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異端児達の集結
異端児達の入学②
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教室へと零弥達は入ったが、時間はまだ余っていて、少々余裕はあった。
しかしそんな事で安堵していれば、当然時間は早く過ぎていく。
とりあえず零弥は自分の机の上に置かれている書類に目を通すことにした。
私立星蕾高校……「自由の尊重」をモットーとした、設立して20年ほどの私立男女共学の高校である。
そのため、たくさんの部分で一般の高等学校と大きな違いが見られている。
特に目立っているのが、入学式等の儀式的な行事と体育時の体操服以外では服装は自由であるということ。
この校則の設定の目的としては、
①制服を買う代金がこの時代でもコストパフォーマンスが悪いこと
②「自由の尊重」に乗っとること
③性同一性障害等の服装の精神的な面のトラブルを避けること
が、挙げられる。
このような校則は、設立当時の世間の評価は真っ二つに割れ、特に老人からは非難されている一方、若者達には高い評価を得ている。
しかし、この高校の入試は、ある一定以上の点数を取らないと合格通知をもらうことができず、その点数も県内では高めであるため、「服装と知能は表裏一体」という理論は通用しないのである。
そのために「星高に入れば幸せがある」とも一部では言われている。
但し、このような文章だけで判断した場合、生徒の権力が他の学校より強くなっているようにも受け取れてしまう。
やはり新しいことには批判は付き纏うものだろうか。
「中学校時代の厳しい教育と校則の支配から逃れたいと願う根性なし」とも一部では囁かれている。
書類の内容はこの後始まる入学式についての事や、先生達の名前、部活動等が記載されている。
しかし零弥は部活動に入部する気はさらさら無く、特にほとんど意味のなさない書類ばっかりであった。
集合時間が迫ると、このクラスの最後の一人であろう少女が入って来た。
普通なら少し注目しただけで終わるだろう。
しかし零弥達3人はその姿を見て驚いた。
なぜなら、その少女が入口付近で流雅にぶつかった少女だったからである。
「あいつ朝の奴じゃないか?」
零弥が小声で流雅に話しかける。
「そうだね。詳しいことは聞きたいけど、もう時間が無いみたいだよ」
流雅が着席を促すと、1本校内放送が流れる。
「新入生の皆さんにお知らせします。
それぞれの机においてある書類を見てください」
放送はどうやら新入生に向けて流されているようで、2、3年生には向けられていないようだ。しかも零弥については既に書類の内容を把握したばかりなので、ほとんど気になる情報はなかった。
「あと20分後に入学式が執り行われます。そこにある書類を見て、開始10分前までには指定の位置に並んでおいてください」
新入生に残されている自由時間は10分ほど。零弥達はあの少女の事は置いておき、とりあえず教室の様子や、廊下の様子などを観察することにした。
廊下は広めに設計されていて、荷物や大道具等は運びやすそうだった。エレベーターも設計されていて、天井も割りと高めである。
次には教室の内部を観ることにした。
教室は典型的な長方形の形をしていて、机は均等に固定されている。
窓は南側に設置されていて、絶えず日差しが入ってきている。
観察していれば、もう7分経っていた。
零弥は指定場所へと並ぶことに決め、その場所へと足を運ぶことにした。
午前8時30分…
遂に入学式が始まった。
たくさんの椅子が並べられていて、出席番号順に座ることになる。
零弥はA組の9番のため、最前列に座ることになる。
新入生のする事はほとんどなく、指名時の返事をすれば、後は舞台に立つものの祝辞を聞くのみである。
そして…
「椎名零弥」
零弥がフルネームで呼ばれる。
「はい」
零弥は何の特徴もない、普通の返事をした。
更に指名は続いていく。
「成川流雅」
「はい」
男子の指名が終われば(流雅が最後の一人では無い)、次はA組の女子に入る。
「相崎悠海」
「はい」
そして、次にはあの少女の番である。
準備時では名前すら把握できていなかったので、ここはしっかり聞いておきたい所。スルーしていたが、やはり気になるもので、入学式特有の緊張感を切らさないように視線だけを女子の方へ向けた。
「月島亜芽」
「はい」
こうして朝の謎の少女は返事をして起立した。
「あいつ…月島と言うのか…」
零弥は名前を確認した。
あのときからずっと気になっていたが、これで名前を知ることができた。
あとは適当に話を聞いたり、お辞儀をすればいいだけである。
特に特別なことはもう無い……はずだった。
入学生が全員呼ばれると、司会の号令がかかる。次には生徒会長の挨拶が行われるのだが…
「続いて、生徒会長による挨拶を行います」
この星蕾高校の生徒会長と思われる女性が舞台へと登っていく。しかしその人物を零弥は知っている。そして零弥は大きく目を見開いた。もちろん、驚愕の意味で、だ。
「嘘だろ…」
零弥の驚愕の理由…それは舞台に登った人物が、朝に急ぎ足でつまづき、名前だけ聞いてすぐさま去っていったあの女性だったからである。
「麗らかなこの春の季節、校舎の外に並びます、桜が満開に咲き誇る中、皆さんはこの星蕾高校にご入学を賜りました」
朝のやり取りをしたとは思えない、生徒のトップとしての祝辞が読まれていく。
「私はこの私立星蕾高校生徒会長を務めます、霧島紗亜矢 と申します。皆さん、何とぞよろしくお願いいたします」
どうやら、朝の少女は紗亜矢と言うらしい。
しかも生徒会長。もちろん零弥は未だに驚きを隠せない。
他の新入生は堂々と祝辞を述べる紗亜矢を見て、憧れや尊敬の念を抱いているような表情を向けている。
