破滅確定の悪役貴族、【絶対快眠】スキルで最強魔法使いになったので、学園スローライフを満喫する

空月そらら

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1章

第54話 授業開始――周囲の反応と新たな日常

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 魔力判定テストで“82”という高数値を叩き出した俺は、一夜明けた翌朝、学園に到着した途端、周囲の生徒からいろんな視線を向けられた。
 
「昨日は大人しそうに見えたのに、実はすごい魔力を持ってるらしいぞ」
「あのフローラ超えただと……?
「でも絶対快眠だろ? どういうこと?」

 いろいろな憶測や噂が飛び交うが、中には「おめでとう。すごいね」と素直に声をかけてくれる者もいた。

 クラスメイトの数人が「分からないことがあったら聞いて」と言ってきたり。

 もっとも、俺を“悪役貴族”として毛嫌いしていた面々は態度が変わるどころか、「何だよ、実は魔力だけ高いまがい物か?」「どうせ裏で何かイカサマでもやったんじゃね?」といった陰口を叩く始末。

 彼らが勇者アークを支持しているのか、それとも単純に俺を気に入らないのかはわからない。

「ふう……やっぱり派閥というか、人間関係は面倒だな」

 それでも、フローラをはじめ、新たに話しかけてくれる生徒も出てきたおかげで孤立感はさほどない。
 
 剣術の授業や礼儀作法の授業が始まり、学園生活が本格化していく。

 最初のうちは基礎的な座学が多いが、合間には実技演習も組み込まれ始めた。

 俺にとっては、エリシアの指導があったおかげで魔法理論の基礎は理解している。

 剣術もエリシアとの手合わせで鍛えてきたし、そこまで苦労はない。
 
 それが教員やクラスメイトの目にどう映るかはわからないが、少なくとも「想像より扱いやすい貴族」くらいには思ってもらえそうだ。

 一方で、勇者アークの姿をあまり見かけない。

 教員の話によると、彼は今、件の魔力判定テストの結果にショックを受けているらしく、授業にも集中していないようだ。
 
 ときおり廊下で見かけると、むすっとした顔で取り巻きと歩き、俺と目が合うとすぐそらす。
 
 どうやら俺への敵意はあるが、表立って絡んでくる元気はないようだ。

「まあ、その方が平和でいいか」

 そんなことを考えながら、俺は学園のカリキュラムをこなす日々を送り始めた。

 ★

 ある日の午後、剣術の実技授業が校舎裏の訓練場で行われることになった。
 
 ここには複数の木人や模造ゴーレムが設置され、生徒たちが模擬剣を使って基礎的な剣技を身につけるという形式だ。

 俺は隅のほうで木剣を握り、エリシア仕込みで学んだ体捌きを思い返しながら何度か素振りを試みる。

 すると、隣でフローラが「あ、レオンも剣術の授業を取ってるんだね」と声をかけてきた。

「まあ、一応な。俺も戦闘力を上げたいから、魔法だけじゃなく剣術も学んでみようと思ってる」
「そっか。私も剣士スキルを持ってるし、こういう授業は楽しみ。よかったら、一緒に組んで練習しない?」

 ありがたい提案だ。

 フローラは剣士としてのポテンシャルも高い上、魔力もある。

 それに俺自身、慣れ親しんだ相手と組んだほうが集中できる。
 
「おう、ぜひ。よろしく頼むよ」

 そうして二人で模造ゴーレム相手に打ち込みや回避の練習を繰り返す。

 元々フローラは剣術の動きが滑らかで、女性らしい華やかさも相まって周囲の生徒から注目を集めている。
 
 俺もエリシアとの剣術訓練で身体の芯を鍛えてきたせいか、そこそこ動ける。

 一度休憩を挟んだとき、フローラが「レオン、本当に上手くなってるね」と目を丸くした。

「そうか? まだまだだと思うけど。そっちこそ切れ味がすごいよ……。うっかり当たると痛そうだ」
 
「えへへ、ありがとう。でももっと精度を上げたいな。レオンとやるとすごく刺激になるよ」

 お互い励まし合いながら、この日の実技授業を楽しんだ。

 その場には、チラリとアークの姿もあったが、終始取り巻きに囲まれながら不機嫌そうな顔で一人素振りをしていたようだ。
 
 ときどき、こっちを睨んでいる気がしたが、特に声をかけてくることはない。

「うわ、あっちにアークがいる……」
「最近は元気ないよね」
「剣聖って剣術特化じゃないのか? あんまり上達してるように見えないが……」

 周囲の生徒の囁きが聞こえる限り、アークは“魔力が平均値”だったことで完全に威圧感を失っているらしい。

 剣術の才能もあるのだろうが、いまのところ目立った成果を見せていないという。
 
 そのことがさらにアークの苛立ちを募らせている……そんな空気がひしひしと伝わってくる。

「ちょっと怖いな。ああいう性格の奴が鬱憤を溜め込んでると、何かの拍子に爆発しそうだ」
 
 とはいえ、今は関わらないのが吉。

 フローラと一緒に、平和に授業を終わらせておくのが得策だ。
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