7 / 10
8月3日AM11:00
しおりを挟む
お兄ちゃん今日夜ヒマ?
虎造さんと花火やろう٩(๑ơ ڡơ๑)۶♥
妹からメッセージが来て、学は適当に「OK」のスタンプを返した。
今日も最高気温が更新された。
暑い…日差しではない。もはや空気が暑い。
暑い空気が、纏わりついてくる。
「虎造さん、大丈夫?何かフラフラしてない?」
エレベーターを出て、駐車場に向かっていたが、なかなか虎造さんが来ないので心配になって立ち止まる。
やっぱり元気が無い。
お墓参りは、明日とかの方が良かっただろうか。
「ああ…すまない。ただの立ちくらみだ」
車に乗り込み、スーパーへ寄った。
仏花と、線香とライターを買う。
虎造さんは、花を購入するという事に驚いていた。虎造さんは、花を買ったことがないらしい。
畑で調達できるから、との事だった。
「しかも…高いな…」と、虎造さんは花の値段に驚いていた。多分物価が違うと思うが、学も、2セット買ったら意外にいい値段するな、と内心思っていた。
いつも母親が持参していたので仏花の値段は知らなかった。
物価の説明をしながら、車を走らせお墓へ向かう。
バイトの時給とか、就職先の初任給とかの話をしたが、学も何となくで話しているので分かって貰えたのかどうか分からない。
虎造さんは、少し体調が回復したようで、顔色が良かった。
母方の時とは違い、お寺はかなり街中にあった。
小学校の向かいに保育園があり、その隣に寺と墓地がある。
夏休み中だったが、オルガンの音と、子ども達の声が少しだけ聞こえた。
「学くん、蝉が、居ないのか?」
虎造さんが、木々を見上げて不思議そうな顔をしていた。
「多分…居るには居るけど昔よりは少ないんじゃないかな~?あと暑すぎて鳴かないんじゃない?朝は少し鳴いてたよ」
大学の授業で、ヒートアイランド現象で100年前に比べて大都市の平均気温が3℃ぐらい上がったとか言ってたな、と学は思い出した。
こんなに暑いのに、日本の夏じゃないみたいだな。と虎造さんが小さな声で呟きながら、車から降りて、墓石が並ぶ方へ吸い寄せられるように歩き出す。
花と線香とライター、バケツに水を入れて、学は、慌てて着いて行った。
*
外浦家、と書かれた墓石の前に到着して虎造さんは墓石に手を添え側面の文字を読んでいた。
「ああ…良かった。父も母も長生きだ」
虎造さんの両親と思われる人の名前と、亡くなった日と年齢が彫ってある。
その隣に「絹」と「忠雄」の文字があった。
藤さんの妹の絹さんが、お婿さんを迎えたんだな、と分かった。
やはり虎造さんの名前はここには無い。
という事は、それを知った藤さんが、あっちのお墓に虎造さんを入れた可能性が高い。
外国で亡くなった人はお骨が日本に戻ってない人も多いと聞いたことがある。
虎造さんも、実際にはお墓には入っていないのかもしれない。
「学くん、昭和は何年で終わった?これは次の年号か?なんて読む?」
虎造さんは、「平成」の文字を指さしていた。
「えーっと、昭和は確か64年まで。次は平成って読むよ」
「そうか、ありがとう。今は平成か」
「んーと、今は令和だね」
「…平成天皇はご短命だったか…」
「まだ生きてるよ」
「???」
お花と水を綺麗にして、虎造さんは手を合わせて長い事目を閉じてしゃがみ込んでいた。
学も途中までは同じようにしていたが、あまりにも長いので途中から虎造さんの横顔をじっと見つめていた。
大丈夫かな。
亡くなったのが最近じゃなければ墓石に名前刻まない事もあるだろうし、遺骨も無いかもしれないし、気にしてないと良いけど。
もしかしてゲイって事バレてて親に勘当されてたとかなのかな…昔ってそういうの厳しそうだし。
いや、さすがにそれは無いか?
