の継承問題を聞き出そうなんて間違っている……かもしれない。
「それでピエッチェ、ミテスク村から封印の岩越えでトロンバに派兵するってことでいいんですよね?」
「うん。そうして欲しいと思っている」
「それでですね、安請け合いしたはいいけど……まぁ、軍は動かせるんだけど、さすがに理由もなしにってわけにはいかなくて。あれからいろいろ考えたんだけど、何も思いつかなくて。ピエッチェはどう考えているんですか?」
「あれ、言ってなかったか? いや、言わなくても判ってると思ってた――ザジリレンは王都に終結させた兵を、ローシェッタとの国境コッテチカに向かわせている。それを根拠に宣戦布告、まずはトロンバに奇襲をかける」
「ちょっと! ちょっと待ってください。ローシェッタとザジリレンを戦争状態にする気なんですか?」
「あぁ。で、トロンバの警護隊は敗戦、捕虜としてローシェッタ軍に吸収される。それをトロンバ街道で繰り返す」
「あっ?」
「ザジリレン国軍はコッテチカから慌てて王都に戻ろうとするが、そこはジジョネテスキの腕次第、そう簡単に帰都できない――トロンバを皮切りにローシェッタ軍は戦勝を続け、軍も兵力も拡大していく。膨大な兵力になったローシェッタが王都に着いても国軍は留守。ローシェッタの勝利だ」
「いや、だってピエッチェ。あなたが自国民を犠牲にする?」
「犠牲になんかしない。なんのためにトロンペセスが有志を集めた? どこであろうと戦場にはしない。戦ったことにして、勝敗が付いたことにして、捕縛したことにして……全て芝居だ」
「はっ!?」
呆れかえったラクティメシッス、でもすぐに、いつものように笑いだす。
「まったく、堅実に見えて実は大胆。お手本通りにしか行動しないと思っていると足を掬われる――ピエッチェ、あなたは面白い人だ」
「誉め言葉と受け取っておくよ」
ピエッチェがニヤリと笑う。
「しかしピエッチェ、それではザジリレンがローシェッタに蹂躙されたことになります。そのあたりはどう考えているんですか?」
「うん、そこで相談なんだが……」
ピエッチェが声を潜める。心理的なものだ。
「正式な宣戦布告は必要ない。戦争を仕掛けると、脅せればいいんだ」
10
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる