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異端児達の集結
エグゼキュート・コンプレックス⑤
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交戦でなんとか勝利し、証拠品であるパッケージを手に入れた零弥は、人目に付かないように慎重に走って学校に向かった。
爆破予告の件でも、既に警察が向かっているだろうし、学校でも銃声は聞こえているだろうから、そこにも警察は割り当てられるはずだ。全く、警察関係の仕事は大変だ、と零弥は無責任にも感じている。後、零弥が派手に追跡しなければ警察も苦労しなかったというツッコミは一切受け付けない。あしからず。
冗談はさておき、零弥は無事星校に到着した。
「あっ、零弥くーん!」
紗亜矢が校門の近くで待っていた。
「やっぱり残ってたんですか」
「当たり前でしょう。これでも生徒会長なんだから」
紗亜矢は「どうだ!」と言わんばかりに胸を張る。少しばかりか調子に乗っているように見えるのが、いつも通りと言わざるを得ない。
「会長、この人は?」
その場には摩美と奈緒もいた。そして、この質問は摩美によるものだ。奈緒は紗亜矢の交渉の時に零弥の容姿を確認しているが、摩美は初対面だ。
「あぁ、この人はこの前話していた椎名零弥くん」
「一年A組、椎名零弥です」
名前を呼ばれたので、とりあえず頭を下げておいた。
「この二人は茜沢奈緒ちゃんと白峰摩美ちゃん」
「茜沢奈緒です」
「白峰摩美、よろしくね」
二人が順番に挨拶していく。
(この二人がこの前説明していた……)
零弥は紗亜矢の説明を思い出す。
「良かった……無傷みたいね」
「えぇ、おかげさまで。目的も半分達成しましたし」
零弥は小さな笑みを浮かべる。
「無傷……?彼、何かしてるんですか?」
奈緒が紗亜矢に向かって質問する。
「彼、抑制師のサポートをしてるらしいの」
紗亜矢が得意気に説明する。
「……会長、それ、そんなペラペラしゃべっていいものなんですか?」
「……あっ」
紗亜矢が凍りついた。爆破予告の時の堂々とした放送の面影は一切残っていなかった。いや、そもそも放送する姿を実際には見ていないが。
(……やっぱり生徒会でも同じ扱いなのか?)
「……ごめんなさい」
もともと身長も慎重度も小さい紗亜矢が、さらに小さくなった気がする。
「いいですよ、別に」
「……えっ?」
紗亜矢が顔を上げる。
「どうせ、後には説明しなきゃならないし、先伸ばしするよりかはマシです」
「……ありがとう」
紗亜矢はふいに上目遣いになる。
(この人……会長の扱いわかってません?)
(そうですね)
奈緒と摩美が紗亜矢に聞こえないように囁き合う。
「……ところで、爆破予告の件は?」
「あぁ、それね。今、警察の人が捜査してるみたいなんだけど、未だに見つかってないみたい。結局愉快犯なのかもしれないわね」
「そうですか……ところで、前に質問したことをもう一度聞いてもいいですか?」
零弥は表情を硬くする。
「えぇ、いいわよ?」
「なら聞きます。入学式の時に発生したトラブルとは、具体的には何ですか?」
零弥は用具室での質問を発展させる。
「えーっと、体育館のイスの破損や、用具室の近くの棚の足が曲がってて上においてあったガラスが落ちてきたり、体育館の近くの窓枠が一部溶けてたり、色々トラブルがあったのよ。ホントに大変だったんだから」
紗亜矢が拗ねたような表情で腕を組む。
「ありがとうございます」
「え?」
「それだけ聞ければ十分です。ありがとうございました」
零弥は少し頭を下げる。
「えぇ、そう?なら、私たちはこれで失礼するわね」
「さようなら」
紗亜矢たちは、その場を去った。
さて、この後はどうするか?校舎内はさすがに調べられないし、かといってこのまま帰るのも何故かもったいない気がするが……
「ねぇ、ちょっと……」
