虚構幻葬の魔術師

crown

文字の大きさ
33 / 109
異端児達の集結

エグゼキュート・コンプレックス⑤

しおりを挟む
 交戦でなんとか勝利し、証拠品であるパッケージを手に入れた零弥は、人目に付かないように慎重に走って学校に向かった。
 爆破予告の件でも、既に警察が向かっているだろうし、学校でも銃声は聞こえているだろうから、そこにも警察は割り当てられるはずだ。全く、警察関係の仕事は大変だ、と零弥は無責任にも感じている。後、零弥が派手に追跡しなければ警察も苦労しなかったというツッコミは一切受け付けない。あしからず。
 冗談はさておき、零弥は無事星校に到着した。
「あっ、零弥くーん!」
 紗亜矢が校門の近くで待っていた。
「やっぱり残ってたんですか」
「当たり前でしょう。これでも生徒会長なんだから」
 紗亜矢は「どうだ!」と言わんばかりに胸を張る。少しばかりか調子に乗っているように見えるのが、いつも通りと言わざるを得ない。
「会長、この人は?」
 その場には摩美と奈緒もいた。そして、この質問は摩美によるものだ。奈緒は紗亜矢の交渉の時に零弥の容姿を確認しているが、摩美は初対面だ。
「あぁ、この人はこの前話していた椎名零弥くん」
「一年A組、椎名零弥です」
 名前を呼ばれたので、とりあえず頭を下げておいた。
「この二人は茜沢奈緒ちゃんと白峰摩美ちゃん」
「茜沢奈緒です」
「白峰摩美、よろしくね」
 二人が順番に挨拶していく。
(この二人がこの前説明していた……)
 零弥は紗亜矢の説明を思い出す。
「良かった……無傷みたいね」
「えぇ、おかげさまで。目的も半分達成しましたし」
 零弥は小さな笑みを浮かべる。
「無傷……?彼、何かしてるんですか?」
 奈緒が紗亜矢に向かって質問する。
「彼、抑制師サプレッサーのサポートをしてるらしいの」
 紗亜矢が得意気に説明する。
「……会長、それ、そんなペラペラしゃべっていいものなんですか?」
「……あっ」
 紗亜矢が凍りついた。爆破予告の時の堂々とした放送の面影は一切残っていなかった。いや、そもそも放送する姿を実際には見ていないが。
(……やっぱり生徒会でも同じ扱いなのか?)
「……ごめんなさい」
 もともと身長も慎重度も小さい紗亜矢が、さらに小さくなった気がする。
「いいですよ、別に」
「……えっ?」
 紗亜矢が顔を上げる。
「どうせ、後には説明しなきゃならないし、先伸ばしするよりかはマシです」
「……ありがとう」
 紗亜矢はふいに上目遣いになる。
(この人……会長の扱いわかってません?)
(そうですね)
 奈緒と摩美が紗亜矢に聞こえないように囁き合う。
「……ところで、爆破予告の件は?」
「あぁ、それね。今、警察の人が捜査してるみたいなんだけど、未だに見つかってないみたい。結局愉快犯なのかもしれないわね」
「そうですか……ところで、前に質問したことをもう一度聞いてもいいですか?」
 零弥は表情を硬くする。
「えぇ、いいわよ?」
「なら聞きます。入学式の時に発生したトラブルとは、具体的には何ですか?」
 零弥は用具室での質問を発展させる。
「えーっと、体育館のイスの破損や、用具室の近くの棚の足が曲がってて上においてあったガラスが落ちてきたり、体育館の近くの窓枠が一部溶けてたり、色々トラブルがあったのよ。ホントに大変だったんだから」
 紗亜矢が拗ねたような表情で腕を組む。
「ありがとうございます」
「え?」
「それだけ聞ければ十分です。ありがとうございました」
 零弥は少し頭を下げる。
「えぇ、そう?なら、私たちはこれで失礼するわね」
「さようなら」
 紗亜矢たちは、その場を去った。
 さて、この後はどうするか?校舎内はさすがに調べられないし、かといってこのまま帰るのも何故かもったいない気がするが……
「ねぇ、ちょっと……」
 悪寒が走った。
 そう、零弥は完璧に忘れていた。
 爆破予告などという、完璧に刑事事件の現場に、抑制師サプレッサーがいないはずが無いと……
「えっ……おおおお前、現場にいったはずじゃ……」
抑制師サプレッサーは爆発物処理の役に立たないって、ほっぽり出されたの。いやぁ、ホントに残念よねぇ……」
 ユミが満面の笑みで立っていた。零弥は珍しく動揺している。
「ななな、何が残念だか!後お前、背後から音もなく立って驚かせるんじゃねぇよ!」
「そっちが会長と話をしてるからでしょ!私の知らないところで、なんかいい雰囲気になってるし」
 恐怖の抑制師サプレッサーは零弥の肩を強く掴む。
「いい雰囲気……?」
「それともう一つ」
 零弥の問いかけには答えない。
「『零弥くん』って、どういうこと?」
 背筋が凍りついた、という言葉がこれほど合う場面が今まであっただろうか?冷たい。あまりにも冷たすぎる。
「まさか、生徒会長と何か?」
「お前の勝手な妄想だろ!後、何か問題でもあるのか?」
「えっ?」
 零弥の突然の質問に、ユミは息をつまらせる。
「えっと……その……なんというか……ね?」
「全然わからん」
「もういいよ!」
 ユミは首を振る。顔が真っ赤になっているのはなぜだろうか?変に嫌な予感がする。
「それより、重要な話がある」
 零弥はいつもの表情に戻る。
「話って、何?」
「今夜、流雅の家に集合だ。明日は日曜だから遅くまでいられるだろ」
「それはいいんだけど、もう連絡はしてるの?」
「さっきの帰り道で伝えておいた。時間は午後七時から。特に所有物は無しでいい」
 連絡事項はまだ続く。
「わかった。ならこっちから聞くけど、校外にいった件について説明してくれない?」
「ここでは場所が悪い。それについては流雅の家で詳しく説明する」
 零弥はその場での説明を拒否した。
「そう……じゃ、これで最後。流雅の家に集まる理由は何?」
 ユミは真剣な表情で聞く。その目は、相手の必ず捉えるような、冷たい目をしていた。
 零弥はそれに対して納得させられるだけの十分な理由を持っている。
 それは……


「……作戦会議だ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

精霊姫の追放

あんど もあ
ファンタジー
栄華を極める国の国王が亡くなり、国王が溺愛していた幼い少女の姿の精霊姫を離宮から追放する事に。だが、その精霊姫の正体は……。 「優しい世界」と「ざまあ」の2バージョン。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...