虚構幻葬の魔術師

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異端児達の集結

エグゼキュート・コンプレックス①

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 零弥達が新井和希が星高に存在することを認知してから数日後。一年生達はそろそろ高校生活に慣れ始め、クラスメイトや、同学年たちとの壁が打ち解け始める頃である。
 しかし、一部の人間を除き、ほとんどがと何らかの関わりを持っていない。
 彼女とは、そう、月島亜芽である。
 部活には入らず、授業には積極的に参加せず、友達など一切作らず、ただ誰にも干渉されることなく高校生活を送ろうとしていた。
 これは亜芽自身が望んだことだ。
 亜芽自身が、自ら独りになろうとしている。
 こうして、平穏な日々を送っていく……はずだった。
 亜芽は、ストラップの一件以来、あの三人のことが頭から離れなかった。
 ただストラップを返却するだけのことに、なぜここまでの行動を起こすのか?
 なぜ一歩先を見据えているように会話できるのか?
 なぜ……ここまで自分に干渉してくるのだろうか?
 考えれば考えるほどわからなくなってくる。
 亜芽は何往復か頭を振った。しかし、疑問は払拭されなかった。
 まぁいい。彼らは自分に干渉しようとしてもできるはずがない。もし、学校以外で接触出来るとすれば、完全に接触しているとは言えないあの場所だけである。
 それより、自分には為すべきことがある。
「考えてる暇なんて……やるしか、ない」
 亜芽は怯えとも取れる覚悟を決め、行動に移すことにした。



「そらぁっ!」
 味方から上げられたトスを寸分の狂いもなく捉え、高度からの強烈なスパイクが相手コートに突き刺さった。
「せいやぁ!」
 甘い返球を見逃すことはなく、これまた強烈なドライブでピン球は潰れ、歪なバウンドをしたスマッシュに、相手はラケットに触れることすら許されなかった。
「サ~っっっしゃいぃぃ!」
 右サイドからのクロスにもかかわらず、強烈すぎるボレーシュートは、言うまでもなくキーパーの脇を通りすぎ、ネットに突き刺さった。
  あまりの運動神経に、実際に体験をすることを許可した先輩たちの口は、しばらく塞がることはなかった。
 

「お疲れ~。いい運動になった?」
 白く乾いたタオルを渡す。
「そこそこだな。まぁまぁ吹っ切れた」
 大方の予想通り、先程の道場破りとも言える行為をしていたのは零弥である。
 目立つような行動を禁じているにも関わらずこのような体たらくには、性格の面で問題があった。
 というのも、ラウムツァイトへの依頼が新しく届いたのである。
 連日連日と仕事が続いていたので、さすがに零弥もストレスがたまっていた。
 また、ついこの間部活動の体験期間が開始されたのである。授業が終わると活発に勧誘が始まるこの空間で、平穏に過ごせるはずがなく、零弥はいくつか勧誘を受けた。
 ほとんどの部活(特に運動部)が実際に体験をすることができる。自分の実力を十分に発揮してから断り、これ以上先輩からの勧誘を受けないようにする……というのは建前で、本当は手を抜くのが嫌いでただおもいっきりやりたいだけだ。性格の面での問題とはこの事である。
 ストレス発散と言いながらの道場破りには、さすがに流雅も苦笑いせざるをえなかった。
「っていうか仕事増えすぎだろ……どれだけ指をいじめれば気がすむんだ」
「僕たちの収入源だから仕方ないでしょ。そら、観念した方がいいよ、零弥くん」
「うぐ……」
 零弥は返答につまる。
 世界的なプログラマーとはいえ、やはり収入の面では多少問題を抱えるケースは無くならない。勿論収入はそれなりだが、生活費以外は様々な器具に変換しているため、歯止めをかける機会を見逃したときは、経費によりカツカツになる場合も見受けられる。
 こうした状態を避けるために依頼を多目に引き受けているのだが……さすがに今回はやり過ぎたようだ。
「にしても、最近依頼が無茶ぶりすぎると思うんだが」
 零弥は少しご立腹の様子。
「それは否めないと思うなー」
「なんだよ、『少々複雑なコードになりますが、できるだけ容量を小さくしてください』って。本体の方に限界があるのをわかってんのか!」
 限界の対象がラウムツァイトではないことに、プロの自覚が伺えなくもない……のだろうか。
「まぁまぁ落ち着いて。さぁ、準備出来たなら帰るよ」
 流雅は見学(零弥の観察)のみなので、帰路につく支度は既にできている。
「あぁ、それなら帰るか」
 零弥は軽い返答と同時に、帰路につく準備をする。その後、すぐに準備が完了したようで、零弥達は歩き始めた。
 そして、歩いている途中、作業服の男達を目にした。
「なんだ、あの男達は?」
「あぁ、学校専属の清掃員らしいよ。何でも、生徒だけでの清掃では手が回らないところは、月に一回任せてるんだとか。生徒が少ない放課後に色々掃除してるみたい」
「毎月来るのか。同じ人が来ているのか?」
「いや、日によって変わるみたいだよ」
「そうなのか」
 零弥はこれから清掃を始める男達をちらっと見たが、特に意味を持たずすぐに前を向いて歩き出した。
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