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第4章:チーム結成と試験運用
第16話「七人の記念撮影?」
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午後三時の演習場隣接施設は、まるで嵐の前の静寂に包まれていた。質素な合板テーブルが中央に置かれ、その周りにパイプ椅子が七つ。仮設の蛍光灯が天井から吊り下がり、白い光が人工的な明るさを投げかけている。窓の外では自衛隊車両が行き交い、遠くから訓練の号令が聞こえてくるが、この部屋だけは異質な静寂に支配されていた。
間二屋宅男は手に持ったノートを何度も開いては閉じていた。ページには「防御・打撃・空戦・諜報・生産・物流」という文字が並び、それぞれに対応する帰還者の名前が記されている。氷川結、斎藤勇、赤城龍一、根黒凪、小林作良、箱根秋奈。そして自分の名前は「司令塔」の欄に小さく書かれていた。前回までの個別接触で得た技術仕様も書き込まれている。結界持続時間1時間、不可視剣長さ30cm~3m可変、合図システム四拍子。
「本当に全員来るのかな」
不安げな呟きに応えるように、扉がノックされた。最初に姿を現したのは早川修一だった。防衛省情報官の彼は、いつもの冷静な表情を浮かべながら監査ログを最小化した資料の束を抱えて入室する。続いて陸上自衛隊特殊作戦群の米田美咲が、きびきびとした動作で室内を見回しながら着席した。
「森下さんはまだですか」宅男が尋ねると、早川は腕時計を確認して答えた。
「彼は外で待機中です。今日は記録係として同席させていただきますが、よろしいでしょうか」
「もちろんです。むしろありがたいです」
宅男がそう答えた時、扉が再び開いた。氷川結が静かに入室する。札幌から駆けつけた彼女は、相変わらず感情を表に出さない表情で空いている椅子を見回し、テーブルの向こう側に座った。宅男と視線が合うと、わずかに頷いただけで口を開かない。彼女の肩の辺りに、小さな氷の結晶がきらめいているのが見えた。氷精の気配だった。
「結さん、来てくれてありがとうございます」
「当然でしょう。約束は守ります」
短い返答に、宅男は胸の奥で安堵と緊張を同時に感じた。結の冷徹さは初対面の時から変わらないが、その裏にある信頼の芽のようなものを感じ取れるようになった自分の変化に、彼は少し驚いていた。
続いて入ってきたのは斎藤勇だった。元勇者候補の青年は、結を一瞥してから対角の席に座る。二人の間に流れる微妙な緊張感を察知した宅男は、慌ててノートを開いた。
「えっと、皆さんお疲れ様です。今日は—」
「まだ全員揃ってないじゃん」
ドアが勢いよく開いて、赤城龍一が肩に手のひら大のドラゴンを乗せながら現れた。彼の明るい声が室内の重い空気を一瞬で変える。小さなドラゴンがきょろきょろと室内を見回し、可愛らしく鳴き声を上げた。
「シルフ、お行儀よくしろよ」龍一がドラゴンの頭を軽く撫でる。
「龍一さん、シルフは—」
「大丈夫大丈夫、人畜無害だから。むしろこいつがいないと俺、力出せないし」
米田が眉をひそめたが、早川が「限定支援条件の範囲内です」と小声で説明する。龍一は結の隣の席を避けて、宅男の斜め向かいに座った。シルフは興味深そうに結を見つめ、氷精の気配に反応して小さく羽根を震わせた。
「で、作良ちゃんと秋奈さんと凪ちゃんは?」
「今来ます」
扉の外から声が聞こえ、小林作良が工具箱を抱えて入ってきた。工房から直接来たらしく、服には機械油の匂いが漂っている。彼女の後ろから箱根秋奈が、いつものビジネススーツ姿で登場する。手に持ったバッグは小さく見えるが、宅男は中に膨大な資料が入っていることを知っていた。
「すみません、最終調整に手間取りまして」作良が工具箱をテーブルの下に置きながら説明した。「結界補強用の試作品の動作確認をしていたんです。温度差6度の維持と音減衰機能のテストで」
「私は政府高官ルートとの最終確認でした」秋奈が手帳を閉じながら付け加える。「エスクロー支払いの着手5%分も入金確認済みです」
二人が着席すると、残る椅子は一つだけになった。全員が何となくその空席を見つめていると、まるで影から滲み出るように根黒凪が現れた。影渡りの能力で、廊下の影から会議室の影へと移動してきたのだった。
「お待たせ」
皮肉めいた笑みを浮かべた凪が最後の席に座ると、ついに七人が揃った。宅男は改めて見回して、自分以外の六人が全員異世界の経験者であり、それぞれが特別な力を持っていることに改めて圧倒された。
「それでは」宅男がノートを開きながら口を開く。「皆さん、本当にありがとうございます。こうして全員が集まったのは初めてですが—」
「で、具体的に何をするつもりなの?」
凪の声が宅男の言葉を遮った。暗殺者らしい鋭い視線が宅男に向けられる。
「核ミサイル迎撃が目標なのは分かったけど、あんたに何ができるのよ。私たちはそれぞれ力を持ってる。でもあんたは?」
室内の空気が一瞬で張り詰めた。宅男は慌ててノートに目を落としたが、文字が滲んで見える。
「俺は」声が震えそうになるのを必死に押さえながら続けた。「俺に力はありません。魔法も使えないし、剣も振れない。でも—」
「でも?」結が冷たい声で促した。氷精がかすかに光り、室温が少し下がったような気がした。
「皆をつなげる役なら、できると思うんです」
勇が鼻で笑った。「つなげる? 具体的には何を?」
「それぞれの能力を、一つの作戦に組み込む。結さんの結界で市街地を守り、勇さんの聖剣でミサイルを分断し、龍一さんが空中迎撃を担当する。作良さんには装備と補強材の準備をお願いして、凪さんには情報収集と撹乱を、秋奈さんには物資調達と流通を—」
宅男はノートを見ながら続けた。
「合図システムも四拍子で統一しました。合図、実施、復唱、停止。停止語はカット、退避方向は右後方。これで連携のタイムラグを最小化できます」
「理想論ね」凪が呟いた。「私たちがそう簡単に連携できるとでも思ってるの? それぞれ異世界での経験も価値観も違うのに」
「その通りです」
意外にも、結が凪の意見に同調した。肩の氷精がくるくると回転する。
「私は氷の魔導師として、常に最効率の判断を求められてきました。感情的な連携など、戦場では邪魔でしかありません。結界は衝撃吸収率30%を維持するのが精一杯で、他者への配慮など余裕はありません」
「俺だって勇者になれなかった人間だぞ」勇が苦々しく付け加える。「本当の勇者なら一人で全部解決できたはずなんだ。不可視剣で角度調整±30度なんて細かい技術を駆使するチーム戦なんて、俺の敗北の証明じゃないか」
宅男は唇を噛んだ。予想していたとはいえ、実際に否定の言葉を浴びせられると、心が折れそうになる。
「あー、もう、みんな暗すぎ!」
突然龍一が立ち上がり、手を叩いた。肩のシルフも呼応するように羽根を広げ、小さな風圧を起こす。
「確かに俺たちはバラバラかもしれない。でも宅男の言うことも一理あるぜ? シルフだって、一匹じゃ全長3mに成長しても限界がある。だから俺と組んでるんだ」
シルフが小さく鳴いて、龍一の頬を舐めた。
「龍一さんの言う通りです」
作良が工具箱の上に手を置きながら発言した。
「私の工房にある機械仕掛けのアームも、魔法紋刻の床も、異世界鉱石の素材も、一つ一つは素晴らしい技術です。でも私一人じゃ結界補強材を作っても運搬できない。秋奈さんの物流ネットワークがあれば全国展開できる。龍一さんの空中機動力があれば、設置場所の選択肢も広がる」
秋奈がバッグから手帳を取り出しながら口を開く。見た目よりもはるかに大きな手帳が出てきても、誰も驚かなかった。アイテムボックスの力を皆が知っているからだ。
「確かに物流の観点から言えば、単独行動より組織戦の方がリードタイム短縮率も破損・紛失率も改善されます。ただし」彼女の目が宅男を見据える。「利益配分と責任の所在は明確にしてもらいます。私は慈善事業をしているわけではありませんから」
「それは当然です」宅男が頷く。「エスクロー支払いについても、早川さんと調整済みです」
早川が資料を取り出した。「限定的ながら、防衛省として正式な協力要請という形を取らせていただきます。中間30%、成果65%の支払い条件で、秘匿遵守率を含むKPI指標も設定済みです」
「ふん」凪が鼻を鳴らす。「お金で動く程度の危機なら、別にチームワークなんて必要ないじゃない。本当に日本が危険なら、私は影渡りで単独行動を取るでしょうし、死者操作で敵を撹乱することもできる」
米田が手を挙げた。「軍事的観点から申し上げますが、核ミサイル迎撃は一人や少数では絶対に不可能です。多層防御、同時攻撃、情報連携、兵站支援、すべてが揃って初めて成功の可能性が生まれます。私の部隊も警戒システムを最大活用しますが、それでも限界があります」
「そうです」宅男が立ち上がった。「俺が皆さんに頼みたいのは、完璧な連携じゃありません。ただ—」
彼はノートを見つめ、それから顔を上げて全員を見回した。
「誰も切り捨てない作戦を、一緒に考えてほしいんです」
室内が静まり返った。結が眉をひそめ、氷精の光が少し強くなる。
「切り捨てない? 戦争に勝利するためには、常に何かを犠牲にする判断が求められます。それが戦略というものでしょう」
「俺もそう思ってました」宅男が結を見つめて答える。「でも、ライトノベルを読んでいて気づいたんです。主人公が最後に勝つのは、誰も見捨てないと決めた時なんです」
「ラノベって」勇が呆れたような声を出す。「現実とフィクションは違うだろ」
「でも現実でも、全員を生かす作戦の方が結果的に成功率が高くなることがあるんです」
宅男はノートの別のページを開いた。そこには様々な戦略パターンが図解されている。
「例えば、結さんの結界に全てを託して他の人は撤退させる作戦があったとします。でもそれだと結さん一人に負担が集中して、持続時間1時間を超えた時のリスクが高まる。逆に全員がそれぞれの役割を果たせば、一箇所が失敗しても他でカバーできる」
「リスク分散理論ですね」秋奈が興味深そうに呟く。「投資の世界では常識ですが、戦略にも応用できるということですか」
「そういうことです。そして—」宅男の声が熱を帯びてきた。「俺は皆さん全員を絶対に失いたくない。結さんの氷の美しさも、勇さんの真っ直ぐさも、作良さんの技術も、龍一さんとシルフの絆も、凪さんの鋭さも、秋奈さんの現実性も。全部必要なんです」
凪が苦笑いを浮かべた。「随分と理想主義的ね。でも—」
彼女は一瞬口を閉じ、それから小さく呟いた。
「嫌いじゃないわ、そういうの」
その時、扉が開いて森下優斗が顔を出した。
「すみません、お邪魔して。記録係として参加させていただければと思うのですが」
「森下さん、どうぞ」宅男が手招きする。記者の青年は壁際の補助椅子に座り、手帳を取り出した。
「実は、市民の皆さんの声をお伝えしたくて」森下が手帳をめくりながら話し始める。「この数日、核ミサイルの噂が広まって、街では不安が高まっています。避難準備をする家庭も増えて、食料品の買い占めも始まっている」
室内の空気が再び緊張した。
「でも同時に、異世界帰還者の方々が動いているという噂も流れていて、それが唯一の希望になっているんです。『もしかしたら、何とかしてくれるかもしれない』って」
森下は宅男を見つめた。
「国民は見えない不安に震えています。でも皆さんのような存在がいることで、完全に絶望はしていない。その責任の重さ、分かっていただけますか」
宅男は深く息を吸った。市民の期待と不安。それが今の自分の肩にのしかかっている現実を、改めて突きつけられた気がした。
「だからこそです」
彼は立ち上がり、全員を見回した。
「だからこそ、誰も切り捨てない作戦でなければいけない。市民も、皆さんも、俺も。全員が生き延びる方法を見つけなければならない」
結が冷たい視線を向ける。「理想は分かりました。では具体的にはどうするのですか」
「まずは皆さんの能力を正確に把握させてください」宅男がノートを開く。「その上で、最適な配置と連携パターンを考えます。シルフの風圧生成能力と結さんの氷精の連携、勇さんの不可視剣の面受け安定性を活用した防御ライン、作良さんの工房技術と秋奈さんの物流の組み合わせ—」
