54 / 73
1章
第54話 授業開始――周囲の反応と新たな日常
しおりを挟む
魔力判定テストで“82”という高数値を叩き出した俺は、一夜明けた翌朝、学園に到着した途端、周囲の生徒からいろんな視線を向けられた。
「昨日は大人しそうに見えたのに、実はすごい魔力を持ってるらしいぞ」
「あのフローラ超えただと……?
「でも絶対快眠だろ? どういうこと?」
いろいろな憶測や噂が飛び交うが、中には「おめでとう。すごいね」と素直に声をかけてくれる者もいた。
クラスメイトの数人が「分からないことがあったら聞いて」と言ってきたり。
もっとも、俺を“悪役貴族”として毛嫌いしていた面々は態度が変わるどころか、「何だよ、実は魔力だけ高いまがい物か?」「どうせ裏で何かイカサマでもやったんじゃね?」といった陰口を叩く始末。
彼らが勇者アークを支持しているのか、それとも単純に俺を気に入らないのかはわからない。
「ふう……やっぱり派閥というか、人間関係は面倒だな」
それでも、フローラをはじめ、新たに話しかけてくれる生徒も出てきたおかげで孤立感はさほどない。
剣術の授業や礼儀作法の授業が始まり、学園生活が本格化していく。
最初のうちは基礎的な座学が多いが、合間には実技演習も組み込まれ始めた。
俺にとっては、エリシアの指導があったおかげで魔法理論の基礎は理解している。
剣術もエリシアとの手合わせで鍛えてきたし、そこまで苦労はない。
それが教員やクラスメイトの目にどう映るかはわからないが、少なくとも「想像より扱いやすい貴族」くらいには思ってもらえそうだ。
一方で、勇者アークの姿をあまり見かけない。
教員の話によると、彼は今、件の魔力判定テストの結果にショックを受けているらしく、授業にも集中していないようだ。
ときおり廊下で見かけると、むすっとした顔で取り巻きと歩き、俺と目が合うとすぐそらす。
どうやら俺への敵意はあるが、表立って絡んでくる元気はないようだ。
「まあ、その方が平和でいいか」
そんなことを考えながら、俺は学園のカリキュラムをこなす日々を送り始めた。
★
ある日の午後、剣術の実技授業が校舎裏の訓練場で行われることになった。
ここには複数の木人や模造ゴーレムが設置され、生徒たちが模擬剣を使って基礎的な剣技を身につけるという形式だ。
俺は隅のほうで木剣を握り、エリシア仕込みで学んだ体捌きを思い返しながら何度か素振りを試みる。
すると、隣でフローラが「あ、レオンも剣術の授業を取ってるんだね」と声をかけてきた。
「まあ、一応な。俺も戦闘力を上げたいから、魔法だけじゃなく剣術も学んでみようと思ってる」
「そっか。私も剣士スキルを持ってるし、こういう授業は楽しみ。よかったら、一緒に組んで練習しない?」
ありがたい提案だ。
フローラは剣士としてのポテンシャルも高い上、魔力もある。
それに俺自身、慣れ親しんだ相手と組んだほうが集中できる。
「おう、ぜひ。よろしく頼むよ」
そうして二人で模造ゴーレム相手に打ち込みや回避の練習を繰り返す。
元々フローラは剣術の動きが滑らかで、女性らしい華やかさも相まって周囲の生徒から注目を集めている。
俺もエリシアとの剣術訓練で身体の芯を鍛えてきたせいか、そこそこ動ける。
一度休憩を挟んだとき、フローラが「レオン、本当に上手くなってるね」と目を丸くした。
「そうか? まだまだだと思うけど。そっちこそ切れ味がすごいよ……。うっかり当たると痛そうだ」
「えへへ、ありがとう。でももっと精度を上げたいな。レオンとやるとすごく刺激になるよ」
お互い励まし合いながら、この日の実技授業を楽しんだ。
その場には、チラリとアークの姿もあったが、終始取り巻きに囲まれながら不機嫌そうな顔で一人素振りをしていたようだ。
ときどき、こっちを睨んでいる気がしたが、特に声をかけてくることはない。
「うわ、あっちにアークがいる……」
「最近は元気ないよね」
「剣聖って剣術特化じゃないのか? あんまり上達してるように見えないが……」
周囲の生徒の囁きが聞こえる限り、アークは“魔力が平均値”だったことで完全に威圧感を失っているらしい。
剣術の才能もあるのだろうが、いまのところ目立った成果を見せていないという。
そのことがさらにアークの苛立ちを募らせている……そんな空気がひしひしと伝わってくる。
「ちょっと怖いな。ああいう性格の奴が鬱憤を溜め込んでると、何かの拍子に爆発しそうだ」
とはいえ、今は関わらないのが吉。
フローラと一緒に、平和に授業を終わらせておくのが得策だ。
「昨日は大人しそうに見えたのに、実はすごい魔力を持ってるらしいぞ」
「あのフローラ超えただと……?
