虚構幻葬の魔術師

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異端児達の集結

異端児達の入学①

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 地球上には、沢山の種族達がいる。
 それは鳥や魚、昆虫などの動物ではなく、思考能力と感情を持つ人間と同等の生物である。
獣人ビースト」、「吸血鬼ヴァンパイア」、「呪霊種アンデット」…そして「魔術師ウィザード」。これも一部でしかない。
 その他を含む種族達は、それぞれその種族特有の力と技と特性を持っている。
 特に、「魔力」を持つ種族は「魔族」と呼ばれている。
 種族達はそれぞれで己の種族を次々と残し、受け継いできた。
 しかし、魔力を持つ魔族達は己の能力に過信し、あちこちで戦闘を起こした。それに対抗すれば新たな戦闘。こうして緊張状態が何年も続いた。
 そして約8,000年前、遂に種族間での戦闘が激化。これこそが「魔族大戦まぞくたいせん」というものである。
 「人間」という種族は、魔力を全く持たず、魔族との戦闘をできるだけ避け、ひっそりとその種族を繋いできた。
 しかし、緊張の糸が遂に切れ、魔族大戦が勃発してしまった。
 戦いに参加せざるを得ない状況に人類は立たされ、多くの命を失う。
 そんな中、ごく一部の人間は「能力アビリティ」という数少ない力を手にしていた。
 魔力を一切使用しない能力アビリティは魔族達を苦しめた。
 能力アビリティを持つ、「能力持ちアビリスト」達の活躍と、他の種族を大きく上回る技術力でいくつかの領土を守り、人間という種族を残した─
「─えぇーここはテストに出るのでね。よく覚えておくように」
 私立星蕾せいらい高校の歴史の授業の一貫である。


 
 桜の舞い散る4月。この日、私立星蕾高校の入学式が執り行われようとしていた。ある少年は、すぐ近くの路地で人を待っていた。
 彼はこの私立星蕾高校に入学する新入生である。
 身長はものすごく高い訳ではなく、外見もルックスもそこまで悪くない…はず。
 彼はずっと待っているが、なかなかその人物は現れない。既に集合時刻を5分ほど過ぎている。余裕を持って来られるような時間に決めたのだが。
「遅い…何してんだアイツ…また寝不足か?」
 そんな事を考えていれば、一人の足音が聞こえてくるではないか。
 彼はやっと来たかと安堵するが、そんな期待はすぐに裏切られた。
「あー早く早く急がないと仕事がたくさんあるのに!ってきゃあっ!」
 女性は速度を更に上げていく。そして待っていた彼とぶつかり……なんてことはなかった。
 当然のことだ。彼としてはずっと待たされていたものでその足音に注意を払わない筈は無く、女性が待っていた人ではないと判ると直ぐに避けた。
 その結果、見たこともない女性が見たこともないような躓き方をした。
「大丈夫…ですか」
 彼は問いかける。普段は敬語は使わないが、初対面である上に、星校の制服を来ていたため、上級生の可能性があったからだ。
 躓いた女性はとても小柄で、立ち上がっても彼が少し見下ろせる程度だった。俗に言う「幼児体型」というものではないだろうか。
「あっ…ありがとう…」
 その女性は恥ずかしさと感謝の混じった礼をして、
「君、新入生?名前は?」
椎名しいな零弥れいやです…が、そんな事をしている場合では無いのでは?」
 零弥はその女性が急いでいたことを忘れた訳ではない。自分のスマートフォンを見せ、早く先へ進むよう促した。
「へっ?ってきゃあぁぁぁぁぁっ!!」
 急いでいたことをすっかり忘れていた女性は、思い出すとすぐに走り出してしまった。
 名前も聞けず、自分の名前だけ教えてしまった零弥は、一息ため息をついて、学校へと向かうことにした。




