虚構幻葬の魔術師

crown

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異端児達の集結

The last thinking⑦

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 『オォォォォォォォォッ!』
 流雅が亜芽を連れ出した時、零弥は猛獣化した唐木との戦闘に挑んでいた。
「チッ……完全に自我を失ってるぞ……」
 零弥は光子フォトンの弾丸を数発浴びせる。しかし、弾は硬い皮膚を貫くことは出来ず、その場にポトリと落ちていく。
 零弥は部屋中を駆け抜ける。幸い、唐木はほとんど移動せず、飛び付いたり、少し歩いたりする程度なので、攻撃自体は非常にしやすい上、唐木からの攻撃も避けやすかった。
 その代わり、一発一発の攻撃は強烈だ。当たればひとたまりもない。
「クソッ……とにかく弱点を探さないとな……」
 零弥は更にスピードを上げていく。唐木の攻撃で辺り一面はボロボロになっている。そのため、重力を変化させるときは最小限の注意を払って行った。着地等で失敗すれば確実に死ぬだろう。
『ウオォォォォォ!』
 唐木の右手が零弥を殴りにかかった。だが、零弥はバック宙で回避する。
「ここまで暴走してしまうとは……、スペルキーパーの恐ろしさを理解していなかったのか?」
 零弥の口調が若干変わる。どうやら、心理的な部分でのスイッチが入ったようだ。
「あれだけ組織を利用し、相手を欺こうとした結果がこれか……結局、欺かれていたのは貴様の方だったのだな。非常に哀れな人間だ──」
 そして、零弥は弾丸を生成し……
「──いや、もう人間ではなかったな」
 蔑むように訂正する。
 攻撃が当たっていないため零弥は未だに無傷だが、こちらの攻撃が効いていないのもまた事実。これでは戦闘は終わらず、暴走した唐木が地上に向かって進み始めれば最悪の事態を招きかねない。ならば、早々に決着をつけなければいけないのだ。
 しかし、それには唐木の弱点を叩く必要がある。
 一体どうやって探すのだろうか?
 零弥の中ではまだ結論が出せていない。
 そんな事を考えていれば、唐木がまた攻撃してくる。
 零弥は『重力制御』で回避。壁に着地した後、少しだけ攻撃パターンを変えてみることにした。
「スペルキーパーの効果は絶大……壁や床が簡単に壊せる程度に強化されているが……そうか、その手があったか」
 零弥は有効であろう攻撃パターンを一つだけ思い付いた。それは、『重力制御』による他方向からの一斉射撃だ。
「奴が色々壊してくれたおかげで、あちらこちらにが転がっている。そいつを利用して弱点を探してみるか!」
 零弥は一つ一つの瓦礫に能力アビリティを発動する。すると、瓦礫はランダムな順番で浮き、一発づつ唐木に向かって飛んでいく。
 本来、一斉攻撃を行うならば、標的に対して同時に攻撃していくのがセオリーだ。しかし、今回は弱点を探し、観測するのが主な目的なので、一発づつ様々な部位に当てていくつもりだ。
「──行け」
 弾丸が順番に発射されていく。
 右足、左足、右肩、膝、脇腹とランダムながらもまんべんなく弾丸は命中し、その度に唐木は反応する。
 そして……
『オォォォォォォォォッ……オォ……』
 首筋に命中した瞬間、唐木が苦しむような反応がした。
「クリティカルヒットだ!首が弱点だったのか」
 隆起している筋肉のうち、よく見てみれば肌の色さえ一切変化していないのは首筋である。零弥が見落としていただけで、最初から答えは目の前に存在していたのだ。
「弱点を見つけた。倒し方もわかった。そうだろ?猛獣」
 しかし唐木の反応は大きく、そこらじゅうをお構い無しに破壊していく。それはまるで、痛さを紛らわせるように。
 しかしここで手を緩めるほど、零弥は甘くない。光子フォトンを発射し、首筋に命中すれば、唐木が再び苦しみの雄叫びをあげる。
『オォォォォォォォォッ!』
「苦しいか……それが貴様の『最期の思考』だ!」
 零弥は最期の宣告とともに光子剣フォトン・ブレードを起動、そして唐木に向かって全力で走り出す。
 唐木も粘りを見せる。走る零弥を狙って、右手の拳で潰しにかかってきた。
 だが、零弥は予測済みだった。
 向かってくる右手の拳を大ジャンプで避けつつ、唐木を右腕に着地したのだ。そして唐木を右腕を全力で駆け抜ける。
「これで終わりだ!」
 零弥は再び大ジャンプ。そして頸動脈に向かって、光子剣フォトン・ブレードを全力で振り切った!

 一瞬の静寂。

 そして、唐木の首から大量の血液が放出され、その場に倒れた。かなりの地響きがしたが、零弥はまだ空中にいたので事なきを得た。
 運良く帰り血は受けなかったが、零弥の一撃で辺り一面は血だまりになった。
 そして、唐木は確実に死亡しているはずだ。
 そのとき……
「零弥!」
 ユミの声だ。あの集団をなんとか一掃したようだ。零弥は驚きよりも生き残った安心感が先行してやって来るのを確かに感じた。
「なんとか生き残ったみたいだな……」
 零弥はユミの顔を見る。
「なんとか、ね。でも、これは……」
 ユミも察したようだ。いや、あの地響きの時点である程度予測していたのかもしれない。
「──あぁ……リーダーは確かに
 零弥は冷たく通告した。
「──わかった。直に警察も来るだろうから、面倒なことになる前に流雅と帰ってて」
 ユミはあくまで冷静だ。そのような現場はいくつも見ている。
「お言葉に甘えて。また会おう」
「じゃあね」
 そう言って、二人は別々の通路を走り始めた。




「これだけ広ければ、別に出口があるはずだ……だが、それはどこにある?」
 零弥は警察との鉢合わせを防ぐために別の出口を探している。零弥が一番最短ルートで突き進んでいたため、他の出口など見つけているはずもなく、今こうして探し回っている最中だ。
 だがちょうどその時、同じ目的を持った人間がいた。それは、亜芽についていく流雅だった。
「零弥くん!」
「流雅か!そいつは……」
「事情は後で。別の出口があるみたいだからすぐに行こう!」
 流雅に遮られた零弥は、一切の文句も言わずに従った。
 亜芽の先導に従い、零弥達はどんどん出口へと近づいていく。戦いのすぐ後だったが、不思議と息切れ一つもしなかった。
 そして、零弥達の見覚えのない出口が見えた。そこから脱出した頃には、時計の針は一日の境界を越えていた。
    
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