悪寒が走った。
そう、零弥は完璧に忘れていた。
爆破予告などという、完璧に刑事事件の現場に、抑制師がいないはずが無いと……
「えっ……おおおお前、現場にいったはずじゃ……」
「抑制師は爆発物処理の役に立たないって、ほっぽり出されたの。いやぁ、ホントに残念よねぇ……」
ユミが満面の笑みで立っていた。零弥は珍しく動揺している。
「ななな、何が残念だか!後お前、背後から音もなく立って驚かせるんじゃねぇよ!」
「そっちが会長と話をしてるからでしょ!私の知らないところで、なんかいい雰囲気になってるし」
恐怖の抑制師は零弥の肩を強く掴む。
「いい雰囲気……?」
「それともう一つ」
零弥の問いかけには答えない。
「『零弥くん』って、どういうこと?」
背筋が凍りついた、という言葉がこれほど合う場面が今まであっただろうか?冷たい。あまりにも冷たすぎる。
「まさか、生徒会長と何か?」
「お前の勝手な妄想だろ!後、何か問題でもあるのか?」
「えっ?」
零弥の突然の質問に、ユミは息をつまらせる。
「えっと……その……なんというか……ね?」
「全然わからん」
「もういいよ!」
ユミは首を振る。顔が真っ赤になっているのはなぜだろうか?変に嫌な予感がする。
「それより、重要な話がある」
零弥はいつもの表情に戻る。
「話って、何?」
「今夜、流雅の家に集合だ。明日は日曜だから遅くまでいられるだろ」
「それはいいんだけど、もう連絡はしてるの?」
「さっきの帰り道で伝えておいた。時間は午後七時から。特に所有物は無しでいい」
連絡事項はまだ続く。
「わかった。ならこっちから聞くけど、校外にいった件について説明してくれない?」
「ここでは場所が悪い。それについては流雅の家で詳しく説明する」
零弥はその場での説明を拒否した。
「そう……じゃ、これで最後。流雅の家に集まる理由は何?」
ユミは真剣な表情で聞く。その目は、相手の必ず捉えるような、冷たい目をしていた。
零弥はそれに対して納得させられるだけの十分な理由を持っている。
それは……
「……作戦会議だ」
爆破予告の件でも、既に警察が向かっているだろうし、学校でも銃声は聞こえているだろうから、そこにも警察は割り当てられるはずだ。全く、警察関係の仕事は大変だ、と零弥は無責任にも感じている。後、零弥が派手に追跡しなければ警察も苦労しなかったというツッコミは一切受け付けない。あしからず。
冗談はさておき、零弥は無事星校に到着した。
「あっ、零弥くーん!」
紗亜矢が校門の近くで待っていた。
「やっぱり残ってたんですか」
「当たり前でしょう。これでも生徒会長なんだから」
紗亜矢は「どうだ!」と言わんばかりに胸を張る。少しばかりか調子に乗っているように見えるのが、いつも通りと言わざるを得ない。
「会長、この人は?」
その場には摩美と奈緒もいた。そして、この質問は摩美によるものだ。奈緒は紗亜矢の交渉の時に零弥の容姿を確認しているが、摩美は初対面だ。
「あぁ、この人はこの前話していた椎名零弥くん」
「一年A組、椎名零弥です」
名前を呼ばれたので、とりあえず頭を下げておいた。
「この二人は茜沢奈緒ちゃんと白峰摩美ちゃん」
「茜沢奈緒です」
「白峰摩美、よろしくね」
二人が順番に挨拶していく。
(この二人がこの前説明していた……)
零弥は紗亜矢の説明を思い出す。
「良かった……無傷みたいね」
「えぇ、おかげさまで。目的も半分達成しましたし」
零弥は小さな笑みを浮かべる。
「無傷……?彼、何かしてるんですか?」
奈緒が紗亜矢に向かって質問する。
「彼、抑制師のサポートをしてるらしいの」
紗亜矢が得意気に説明する。
「……会長、それ、そんなペラペラしゃべっていいものなんですか?」
「……あっ」
紗亜矢が凍りついた。爆破予告の時の堂々とした放送の面影は一切残っていなかった。いや、そもそも放送する姿を実際には見ていないが。
(……やっぱり生徒会でも同じ扱いなのか?)
「……ごめんなさい」
もともと身長も慎重度も小さい紗亜矢が、さらに小さくなった気がする。
「いいですよ、別に」
「……えっ?」
紗亜矢が顔を上げる。
「どうせ、後には説明しなきゃならないし、先伸ばしするよりかはマシです」
「……ありがとう」
紗亜矢はふいに上目遣いになる。
(この人……会長の扱いわかってません?)
(そうですね)
奈緒と摩美が紗亜矢に聞こえないように囁き合う。
「……ところで、爆破予告の件は?」
「あぁ、それね。今、警察の人が捜査してるみたいなんだけど、未だに見つかってないみたい。結局愉快犯なのかもしれないわね」
「そうですか……ところで、前に質問したことをもう一度聞いてもいいですか?」
零弥は表情を硬くする。
「えぇ、いいわよ?」
「なら聞きます。入学式の時に発生したトラブルとは、具体的には何ですか?」
零弥は用具室での質問を発展させる。
「えーっと、体育館のイスの破損や、用具室の近くの棚の足が曲がってて上においてあったガラスが落ちてきたり、体育館の近くの窓枠が一部溶けてたり、色々トラブルがあったのよ。ホントに大変だったんだから」
紗亜矢が拗ねたような表情で腕を組む。
「ありがとうございます」
「え?」
「それだけ聞ければ十分です。ありがとうございました」
零弥は少し頭を下げる。
「えぇ、そう?なら、私たちはこれで失礼するわね」
「さようなら」
紗亜矢たちは、その場を去った。
さて、この後はどうするか?校舎内はさすがに調べられないし、かといってこのまま帰るのも何故かもったいない気がするが……
「ねぇ、ちょっと……」
悪寒が走った。
そう、零弥は完璧に忘れていた。
爆破予告などという、完璧に刑事事件の現場に、抑制師がいないはずが無いと……
「えっ……おおおお前、現場にいったはずじゃ……」
「抑制師は爆発物処理の役に立たないって、ほっぽり出されたの。いやぁ、ホントに残念よねぇ……」
ユミが満面の笑みで立っていた。零弥は珍しく動揺している。
「ななな、何が残念だか!後お前、背後から音もなく立って驚かせるんじゃねぇよ!」
「そっちが会長と話をしてるからでしょ!私の知らないところで、なんかいい雰囲気になってるし」
恐怖の抑制師は零弥の肩を強く掴む。
「いい雰囲気……?」
「それともう一つ」
零弥の問いかけには答えない。
「『零弥くん』って、どういうこと?」
背筋が凍りついた、という言葉がこれほど合う場面が今まであっただろうか?冷たい。あまりにも冷たすぎる。
「まさか、生徒会長と何か?」
「お前の勝手な妄想だろ!後、何か問題でもあるのか?」
「えっ?」
零弥の突然の質問に、ユミは息をつまらせる。
「えっと……その……なんというか……ね?」
「全然わからん」
「もういいよ!」
ユミは首を振る。顔が真っ赤になっているのはなぜだろうか?変に嫌な予感がする。
「それより、重要な話がある」
零弥はいつもの表情に戻る。
「話って、何?」
「今夜、流雅の家に集合だ。明日は日曜だから遅くまでいられるだろ」
「それはいいんだけど、もう連絡はしてるの?」
「さっきの帰り道で伝えておいた。時間は午後七時から。特に所有物は無しでいい」
連絡事項はまだ続く。
「わかった。ならこっちから聞くけど、校外にいった件について説明してくれない?」
「ここでは場所が悪い。それについては流雅の家で詳しく説明する」
零弥はその場での説明を拒否した。
「そう……じゃ、これで最後。流雅の家に集まる理由は何?」
ユミは真剣な表情で聞く。その目は、相手の必ず捉えるような、冷たい目をしていた。
零弥はそれに対して納得させられるだけの十分な理由を持っている。
それは……
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