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王都学園 見学編
第46話 簡単な授業を体験する
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「ここがエリシオン学園ね」
母がそうつぶやき、父が「いいかリウス、ここにあと三年もすれば通うことになるんだぞ?」と笑う。
僕は窓に張り付くようにしてアーチ門を見上げ、ばぶばぶと感嘆の声を上げる。
あまりの広さ、そしてきらびやかな造形は、まさに名門貴族のための学府にふさわしい。
エレノアお姉ちゃんも「懐かしいわ……卒業してからこうして見学で来るのって変な感じ」とほほ笑んでいる。
「学費は正直かなり高いけど、やっぱりここはエルメア王国の名門校だからね。辺境伯家としても誇りを持って通わせたいわ」
「そうそう。わが家はもうエレノアを送り出したし、リウスもこの学園で大いに成長するだろう」
父と母が微笑ましく会話しているうちに、馬車が校門をくぐる。
敷地内の石畳の道を進むと、同じように親子連れの馬車が何台も停まっているのが見えた。
今日は見学日なのだろう。
僕と同年代と思しき子どもが親と一緒に歩いていたり、あちこちで案内書らしき紙を眺めている姿が見える。
どうやら僕だけじゃないらしい。
おそらく地方貴族の子が多いのかもしれないが、すでに凛々しい顔をした子や、やたらと良い服を着ている子などがちらほら。
「フェルまで連れてきたのが少し目立つかしら? でもリウスにとっては家族も同然だものね」
母はそんなふうに笑いながら周囲を見回す。
確かに白狼を連れている親子はなかなかいないらしく、馬車から降りたフェルが尻尾を振るだけで近くの子どもたちや大人が「おお……」と息を呑んでいるのが見える。
「リウス、しっかり歩ける?」
「うん、大丈夫でしゅ!」
まだ赤ちゃん語が抜けきらないのが恥ずかしいが、それでも歩けるようになってからもうけっこう経っている。
エレノアお姉ちゃんがおおげさに手を差し伸べてくれるのを断って、僕は自力でよちよちと馬車のステップを降りる。
フェルがすぐそばに付き添ってくれるので転ぶ心配はない。
広々とした石畳の地面に足を下ろした瞬間、王都の学園らしい匂いと雰囲気が肌に伝わってきた。
目の前には大階段があり、そこを登ると壮大な正門ホールが見える。
緑豊かな中庭が左右に広がり、噴水まで設置されているのがちらりと視界に入る。
僕は胸を躍らせて辺りを見回し、フェルも興奮した様子で鼻をひくつかせていた。
「ねえ、あれ見て。あそこにいる親子も見学組かしら? みんな案内書を持ってるわよ」
エレノアお姉ちゃんが指さした先には、似たような年頃の子どもが何人か連れ立って歩いている。
豪奢なドレスを着た少女や、剣を佩いた少年が親にエスコートされながら正門の方へと向かっている。
「フェル、そんなに走り回っちゃ駄目だからね」
エレノアお姉ちゃんがそう言うと、フェルは尻尾をちょいちょい動かしながらも足踏みを落ち着かせて、僕たちの後ろをついてくる。
決して吠えたり暴れたりしないあたり、本当に行儀がいい相棒だ。
そうこうしているうちに、学園の職員らしき人が通りかかり、僕たちへ冊子を渡してくれた。
そこには“本日の見学ルート”や“体験授業のスケジュール”が書かれていて、どうやら自由に校内を探索するだけでなく、簡単な授業を体験できるとのこと。
父と母は「せっかくだし、いくつか回ろう」と意気込んでいる。
「エレノア、久しぶりに来る学園ね。どこから案内してくれるのかしら?」
母がそう言うと、エレノアお姉ちゃんは「まず教員室か……いえ、教室でも……」と笑う。
そう言った矢先に、白い髭をたくわえた老齢の、魔術師然とした人物がこちらへ近づいてきた。
「おやおや、辺境伯さまにクラリス夫人……それにエレノア。随分と懐かしい顔だねえ。ふむ、元気そうで何よりだ」
エレノアお姉ちゃんは思わず両手を合わせて少し頭を下げるようにして、「ランキ先生、お久しぶりです!」とはしゃいだ声を出す。
彼がかのランキ先生。
エリシオン学園で長らく魔法科の教師をしており、かつては王国で“賢者”と称えられたという大魔術師。
ゲームの原作にも出てきたような気がする。
息を飲むほど威厳があるというよりは、優しげで飄々とした雰囲気が漂っていて、何とも親しみやすそうだ。
ランキ先生は、にこやかにエレノアお姉ちゃんとおしゃべりし、父とも「いやぁ、あなたには以前ドラゴン討伐の際に助けてもらってね。懐かしいな!」と話を弾ませている。
母もうれしそうに昔を思い出して笑っており、僕はその間、ちょこんと頭を下げて礼をする。
するとランキ先生が優しい表情で僕に目を向ける。
「なるほど、あなたがリウス坊ちゃんか。エレノアから聞いているよ。とても魔法の才能があるって? 少なくともエレノアは学園きっての優等生だったから、その弟なら納得だろうねえ」
母がそうつぶやき、父が「いいかリウス、ここにあと三年もすれば通うことになるんだぞ?」と笑う。
僕は窓に張り付くようにしてアーチ門を見上げ、ばぶばぶと感嘆の声を上げる。
あまりの広さ、そしてきらびやかな造形は、まさに名門貴族のための学府にふさわしい。
エレノアお姉ちゃんも「懐かしいわ……卒業してからこうして見学で来るのって変な感じ」とほほ笑んでいる。
「学費は正直かなり高いけど、やっぱりここはエルメア王国の名門校だからね。辺境伯家としても誇りを持って通わせたいわ」
「そうそう。わが家はもうエレノアを送り出したし、リウスもこの学園で大いに成長するだろう」
父と母が微笑ましく会話しているうちに、馬車が校門をくぐる。
敷地内の石畳の道を進むと、同じように親子連れの馬車が何台も停まっているのが見えた。
今日は見学日なのだろう。
僕と同年代と思しき子どもが親と一緒に歩いていたり、あちこちで案内書らしき紙を眺めている姿が見える。
どうやら僕だけじゃないらしい。
おそらく地方貴族の子が多いのかもしれないが、すでに凛々しい顔をした子や、やたらと良い服を着ている子などがちらほら。
「フェルまで連れてきたのが少し目立つかしら? でもリウスにとっては家族も同然だものね」
母はそんなふうに笑いながら周囲を見回す。
確かに白狼を連れている親子はなかなかいないらしく、馬車から降りたフェルが尻尾を振るだけで近くの子どもたちや大人が「おお……」と息を呑んでいるのが見える。
「リウス、しっかり歩ける?」
「うん、大丈夫でしゅ!」
まだ赤ちゃん語が抜けきらないのが恥ずかしいが、それでも歩けるようになってからもうけっこう経っている。
エレノアお姉ちゃんがおおげさに手を差し伸べてくれるのを断って、僕は自力でよちよちと馬車のステップを降りる。
フェルがすぐそばに付き添ってくれるので転ぶ心配はない。
広々とした石畳の地面に足を下ろした瞬間、王都の学園らしい匂いと雰囲気が肌に伝わってきた。
目の前には大階段があり、そこを登ると壮大な正門ホールが見える。
緑豊かな中庭が左右に広がり、噴水まで設置されているのがちらりと視界に入る。
僕は胸を躍らせて辺りを見回し、フェルも興奮した様子で鼻をひくつかせていた。
「ねえ、あれ見て。あそこにいる親子も見学組かしら? みんな案内書を持ってるわよ」
エレノアお姉ちゃんが指さした先には、似たような年頃の子どもが何人か連れ立って歩いている。
豪奢なドレスを着た少女や、剣を佩いた少年が親にエスコートされながら正門の方へと向かっている。
「フェル、そんなに走り回っちゃ駄目だからね」
エレノアお姉ちゃんがそう言うと、フェルは尻尾をちょいちょい動かしながらも足踏みを落ち着かせて、僕たちの後ろをついてくる。
決して吠えたり暴れたりしないあたり、本当に行儀がいい相棒だ。
そうこうしているうちに、学園の職員らしき人が通りかかり、僕たちへ冊子を渡してくれた。
そこには“本日の見学ルート”や“体験授業のスケジュール”が書かれていて、どうやら自由に校内を探索するだけでなく、簡単な授業を体験できるとのこと。
父と母は「せっかくだし、いくつか回ろう」と意気込んでいる。
「エレノア、久しぶりに来る学園ね。どこから案内してくれるのかしら?」
母がそう言うと、エレノアお姉ちゃんは「まず教員室か……いえ、教室でも……」と笑う。
そう言った矢先に、白い髭をたくわえた老齢の、魔術師然とした人物がこちらへ近づいてきた。
「おやおや、辺境伯さまにクラリス夫人……それにエレノア。随分と懐かしい顔だねえ。ふむ、元気そうで何よりだ」
エレノアお姉ちゃんは思わず両手を合わせて少し頭を下げるようにして、「ランキ先生、お久しぶりです!」とはしゃいだ声を出す。
彼がかのランキ先生。
エリシオン学園で長らく魔法科の教師をしており、かつては王国で“賢者”と称えられたという大魔術師。
ゲームの原作にも出てきたような気がする。
息を飲むほど威厳があるというよりは、優しげで飄々とした雰囲気が漂っていて、何とも親しみやすそうだ。
ランキ先生は、にこやかにエレノアお姉ちゃんとおしゃべりし、父とも「いやぁ、あなたには以前ドラゴン討伐の際に助けてもらってね。懐かしいな!」と話を弾ませている。
母もうれしそうに昔を思い出して笑っており、僕はその間、ちょこんと頭を下げて礼をする。
するとランキ先生が優しい表情で僕に目を向ける。
「なるほど、あなたがリウス坊ちゃんか。エレノアから聞いているよ。とても魔法の才能があるって? 少なくともエレノアは学園きっての優等生だったから、その弟なら納得だろうねえ」
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