「でも絶対快眠だろ? どういうこと?」
いろいろな憶測や噂が飛び交うが、中には「おめでとう。すごいね」と素直に声をかけてくれる者もいた。
クラスメイトの数人が「分からないことがあったら聞いて」と言ってきたり。
もっとも、俺を“悪役貴族”として毛嫌いしていた面々は態度が変わるどころか、「何だよ、実は魔力だけ高いまがい物か?」「どうせ裏で何かイカサマでもやったんじゃね?」といった陰口を叩く始末。
彼らが勇者アークを支持しているのか、それとも単純に俺を気に入らないのかはわからない。
「ふう……やっぱり派閥というか、人間関係は面倒だな」
それでも、フローラをはじめ、新たに話しかけてくれる生徒も出てきたおかげで孤立感はさほどない。
剣術の授業や礼儀作法の授業が始まり、学園生活が本格化していく。
最初のうちは基礎的な座学が多いが、合間には実技演習も組み込まれ始めた。
俺にとっては、エリシアの指導があったおかげで魔法理論の基礎は理解している。
剣術もエリシアとの手合わせで鍛えてきたし、そこまで苦労はない。
それが教員やクラスメイトの目にどう映るかはわからないが、少なくとも「想像より扱いやすい貴族」くらいには思ってもらえそうだ。
一方で、勇者アークの姿をあまり見かけない。
教員の話によると、彼は今、件の魔力判定テストの結果にショックを受けているらしく、授業にも集中していないようだ。
ときおり廊下で見かけると、むすっとした顔で取り巻きと歩き、俺と目が合うとすぐそらす。
どうやら俺への敵意はあるが、表立って絡んでくる元気はないようだ。
「まあ、その方が平和でいいか」
そんなことを考えながら、俺は学園のカリキュラムをこなす日々を送り始めた。
★
ある日の午後、剣術の実技授業が校舎裏の訓練場で行われることになった。
ここには複数の木人や模造ゴーレムが設置され、生徒たちが模擬剣を使って基礎的な剣技を身につけるという形式だ。
俺は隅のほうで木剣を握り、エリシア仕込みで学んだ体捌きを思い返しながら何度か素振りを試みる。
すると、隣でフローラが「あ、レオンも剣術の授業を取ってるんだね」と声をかけてきた。
「まあ、一応な。俺も戦闘力を上げたいから、魔法だけじゃなく剣術も学んでみようと思ってる」
「そっか。私も剣士スキルを持ってるし、こういう授業は楽しみ。よかったら、一緒に組んで練習しない?」
ありがたい提案だ。
フローラは剣士としてのポテンシャルも高い上、魔力もある。
それに俺自身、慣れ親しんだ相手と組んだほうが集中できる。
「おう、ぜひ。よろしく頼むよ」
そうして二人で模造ゴーレム相手に打ち込みや回避の練習を繰り返す。
元々フローラは剣術の動きが滑らかで、女性らしい華やかさも相まって周囲の生徒から注目を集めている。
俺もエリシアとの剣術訓練で身体の芯を鍛えてきたせいか、そこそこ動ける。
一度休憩を挟んだとき、フローラが「レオン、本当に上手くなってるね」と目を丸くした。
「そうか? まだまだだと思うけど。そっちこそ切れ味がすごいよ……。うっかり当たると痛そうだ」
「えへへ、ありがとう。でももっと精度を上げたいな。レオンとやるとすごく刺激になるよ」
お互い励まし合いながら、この日の実技授業を楽しんだ。
その場には、チラリとアークの姿もあったが、終始取り巻きに囲まれながら不機嫌そうな顔で一人素振りをしていたようだ。
ときどき、こっちを睨んでいる気がしたが、特に声をかけてくることはない。
「うわ、あっちにアークがいる……」
「最近は元気ないよね」
「剣聖って剣術特化じゃないのか? あんまり上達してるように見えないが……」
周囲の生徒の囁きが聞こえる限り、アークは“魔力が平均値”だったことで完全に威圧感を失っているらしい。
剣術の才能もあるのだろうが、いまのところ目立った成果を見せていないという。
そのことがさらにアークの苛立ちを募らせている……そんな空気がひしひしと伝わってくる。
「ちょっと怖いな。ああいう性格の奴が鬱憤を溜め込んでると、何かの拍子に爆発しそうだ」
とはいえ、今は関わらないのが吉。
フローラと一緒に、平和に授業を終わらせておくのが得策だ。
131
あなたにおすすめの小説
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる