【書籍化決定】悪役貴族に転生した僕、家族を救うために水魔法を極めて破滅回避する!

空月そらら

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リリアの故郷編

第72話 魔物に荒らされている

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 村長の家は、他の家よりは大きいが、それでも邸宅に比べれば質素な造り。

 室内には古い家具が置かれ、何本かロウソクが揺れる明かりがある。

 そこに長老たちが数人集まっていて、みな深刻そうな顔をしていた。
 
「よく来てくださいました……リリアさん、そして……リウス様 それに狼……?」
 
 フェルが入ってくると長老たちが目を丸くする。

 リリアが「大丈夫ですよ、この子は私たちの仲間です。危害を加えたりしません」と説明する。

 僕は「ば、ばぶ……」とうなずく。

 フェルは静かに尻尾を振っていて、特に吠えないので助かる。

 長老たちはすぐに地図をテーブルに広げ、村長が「ここの畑と、ここ……二か所で魔物の目撃が多いのです」と指差す。

 僕が背伸びして地図を覗くと、畑が村はずれにあり、そこを狙うように魔物が現れているらしい。

 夜になるとオークやゴブリンが何匹も出てきて、作物を荒らしたり倉庫を壊したりするという。
 
「罠も仕掛けましたが、まったく効果がなく……結界があったころは魔物がここに入り込むことも少なかったのに……」と村長が頭を抱える。

 長老の一人が唸るように言う。

「夜になるとやってきて、朝になると姿を消す。村人も武器を持って対抗しようとしたが、怪我人が出てしまった……」

 リリアが「そこは私が剣で対応します。夜になったら出現する場所で待ち伏せをして、必ず討伐を……」と自信たっぷりに言う。
 
 確かにリリアの実力ならゴブリンやオークを退治できそうだ。

 僕はその場でフェルの背に手を置きながら頷いてみせる。

 フェルが「わん……」と頼もしげな声音を出した。

「でも結局、魔物を倒してもまた新たな魔物が入り込んでくると聞きました。根本的に解決するには……やっぱり結界を戻すしかないんです」
 
 リリアが続けると、村長や長老たちは「そう……だけど、そんな高度な魔法を……」と苦悩の表情。

 その時、僕が口を開いた。

「ぼ、ぼく、けっかい……はれるか、ためしてみる……」

 その場の空気が凍ったようになる。

 長老たちは唖然として僕の顔を見、「え……四歳の子が?」と絶句。

 リリアは冷静な声で「大丈夫です。この子は辺境伯家のご子息で、特別な魔法の才能があるんです。私も見てきましたが、きっと……」と援護射撃してくれる。

 村長が「そ、そういうことなら……」と半信半疑の様子で頷く。

「いちばん出現率が高いとこ、ここ……ばぶ……」
 
 思わず自分で地図の上の点を指し示す。

 夜に出るという話だから、僕たちはそこへ行って魔物が現れたらリリアが退治。

 無事に落ち着いたら結界を張る。

 もし僕が結界に失敗したらどうなるかは考えたくないが、何とかやり通すしかない。
 
 村長は「私たちは夜は外を歩き回れないので、あなた方に全てをお任せするしか……すみません」と頭を下げる。

 僕は「だ、だいじょうぶ……ば、ばぶ…」と答えながら、フェルをもふもふして気持ちを落ち着ける。

 リリアは額に軽く汗をかいているが、決意を表すように背筋を伸ばしていた。

 ★

「それでは、一番出現率が高い場所に向かいましょう。夜になるまでに準備したいですから」
 
 リリアがそう言い、村長が地図を丸めて「案内します」と立ち上がる。

 でもリリアは「大丈夫です、村長はここで休んでてください。私とリウス坊ちゃまとフェルで向かいます」と静かに制する。

 村の人たちも疲労が溜まっているし、無理に連れていくのは危険だ。

 村長も頷きつつ「ではお気をつけて……」と送り出してくれる。

 そうして畑の方へ歩き出した瞬間、建物の老朽化が目について胸が痛んだ。

 普通の生活をしていたこの村が、魔物に荒らされてたまったものじゃないだろう。

 リリアもどこか複雑そうな表情で周囲を見渡している。

「リウス坊ちゃま、ここから先は本当に危険区域です。夜になったらオークやゴブリンが現れるかもしれません。だからあまり前に出ずに、私の後ろにいてくださいね?」
 
 リリアがやや強い口調で言うが、僕は自信ありげに「うん……でも、いっしょにやる…ばぶ」と強調。

 リリアは「はぁ……仕方ないですね」と呆れ顔だが、ほんのり笑っている。

 フェルは「わん!」と吠えて同意を示すかのよう。

 やがて村の外れに来ると、広い畑が目に入った。

 そこは柵が一部壊れ、地面が荒れた痕跡がある。

 「ここを魔物が荒らしたのね……」とリリアが嘆息した。

 さらに進むと二つ目の畑も同様にボロボロ。

 明らかに獣や人為的な破壊の痕で、足跡が散乱している。

 僕は心の中で緊張が高まった。

「これがオークやゴブリンの仕業か……本格的な戦闘が夜に控えてるかも」と考えただけで身震いがする。

 するとリリアが振り返り、「リウス坊ちゃま、ここからはさらに危ないので、少し離れていてください」と改めて言う。
 
 僕は首を振って「い、いくよ。フェル、ワン!」と譲らない。

 するとリリアは「分かりました。くれぐれも私の後ろ、もしくはフェルの側を離れないで」と条件をつける。

 僕は「うん……」と素直に従うしかない。

 こうして我々は出現地点の畑を見回り、夜を待つ体制を整える。

 地面に足跡や破壊された苗などを確認し、「魔物が入ってくるルートはこっちですね」とリリアが推測を立てる。

 僕はフェルをなでながら「ここが舞台か……ばぶ……」と心中で意気込む。

 今夜、魔物が出現したらリリアが退治し、それが終わったら僕は結界を張る。

 覚悟を決めつつ、夕陽が落ちる気配に身を震わせるのだった。
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