「そして、どんな状況になっても、誰も一人で戦わせません。俺が必ず皆を支えます」
勇が首を振った。「お前に何ができるって言うんだ。俺たちは異世界で修羅場をくぐり抜けてきた。でもお前は—」
「でも宅男は、俺たちを見つけて集めた」
龍一が割り込んだ。シルフが頷くように小さく鳴く。
「俺は地方空港の使われない滑走路で、シルフとだけ話していた。作良ちゃんは倉庫街の工房に引きこもって、現実逃避してた。みんなそれぞれ孤立してたんだ。それを繋げたのは宅男だろ?」
作良が頷く。「確かにそうですね。私、機械仕掛けのアームと魔法紋刻の床に囲まれて、一人で技術を追求するのが当たり前だと思っていました。でも宅男さんが『皆のために作ってほしい』と言った時、久しぶりに誰かのために技術を使いたいと思ったんです」
秋奈がペンを回しながら言った。「投資の観点から言えば、宅男さんは優秀なファンドマネージャーです。個別の資産(私たち)を組み合わせて、全体のパフォーマンスを最大化しようとしている。都内半地下の閉鎖カフェ裏室での交渉も、的確でした」
「そんな立派なもんじゃないですよ」宅男が苦笑いを浮かべる。「ただ、俺にはライトノベルの知識しかないんです。でもその中には、仲間と力を合わせて不可能を可能にする物語がたくさんある。それが俺の唯一の武器なんです」
凪が腕組みをして呟く。「ラノベ脳ね。でも案外、現実離れした発想の方が現実を変えることもある。旧市街の廃墟ビルで最初に会った時、あんたの発想は確かに面白かった」
その時、室内の照明が一瞬揺らいだ。全員が天井を見上げると、蛍光灯が不自然に点滅している。
「停電でしょうか」米田が立ち上がろうとした瞬間、部屋の中央に淡い光の粒子が舞い始めた。
「これは」結が身構える。「魔法の気配です」
氷精がくるくると回転し、警戒するように光る。シルフも小さく唸り声を上げて、龍一の肩で身構えた。
光の粒子が徐々に人の形を成していく。ぼんやりとした輪郭の中に、長い髪をした女性のシルエットが浮かび上がった。
「皆さん、初めまして」
美しい女性の声が室内に響く。シルエットの向こうから、エルフの特徴を持った顔立ちがうっすらと見えた。
「私はエリス・レインフォール。異世界アルドリアから、緊急の通信をお送りしています」
全員が息を呑んだ。早川と米田は慌てて立ち上がったが、結が手を上げて制止する。
「彼女は敵ではありません。魔法の波長が穏やかです」
エリスのシルエットが宅男を見つめた。
「間二屋宅男さん、あなたがこの世界の司令塔ですね。お集まりいただいている皆様も、かつて私たちの世界でお世話になった方々です」
「エリス様」作良が驚きの声を上げる。「まさか通信魔法でこちらの世界に」
「時間がありません」エリスの声に緊張が混じった。「核ミサイルの脅威は確かに存在します。しかし、それは序章に過ぎません。門が動き始めているのです」
「門?」宅男が聞き返す。
「異世界と現世を繋ぐ扉です。黒幕は核攻撃の混乱に乗じて、複数の門を開こうとしています。そうなれば—」
エリスの姿が揺らいだ。通信が不安定になっているようだった。
「皆様の世界に、我々の世界の災いが流れ込むことになります。それだけは、何としても阻止しなければ」
「待ってください」宅男が立ち上がる。「詳しく教えてください。俺たちに何ができるんですか」
しかし、エリスの姿はすでに薄くなり始めていた。
「後日、改めて連絡します。今は、チームの結束を固めてください。一人では不可能なことも、七人なら—」
最後の言葉と共に、光の粒子は完全に消えた。室内は再び人工的な蛍光灯の光だけに包まれる。氷精の光も穏やかになり、シルフは龍一の肩で小さく鳴いた。
しばらくの間、誰も口を開かなかった。異世界からの通信という現実を、それぞれが消化しようとしていた。
「すごいことになったな」龍一が最初に口を開いた。シルフを撫でながら続ける。「核ミサイルだけでも大変なのに、異世界の脅威まで」
「でも情報が得られたのは良いことです」結が冷静に分析する。氷精がうなずくように光る。「敵の全体像が見え始めました」
森下が慌てて手帳に何かを書き込んでいる。「これ、記事にしていいんでしょうか」
「ダメです」早川が即座に答える。「機密事項として扱わせていただきます」
凪が皮肉な笑みを浮かべる。「つまり私たちは、この世界と異世界、両方を相手にすることになるわけね。面白くなってきた。影渡りも死者操作も、活躍の場が広がりそう」
秋奈がため息をついた。「報酬の再計算が必要ですね。危険度が大幅に上がりました。エスクロー支払いの条件も見直しが必要かもしれません」
「でも」宅男が全員を見回す。「エリスさんが言ったように、俺たちは七人です。一人では不可能でも、みんなで力を合わせれば」
勇が腕組みをして呟く。「まだチームワークなんて言ってるのか」
「言います」宅男がきっぱりと答える。「むしろ今こそ、團結が必要じゃないですか。相手が強大なら、なおさら」
作良が工具箱を叩いた。「よし、私は結界補強材の大量生産を開始します。異世界素材も入手できそうですし、機械仕掛けのアームをフル稼働させます」
「俺もシルフとの連携を強化する」龍一が肩の小さなドラゴンを撫でる。「こいつの本気を引き出さないと。全長3mの姿も見せる時が来るかもしれない」
シルフが決意を込めたように小さく鳴いた。
「私は情報収集を開始しましょう」凪が立ち上がる。「黒幕の正体と居場所を突き止めなければ。旧兵舎跡地での実演で見せた死者操作も、本格的に使う時が来そうね」
「物資調達のルートを複数確保します」秋奈が手帳を閉じる。「異世界系の素材も扱えるよう、新しい人脈を開拓しないと。アイテムボックスの容量もフル活用します」
結が最後に口を開いた。氷精が宙を舞い、決意を表すように光る。
「私は結界術の応用研究を進めます。核ミサイル迎撃だけでなく、異世界からの侵入も防げるように。温度差と音減衰機能も強化が必要です」
勇が溜息をついて立ち上がる。「仕方ない。俺も聖剣の力をもう一度見直してみる。勇者になれなかった俺でも、不可視剣の角度調整技術をもっと磨けば、やれることはあるかもしれない」
