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年末の過ごし方
年末、僕はまだそれほど膨らんでいないお腹を気遣いながら、大掃除に精を出していた。
今年の三月に建てたばかりの家だから、正直、汚れが気になるほどではない。それでも会社の先輩たちから「子どもが生まれたら、掃除どころじゃなくなるよ」と口を揃えて言われて、今のうちにと思って頑張ってみた。
ひと段落ついてスマホを手に取ると、母からメッセージが届いていた。
『夕飯、どうする? 一緒に食べる? それとも、そうちゃんと二人? 二人なら年越しそば分けるから、取りにおいでね』
確かに、どうしよう。
昨年は蒼真が仕事で、二人で年末を過ごすことはできなかった。今年は運よく、大晦日も元旦もお休みだ。二人きりで静かに過ごすのもいいし、四人でこたつに入って、国民的番組レッド&ホワイトショー(通称レッホワ)を観ながら年を越すのも悪くない。
そんなことを考えていると、父と庭の手入れをしていた蒼真が戻ってきた。
「蒼真。今日の夕飯、二人がいい? それとも四人? ちなみに年越しそば」
「それなら、一気に茹でたほうが楽だし、四人で食べようか。ところで、水無瀬家って年末どう過ごしてたの?」
「うちはね、早めにお風呂入って、十八時に夕飯。十九時にはテレビの前にスタンバイしてレッホワ。あとは年明けまで、だらだら。初詣は元旦の朝、ゆっくり行くかな」
「へえ。やっぱり家によって違うね」
「え、日向家はどんな感じだったの?」
「子どもの頃は、母はレッホワ派、父はお笑い番組派で、リモコンの取り合いしてた」
思わず笑うと、蒼真もどこか懐かしそうな表情で続けた。
「俺はどっちも好きだったな。父が亡くなってからは、年末になると母方の祖父の家でレッホワを観てたんだ。高校を卒業してからは、母が年越しカウントダウンライブに行くようになってさ」
「その間、蒼真は?」
「友達と除夜の鐘を突きに行ったり、免許取ってからは初日の出を見に海までドライブしたり」
「全然、違うね」
「ほんとだね」
そう言って、二人で顔を見合わせて笑った。
まったく違う年末を過ごしてきた僕たちが、今こうして同じ家で、同じ年の瀬を迎えようとしている。そのことが、胸の奥にじんわりと広がっていく。
この時間が、何よりも愛おしかった。
母に『後で一緒にお蕎麦を食べる』とメッセージを送ってから、蒼真に視線を向ける。
「まだ少し早いけど……お風呂、行く?」
「いいよ」
そう答えた次の瞬間、蒼真が自然な仕草で顔を近づけ、僕の頬にちゅっとキスを落とした。
これは"一緒にお風呂に入ろう"の合図。
蒼真が家にいる日は、いつも二人でお風呂に入っている。新婚当初は別々だったけれど、妊娠が分かってから状況は変わった。
「妊夫を一人でお風呂に入らせるなんて、気が気じゃない!」
そう言って譲らなかった蒼真の主張が、そのまま今の習慣になっている。
まだ陽のあるうちからお風呂に入るのは、少しだけ不思議な感じがする。でも今はお風呂に"時間がかかる"から、夕食に間に合わせるには仕方がない。
そのまま僕は、蒼真と手を繋いで浴室へ向かった。
今年の三月に建てたばかりの家だから、正直、汚れが気になるほどではない。それでも会社の先輩たちから「子どもが生まれたら、掃除どころじゃなくなるよ」と口を揃えて言われて、今のうちにと思って頑張ってみた。
ひと段落ついてスマホを手に取ると、母からメッセージが届いていた。
『夕飯、どうする? 一緒に食べる? それとも、そうちゃんと二人? 二人なら年越しそば分けるから、取りにおいでね』
確かに、どうしよう。
昨年は蒼真が仕事で、二人で年末を過ごすことはできなかった。今年は運よく、大晦日も元旦もお休みだ。二人きりで静かに過ごすのもいいし、四人でこたつに入って、国民的番組レッド&ホワイトショー(通称レッホワ)を観ながら年を越すのも悪くない。
そんなことを考えていると、父と庭の手入れをしていた蒼真が戻ってきた。
「蒼真。今日の夕飯、二人がいい? それとも四人? ちなみに年越しそば」
「それなら、一気に茹でたほうが楽だし、四人で食べようか。ところで、水無瀬家って年末どう過ごしてたの?」
「うちはね、早めにお風呂入って、十八時に夕飯。十九時にはテレビの前にスタンバイしてレッホワ。あとは年明けまで、だらだら。初詣は元旦の朝、ゆっくり行くかな」
「へえ。やっぱり家によって違うね」
「え、日向家はどんな感じだったの?」
「子どもの頃は、母はレッホワ派、父はお笑い番組派で、リモコンの取り合いしてた」
思わず笑うと、蒼真もどこか懐かしそうな表情で続けた。
「俺はどっちも好きだったな。父が亡くなってからは、年末になると母方の祖父の家でレッホワを観てたんだ。高校を卒業してからは、母が年越しカウントダウンライブに行くようになってさ」
「その間、蒼真は?」
「友達と除夜の鐘を突きに行ったり、免許取ってからは初日の出を見に海までドライブしたり」
「全然、違うね」
「ほんとだね」
そう言って、二人で顔を見合わせて笑った。
まったく違う年末を過ごしてきた僕たちが、今こうして同じ家で、同じ年の瀬を迎えようとしている。そのことが、胸の奥にじんわりと広がっていく。
この時間が、何よりも愛おしかった。
母に『後で一緒にお蕎麦を食べる』とメッセージを送ってから、蒼真に視線を向ける。
「まだ少し早いけど……お風呂、行く?」
「いいよ」
そう答えた次の瞬間、蒼真が自然な仕草で顔を近づけ、僕の頬にちゅっとキスを落とした。
これは"一緒にお風呂に入ろう"の合図。
蒼真が家にいる日は、いつも二人でお風呂に入っている。新婚当初は別々だったけれど、妊娠が分かってから状況は変わった。
「妊夫を一人でお風呂に入らせるなんて、気が気じゃない!」
そう言って譲らなかった蒼真の主張が、そのまま今の習慣になっている。
まだ陽のあるうちからお風呂に入るのは、少しだけ不思議な感じがする。でも今はお風呂に"時間がかかる"から、夕食に間に合わせるには仕方がない。
そのまま僕は、蒼真と手を繋いで浴室へ向かった。
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