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第1章:序章 ― 臨危の知見
第3話「異世界帰還者の噂」
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翌日の夕方、宅男は初めて歌舞伎町の奥まった路地に足を踏み入れていた。
「本当にこんなところに情報があるんですか?」
彼の声は震えていた。ネオンサインが煌々と光る大通りから一本入っただけで、空気は一変していた。薄暗い路地には、様々な看板が雑然と並び、得体の知れない人影がちらほらと行き交っている。
「まあ、見てくださいよ」森下は慣れた様子で歩いている。「情報屋っていうのは、こういう場所にいるものなんです」
昨夜のネット検索で、宅男と森下は興味深い情報を幾つか掴んでいた。SNSに投稿された目撃証言、掲示板での匿名告発、そしてYouTuberが「心霊現象」として紹介した不可解な映像……どれも断片的だが、共通点があった。
「氷の女性」「見えない武器を使う男性」「空を飛ぶ小さな生き物」といったキーワードが、各地で別々に目撃されているのだ。
「ありましたよ」森下が雑居ビルの一角を指差した。「『情報交換所 夜鷹』って看板、見えます?」
宅男は首を振った。薄暗くて文字が読めない。
二人は狭い階段を上がって、三階の小さなバーに入った。客は数人しかいない。カウンターの奥で、五十代の痩せた男性が無表情でグラスを拭いている。
「マスター、お疲れ様です」森下が声をかけた。
「おう、森下か」男性は顔を上げた。「また変な記事のネタ探しか?」
「今度はちょっと特殊でして」森下は宅男を紹介した。「この人、異世界帰還者の情報を探してるんです」
マスターの手が止まった。
「……何の冗談だ?」
「冗談じゃありません」宅男は勇気を振り絞って前に出た。「本当に探しているんです。国の安全に関わることで……」
「はっ」マスターは鼻で笑った。「国の安全だってよ。お前、政府の回し者か?」
「違います!」宅男は慌てて否定した。「僕は……僕はただの……」
「ただのオタクです」森下が助け船を出した。「でも、この人の分析力はすごいんです。政府も動けない案件を、個人で調べてるんですよ」
マスターは宅男をじっと見詰めた。
「で、何が欲しい?」
「異世界から帰還した人たちの居場所を知りたいんです」宅男は震え声で答えた。「特に、超常的な能力を持つ人たちを……」
「情報料は?」
宅男は財布を確認した。残高は三万円程度。決して余裕はない。
「三万円で……」
「三万?」マスターは露骨に顔をしかめた。「舐めてんのか。そんな金額で機密情報が買えると思ってるのか?」
「でも……」
「最低でも十万だ。現金で、今すぐ」
宅男の顔が青ざめた。そんな大金は持っていない。
「森下さん……」
森下も困惑の表情を見せていた。彼にとっても十万円は大金だ。
その時、バーの扉が開いて、一人の女性が入ってきた。
二十代後半と思われるその女性は、高級そうなブランドバッグを持ち、化粧も完璧だった。しかし、その瞳は冷静で計算高い光を宿していた。
「あら、面白そうな話をしているじゃない」女性は流暢に話しかけてきた。「異世界帰還者の情報、私も興味があるわ」
マスターが警戒するような表情を見せた。
「秋奈さん……なんでここに?」
「仕事よ」秋奈と呼ばれた女性は軽く微笑んだ。「で、この子たちが困ってるのね?」
「十万円用意できないなら帰れって話だ」マスターは不機嫌そうに答えた。
秋奈は宅男と森下を見詰めた。
「あなたたち、本気なの?異世界帰還者を探してるって」
「はい」宅男は必死に頷いた。「本当に必要なんです。日本の危機に関わる……」
「ふーん」秋奈は興味深そうに宅男を観察した。「で、見つけてどうするつもり?」