宅男は胸が熱くなるのを感じた。批判と不信から始まった会議が、いつの間にか前向きな決意に変わっている。
「ありがとうございます、皆さん」
米田が資料を整理しながら発言した。「それでは、政府としても全面的に支援させていただきます。警戒システムも最高レベルに引き上げます。ただし、行動は慎重に。特に異世界関連の情報は、絶対に外部に漏らさないでください」
「分かりました」宅男が頷く。
森下が手を挙げる。「あの、記念撮影はどうしますか?」
「記念撮影?」
「せっかく七人が揃ったんですから。それに、もしかしたらこれが最初で最後かもしれない」
森下の提案に、一瞬室内が静まった。確かに、全員が無事に生き延びる保証はどこにもない。
「いいね」龍一が手を叩く。シルフも羽根を広げて賛成の意を示す。「記念に残そうぜ」
「別に構いませんが」結が肩をすくめる。氷精がくるりと一回転する。
「商用利用は禁止ですよ」秋奈が条件を付ける。
「当然です」森下が慌てて答える。
七人がテーブルを囲むように並んだ。宅男が中央に立ち、左右に帰還者たちが配置される。結は相変わらず無表情だが、氷精が楽しそうにくるくると回っている。勇は複雑な表情を浮かべているが、その目に迷いは少なくなっていた。作良は緊張したように手を握りしめ、龍一は肩のシルフと一緒にピースサインを作った。シルフも小さな前足でピースらしきポーズを取ろうとして、可愛らしく鳴く。凪は皮肉な笑みを浮かべているが、その表情はどこか柔らかい。秋奈はビジネススマイルを維持しているが、手帳をしっかりと胸に抱えている。
「はい、撮ります」森下がカメラを構える。「三、二、一」
シャッターが切られた瞬間、宅男は思った。この七人で本当に日本を、いや世界を救えるのだろうか。不安はまだ消えない。でも、一人一人の顔を見ていると、何かができそうな気がしてくる。
写真を確認した森下が微笑む。「いい写真です。皆さん、それぞれの個性が出ている。シルフも可愛く写ってますよ」
シルフが嬉しそうに羽根をばたつかせ、龍一の頬を舐めた。
「個性ね」凪が呟く。「バラバラすぎて収拾がつくのかしら」
「つけます」宅男がノートを開き、最後のページに「迎撃チーム=七人+支援線」と書き込む。「俺が必ず、皆の力を一つにまとめます」
結が宅男を見つめた。氷精が彼女の肩で静かに光っている。
「大言壮語ですね。でも—」
彼女は一瞬、表情を和らげた。
「期待しています」
会議は終了し、それぞれが立ち上がって帰り支度を始める。早川と米田は監査ログ最小化された書類を整理し、森下は写真をプリントアウトして全員に配った。
「それでは次回は、具体的な作戦会議ということで」宅男が提案する。
「了解」龍一が親指を立てる。シルフも小さく鳴いて同意を示す。「俺たちのチーム、名前はどうする?」
「名前?」
「せっかくだから、かっこいいチーム名があった方がいいだろ」
宅男は少し考えて答えた。
「最終迎撃作戦チーム、というのはどうでしょう」
「まんまじゃん」凪が苦笑いを浮かべる。「でもまあ、分かりやすくていいか」
「私としては、KPI指標も含めて管理しやすい名称ですね」秋奈がバッグに手帳をしまいながら言う。見た目以上の容量に手帳が吸い込まれていく。
作良が工具箱を持ち上げる。「工房に戻ったら、すぐに試作品の量産準備に入ります。魔法紋刻の床も強化しないと」
「私も氷精との連携パターンを増やしておきます」結が立ち上がる。氷精が彼女の周りを一周してから、肩に止まった。
勇がため息をつきながら言う。「不可視剣の面受け安定性も、もう一度検証してみるか」
凪は影渡りで移動しようとしたが、一度振り返って宅男を見た。
「あんたの作戦、楽しみにしてるわ。死者操作も含めて、使えるものは何でも使いなさい」
そう言って、彼女は室内の影に溶けるように消えた。
秋奈が最後に口を開く。
「エスクロー支払いの中間30%の条件も、早川さんと詰めておきましょう。異世界素材の調達ルートも確保しないと」
「お任せします」早川が頷く。
こうして、七人の帰還者と一人の司令塔による史上初のチームが結成された。まだ不安と不信は完全には解消されていないが、それでも同じ目標に向かって歩き出す意志は共有できた。
宅男は最後に残った写真を手に取り、改めて七人の顔を見つめる。結の氷精、龍一のシルフ、それぞれの個性と力。この仲間たちと一緒なら、きっと奇跡を起こせる。根拠のない確信だが、それが今の彼にとって最も大切な支えだった。
夕日が演習場に長い影を落とし始める中、七人はそれぞれの準備のために散らばっていく。結は札幌の小さな公園で結界テストを続けるだろうし、作良は倉庫街の工房で機械仕掛けのアームを稼働させるはずだ。龍一は地方空港でシルフとの飛行訓練を再開し、凪は旧市街の廃墟ビルで情報収集に励む。秋奈は都内半地下の閉鎖カフェで新たな交渉を進めるだろう。
次に全員が集まる時は、いよいよ本格的な作戦会議となるだろう。そして、その先には前代未聞の迎撃作戦が待っている。
宅男は手帳を閉じ、小さく呟いた。
「俺たちなら、きっとできる」
窓の外では、米田の部隊が警戒パトロールを続けている。早川は限定支援の条件を再確認するため、上司への報告書を作成している。森下は市民サイドの視点から、この歴史的なチーム結成をどう伝えるか考えを巡らせている。
異世界からの脅威という新たな要素が加わったが、それでも宅男の決意は揺らがない。誰も切り捨てない作戦。全員で力を合わせる戦略。ライトノベル的な発想かもしれないが、現実を変える力を持っているはずだ。
会議室を出る前に、宅男は振り返って空間を見つめた。エリスの通信があった場所には、もう何の痕跡もない。しかし、確かに異世界との繋がりが生まれた。そしてその繋がりは、やがて新たな可能性を運んでくるだろう。
「合図、実施、復唱、停止」
宅男が小さく呟く。四拍子の合図システム。停止語「カット」、退避方向「右後方」。細かな技術仕様も、大きな戦略の一部になる。
七人の記念撮影。それは単なる記録ではなく、新しい歴史の始まりを告げるシンボルだった。核ミサイル迎撃作戦。異世界からの脅威。そして、誰も切り捨てない理想の追求。
間二屋宅男という名前の司令塔と、六人の異世界帰還者。彼らの物語は、いよいよ本格的な局面を迎えようとしていた。
第16話 終わり
間二屋宅男は手に持ったノートを何度も開いては閉じていた。ページには「防御・打撃・空戦・諜報・生産・物流」という文字が並び、それぞれに対応する帰還者の名前が記されている。氷川結、斎藤勇、赤城龍一、根黒凪、小林作良、箱根秋奈。そして自分の名前は「司令塔」の欄に小さく書かれていた。前回までの個別接触で得た技術仕様も書き込まれている。結界持続時間1時間、不可視剣長さ30cm~3m可変、合図システム四拍子。
「本当に全員来るのかな」
不安げな呟きに応えるように、扉がノックされた。最初に姿を現したのは早川修一だった。防衛省情報官の彼は、いつもの冷静な表情を浮かべながら監査ログを最小化した資料の束を抱えて入室する。続いて陸上自衛隊特殊作戦群の米田美咲が、きびきびとした動作で室内を見回しながら着席した。
「森下さんはまだですか」宅男が尋ねると、早川は腕時計を確認して答えた。
「彼は外で待機中です。今日は記録係として同席させていただきますが、よろしいでしょうか」
「もちろんです。むしろありがたいです」
宅男がそう答えた時、扉が再び開いた。氷川結が静かに入室する。札幌から駆けつけた彼女は、相変わらず感情を表に出さない表情で空いている椅子を見回し、テーブルの向こう側に座った。宅男と視線が合うと、わずかに頷いただけで口を開かない。彼女の肩の辺りに、小さな氷の結晶がきらめいているのが見えた。氷精の気配だった。
「結さん、来てくれてありがとうございます」
「当然でしょう。約束は守ります」
短い返答に、宅男は胸の奥で安堵と緊張を同時に感じた。結の冷徹さは初対面の時から変わらないが、その裏にある信頼の芽のようなものを感じ取れるようになった自分の変化に、彼は少し驚いていた。
続いて入ってきたのは斎藤勇だった。元勇者候補の青年は、結を一瞥してから対角の席に座る。二人の間に流れる微妙な緊張感を察知した宅男は、慌ててノートを開いた。
「えっと、皆さんお疲れ様です。今日は—」
「まだ全員揃ってないじゃん」
ドアが勢いよく開いて、赤城龍一が肩に手のひら大のドラゴンを乗せながら現れた。彼の明るい声が室内の重い空気を一瞬で変える。小さなドラゴンがきょろきょろと室内を見回し、可愛らしく鳴き声を上げた。
「シルフ、お行儀よくしろよ」龍一がドラゴンの頭を軽く撫でる。
「龍一さん、シルフは—」
「大丈夫大丈夫、人畜無害だから。むしろこいつがいないと俺、力出せないし」
米田が眉をひそめたが、早川が「限定支援条件の範囲内です」と小声で説明する。龍一は結の隣の席を避けて、宅男の斜め向かいに座った。シルフは興味深そうに結を見つめ、氷精の気配に反応して小さく羽根を震わせた。
「で、作良ちゃんと秋奈さんと凪ちゃんは?」
「今来ます」
扉の外から声が聞こえ、小林作良が工具箱を抱えて入ってきた。工房から直接来たらしく、服には機械油の匂いが漂っている。彼女の後ろから箱根秋奈が、いつものビジネススーツ姿で登場する。手に持ったバッグは小さく見えるが、宅男は中に膨大な資料が入っていることを知っていた。
「すみません、最終調整に手間取りまして」作良が工具箱をテーブルの下に置きながら説明した。「結界補強用の試作品の動作確認をしていたんです。温度差6度の維持と音減衰機能のテストで」
「私は政府高官ルートとの最終確認でした」秋奈が手帳を閉じながら付け加える。「エスクロー支払いの着手5%分も入金確認済みです」
二人が着席すると、残る椅子は一つだけになった。全員が何となくその空席を見つめていると、まるで影から滲み出るように根黒凪が現れた。影渡りの能力で、廊下の影から会議室の影へと移動してきたのだった。
「お待たせ」
皮肉めいた笑みを浮かべた凪が最後の席に座ると、ついに七人が揃った。宅男は改めて見回して、自分以外の六人が全員異世界の経験者であり、それぞれが特別な力を持っていることに改めて圧倒された。
「それでは」宅男がノートを開きながら口を開く。「皆さん、本当にありがとうございます。こうして全員が集まったのは初めてですが—」
「で、具体的に何をするつもりなの?」
凪の声が宅男の言葉を遮った。暗殺者らしい鋭い視線が宅男に向けられる。
「核ミサイル迎撃が目標なのは分かったけど、あんたに何ができるのよ。私たちはそれぞれ力を持ってる。でもあんたは?」
室内の空気が一瞬で張り詰めた。宅男は慌ててノートに目を落としたが、文字が滲んで見える。
「俺は」声が震えそうになるのを必死に押さえながら続けた。「俺に力はありません。魔法も使えないし、剣も振れない。でも—」
「でも?」結が冷たい声で促した。氷精がかすかに光り、室温が少し下がったような気がした。
「皆をつなげる役なら、できると思うんです」
勇が鼻で笑った。「つなげる? 具体的には何を?」
「それぞれの能力を、一つの作戦に組み込む。結さんの結界で市街地を守り、勇さんの聖剣でミサイルを分断し、龍一さんが空中迎撃を担当する。作良さんには装備と補強材の準備をお願いして、凪さんには情報収集と撹乱を、秋奈さんには物資調達と流通を—」
宅男はノートを見ながら続けた。
「合図システムも四拍子で統一しました。合図、実施、復唱、停止。停止語はカット、退避方向は右後方。これで連携のタイムラグを最小化できます」
「理想論ね」凪が呟いた。「私たちがそう簡単に連携できるとでも思ってるの? それぞれ異世界での経験も価値観も違うのに」
「その通りです」
意外にも、結が凪の意見に同調した。肩の氷精がくるくると回転する。
「私は氷の魔導師として、常に最効率の判断を求められてきました。感情的な連携など、戦場では邪魔でしかありません。結界は衝撃吸収率30%を維持するのが精一杯で、他者への配慮など余裕はありません」
「俺だって勇者になれなかった人間だぞ」勇が苦々しく付け加える。「本当の勇者なら一人で全部解決できたはずなんだ。不可視剣で角度調整±30度なんて細かい技術を駆使するチーム戦なんて、俺の敗北の証明じゃないか」
宅男は唇を噛んだ。予想していたとはいえ、実際に否定の言葉を浴びせられると、心が折れそうになる。
「あー、もう、みんな暗すぎ!」
突然龍一が立ち上がり、手を叩いた。肩のシルフも呼応するように羽根を広げ、小さな風圧を起こす。
「確かに俺たちはバラバラかもしれない。でも宅男の言うことも一理あるぜ? シルフだって、一匹じゃ全長3mに成長しても限界がある。だから俺と組んでるんだ」
シルフが小さく鳴いて、龍一の頬を舐めた。
「龍一さんの言う通りです」
作良が工具箱の上に手を置きながら発言した。
「私の工房にある機械仕掛けのアームも、魔法紋刻の床も、異世界鉱石の素材も、一つ一つは素晴らしい技術です。でも私一人じゃ結界補強材を作っても運搬できない。秋奈さんの物流ネットワークがあれば全国展開できる。龍一さんの空中機動力があれば、設置場所の選択肢も広がる」
秋奈がバッグから手帳を取り出しながら口を開く。見た目よりもはるかに大きな手帳が出てきても、誰も驚かなかった。アイテムボックスの力を皆が知っているからだ。
「確かに物流の観点から言えば、単独行動より組織戦の方がリードタイム短縮率も破損・紛失率も改善されます。ただし」彼女の目が宅男を見据える。「利益配分と責任の所在は明確にしてもらいます。私は慈善事業をしているわけではありませんから」
「それは当然です」宅男が頷く。「エスクロー支払いについても、早川さんと調整済みです」
早川が資料を取り出した。「限定的ながら、防衛省として正式な協力要請という形を取らせていただきます。中間30%、成果65%の支払い条件で、秘匿遵守率を含むKPI指標も設定済みです」
「ふん」凪が鼻を鳴らす。「お金で動く程度の危機なら、別にチームワークなんて必要ないじゃない。本当に日本が危険なら、私は影渡りで単独行動を取るでしょうし、死者操作で敵を撹乱することもできる」
米田が手を挙げた。「軍事的観点から申し上げますが、核ミサイル迎撃は一人や少数では絶対に不可能です。多層防御、同時攻撃、情報連携、兵站支援、すべてが揃って初めて成功の可能性が生まれます。私の部隊も警戒システムを最大活用しますが、それでも限界があります」
「そうです」宅男が立ち上がった。「俺が皆さんに頼みたいのは、完璧な連携じゃありません。ただ—」
彼はノートを見つめ、それから顔を上げて全員を見回した。
「誰も切り捨てない作戦を、一緒に考えてほしいんです」
室内が静まり返った。結が眉をひそめ、氷精の光が少し強くなる。
「切り捨てない? 戦争に勝利するためには、常に何かを犠牲にする判断が求められます。それが戦略というものでしょう」
「俺もそう思ってました」宅男が結を見つめて答える。「でも、ライトノベルを読んでいて気づいたんです。主人公が最後に勝つのは、誰も見捨てないと決めた時なんです」
「ラノベって」勇が呆れたような声を出す。「現実とフィクションは違うだろ」
「でも現実でも、全員を生かす作戦の方が結果的に成功率が高くなることがあるんです」
宅男はノートの別のページを開いた。そこには様々な戦略パターンが図解されている。
「例えば、結さんの結界に全てを託して他の人は撤退させる作戦があったとします。でもそれだと結さん一人に負担が集中して、持続時間1時間を超えた時のリスクが高まる。逆に全員がそれぞれの役割を果たせば、一箇所が失敗しても他でカバーできる」
「リスク分散理論ですね」秋奈が興味深そうに呟く。「投資の世界では常識ですが、戦略にも応用できるということですか」
「そういうことです。そして—」宅男の声が熱を帯びてきた。「俺は皆さん全員を絶対に失いたくない。結さんの氷の美しさも、勇さんの真っ直ぐさも、作良さんの技術も、龍一さんとシルフの絆も、凪さんの鋭さも、秋奈さんの現実性も。全部必要なんです」
凪が苦笑いを浮かべた。「随分と理想主義的ね。でも—」
彼女は一瞬口を閉じ、それから小さく呟いた。
「嫌いじゃないわ、そういうの」
その時、扉が開いて森下優斗が顔を出した。
「すみません、お邪魔して。記録係として参加させていただければと思うのですが」
「森下さん、どうぞ」宅男が手招きする。記者の青年は壁際の補助椅子に座り、手帳を取り出した。
「実は、市民の皆さんの声をお伝えしたくて」森下が手帳をめくりながら話し始める。「この数日、核ミサイルの噂が広まって、街では不安が高まっています。避難準備をする家庭も増えて、食料品の買い占めも始まっている」
室内の空気が再び緊張した。
「でも同時に、異世界帰還者の方々が動いているという噂も流れていて、それが唯一の希望になっているんです。『もしかしたら、何とかしてくれるかもしれない』って」
森下は宅男を見つめた。
「国民は見えない不安に震えています。でも皆さんのような存在がいることで、完全に絶望はしていない。その責任の重さ、分かっていただけますか」
宅男は深く息を吸った。市民の期待と不安。それが今の自分の肩にのしかかっている現実を、改めて突きつけられた気がした。
「だからこそです」
彼は立ち上がり、全員を見回した。
「だからこそ、誰も切り捨てない作戦でなければいけない。市民も、皆さんも、俺も。全員が生き延びる方法を見つけなければならない」
結が冷たい視線を向ける。「理想は分かりました。では具体的にはどうするのですか」
「まずは皆さんの能力を正確に把握させてください」宅男がノートを開く。「その上で、最適な配置と連携パターンを考えます。シルフの風圧生成能力と結さんの氷精の連携、勇さんの不可視剣の面受け安定性を活用した防御ライン、作良さんの工房技術と秋奈さんの物流の組み合わせ—」
「そして、どんな状況になっても、誰も一人で戦わせません。俺が必ず皆を支えます」
勇が首を振った。「お前に何ができるって言うんだ。俺たちは異世界で修羅場をくぐり抜けてきた。でもお前は—」
「でも宅男は、俺たちを見つけて集めた」
龍一が割り込んだ。シルフが頷くように小さく鳴く。
「俺は地方空港の使われない滑走路で、シルフとだけ話していた。作良ちゃんは倉庫街の工房に引きこもって、現実逃避してた。みんなそれぞれ孤立してたんだ。それを繋げたのは宅男だろ?」
作良が頷く。「確かにそうですね。私、機械仕掛けのアームと魔法紋刻の床に囲まれて、一人で技術を追求するのが当たり前だと思っていました。でも宅男さんが『皆のために作ってほしい』と言った時、久しぶりに誰かのために技術を使いたいと思ったんです」
秋奈がペンを回しながら言った。「投資の観点から言えば、宅男さんは優秀なファンドマネージャーです。個別の資産(私たち)を組み合わせて、全体のパフォーマンスを最大化しようとしている。都内半地下の閉鎖カフェ裏室での交渉も、的確でした」
「そんな立派なもんじゃないですよ」宅男が苦笑いを浮かべる。「ただ、俺にはライトノベルの知識しかないんです。でもその中には、仲間と力を合わせて不可能を可能にする物語がたくさんある。それが俺の唯一の武器なんです」
凪が腕組みをして呟く。「ラノベ脳ね。でも案外、現実離れした発想の方が現実を変えることもある。旧市街の廃墟ビルで最初に会った時、あんたの発想は確かに面白かった」
その時、室内の照明が一瞬揺らいだ。全員が天井を見上げると、蛍光灯が不自然に点滅している。
「停電でしょうか」米田が立ち上がろうとした瞬間、部屋の中央に淡い光の粒子が舞い始めた。
「これは」結が身構える。「魔法の気配です」
氷精がくるくると回転し、警戒するように光る。シルフも小さく唸り声を上げて、龍一の肩で身構えた。
光の粒子が徐々に人の形を成していく。ぼんやりとした輪郭の中に、長い髪をした女性のシルエットが浮かび上がった。
「皆さん、初めまして」
美しい女性の声が室内に響く。シルエットの向こうから、エルフの特徴を持った顔立ちがうっすらと見えた。
「私はエリス・レインフォール。異世界アルドリアから、緊急の通信をお送りしています」
全員が息を呑んだ。早川と米田は慌てて立ち上がったが、結が手を上げて制止する。
「彼女は敵ではありません。魔法の波長が穏やかです」
エリスのシルエットが宅男を見つめた。
「間二屋宅男さん、あなたがこの世界の司令塔ですね。お集まりいただいている皆様も、かつて私たちの世界でお世話になった方々です」
「エリス様」作良が驚きの声を上げる。「まさか通信魔法でこちらの世界に」
「時間がありません」エリスの声に緊張が混じった。「核ミサイルの脅威は確かに存在します。しかし、それは序章に過ぎません。門が動き始めているのです」
「門?」宅男が聞き返す。
「異世界と現世を繋ぐ扉です。黒幕は核攻撃の混乱に乗じて、複数の門を開こうとしています。そうなれば—」
エリスの姿が揺らいだ。通信が不安定になっているようだった。
「皆様の世界に、我々の世界の災いが流れ込むことになります。それだけは、何としても阻止しなければ」
「待ってください」宅男が立ち上がる。「詳しく教えてください。俺たちに何ができるんですか」
しかし、エリスの姿はすでに薄くなり始めていた。
「後日、改めて連絡します。今は、チームの結束を固めてください。一人では不可能なことも、七人なら—」
最後の言葉と共に、光の粒子は完全に消えた。室内は再び人工的な蛍光灯の光だけに包まれる。氷精の光も穏やかになり、シルフは龍一の肩で小さく鳴いた。
しばらくの間、誰も口を開かなかった。異世界からの通信という現実を、それぞれが消化しようとしていた。
「すごいことになったな」龍一が最初に口を開いた。シルフを撫でながら続ける。「核ミサイルだけでも大変なのに、異世界の脅威まで」
「でも情報が得られたのは良いことです」結が冷静に分析する。氷精がうなずくように光る。「敵の全体像が見え始めました」
森下が慌てて手帳に何かを書き込んでいる。「これ、記事にしていいんでしょうか」
「ダメです」早川が即座に答える。「機密事項として扱わせていただきます」
凪が皮肉な笑みを浮かべる。「つまり私たちは、この世界と異世界、両方を相手にすることになるわけね。面白くなってきた。影渡りも死者操作も、活躍の場が広がりそう」
秋奈がため息をついた。「報酬の再計算が必要ですね。危険度が大幅に上がりました。エスクロー支払いの条件も見直しが必要かもしれません」
「でも」宅男が全員を見回す。「エリスさんが言ったように、俺たちは七人です。一人では不可能でも、みんなで力を合わせれば」
勇が腕組みをして呟く。「まだチームワークなんて言ってるのか」
「言います」宅男がきっぱりと答える。「むしろ今こそ、團結が必要じゃないですか。相手が強大なら、なおさら」
作良が工具箱を叩いた。「よし、私は結界補強材の大量生産を開始します。異世界素材も入手できそうですし、機械仕掛けのアームをフル稼働させます」
「俺もシルフとの連携を強化する」龍一が肩の小さなドラゴンを撫でる。「こいつの本気を引き出さないと。全長3mの姿も見せる時が来るかもしれない」
シルフが決意を込めたように小さく鳴いた。
「私は情報収集を開始しましょう」凪が立ち上がる。「黒幕の正体と居場所を突き止めなければ。旧兵舎跡地での実演で見せた死者操作も、本格的に使う時が来そうね」
「物資調達のルートを複数確保します」秋奈が手帳を閉じる。「異世界系の素材も扱えるよう、新しい人脈を開拓しないと。アイテムボックスの容量もフル活用します」
結が最後に口を開いた。氷精が宙を舞い、決意を表すように光る。
「私は結界術の応用研究を進めます。核ミサイル迎撃だけでなく、異世界からの侵入も防げるように。温度差と音減衰機能も強化が必要です」
勇が溜息をついて立ち上がる。「仕方ない。俺も聖剣の力をもう一度見直してみる。勇者になれなかった俺でも、不可視剣の角度調整技術をもっと磨けば、やれることはあるかもしれない」
宅男は胸が熱くなるのを感じた。批判と不信から始まった会議が、いつの間にか前向きな決意に変わっている。
「ありがとうございます、皆さん」
米田が資料を整理しながら発言した。「それでは、政府としても全面的に支援させていただきます。警戒システムも最高レベルに引き上げます。ただし、行動は慎重に。特に異世界関連の情報は、絶対に外部に漏らさないでください」
