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第五章 孫を追いかけ王都を目指す旅で御座います。
5-7 ルラちゃんの身の上話で御座います。
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「探偵さんよぅ。ばぁばが熊っ子の娘、連れて帰って来てしもたが、大丈夫かのぅ」
「さぁ、私にも分かりませんが、悪さをするような人熊ミックスには見えませんね」
じぃじと探偵さんの声は、私の耳にも届いております。ですが、あのまま放っておく事は、出来るはずはありません。
「……ルラちゃん。あなた達は王都から来たんでしょ?」
「はい。私は生まれも育ちも王都です」
家に連れて帰って来て、ようやく落ち着いたルラちゃんで御座います。今はゆっくりゆっくり、打ち解けられるような、会話を進めて行きたいと思います。
「……ルラちゃんの歳はいくつ?」
「13歳です」
まぁ! 雷人より一つ、歳下じゃありませんか。13歳と言えば、まだまだ子供。親の愛情が必要な歳です。もちろん雷人も幼い時に両親を亡くしたので、親の愛情は知りませんが、代わりに私とじぃじとで、存分な愛情を注いでまいりました。ルラちゃんも、まだまだ愛情が必要な歳なのに、ご飯も満足に食べさせてもらえないなんて、可哀想すぎるじゃありませんか。
「……お父さんとお母さんは?」
「本当のお父さんは、会ってはダメだと、お母さんに言われてます。新しいお父さんはサーカスの団長さんです。お母さんと新しいお父さんは王都にいます。……本当のお父さんも王都にいます」
どこの世界にも、複雑な家庭環境と言うものが、あるようで御座います。……落ち着いたからでしょうか。聞いた事にはちゃんと答えてくれるルラちゃん。もしかしたら胸の内を話せる相手が、今までいなかったのかもしれません。
「王都では、お母さんと新しいお父さんと暮らしていたのかしら?」
「いいえ」
ルラちゃんが寂しそうに、目を伏せます。
「じゃあ、ルラちゃんは?」
「私はサーカス団に、金貨10枚でお母さんに売られました。お母さんと新しいお父さん……団長さんは一緒に暮らしています。私はサーカス団の仲間と暮らしています」
副団長さんがイジワルなら、団長さんになんて言いましたが、そうは易々と話が運ぶとは思えません。
「難しい質問かもしれませんが、ルラちゃんの気持ちを聞かせてくださいませ」
「えっ? 私の気持ち?」
「そうです。ルラちゃんの気持ちです。このままサーカス団に残りたいのか、それかお母さんと暮らしたいのか、それともお父さんの所へ行きたいのか」
「私は、……私は、……私は。お父さんに会いたい!」
ルラちゃんが絞り出した声は、切に願う気持ちなんでしょう。
「それがルラちゃんの気持ちで、御座いますね。さっき本当のお父さんは王都にいるって、言っておられたしたね」
「はい」
「それじゃあ決まりで御座いますね」
「何がですか?」
「私達も王都を目指しております。ですので、一緒に王都を目指しましょう。……ルラちゃんをお父さんの所にお送り致します」
「……えっ? でも私はサーカス団に売られたんです。もし逃げたら何をされるか分かりません」
「そうで御座いますね。だから逃げるのではないです。正々堂々と王都へ行きましょう。今日はもう遅いので、お休みになってください」
金貨10枚で売られたのなら、買い返せばいいだけの話で御座います。10枚では何癖を付けてくるようなら、何癖を付けられない金額を提示すれば良いだけです。
「……探偵さん。明日、出発前に少し時間をいただけますか?」
「あ、はい。構いませんが、何か?」
「ええ、少し商売をして、お金を用意建てしたいと思いまして」
「分かりました。それで幾らほど必要なんですか?」
「……そうですね。金貨100枚。1万ディナあれば問題ないと思います」
「金貨100枚、1万ディナですか!」
探偵さんが、びっくりおったまげて、声を裏返しておいでですが、私、女だてらに腹は括っております。あの人犬ミックスの副団長さんに、金貨100枚叩きつけてやろうじゃありませんか!
あら、私、今少し気性が荒くなってしまいましたね。……何だか啖呵を切る自分の姿を想像したら、昔観た極妻を思い出したので御座います。……これは失礼致しました。
「さぁ、私にも分かりませんが、悪さをするような人熊ミックスには見えませんね」
じぃじと探偵さんの声は、私の耳にも届いております。ですが、あのまま放っておく事は、出来るはずはありません。
「……ルラちゃん。あなた達は王都から来たんでしょ?」
「はい。私は生まれも育ちも王都です」
家に連れて帰って来て、ようやく落ち着いたルラちゃんで御座います。今はゆっくりゆっくり、打ち解けられるような、会話を進めて行きたいと思います。
「……ルラちゃんの歳はいくつ?」
「13歳です」
まぁ! 雷人より一つ、歳下じゃありませんか。13歳と言えば、まだまだ子供。親の愛情が必要な歳です。もちろん雷人も幼い時に両親を亡くしたので、親の愛情は知りませんが、代わりに私とじぃじとで、存分な愛情を注いでまいりました。ルラちゃんも、まだまだ愛情が必要な歳なのに、ご飯も満足に食べさせてもらえないなんて、可哀想すぎるじゃありませんか。
「……お父さんとお母さんは?」
「本当のお父さんは、会ってはダメだと、お母さんに言われてます。新しいお父さんはサーカスの団長さんです。お母さんと新しいお父さんは王都にいます。……本当のお父さんも王都にいます」
どこの世界にも、複雑な家庭環境と言うものが、あるようで御座います。……落ち着いたからでしょうか。聞いた事にはちゃんと答えてくれるルラちゃん。もしかしたら胸の内を話せる相手が、今までいなかったのかもしれません。
「王都では、お母さんと新しいお父さんと暮らしていたのかしら?」
「いいえ」
ルラちゃんが寂しそうに、目を伏せます。
「じゃあ、ルラちゃんは?」
「私はサーカス団に、金貨10枚でお母さんに売られました。お母さんと新しいお父さん……団長さんは一緒に暮らしています。私はサーカス団の仲間と暮らしています」
副団長さんがイジワルなら、団長さんになんて言いましたが、そうは易々と話が運ぶとは思えません。
「難しい質問かもしれませんが、ルラちゃんの気持ちを聞かせてくださいませ」
「えっ? 私の気持ち?」
「そうです。ルラちゃんの気持ちです。このままサーカス団に残りたいのか、それかお母さんと暮らしたいのか、それともお父さんの所へ行きたいのか」
「私は、……私は、……私は。お父さんに会いたい!」
ルラちゃんが絞り出した声は、切に願う気持ちなんでしょう。
「それがルラちゃんの気持ちで、御座いますね。さっき本当のお父さんは王都にいるって、言っておられたしたね」
「はい」
「それじゃあ決まりで御座いますね」
「何がですか?」
「私達も王都を目指しております。ですので、一緒に王都を目指しましょう。……ルラちゃんをお父さんの所にお送り致します」
「……えっ? でも私はサーカス団に売られたんです。もし逃げたら何をされるか分かりません」
「そうで御座いますね。だから逃げるのではないです。正々堂々と王都へ行きましょう。今日はもう遅いので、お休みになってください」
金貨10枚で売られたのなら、買い返せばいいだけの話で御座います。10枚では何癖を付けてくるようなら、何癖を付けられない金額を提示すれば良いだけです。
「……探偵さん。明日、出発前に少し時間をいただけますか?」
「あ、はい。構いませんが、何か?」
「ええ、少し商売をして、お金を用意建てしたいと思いまして」
「分かりました。それで幾らほど必要なんですか?」
「……そうですね。金貨100枚。1万ディナあれば問題ないと思います」
「金貨100枚、1万ディナですか!」
探偵さんが、びっくりおったまげて、声を裏返しておいでですが、私、女だてらに腹は括っております。あの人犬ミックスの副団長さんに、金貨100枚叩きつけてやろうじゃありませんか!
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