オタク司令塔と六人の帰還英雄~日本を救う最終迎撃作戦~

K2画家・唯

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第3章:仲間集め―後半

第13話「闇より現るネクロマンサー」

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夜の旧市街は、まるで廃墟の迷宮だった。

宅男は息を切らしながら、古いビルの間を駆け抜けていた。街灯の光は乏しく、割れた窓ガラスが月光を不規則に反射している。風が建物の隙間を通る度に、不気味な唸り声のような音が響いた。

「森下さん!どこにいるんですか!」

宅男の声が暗闇に吸い込まれていく。返事はない。

一時間前、森下は「異世界帰還者の新たな情報を得た」と言って一人で出かけた。連絡を取ろうとしても携帯電話は圏外。GPS信号も途切れている。

宅男が最後に森下の居場所を特定できたのは、この廃墟群の入り口だった。

「まさか……」

宅男は不安を抱えながら、さらに奥へと進んだ。足音が響く度に、何かが動く気配を感じる。しかし、振り返っても何も見えない。

古いオフィスビルの階段を上がっていると、突然暗闇から声が響いた。

「そこまでだ」

宅男は立ち止まった。声の主は見えないが、確実にそこにいる。

「森下優斗を探しているんだろう?」声が続いた。「残念だが、彼は私の手の中にある」

「誰ですか?姿を見せてください」宅男は震え声で言った。

笑い声が暗闇から響いた。そして、階段の上の影が動いた。

現れたのは、二十代後半と思われる女性だった。長い黒髪、黒い服装、そして何より印象的なのは、その瞳の冷たさだった。まるで生きる者を見下すような、氷のような視線。

「根黒凪だ」女性は名乗った。「お前が間二屋宅男か」

「森下さんはどこに?」宅男は恐怖を押し殺して質問した。

凪は指を鳴らした。すると、宅男の足元に影が現れ、その中から森下が姿を表した。しかし、彼は影に縛られたような状態で、動くことができずにいる。

「森下さん!」宅男は駆け寄ろうとしたが、凪が手を上げて制した。

「動くな。彼の命は私の手の中にある」

森下は恐怖で顔を青ざめさせていたが、宅男を見つけて安堵の表情を見せた。

「宅男さん……」森下は弱々しく言った。「この人は本物です。影を操って……」

「黙れ」凪が冷たく命令すると、森下の口が影で塞がれた。

宅男は震えながらも、凪と向き合った。

「何が目的ですか?」

「お前を試すことだ」凪は答えた。「無力な司令塔など、この世に必要ない」

「試す?」

「そうだ」凪は影を操って、森下を宙に浮かべた。「お前に選択を与えよう。この男を見捨てて逃げるか、無駄な抵抗をして一緒に死ぬか」

宅男は冷や汗をかいた。凪の能力は明らかに人間の常識を超えている。影を自在に操り、人を縛り、移動させることができる。

「どちらを選ぶ?」凪が問い詰めた。「弱者を守る策?そんなもの、最初に死ぬのはお前だ」

宅男は必死に考えた。力では凪に対抗できない。しかし、諦めるわけにはいかない。

「俺は弱いです」宅男は認めた。「力もありません。魔法も使えません」

「なら、諦めろ」凪は冷笑した。

「でも」宅男は続けた。「弱いからこそ、分かることがあります」

「何だと?」

「強いお前たちを導く方法です」宅男は真剣に言った。「俺は切り捨てる策は選びません。全員を生かす策を選びます」

凪の表情が微かに変わった。

「全員を生かす?馬鹿なことを言うな」

「馬鹿でも何でもありません」宅男は反論した。「俺にはそれしかないんです。力がないから、知恵で勝つしかない。誰も見捨てない作戦を立てるしかないんです」

凪は影渡りを使って、瞬時に宅男の背後に移動した。冷たい殺気が首筋に感じられる。

「きれいごとだ」凪が耳元で囁いた。「現実はそんなに甘くない」

宅男は振り返らなかった。恐怖で体は震えていたが、一歩も退こうとしない。

「甘くないのは分かってます」宅男は答えた。「でも、それでもやります」

「なぜだ?」

「俺には、それしかできないからです」宅男の声に力が込もった。「力がない俺にとって、仲間は全てです。一人でも失えば、作戦は破綻します」

凪は長い間、宅男を見詰めていた。その瞳には、微かな動揺の色があった。

「お前は……」凪が呟いた。「死者を操る私に、生者を大切にしろと言うのか?」

「言いません」宅男は答えた。「でも、生者を見捨てないでほしいと言います」

凪は影から手を出して、森下の拘束を解いた。森下は地面に落下したが、無事だった。

「森下さん!」宅男は駆け寄った。

「宅男さん……」森下は安堵の涙を流した。「信じてました。あなたなら、必ず助けに来てくれるって」

凪は二人を見下ろしていた。

「面白い男だな、お前は」凪は宅男に言った。「普通なら、とっくに逃げ出している」

「逃げませんよ」宅男は答えた。「仲間を見捨てることはできません」

「仲間?」凪は首をかしげた。「私はまだ、お前の仲間になったつもりはないが」

「でも、話は聞いてくれました」宅男は指摘した。「それだけで十分です」

凪は小さくため息をついた。

「信頼はしない」凪は断言した。「だが、観察はしてやる」

「観察?」

「お前の『全員を生かす策』とやらを見てやる」凪は続けた。「もし、その策で本当に核ミサイルを止められるなら、考えを改めてもいい」

宅男は希望を感じた。

「ありがとうございます」

「礼はいらない」凪は影の中に消えかけた。「次はもっと深い闇を見せてやる。覚悟しておけ」

凪が完全に姿を消すと、廃墟に静寂が戻った。

「大丈夫ですか?」宅男は森下を支えた。

「ええ、何とか」森下は震えながら答えた。「しかし、すごい能力でした。影を自在に操って、瞬間移動まで……」

「彼女も仲間になってくれるかもしれません」宅男は希望的に言った。

「本当ですか?」

「完全に断られたわけじゃありません」宅男は説明した。「観察してくれるということは、可能性があるということです」

二人は廃墟を出て、街の明かりがある場所まで戻った。

宅男は手帳を取り出して、新しい項目を書き込んだ。

諜報担当候補、根黒凪。影渡り、隠密、死者操作のスキル確認。信頼は未満だが、観察・協力の余地あり。

「これで五人目ですね」森下が言った。

「まだ確定じゃありませんが」宅男は答えた。「可能性は見えてきました」

「残りは一人ですか?」

「はい」宅男は頷いた。「最後の一人。そして、最終準備」

夜空を見上げながら、宅男は決意を新たにした。あと数時間で、核ミサイル発射の時間が近づいている。

しかし、チームはほぼ完成していた。防御の結、攻撃の勇、生産の作良、空戦の龍一、そして諜報の凪。

最後の一人が加われば、最強のチームが完成する。

「必ず成功させる」

宅男の決意は、闇の中でも揺らぐことはなかった。どこかの影から、凪がその様子を見詰めているのを感じながら。

第13話 終わり
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