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第一章 孫を追いかけ旅の始まりで御座います。
1-8 衛兵さんへの賄賂はクッキーで御座います。
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「探偵さんよぅ。随分とまぁ、高い壁じゃのぅ」
じぃじが驚くのも無理は御座いません。目の前には10メートルくらいはあるでしょうか。高い壁が聳えているのですから。パノスの町にやっと着いたと喜んだのですが、町はこの壁の向こうのようです。
「あそこが東の門です。あそこから町に入りましょう」
探偵さんが指差した先、門は見えるのですが、その脇には衛兵さんがお二人、立っていらっしゃいます。こう言う場面、映画なんかで観た事が御座いますが、簡単に通してもらえないような記憶が。
「ばぁばよ、ボケっと突っ立ってないで、早よ。町に着いたんじゃ。さっさと門を通らせもらおうじゃないか。そうじゃのぅ、探偵さん」
ここへ来て、じぃじはとても張り切っておるようです。ピンガルの実のお陰もあると思いますが、昨日とはまるで別人のようで御座います。
「はいはい。そんなに慌てなくても町は逃げないと思いますよ」
「いえ、光江さん。日没には門が閉められてしまいます。なので何か手土産になる物を用意してください」
「手土産ですか?」
「はい。まぁ、賄賂とも言いますが」
探偵さんがおっしゃるのだから、必要なのは分かりますが。賄賂ですか。何処の世界も同じようなものなんですね。私、ちょっぴりガッカリです。
でも、手土産になるような物なんて……。何がよろしいのでしょう。
「ばぁば、何をしておるんじゃ。早よ、手土産じゃ」
「でも、何がよろしいでしょうか?」
「んんー、そうじゃのう。あっ! そうだ。ばぁば特製のクッキーじゃ。こっちに来る前に沢山焼いとったじゃろ?」
「ああ、そうですね。クッキーがありました。では、"クッキー、召喚"で、御座います」
出発前に小分けにしておいて正解でした。手の平の上に、ポンッと白いハンカチに包まれたクッキーが表れました。オレンジピールを練り込んで、さっぱりと焼き上げたので、殿方のお口にも合うはずで御座います。
「では行きましょうか。お二人は私に続いて頂ければ大丈夫です」
じぃじと並んで探偵さんの後ろを続きます。東の門とおっしゃっていましたが、私達は東から来たと言う事でしょうか。それよりも何て高い壁でしょう。ですが門はとても簡素なんですね。
「旅の者です。3名のお通しを」
門の脇に立つ衛兵さんに向かう探偵さんのお姿はとても立派で御座います。
「ギルド発行の証はお持ちか?」
「もちろん。このお二人は商人です。こちらが商人ギルド発行の証です」
「うむ。ヤスオとミツエか。分かった。そしてお主は?」
「私は冒険者です。こちらが冒険者ギルド発行の証です」
ギルド? 証? 商人? 冒険者?
何がなんだかさっぱり分かりませんが、きっと探偵さんが用意してくださったので御座いましょう。
「ふむ。お主はヨーフ・カッシーノと申すのだな」
「はい。ランクBのしがない冒険者とは私、ヨーフ・カッシーノの事です」
あら? ヨーフ・カッシーノさん? 柏木陽平さんでは? まぁ、探偵さんに変わりは御座いませんが。
「ふむ。それでお主達はギルド証だけで、ここを通ると言うのか?」
「いえいえ、まさか。……光江さん、クッキーを」
「はい」
「よろしければ、どうぞお召し上がりください」
「これはクッキーです。このお二人は商人なので、遠い異国の物が手に入ります。このパノスでは手に入らない代物ですよ」
お二人の衛兵さんが、包みのクッキーに手を伸ばされました。お口に合うといいのですが。いえ、大丈夫です。殿方のお口に合う、特製クッキーですから。
「何じゃ、このサクサクとした……。これはお菓子か? ほんのり甘くて、たまにほろ苦さもくる。こんな美味い菓子は初めて食った。んんー、もう一つ!」
衛兵さんを虜に出来て、一安心で御座います。
「光江さん、クッキーをあと二包み出せますか?」
「ええ、もちろん。……クッキー二包み、召喚で御座います」
あら? 先程のクッキーはもう全て召し上がられたんですね。探偵さんに手渡した二包みのクッキーを、お二人の衛兵さんが物欲しそうに眺めているではありませんか。
「もしよければ、ご家族にもこのクッキーをどうぞ。で、私達はもう町に入って構わないですか?」
「ええ、もちろんです。ですが、最近、西の森からゴブリンの奴らが、町を荒らしに来るんで、くれぐれも気をつけてください」
ゴブリン? さて、何の事で御座いましょう。ですが、これでやっとパノスの町に到着です。異世界とやらの町がどんな装いなのか、私、今からワクワクが止まらないので御座います。
じぃじが驚くのも無理は御座いません。目の前には10メートルくらいはあるでしょうか。高い壁が聳えているのですから。パノスの町にやっと着いたと喜んだのですが、町はこの壁の向こうのようです。
「あそこが東の門です。あそこから町に入りましょう」
探偵さんが指差した先、門は見えるのですが、その脇には衛兵さんがお二人、立っていらっしゃいます。こう言う場面、映画なんかで観た事が御座いますが、簡単に通してもらえないような記憶が。
「ばぁばよ、ボケっと突っ立ってないで、早よ。町に着いたんじゃ。さっさと門を通らせもらおうじゃないか。そうじゃのぅ、探偵さん」
ここへ来て、じぃじはとても張り切っておるようです。ピンガルの実のお陰もあると思いますが、昨日とはまるで別人のようで御座います。
「はいはい。そんなに慌てなくても町は逃げないと思いますよ」
「いえ、光江さん。日没には門が閉められてしまいます。なので何か手土産になる物を用意してください」
「手土産ですか?」
「はい。まぁ、賄賂とも言いますが」
探偵さんがおっしゃるのだから、必要なのは分かりますが。賄賂ですか。何処の世界も同じようなものなんですね。私、ちょっぴりガッカリです。
でも、手土産になるような物なんて……。何がよろしいのでしょう。
「ばぁば、何をしておるんじゃ。早よ、手土産じゃ」
「でも、何がよろしいでしょうか?」
「んんー、そうじゃのう。あっ! そうだ。ばぁば特製のクッキーじゃ。こっちに来る前に沢山焼いとったじゃろ?」
「ああ、そうですね。クッキーがありました。では、"クッキー、召喚"で、御座います」
出発前に小分けにしておいて正解でした。手の平の上に、ポンッと白いハンカチに包まれたクッキーが表れました。オレンジピールを練り込んで、さっぱりと焼き上げたので、殿方のお口にも合うはずで御座います。
「では行きましょうか。お二人は私に続いて頂ければ大丈夫です」
じぃじと並んで探偵さんの後ろを続きます。東の門とおっしゃっていましたが、私達は東から来たと言う事でしょうか。それよりも何て高い壁でしょう。ですが門はとても簡素なんですね。
「旅の者です。3名のお通しを」
門の脇に立つ衛兵さんに向かう探偵さんのお姿はとても立派で御座います。
「ギルド発行の証はお持ちか?」
「もちろん。このお二人は商人です。こちらが商人ギルド発行の証です」
「うむ。ヤスオとミツエか。分かった。そしてお主は?」
「私は冒険者です。こちらが冒険者ギルド発行の証です」
ギルド? 証? 商人? 冒険者?
何がなんだかさっぱり分かりませんが、きっと探偵さんが用意してくださったので御座いましょう。
「ふむ。お主はヨーフ・カッシーノと申すのだな」
「はい。ランクBのしがない冒険者とは私、ヨーフ・カッシーノの事です」
あら? ヨーフ・カッシーノさん? 柏木陽平さんでは? まぁ、探偵さんに変わりは御座いませんが。
「ふむ。それでお主達はギルド証だけで、ここを通ると言うのか?」
「いえいえ、まさか。……光江さん、クッキーを」
「はい」
「よろしければ、どうぞお召し上がりください」
「これはクッキーです。このお二人は商人なので、遠い異国の物が手に入ります。このパノスでは手に入らない代物ですよ」
お二人の衛兵さんが、包みのクッキーに手を伸ばされました。お口に合うといいのですが。いえ、大丈夫です。殿方のお口に合う、特製クッキーですから。
「何じゃ、このサクサクとした……。これはお菓子か? ほんのり甘くて、たまにほろ苦さもくる。こんな美味い菓子は初めて食った。んんー、もう一つ!」
衛兵さんを虜に出来て、一安心で御座います。
「光江さん、クッキーをあと二包み出せますか?」
「ええ、もちろん。……クッキー二包み、召喚で御座います」
あら? 先程のクッキーはもう全て召し上がられたんですね。探偵さんに手渡した二包みのクッキーを、お二人の衛兵さんが物欲しそうに眺めているではありませんか。
「もしよければ、ご家族にもこのクッキーをどうぞ。で、私達はもう町に入って構わないですか?」
「ええ、もちろんです。ですが、最近、西の森からゴブリンの奴らが、町を荒らしに来るんで、くれぐれも気をつけてください」
ゴブリン? さて、何の事で御座いましょう。ですが、これでやっとパノスの町に到着です。異世界とやらの町がどんな装いなのか、私、今からワクワクが止まらないので御座います。
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