そんな中、零弥は呆気にとられた顔をしている。
その後も祝辞は続いていたが、結局零弥の頭の中にはほとんど入らなかった。
しかしそんな事で安堵していれば、当然時間は早く過ぎていく。
とりあえず零弥は自分の机の上に置かれている書類に目を通すことにした。
私立星蕾高校……「自由の尊重」をモットーとした、設立して20年ほどの私立男女共学の高校である。
そのため、たくさんの部分で一般の高等学校と大きな違いが見られている。
特に目立っているのが、入学式等の儀式的な行事と体育時の体操服以外では服装は自由であるということ。
この校則の設定の目的としては、
①制服を買う代金がこの時代でもコストパフォーマンスが悪いこと
②「自由の尊重」に乗っとること
③性同一性障害等の服装の精神的な面のトラブルを避けること
が、挙げられる。
このような校則は、設立当時の世間の評価は真っ二つに割れ、特に老人からは非難されている一方、若者達には高い評価を得ている。
しかし、この高校の入試は、ある一定以上の点数を取らないと合格通知をもらうことができず、その点数も県内では高めであるため、「服装と知能は表裏一体」という理論は通用しないのである。
そのために「星高に入れば幸せがある」とも一部では言われている。
但し、このような文章だけで判断した場合、生徒の権力が他の学校より強くなっているようにも受け取れてしまう。
やはり新しいことには批判は付き纏うものだろうか。
「中学校時代の厳しい教育と校則の支配から逃れたいと願う根性なし」とも一部では囁かれている。
書類の内容はこの後始まる入学式についての事や、先生達の名前、部活動等が記載されている。
しかし零弥は部活動に入部する気はさらさら無く、特にほとんど意味のなさない書類ばっかりであった。
集合時間が迫ると、このクラスの最後の一人であろう少女が入って来た。
普通なら少し注目しただけで終わるだろう。
しかし零弥達3人はその姿を見て驚いた。
なぜなら、その少女が入口付近で流雅にぶつかった少女だったからである。
「あいつ朝の奴じゃないか?」
零弥が小声で流雅に話しかける。
「そうだね。詳しいことは聞きたいけど、もう時間が無いみたいだよ」
流雅が着席を促すと、1本校内放送が流れる。
「新入生の皆さんにお知らせします。
それぞれの机においてある書類を見てください」
放送はどうやら新入生に向けて流されているようで、2、3年生には向けられていないようだ。しかも零弥については既に書類の内容を把握したばかりなので、ほとんど気になる情報はなかった。
「あと20分後に入学式が執り行われます。そこにある書類を見て、開始10分前までには指定の位置に並んでおいてください」
新入生に残されている自由時間は10分ほど。零弥達はあの少女の事は置いておき、とりあえず教室の様子や、廊下の様子などを観察することにした。
廊下は広めに設計されていて、荷物や大道具等は運びやすそうだった。エレベーターも設計されていて、天井も割りと高めである。
次には教室の内部を観ることにした。
教室は典型的な長方形の形をしていて、机は均等に固定されている。
窓は南側に設置されていて、絶えず日差しが入ってきている。
観察していれば、もう7分経っていた。
零弥は指定場所へと並ぶことに決め、その場所へと足を運ぶことにした。
午前8時30分…
遂に入学式が始まった。
たくさんの椅子が並べられていて、出席番号順に座ることになる。
零弥はA組の9番のため、最前列に座ることになる。
新入生のする事はほとんどなく、指名時の返事をすれば、後は舞台に立つものの祝辞を聞くのみである。
そして…
「椎名零弥」
零弥がフルネームで呼ばれる。
「はい」
零弥は何の特徴もない、普通の返事をした。
更に指名は続いていく。
「成川流雅」
「はい」
男子の指名が終われば(流雅が最後の一人では無い)、次はA組の女子に入る。
「相崎悠海」
「はい」
そして、次にはあの少女の番である。
準備時では名前すら把握できていなかったので、ここはしっかり聞いておきたい所。スルーしていたが、やはり気になるもので、入学式特有の緊張感を切らさないように視線だけを女子の方へ向けた。
「月島亜芽」
「はい」
こうして朝の謎の少女は返事をして起立した。
「あいつ…月島と言うのか…」
零弥は名前を確認した。
あのときからずっと気になっていたが、これで名前を知ることができた。
あとは適当に話を聞いたり、お辞儀をすればいいだけである。
特に特別なことはもう無い……はずだった。
入学生が全員呼ばれると、司会の号令がかかる。次には生徒会長の挨拶が行われるのだが…
「続いて、生徒会長による挨拶を行います」
この星蕾高校の生徒会長と思われる女性が舞台へと登っていく。しかしその人物を零弥は知っている。そして零弥は大きく目を見開いた。もちろん、驚愕の意味で、だ。
「嘘だろ…」
零弥の驚愕の理由…それは舞台に登った人物が、朝に急ぎ足でつまづき、名前だけ聞いてすぐさま去っていったあの女性だったからである。
「麗らかなこの春の季節、校舎の外に並びます、桜が満開に咲き誇る中、皆さんはこの星蕾高校にご入学を賜りました」
朝のやり取りをしたとは思えない、生徒のトップとしての祝辞が読まれていく。
「私はこの私立星蕾高校生徒会長を務めます、霧島紗亜矢 と申します。皆さん、何とぞよろしくお願いいたします」
どうやら、朝の少女は紗亜矢と言うらしい。
しかも生徒会長。もちろん零弥は未だに驚きを隠せない。
他の新入生は堂々と祝辞を述べる紗亜矢を見て、憧れや尊敬の念を抱いているような表情を向けている。
そんな中、零弥は呆気にとられた顔をしている。
その後も祝辞は続いていたが、結局零弥の頭の中にはほとんど入らなかった。
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