「分かりました」宅男が頷く。
森下が手を挙げる。「あの、記念撮影はどうしますか?」
「記念撮影?」
「せっかく七人が揃ったんですから。それに、もしかしたらこれが最初で最後かもしれない」
森下の提案に、一瞬室内が静まった。確かに、全員が無事に生き延びる保証はどこにもない。
「いいね」龍一が手を叩く。シルフも羽根を広げて賛成の意を示す。「記念に残そうぜ」
「別に構いませんが」結が肩をすくめる。氷精がくるりと一回転する。
「商用利用は禁止ですよ」秋奈が条件を付ける。
「当然です」森下が慌てて答える。
七人がテーブルを囲むように並んだ。宅男が中央に立ち、左右に帰還者たちが配置される。結は相変わらず無表情だが、氷精が楽しそうにくるくると回っている。勇は複雑な表情を浮かべているが、その目に迷いは少なくなっていた。作良は緊張したように手を握りしめ、龍一は肩のシルフと一緒にピースサインを作った。シルフも小さな前足でピースらしきポーズを取ろうとして、可愛らしく鳴く。凪は皮肉な笑みを浮かべているが、その表情はどこか柔らかい。秋奈はビジネススマイルを維持しているが、手帳をしっかりと胸に抱えている。
「はい、撮ります」森下がカメラを構える。「三、二、一」
シャッターが切られた瞬間、宅男は思った。この七人で本当に日本を、いや世界を救えるのだろうか。不安はまだ消えない。でも、一人一人の顔を見ていると、何かができそうな気がしてくる。
写真を確認した森下が微笑む。「いい写真です。皆さん、それぞれの個性が出ている。シルフも可愛く写ってますよ」
シルフが嬉しそうに羽根をばたつかせ、龍一の頬を舐めた。
「個性ね」凪が呟く。「バラバラすぎて収拾がつくのかしら」
「つけます」宅男がノートを開き、最後のページに「迎撃チーム=七人+支援線」と書き込む。「俺が必ず、皆の力を一つにまとめます」
結が宅男を見つめた。氷精が彼女の肩で静かに光っている。
「大言壮語ですね。でも—」
彼女は一瞬、表情を和らげた。
「期待しています」
会議は終了し、それぞれが立ち上がって帰り支度を始める。早川と米田は監査ログ最小化された書類を整理し、森下は写真をプリントアウトして全員に配った。
「それでは次回は、具体的な作戦会議ということで」宅男が提案する。
「了解」龍一が親指を立てる。シルフも小さく鳴いて同意を示す。「俺たちのチーム、名前はどうする?」
「名前?」
「せっかくだから、かっこいいチーム名があった方がいいだろ」
宅男は少し考えて答えた。
「最終迎撃作戦チーム、というのはどうでしょう」
「まんまじゃん」凪が苦笑いを浮かべる。「でもまあ、分かりやすくていいか」
「私としては、KPI指標も含めて管理しやすい名称ですね」秋奈がバッグに手帳をしまいながら言う。見た目以上の容量に手帳が吸い込まれていく。
作良が工具箱を持ち上げる。「工房に戻ったら、すぐに試作品の量産準備に入ります。魔法紋刻の床も強化しないと」
「私も氷精との連携パターンを増やしておきます」結が立ち上がる。氷精が彼女の周りを一周してから、肩に止まった。
勇がため息をつきながら言う。「不可視剣の面受け安定性も、もう一度検証してみるか」
凪は影渡りで移動しようとしたが、一度振り返って宅男を見た。
「あんたの作戦、楽しみにしてるわ。死者操作も含めて、使えるものは何でも使いなさい」
そう言って、彼女は室内の影に溶けるように消えた。
秋奈が最後に口を開く。
「エスクロー支払いの中間30%の条件も、早川さんと詰めておきましょう。異世界素材の調達ルートも確保しないと」
「お任せします」早川が頷く。
こうして、七人の帰還者と一人の司令塔による史上初のチームが結成された。まだ不安と不信は完全には解消されていないが、それでも同じ目標に向かって歩き出す意志は共有できた。
宅男は最後に残った写真を手に取り、改めて七人の顔を見つめる。結の氷精、龍一のシルフ、それぞれの個性と力。この仲間たちと一緒なら、きっと奇跡を起こせる。根拠のない確信だが、それが今の彼にとって最も大切な支えだった。
夕日が演習場に長い影を落とし始める中、七人はそれぞれの準備のために散らばっていく。結は札幌の小さな公園で結界テストを続けるだろうし、作良は倉庫街の工房で機械仕掛けのアームを稼働させるはずだ。龍一は地方空港でシルフとの飛行訓練を再開し、凪は旧市街の廃墟ビルで情報収集に励む。秋奈は都内半地下の閉鎖カフェで新たな交渉を進めるだろう。
次に全員が集まる時は、いよいよ本格的な作戦会議となるだろう。そして、その先には前代未聞の迎撃作戦が待っている。
宅男は手帳を閉じ、小さく呟いた。
「俺たちなら、きっとできる」
窓の外では、米田の部隊が警戒パトロールを続けている。早川は限定支援の条件を再確認するため、上司への報告書を作成している。森下は市民サイドの視点から、この歴史的なチーム結成をどう伝えるか考えを巡らせている。
異世界からの脅威という新たな要素が加わったが、それでも宅男の決意は揺らがない。誰も切り捨てない作戦。全員で力を合わせる戦略。ライトノベル的な発想かもしれないが、現実を変える力を持っているはずだ。
会議室を出る前に、宅男は振り返って空間を見つめた。エリスの通信があった場所には、もう何の痕跡もない。しかし、確かに異世界との繋がりが生まれた。そしてその繋がりは、やがて新たな可能性を運んでくるだろう。
「合図、実施、復唱、停止」
宅男が小さく呟く。四拍子の合図システム。停止語「カット」、退避方向「右後方」。細かな技術仕様も、大きな戦略の一部になる。
七人の記念撮影。それは単なる記録ではなく、新しい歴史の始まりを告げるシンボルだった。核ミサイル迎撃作戦。異世界からの脅威。そして、誰も切り捨てない理想の追求。
間二屋宅男という名前の司令塔と、六人の異世界帰還者。彼らの物語は、いよいよ本格的な局面を迎えようとしていた。
第16話 終わり
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