「協力してもらうんです」宅男の声に力がこもった。「彼らの力を借りて、迫り来る危機を回避したいんです」
秋奈は少し笑った。
「面白いじゃない。現実主義の私が言うのもなんだけど、最近は確かに変な話が多いのよね」
彼女はマスターに向き直った。
「おじさん、この子たちの情報料、私が立て替えてあげる」
「は?」マスターが驚いた。
「ただし」秋奈は宅男を見据えた。「条件がある。情報料は十五万円。利息込みで二十万円を一週間以内に返済すること。そして、もし本当に異世界帰還者を見つけて、何か『事業』が始まったら、私を仲間に入れること」
宅男は困惑した。
「事業って……」
「分からないの?」秋奈はため息をついた。「超常的な能力を持つ人たちが集まったら、色々な『ビジネス』が生まれるでしょ?その利益の一部を私にも分けてもらうの」
「でも、僕たちはお金儲けのためじゃ……」
「甘いわね」秋奈は首を振った。「世の中、金がなければ何もできない。あなたたちが正義感で動くのは結構だけど、資金がなければ理想論で終わるのよ」
森下が割り込んだ。
「秋奈さん、でしたっけ?あなたは何者なんですか?」
「商人よ」秋奈は簡潔に答えた。「特殊なアイテムを扱ってる」
彼女はハンドバッグに手を伸ばすと、中から小さなぬいぐるみを取り出した。次に、別の場所に手を入れると、今度は厚い辞書が出てきた。
「……どうやって?」宅男が驚いた。「そのバッグ、そんなに大きくないのに……」
「企業秘密よ」秋奈はウインクした。「でも、これくらいの『不思議』は私にもできるの。だから、異世界帰還者の話も、そう馬鹿馬鹿しいとは思わない」
宅男は迷った。二十万円は大金だ。しかし、ここで諦めるわけにはいかない。
「分かりました」宅男は決意を固めた。「契約します」
「宅男さん!」森下が止めようとした。
「大丈夫です」宅男は森下を制した。「未来のために、賭けてみます」
秋奈は満足そうに頷いて、マスターに現金を渡した。
「それじゃ、情報をもらいましょうか」
マスターは渋々といった様子で、カウンターの下からファイルを取り出した。
「これが最近の『異常事例』のリストだ。警察や自衛隊が表沙汰にしたくない案件も含まれてる」
宅男はファイルを受け取って目を通した。そこには、信じがたい内容が記されていた。
『北海道・札幌市近郊 氷川結(28) 気温上昇中にも関わらず周囲に氷結現象発生』
『大阪府・堺市 斎藤勇(30) 刃物を持たずに物体を切断する現象を目撃者多数が証言』
『福岡県・太宰府市 赤城龍一(26) 小型飛行物体(生物?)を操る男性の目撃談』
「これは……」宅男の手が震えた。
「本物みたいね」秋奈も興味深そうにファイルを覗き込んだ。「住所まで載ってるじゃない」
「ただし」マスターが警告した。「彼らは皆、一般社会から身を隠してる。簡単に会えるとは思うなよ」
「なぜ隠れているんですか?」森下が質問した。
「当たり前だろ」マスターは呆れた様子で答えた。「超常的な力を持ってるって知られたら、政府に捕まるか、変な宗教団体に利用されるかのどちらかだ。普通の人間も怖がって近づかない」
宅男はファイルの内容を必死に頭に叩き込んでいた。
「この氷川結さん……北海道にいるんですね」
「ああ。でも、接触は困難だぞ」マスターは続けた。「警戒心が強くて、めったに人前に姿を現さない」
「でも、やってみます」宅男は立ち上がった。「ありがとうございました」
バーを出た後、三人は近くのファミリーレストランで作戦会議を開いた。
「まずは氷川結さんから当たってみましょう」森下が提案した。「北海道は遠いですが、他の候補者より情報が詳しいです」
「交通費はどうするの?」秋奈が現実的な問題を指摘した。「北海道往復なら、最低でも十万円はかかるわ」
宅男は頭を抱えた。既に二十万円の借金を背負っているのに、さらに出費が嵩む。
「僕が出しましょう」森下が申し出た。「記事にできそうなネタですし、取材費として経費で落とせます」
「助かります」宅男は感謝した。
秋奈は興味深そうに二人を見詰めていた。
「面白いコンビね。記者とオタク。でも、本当に異世界帰還者を説得できると思ってるの?」
「やってみなければ分かりません」宅男は答えた。「でも、彼らも元は普通の日本人だったはずです。祖国の危機を伝えれば、きっと……」
「甘いわ」秋奈は首を振った。「人間はそんなに単純じゃない。特に、辛い思いをして異世界から帰ってきた人たちは、この世界に対して複雑な感情を持ってるかもしれない」
「それでも」宅男は譲らなかった。「やらなければ、本当に終わりです」
秋奈は小さくため息をついた。
「まあ、いいわ。私もついて行く。投資の行方を見届けないと」
「えっ?」宅男が驚いた。
「二十万円も貸したのよ?回収できるかどうか、自分の目で確かめさせてもらう」
森下は苦笑いを浮かべた。
「賑やかになりそうですね」
その夜、宅男は自室でノートを開いていた。そこには、今日得た情報が整理されていた。
『氷川結 - 氷系能力 - 防御・制御担当候補』
『斎藤勇 - 切断能力 - 攻撃担当候補』
『赤城龍一 - 飛行生物操作 - 空戦担当候補』
「これが僕のチームの基礎になるかもしれない……」
宅男は窓の外を見詰めた。明日から北海道へ向かう。人生で最も重要な交渉が始まる。
携帯電話が鳴った。森下からのメッセージだった。
『明日の便、予約しました。午前八時発です。準備はできていますか?』
宅男は返信した。
『はい。頑張ります。』
秋奈からも別のメッセージが届いた。
『忘れ物しないでよね。私の二十万円、きっちり回収させてもらうから。』
宅男は苦笑いしながら、荷造りを始めた。明日から、本格的な異世界帰還者探しが始まる。成功するかどうかは分からないが、後悔だけはしたくなかった。
ノートの最後のページに、宅男は小さく書き込んだ。
『作戦名:帰還者結集計画 - フェーズ1:氷川結接触作戦』
あと八日。時間は着実に減っている。しかし、希望の光も見え始めていた。
第3話 終わり
「本当にこんなところに情報があるんですか?」
彼の声は震えていた。ネオンサインが煌々と光る大通りから一本入っただけで、空気は一変していた。薄暗い路地には、様々な看板が雑然と並び、得体の知れない人影がちらほらと行き交っている。
「まあ、見てくださいよ」森下は慣れた様子で歩いている。「情報屋っていうのは、こういう場所にいるものなんです」
昨夜のネット検索で、宅男と森下は興味深い情報を幾つか掴んでいた。SNSに投稿された目撃証言、掲示板での匿名告発、そしてYouTuberが「心霊現象」として紹介した不可解な映像……どれも断片的だが、共通点があった。
「氷の女性」「見えない武器を使う男性」「空を飛ぶ小さな生き物」といったキーワードが、各地で別々に目撃されているのだ。
「ありましたよ」森下が雑居ビルの一角を指差した。「『情報交換所 夜鷹』って看板、見えます?」
宅男は首を振った。薄暗くて文字が読めない。
二人は狭い階段を上がって、三階の小さなバーに入った。客は数人しかいない。カウンターの奥で、五十代の痩せた男性が無表情でグラスを拭いている。
「マスター、お疲れ様です」森下が声をかけた。
「おう、森下か」男性は顔を上げた。「また変な記事のネタ探しか?」
「今度はちょっと特殊でして」森下は宅男を紹介した。「この人、異世界帰還者の情報を探してるんです」
マスターの手が止まった。
「……何の冗談だ?」
「冗談じゃありません」宅男は勇気を振り絞って前に出た。「本当に探しているんです。国の安全に関わることで……」
「はっ」マスターは鼻で笑った。「国の安全だってよ。お前、政府の回し者か?」
「違います!」宅男は慌てて否定した。「僕は……僕はただの……」
「ただのオタクです」森下が助け船を出した。「でも、この人の分析力はすごいんです。政府も動けない案件を、個人で調べてるんですよ」
マスターは宅男をじっと見詰めた。
「で、何が欲しい?」
「異世界から帰還した人たちの居場所を知りたいんです」宅男は震え声で答えた。「特に、超常的な能力を持つ人たちを……」
「情報料は?」
宅男は財布を確認した。残高は三万円程度。決して余裕はない。
「三万円で……」
「三万?」マスターは露骨に顔をしかめた。「舐めてんのか。そんな金額で機密情報が買えると思ってるのか?」
「でも……」
「最低でも十万だ。現金で、今すぐ」
宅男の顔が青ざめた。そんな大金は持っていない。
「森下さん……」
森下も困惑の表情を見せていた。彼にとっても十万円は大金だ。
その時、バーの扉が開いて、一人の女性が入ってきた。
二十代後半と思われるその女性は、高級そうなブランドバッグを持ち、化粧も完璧だった。しかし、その瞳は冷静で計算高い光を宿していた。
「あら、面白そうな話をしているじゃない」女性は流暢に話しかけてきた。「異世界帰還者の情報、私も興味があるわ」
マスターが警戒するような表情を見せた。
「秋奈さん……なんでここに?」
「仕事よ」秋奈と呼ばれた女性は軽く微笑んだ。「で、この子たちが困ってるのね?」
「十万円用意できないなら帰れって話だ」マスターは不機嫌そうに答えた。
秋奈は宅男と森下を見詰めた。
「あなたたち、本気なの?異世界帰還者を探してるって」
「はい」宅男は必死に頷いた。「本当に必要なんです。日本の危機に関わる……」
「ふーん」秋奈は興味深そうに宅男を観察した。「で、見つけてどうするつもり?」
「協力してもらうんです」宅男の声に力がこもった。「彼らの力を借りて、迫り来る危機を回避したいんです」
秋奈は少し笑った。
「面白いじゃない。現実主義の私が言うのもなんだけど、最近は確かに変な話が多いのよね」
彼女はマスターに向き直った。
「おじさん、この子たちの情報料、私が立て替えてあげる」
「は?」マスターが驚いた。
「ただし」秋奈は宅男を見据えた。「条件がある。情報料は十五万円。利息込みで二十万円を一週間以内に返済すること。そして、もし本当に異世界帰還者を見つけて、何か『事業』が始まったら、私を仲間に入れること」
宅男は困惑した。
「事業って……」
「分からないの?」秋奈はため息をついた。「超常的な能力を持つ人たちが集まったら、色々な『ビジネス』が生まれるでしょ?その利益の一部を私にも分けてもらうの」
「でも、僕たちはお金儲けのためじゃ……」
「甘いわね」秋奈は首を振った。「世の中、金がなければ何もできない。あなたたちが正義感で動くのは結構だけど、資金がなければ理想論で終わるのよ」
森下が割り込んだ。
「秋奈さん、でしたっけ?あなたは何者なんですか?」
「商人よ」秋奈は簡潔に答えた。「特殊なアイテムを扱ってる」
彼女はハンドバッグに手を伸ばすと、中から小さなぬいぐるみを取り出した。次に、別の場所に手を入れると、今度は厚い辞書が出てきた。
「……どうやって?」宅男が驚いた。「そのバッグ、そんなに大きくないのに……」
「企業秘密よ」秋奈はウインクした。「でも、これくらいの『不思議』は私にもできるの。だから、異世界帰還者の話も、そう馬鹿馬鹿しいとは思わない」
宅男は迷った。二十万円は大金だ。しかし、ここで諦めるわけにはいかない。
「分かりました」宅男は決意を固めた。「契約します」
「宅男さん!」森下が止めようとした。
「大丈夫です」宅男は森下を制した。「未来のために、賭けてみます」
秋奈は満足そうに頷いて、マスターに現金を渡した。
「それじゃ、情報をもらいましょうか」
マスターは渋々といった様子で、カウンターの下からファイルを取り出した。
「これが最近の『異常事例』のリストだ。警察や自衛隊が表沙汰にしたくない案件も含まれてる」
宅男はファイルを受け取って目を通した。そこには、信じがたい内容が記されていた。
『北海道・札幌市近郊 氷川結(28) 気温上昇中にも関わらず周囲に氷結現象発生』
『大阪府・堺市 斎藤勇(30) 刃物を持たずに物体を切断する現象を目撃者多数が証言』
『福岡県・太宰府市 赤城龍一(26) 小型飛行物体(生物?)を操る男性の目撃談』
「これは……」宅男の手が震えた。
「本物みたいね」秋奈も興味深そうにファイルを覗き込んだ。「住所まで載ってるじゃない」
「ただし」マスターが警告した。「彼らは皆、一般社会から身を隠してる。簡単に会えるとは思うなよ」
「なぜ隠れているんですか?」森下が質問した。
「当たり前だろ」マスターは呆れた様子で答えた。「超常的な力を持ってるって知られたら、政府に捕まるか、変な宗教団体に利用されるかのどちらかだ。普通の人間も怖がって近づかない」
宅男はファイルの内容を必死に頭に叩き込んでいた。
「この氷川結さん……北海道にいるんですね」
「ああ。でも、接触は困難だぞ」マスターは続けた。「警戒心が強くて、めったに人前に姿を現さない」
「でも、やってみます」宅男は立ち上がった。「ありがとうございました」
バーを出た後、三人は近くのファミリーレストランで作戦会議を開いた。
「まずは氷川結さんから当たってみましょう」森下が提案した。「北海道は遠いですが、他の候補者より情報が詳しいです」
「交通費はどうするの?」秋奈が現実的な問題を指摘した。「北海道往復なら、最低でも十万円はかかるわ」
宅男は頭を抱えた。既に二十万円の借金を背負っているのに、さらに出費が嵩む。
「僕が出しましょう」森下が申し出た。「記事にできそうなネタですし、取材費として経費で落とせます」
「助かります」宅男は感謝した。
秋奈は興味深そうに二人を見詰めていた。
「面白いコンビね。記者とオタク。でも、本当に異世界帰還者を説得できると思ってるの?」
「やってみなければ分かりません」宅男は答えた。「でも、彼らも元は普通の日本人だったはずです。祖国の危機を伝えれば、きっと……」
「甘いわ」秋奈は首を振った。「人間はそんなに単純じゃない。特に、辛い思いをして異世界から帰ってきた人たちは、この世界に対して複雑な感情を持ってるかもしれない」
「それでも」宅男は譲らなかった。「やらなければ、本当に終わりです」
秋奈は小さくため息をついた。
「まあ、いいわ。私もついて行く。投資の行方を見届けないと」
「えっ?」宅男が驚いた。
「二十万円も貸したのよ?回収できるかどうか、自分の目で確かめさせてもらう」
森下は苦笑いを浮かべた。
「賑やかになりそうですね」
その夜、宅男は自室でノートを開いていた。そこには、今日得た情報が整理されていた。
『氷川結 - 氷系能力 - 防御・制御担当候補』
『斎藤勇 - 切断能力 - 攻撃担当候補』
『赤城龍一 - 飛行生物操作 - 空戦担当候補』
「これが僕のチームの基礎になるかもしれない……」
宅男は窓の外を見詰めた。明日から北海道へ向かう。人生で最も重要な交渉が始まる。
携帯電話が鳴った。森下からのメッセージだった。
『明日の便、予約しました。午前八時発です。準備はできていますか?』
宅男は返信した。
『はい。頑張ります。』
秋奈からも別のメッセージが届いた。
『忘れ物しないでよね。私の二十万円、きっちり回収させてもらうから。』
宅男は苦笑いしながら、荷造りを始めた。明日から、本格的な異世界帰還者探しが始まる。成功するかどうかは分からないが、後悔だけはしたくなかった。
ノートの最後のページに、宅男は小さく書き込んだ。
『作戦名:帰還者結集計画 - フェーズ1:氷川結接触作戦』
あと八日。時間は着実に減っている。しかし、希望の光も見え始めていた。
第3話 終わり
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