 
 「あーいたいた。零弥ーちょっと待って」
  かなり長めのポニーテールの女子が人混みの中、歩いている零弥を発見し、追いかける。その足取りは軽く、一般の女子高生の身体能力を遥かに凌駕していることは見てとれる。
 そして彼女は零弥に詰め寄り、こう言う。
「何で待ってくれないの」
「お前が遅れてくるのが悪いんだろ」
  零弥は、より、いつも以上により冷静に反論する。それもそうだ。中学生の頃は集合時間をオーバーする事は多少なりともあった。
 しかし、今回は女性と立ち会い、時間も押してきている旨の発言をしていた。すぐ追いかけてくるだろうと予測し合計10分ほど待ったところで学校へと足を運び始めていた。 
「ちょっと遅れたぐらいでそんな先々行かないでよ」
「いつものことだろ。それに時間ぐらいちゃんと守れよ。ユミ」
 ユミと呼ばれる少女は相崎あいさき悠海ゆうみ。零弥と同じ中学出身である。
 身長は零弥よりも低いが、それでも女子としては高い方である。零弥としては男子の中では普通か少し高いぐらいなのだが。
 今回も別の集合場所の時間を過ぎていたが、ちょっとぐらい急いできたかどうかはユミの頭をよく観察すればすぐに推理できることであった。
「ユミ、頭の上さわってみろ」
 零弥が少し周りを見た後、自分の頭を指差し、ユミの指を彼女の頭へと誘導する。
「?……!!?」
「ちゃんと急いでは来たんだな…急いでは…」
「うぅ…何でそこを見つけるの…」
 ポニーテールをしている髪のうち、数本が見事に反っていた。普通はくくるときに気付くはずだが、よほど焦っていたのか数本だけゴムの仕事範囲を外れ飛び出していた。
 もちろんユミは初めて気付いた模様。顔を赤らめていく一方である。 
 そこにもう一人の少年が2人に近づく。
「おやおや…そんなところでイチャイチャしなくてもいいんじゃないの?」
 割りと背が高い男が小さな笑みを浮かべて二人に話しかける。
 もちろん冗談ではあるが、ユミは割りと本気に思い、
「イチャイチャって…そんな言い方しなくてもいいじゃないの!」
 ユミはまだ顔を赤らめて反論する。しかしその事は彼にとってどうでもよかったようで、
「おはよう。零弥くん。」
 ユミの反論は軽やかにスルーされた。
「ああ。おはよう。」
 彼の名前は成川なるかわ流雅りゅうが。彼もまた、零弥達と同じ中学出身である。身長が非常に高く、足も長い。流雅は人を呼ぶときに名前で呼び、そこからさらに「くん」や「ちゃん」を付けるのが口癖だ。しかも、どんな時も少し笑った表情を変えずに飄々ひょうひょうとした態度を見せる。初対面ならば少し慣れないだろうか。
「いや~こんなところでもいつもと同じようなやり取りをするなんてさぁ、ホントに仲がいいんだね。二人は」
 流雅が二人に話しかけるが8割ほどはユミに対して口にしたことであり、ほとんどからかうつもりで言っている。
「まっ、こんなところで長居している場合じゃないんじゃないの」
 確かに時間は押している。式の前に教室に行かなければならないし、そこでたくさんの説明を聞かなければならない。
 春休み中に合格通知と共に校舎の案内等の書類も送られている。そこにはその個人のクラス、出席番号等も記載されている。
 つまり、そこまで急がなくても、クラスの位置はあらかじめ把握しているので、最短ルートを通れば20秒とかからず教室にたどり着く。
 しかし零弥は早めに時刻を設定した。(ユミが遅刻するも当然計算済みである)それは学校の内部構造や、新入生、在校生の顔を見ておきたかったからだ。
 しかし、ユミを待ったためにそんな時間は残されていないようだ。
「それも…そうだな」
 零弥は仕方なく教室へと最短ルートを通っていくことにした。
 しかし、歩き初めて数秒…
「いたっ」
 流雅に一人の少女がぶつかった。
 それだけではない。彼女は球体のストラップらしきものを落としていった。おそらく鞄などにつけていなかったのだろう。
 しかし少女はそんな事はどこ吹く風。こちらを見ずに走り抜けていった。
「なんだ、それ。」
 零弥が流雅に聞くが、流雅は笑ったまま答える事は無かった。
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