オタク司令塔と六人の帰還英雄~日本を救う最終迎撃作戦~

K2画家・唯

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第7章:迎撃作戦―実行編Ⅱ

第31話「奇策の提案」

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都心の臨時作戦本部は、重苦しい沈黙に包まれていた。ビル地下の管制フロアには巨大なモニターが並び、ホログラム投影された東京上空には赤く点滅する警告マークが無数に浮かんでいる。結界の損傷箇所を示すそれらの光は、まるで都市の傷口のように痛々しく輝いていた。

間二屋宅男は手にしたノートを見つめていた。走り書きされた文字と矢印。「聖剣→氷結界→竜突撃」という単語が、震える字で記されている。その下には「切るために守り、守るために切る――時合を作る」という言葉が殴り書きされていた。

「状況は絶望的です」政府高官の一人が重い声で言った。「第二波で迎撃網は破綻しました。このままでは第三波を防ぐことは不可能です」

氷川結は椅子にもたれかかり、顔面蒼白だった。都市規模の結界を維持し続けた疲労で、立っているのがやっとの状態だ。斎藤勇は壁に背中を預け、不可視の聖剣を握る手を震わせている。座標同期の失敗が、彼の自信を大きく揺るがしていた。

赤城龍一は床に座り込み、膝の上でミニドラゴンのシルフを撫でていた。シルフの瞳には疲労の色が濃く、翼も力なく垂れ下がっている。

「撤退を提案します」別の高官が発言した。「これ以上の犠牲は避けるべきです。都心部の完全避難を実施し、被害を最小限に」

「待ってください」宅男が突然立ち上がった。ノートを胸に抱き、震える声で続ける。「まだ、方法があります」

結が疲れ切った顔を上げる。「宅男、もう限界よ。これ以上は」

「聞いてください」宅男がノートを開いて見せる。「聖剣と氷結界とドラゴン突撃。三つを連携させる奇策があります」

勇が首を振る。「宅男、無茶だ。俺の剣はもう座標が狂ってる。まともに当たらない」

「だからこそです」宅男が興奮気味に言う。「今まで、僕たちは個別に戦ってきました。でも、それじゃあ限界がある。三つの力を組み合わせれば、新しい可能性が生まれるはずです」

龍一が苦笑いを浮かべる。「組み合わせって、具体的にはどうするんだ?」

宅男はホログラム投影機を操作し、空中に立体図を表示した。都市上空のミサイル軌道と、結界の配置図が浮かび上がる。

「まず、結さんが結界を一点に集中させます。都市全体を覆うのではなく、ミサイルの侵入ポイントに全力を注ぐんです」

結が愕然とした表情を見せる。「結界は広域で維持するもの。それを一点集中?自殺行為よ」

「確かに危険です」宅男が認める。「でも、一点に集中すれば今まで以上の強度を得られる。そこに勇さんの聖剣で精密打撃を加えれば」

「外せば終わりだ」勇が暗い顔で言う。「俺の剣、もう信用できない」

「だから龍一さんの出番です」宅男が龍一を見る。「ドラゴンの突撃で、ミサイルの軌道を微調整する。勇さんの狙いを補正するんです」

龍一が立ち上がる。「それって、俺とシルフがミサイルに特攻しろってことか?」

「そうです」宅男が躊躇なく答える。「燃え尽きる覚悟で、最後の突撃をお願いします」

龍一の顔が青ざめる。「ここで燃え尽きたら、二度と飛べねぇぞ」

シルフが小さく鳴いて、龍一の手を舐める。

作戦本部に重い沈黙が流れる。政府高官たちは顔を見合わせ、帰還者たちは誰も口を開かない。

「無謀すぎます」政府高官が反対する。「そんな作戦、成功の見込みがあるんですか?」

「ありません」宅男がきっぱりと言う。「成功率は分からない。でも、可能性はあります」

「可能性って」結が苦しそうに言う。「私たちを死なせる可能性?」

「そうかもしれません」宅男の声が震える。「でも、何もしなければ確実に都市が壊滅します。犠牲を拒むなら、無茶しか残ってない!でも無茶を計算するのが俺の役だ!」

宅男の叫びが管制室に響く。誰もが息を呑み、彼の必死な表情を見つめている。

小林作良が端末を操作しながら口を開いた。「技術的には、可能性はゼロじゃありません」

全員が作良に注目する。

「同調装置を弄れば、一点集中の負荷を逃がせます」作良が説明する。「結界の魔力を流体力学的に処理すれば、破綻を避けながら集中させることができる」

箱根秋奈も端末を見ながら頷く。「資材も何とかなります。帳尻は後で合わせるわ。今は投資の時」

根黒凪が影の中から声を発する。「命まで賭ける商売、か。嫌いじゃない」

早川修一が静かに口を開く。「無謀ですが、可能性はあります。現状では、これが最後の手段かもしれません」

政府高官が反論する。「しかし、失敗すれば全てが終わります」

「失敗しても、やらなくても、どちらにしろ終わりです」宅男が言い返す。「だったら、可能性に賭けませんか?」

結が深いため息をつく。「宅男、あなたって人は」

「僕は弱い人間です」宅男が認める。「力もない、知識も中途半端。でも、だからこそ分かることがある。弱い者が生き残るには、強い者が思いつかない方法を使うしかない」

勇が聖剣を握り直す。「俺の剣、本当に当たるかな」

「当てます」宅男が断言する。「龍一さんが軌道を補正し、結さんが結界で支え、作良さんが技術でバックアップし、秋奈さんが物資で支える。みんなでサポートすれば、絶対に当たります」

龍一がシルフと視線を交わす。小さなドラゴンが力強く頷く。

「分かった」龍一が立ち上がる。「最後の突撃、やってやるよ」

結が椅子から立ち上がり、深呼吸をする。「一点集中の結界、やったことないけど」

「大丈夫です」宅男が微笑む。「結さんなら絶対にできます」

勇も聖剣を構え直す。「俺も、もう一度挑戦してみる」

作良が端末を操作しながら言う。「同調装置の調整、すぐに始めます」

秋奈がアイテムボックスから資材を取り出し始める。「必要なものは全部揃えるわ」

凪が影から現れて微笑む。「時間稼ぎは任せとけ」

政府高官たちが議論を始めるが、早川が制止する。「決まりです。この作戦を承認します」

米田美咲も頷く。「軍としても全面的にサポートします」

宅男は安堵の表情を浮かべ、ノートを胸に抱く。

「ありがとうございます」宅男が全員に頭を下げる。「みんなで、この都市を守りましょう」

結が魔力を整え始める。空気中に氷の結晶が舞い踊り、彼女の周りに冷気が集まってくる。

勇が不可視の聖剣を構える。今度は迷いがない。仲間たちの支えがあれば、必ず狙いを外さない。

龍一がシルフと心を通わせる。最後の突撃への覚悟を固める。

作良が同調装置の調整を始める。一点集中の結界を支える技術的基盤を構築する。

秋奈が資材の配置を指示する。作戦に必要な全ての物資を最適な位置に配置する。

凪が影で周囲を警戒する。敵の妨害を阻止し、作戦の時間を稼ぐ。

宅男の奇策が、ついに動き始めた。誰も成功を保証できない危険な賭けだが、それでも彼らは前に進む。

「次の侵入まで、あと十分」米田が報告する。

「十分あれば十分です」宅男が答える。「聖剣の一閃、準備開始」

管制室に緊張と期待が満ちる。最後の戦いが、ついに始まろうとしていた。

第31話 終わり
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