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異端児達の集結
異端児達の入学④後編
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「一位の人は…」
「一位の人は?」
「……一年A組、椎名…零弥君です」
「!?」
どこかで聞いたことのあるような名前が早奈英の口から飛び出した。
「ゲホッ、ゲホッ、ゴホッ!!」
早奈英が発表すると同時に紗亜矢は噴き出さずとも蒸せてしまった。
朝の一件で紗亜矢は自分の名前を伝えずに去ってしまったが、零弥の名前は聞いている。当然忘れてはいない。
「どうした?紗亜矢」
藍那が咳き込んだ紗亜矢を見て不思議に思う。
「いいや、なんでもないわ…」
見るからに何かあったようなリアクションを見せるが、幸いにも生徒会メンバーは少し気にしただけで今はそこまで追究しなかった。
「椎名…零弥か…聞いたこと無いな」
「でも、それだけ成績が良ければ、後は生徒会に興味をもってもらうだけですよね」
唯一の男子である和希が嬉しそうに言う。もう慣れてはいるが、同じ男子が入る事はやはり嬉しいのだろう。実際、この構成になったときは若干肩身の狭い思いをしていた。
新体制でも和希はおそらく残るので、ここは零弥をなんとしてでも加入したいと気合いが入る。
「とりあえず、椎名くんに接触しやすそうな人を探しましょうか」
早奈英が提示したのは、対象の人物を知っていた生徒にコンタクトを取る作戦である。先輩からの進言はこの時代でも影響は期待される。
「ですが、椎名君の出身中学校が同じ人って居ましたっけ?」
菜緒が疑問を呈する。完全な初対面の人を生徒会に誘うのはいくら何でも無謀すぎる。有効な手段としては、顔ぐらいは知っているだろう人物を投入することである。
しかし、その手段は零弥の場合はほとんど効果は無いようだ。その理由は早奈英が説明する。
「居ない…ようです…」
零弥と同じ出身中学校の生徒は2,3年生はおろか、ユミと流雅以外の1年生すらいない。顔見知りによるコンタクト作戦は開始前に失敗が宣告された。
作戦が失敗(むしろ始まってすらいない)してしまったならば、残った作戦はただひとつのみである。
「では、タイミングを見て、私たちの誰かが椎名くんに声をかけて見ましょうか」
摩美から奥の手を使うことが提案された。
作戦はいたってシンプル。生徒会という組織を利用して、一度だけ生徒会室へ誘拐……もとい、案内するのである。
しかし、零弥と同じ出身中学校の生徒がいないため、零弥についての情報は一切無い。
ならば、五月頃になるときに、同級生を通じて、情報を集めるのである。
一度だけで十分。
一度だけで問題ない。
一度だけでも連れて来れれば、多祥なりとも興味は持ってくれる筈である。
しかし、そうなると次に決めなければならないことがある。
「…なら、誰が…椎名くんに接触するのですか」
早奈英が問いかける。
先程も説明したように、勿論生徒会メンバーも零弥と同じ中学校出身者はいない。
「椎名くんを見たり、話したりした人が適任でしょうね」
「ゲホッ、ガホッ!!」
菜緒が冷静に話すが、紗亜矢が再び蒸せてしまった。
「会長。本当にどうかしたんですか?」
和希が再度蒸せた紗亜矢に疑いの混じった目を向ける。
「なんでもないから!なんでもないからホントにお願い!」
紗亜矢が明らかに焦っている。
焦る紗亜矢を見て、事の成り行きを悟ってしまった摩美が必殺の一言を早くもお見舞いする。
「そういえば会長。今日朝に集合したとき、制服が妙に汚れてしまってましたしぃ、時間もギリギリだったしぃ、来る途中に何かあったんじゃないですか」
「何も無いわよ!朝に椎名くんに会ったわけないでしょう!」
誰がどう見てもどう聞いても失言にしか聞こえない事実が紗亜矢の口から飛び出した。
摩美以外のメンバー(紗亜矢を含む)は、失言の意味がすぐに読み取れず、ただ、紗亜矢を注目するだけの短い沈黙が生まれた。
そのなかで摩美が小悪魔のようなかすかな笑みを浮かべている。
「紗亜矢。正直に話してもらおうか」
藍那がやれやれとした顔で早速尋問を始める。
「えっ…いや…何でもないんだけど…」
「そういえば白峰が言ったように、朝所々汚れてましたけど」
和希から追撃を食らう。
「そして遅れてきたという事は…まさか、椎名くんの前でつまずいたとか…」
藍那の止めの一言で全てが明らかになってしまった。
流雅達は初対面であるが、生徒会メンバーとしては紗亜矢がそのようなことをやらかしかねない事は百も承知。
せっかくの零弥の努力が早くも水の泡となってしまった。
ばれたのが生徒会メンバーという事が不幸中の幸いというべきか。
「でも…これで椎名くんにはコンタクトしやすくなったんじゃないですか?」
早奈英が全員に言う。
「そうですね。ならば会長に椎名くんへのコンタクトをお願いするとしましょうか」
「うぅ…そうするわ」
菜緒の命令で、紗亜矢は零弥に再び接触することになってしまった。
「では、ここで生徒会のお茶会…もとい反省会を閉めましょうか…」
紗亜矢が覇気の無い声で終了が宣言され、生徒会メンバーは解散した。
「一位の人は?」
「……一年A組、椎名…零弥君です」
「!?」
どこかで聞いたことのあるような名前が早奈英の口から飛び出した。
「ゲホッ、ゲホッ、ゴホッ!!」
早奈英が発表すると同時に紗亜矢は噴き出さずとも蒸せてしまった。
朝の一件で紗亜矢は自分の名前を伝えずに去ってしまったが、零弥の名前は聞いている。当然忘れてはいない。
「どうした?紗亜矢」
藍那が咳き込んだ紗亜矢を見て不思議に思う。
「いいや、なんでもないわ…」
見るからに何かあったようなリアクションを見せるが、幸いにも生徒会メンバーは少し気にしただけで今はそこまで追究しなかった。
「椎名…零弥か…聞いたこと無いな」
「でも、それだけ成績が良ければ、後は生徒会に興味をもってもらうだけですよね」
唯一の男子である和希が嬉しそうに言う。もう慣れてはいるが、同じ男子が入る事はやはり嬉しいのだろう。実際、この構成になったときは若干肩身の狭い思いをしていた。
新体制でも和希はおそらく残るので、ここは零弥をなんとしてでも加入したいと気合いが入る。
「とりあえず、椎名くんに接触しやすそうな人を探しましょうか」
早奈英が提示したのは、対象の人物を知っていた生徒にコンタクトを取る作戦である。先輩からの進言はこの時代でも影響は期待される。
「ですが、椎名君の出身中学校が同じ人って居ましたっけ?」
菜緒が疑問を呈する。完全な初対面の人を生徒会に誘うのはいくら何でも無謀すぎる。有効な手段としては、顔ぐらいは知っているだろう人物を投入することである。
しかし、その手段は零弥の場合はほとんど効果は無いようだ。その理由は早奈英が説明する。
「居ない…ようです…」
零弥と同じ出身中学校の生徒は2,3年生はおろか、ユミと流雅以外の1年生すらいない。顔見知りによるコンタクト作戦は開始前に失敗が宣告された。
作戦が失敗(むしろ始まってすらいない)してしまったならば、残った作戦はただひとつのみである。
「では、タイミングを見て、私たちの誰かが椎名くんに声をかけて見ましょうか」
摩美から奥の手を使うことが提案された。
作戦はいたってシンプル。生徒会という組織を利用して、一度だけ生徒会室へ誘拐……もとい、案内するのである。
しかし、零弥と同じ出身中学校の生徒がいないため、零弥についての情報は一切無い。
ならば、五月頃になるときに、同級生を通じて、情報を集めるのである。
一度だけで十分。
一度だけで問題ない。
一度だけでも連れて来れれば、多祥なりとも興味は持ってくれる筈である。
しかし、そうなると次に決めなければならないことがある。
「…なら、誰が…椎名くんに接触するのですか」
早奈英が問いかける。
先程も説明したように、勿論生徒会メンバーも零弥と同じ中学校出身者はいない。
「椎名くんを見たり、話したりした人が適任でしょうね」
「ゲホッ、ガホッ!!」
菜緒が冷静に話すが、紗亜矢が再び蒸せてしまった。
「会長。本当にどうかしたんですか?」
和希が再度蒸せた紗亜矢に疑いの混じった目を向ける。
「なんでもないから!なんでもないからホントにお願い!」
紗亜矢が明らかに焦っている。
焦る紗亜矢を見て、事の成り行きを悟ってしまった摩美が必殺の一言を早くもお見舞いする。
「そういえば会長。今日朝に集合したとき、制服が妙に汚れてしまってましたしぃ、時間もギリギリだったしぃ、来る途中に何かあったんじゃないですか」
「何も無いわよ!朝に椎名くんに会ったわけないでしょう!」
誰がどう見てもどう聞いても失言にしか聞こえない事実が紗亜矢の口から飛び出した。
摩美以外のメンバー(紗亜矢を含む)は、失言の意味がすぐに読み取れず、ただ、紗亜矢を注目するだけの短い沈黙が生まれた。
そのなかで摩美が小悪魔のようなかすかな笑みを浮かべている。
「紗亜矢。正直に話してもらおうか」
藍那がやれやれとした顔で早速尋問を始める。
「えっ…いや…何でもないんだけど…」
「そういえば白峰が言ったように、朝所々汚れてましたけど」
和希から追撃を食らう。
「そして遅れてきたという事は…まさか、椎名くんの前でつまずいたとか…」
藍那の止めの一言で全てが明らかになってしまった。
流雅達は初対面であるが、生徒会メンバーとしては紗亜矢がそのようなことをやらかしかねない事は百も承知。
せっかくの零弥の努力が早くも水の泡となってしまった。
ばれたのが生徒会メンバーという事が不幸中の幸いというべきか。
「でも…これで椎名くんにはコンタクトしやすくなったんじゃないですか?」
早奈英が全員に言う。
「そうですね。ならば会長に椎名くんへのコンタクトをお願いするとしましょうか」
「うぅ…そうするわ」
菜緒の命令で、紗亜矢は零弥に再び接触することになってしまった。
「では、ここで生徒会のお茶会…もとい反省会を閉めましょうか…」
紗亜矢が覇気の無い声で終了が宣言され、生徒会メンバーは解散した。
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