でも藤さんの方の墓には入れたんだから有り得るか。
ごちゃごちゃと、学は確認しようも無い事を考える。
線香が随分と短くなって、ようやく虎造さんが目を開けた。
「行こうか。長くなってしまって申し訳ないな」
「ううん、全然。大丈夫」
バケツを片付け、取り替えた花を捨てて、駐車場へ戻った。
帰りの車の中で、虎造さんに平成と令和の年号の事を説明した。
「なるほど、そういう事か…」
「うん。あ、妹が夜、花火しようって言ってるんだけど良い?」
「花火?ああ。分かった」
またスーパーによって適当に食材を買い揃え、家に戻って虎造さんと素麺を食べた。
食後のデザートは、虎造さんのリクエストでわらび餅を食べる。
実に、夏っぽい。
食後に虎造さんが、ソファーに座っていたが目を閉じてウトウトし始める。
やはり、あまりちゃんと夜眠れていないようだった。
その様子を見ていて、学もなんだか眠くなる。
普段日差しを避けている生活をしているので、今日は日光に当たりすぎて疲れたのかもしれない。
特に用事もないし、夕方までダラダラしようと考え、寝室に移動しようかとも思ったが、虎造さんをこのままソファーに置いていって良いものか迷う。
「ねぇねぇ、虎造さん。俺、寝室に居るからね、何かあったら呼んでよ」
声を掛けるが返事はなかった。
何となく、目を離すのが怖い。
一人にして大丈夫だろうか。
消えてしまうかもしれない。
「…起こさずに運べるかな?」
座っている虎造さんを、ちょっと持ち上げて、学は様子を伺う。
完全に脱力し、寝息を立てていた。
抱き上げて、ベッドまで運び、横たえて毛布を掛けた。
良かった。全く起きない。
いそいそと隣に潜り込んで学も横になった。
もしこのまま、ちゃんと虎造さんがこの時代に生きていけるのであれば、今度こそちゃんとお墓に入れるだろう。
その頃には同性婚も普通になっているといいなぁ。
そんで虎造さんが好きになった人と、同じお墓に入れるとハッピーエンドだ。
戸籍について色々調べたが、事情次第で市役所に相談すればなんとかなる可能性もあるようだった。
思ったより何とかなりそうで、学は安心して、寝息を立てている虎造さんの顔を見つめる。
眠っている虎造さんは、幼く見える。
髪が短く坊主頭なので、中学生みたいだった。
そうだ…17時ぐらいにアラームを設定しなきゃなと、考えている内に、瞼が開かなくなり何度か意識を飛ばして、学はストンと完全に意識を失った。
虎造さんと花火やろう٩(๑ơ ڡơ๑)۶♥
妹からメッセージが来て、学は適当に「OK」のスタンプを返した。
今日も最高気温が更新された。
暑い…日差しではない。もはや空気が暑い。
暑い空気が、纏わりついてくる。
「虎造さん、大丈夫?何かフラフラしてない?」
エレベーターを出て、駐車場に向かっていたが、なかなか虎造さんが来ないので心配になって立ち止まる。
やっぱり元気が無い。
お墓参りは、明日とかの方が良かっただろうか。
「ああ…すまない。ただの立ちくらみだ」
車に乗り込み、スーパーへ寄った。
仏花と、線香とライターを買う。
虎造さんは、花を購入するという事に驚いていた。虎造さんは、花を買ったことがないらしい。
畑で調達できるから、との事だった。
「しかも…高いな…」と、虎造さんは花の値段に驚いていた。多分物価が違うと思うが、学も、2セット買ったら意外にいい値段するな、と内心思っていた。
いつも母親が持参していたので仏花の値段は知らなかった。
物価の説明をしながら、車を走らせお墓へ向かう。
バイトの時給とか、就職先の初任給とかの話をしたが、学も何となくで話しているので分かって貰えたのかどうか分からない。
虎造さんは、少し体調が回復したようで、顔色が良かった。
母方の時とは違い、お寺はかなり街中にあった。
小学校の向かいに保育園があり、その隣に寺と墓地がある。
夏休み中だったが、オルガンの音と、子ども達の声が少しだけ聞こえた。
「学くん、蝉が、居ないのか?」
虎造さんが、木々を見上げて不思議そうな顔をしていた。
「多分…居るには居るけど昔よりは少ないんじゃないかな~?あと暑すぎて鳴かないんじゃない?朝は少し鳴いてたよ」
大学の授業で、ヒートアイランド現象で100年前に比べて大都市の平均気温が3℃ぐらい上がったとか言ってたな、と学は思い出した。
こんなに暑いのに、日本の夏じゃないみたいだな。と虎造さんが小さな声で呟きながら、車から降りて、墓石が並ぶ方へ吸い寄せられるように歩き出す。
花と線香とライター、バケツに水を入れて、学は、慌てて着いて行った。
*
外浦家、と書かれた墓石の前に到着して虎造さんは墓石に手を添え側面の文字を読んでいた。
「ああ…良かった。父も母も長生きだ」
虎造さんの両親と思われる人の名前と、亡くなった日と年齢が彫ってある。
その隣に「絹」と「忠雄」の文字があった。
藤さんの妹の絹さんが、お婿さんを迎えたんだな、と分かった。
やはり虎造さんの名前はここには無い。
という事は、それを知った藤さんが、あっちのお墓に虎造さんを入れた可能性が高い。
外国で亡くなった人はお骨が日本に戻ってない人も多いと聞いたことがある。
虎造さんも、実際にはお墓には入っていないのかもしれない。
「学くん、昭和は何年で終わった?これは次の年号か?なんて読む?」
虎造さんは、「平成」の文字を指さしていた。
「えーっと、昭和は確か64年まで。次は平成って読むよ」
「そうか、ありがとう。今は平成か」
「んーと、今は令和だね」
「…平成天皇はご短命だったか…」
「まだ生きてるよ」
「???」
お花と水を綺麗にして、虎造さんは手を合わせて長い事目を閉じてしゃがみ込んでいた。
学も途中までは同じようにしていたが、あまりにも長いので途中から虎造さんの横顔をじっと見つめていた。
大丈夫かな。
亡くなったのが最近じゃなければ墓石に名前刻まない事もあるだろうし、遺骨も無いかもしれないし、気にしてないと良いけど。
もしかしてゲイって事バレてて親に勘当されてたとかなのかな…昔ってそういうの厳しそうだし。
いや、さすがにそれは無いか?
でも藤さんの方の墓には入れたんだから有り得るか。
ごちゃごちゃと、学は確認しようも無い事を考える。
線香が随分と短くなって、ようやく虎造さんが目を開けた。
「行こうか。長くなってしまって申し訳ないな」
「ううん、全然。大丈夫」
バケツを片付け、取り替えた花を捨てて、駐車場へ戻った。
帰りの車の中で、虎造さんに平成と令和の年号の事を説明した。
「なるほど、そういう事か…」
「うん。あ、妹が夜、花火しようって言ってるんだけど良い?」
「花火?ああ。分かった」
またスーパーによって適当に食材を買い揃え、家に戻って虎造さんと素麺を食べた。
食後のデザートは、虎造さんのリクエストでわらび餅を食べる。
実に、夏っぽい。
食後に虎造さんが、ソファーに座っていたが目を閉じてウトウトし始める。
やはり、あまりちゃんと夜眠れていないようだった。
その様子を見ていて、学もなんだか眠くなる。
普段日差しを避けている生活をしているので、今日は日光に当たりすぎて疲れたのかもしれない。
特に用事もないし、夕方までダラダラしようと考え、寝室に移動しようかとも思ったが、虎造さんをこのままソファーに置いていって良いものか迷う。
「ねぇねぇ、虎造さん。俺、寝室に居るからね、何かあったら呼んでよ」
声を掛けるが返事はなかった。
何となく、目を離すのが怖い。
一人にして大丈夫だろうか。
消えてしまうかもしれない。
「…起こさずに運べるかな?」
座っている虎造さんを、ちょっと持ち上げて、学は様子を伺う。
完全に脱力し、寝息を立てていた。
抱き上げて、ベッドまで運び、横たえて毛布を掛けた。
良かった。全く起きない。
いそいそと隣に潜り込んで学も横になった。
もしこのまま、ちゃんと虎造さんがこの時代に生きていけるのであれば、今度こそちゃんとお墓に入れるだろう。
その頃には同性婚も普通になっているといいなぁ。
そんで虎造さんが好きになった人と、同じお墓に入れるとハッピーエンドだ。
戸籍について色々調べたが、事情次第で市役所に相談すればなんとかなる可能性もあるようだった。
思ったより何とかなりそうで、学は安心して、寝息を立てている虎造さんの顔を見つめる。
眠っている虎造さんは、幼く見える。
髪が短く坊主頭なので、中学生みたいだった。
そうだ…17時ぐらいにアラームを設定しなきゃなと、考えている内に、瞼が開かなくなり何度か意識を飛ばして、学はストンと完全に意識を失った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー
夏目碧央
BL
強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。
一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる