無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい~

空月そらら

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序章

第14話 決着

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 ここで無様な姿を晒したりしたら、クレハの師匠として失格だろう。

 俺は覚悟を決める。
 
 するとセシルは、腰に付けている剣を抜く。

 その刀身は青色に輝いており、とても美しい剣だ。
 
「準備は出来たか? 仮面の男よ」
 
 セシルはこちらに剣先を向けながら俺に聞いてくる。
 
「ああ、もういいぞ」
 
 俺はそう答える。
 
 するとセシルはニヤリと笑う。
 
「それでは始めようか」
 
 そして次の瞬間、セシルの姿が消える。
 
 (は、早い……)
 
 俺は周囲を見渡すが、セシルの姿はどこにも見えない。

 そしてしばらくすると背後から物凄い風圧を感じる。
 
《雷光ッッッ!!!》
 
 俺が後ろを振り返ると、そこには剣を振り上げたセシルがいた。

《上級魔法 炎槍》
 
 俺の手から放たれた炎槍は、セシルの剣とぶつかり激しい音をたてる。
 
「何!? 上級魔法だと!?」
 
 セシルは目を見開きながら、俺と距離をとる。

 流石に今のは驚いたのだろう。
 
 上級魔法は一人前の魔術師が何年もかけてようやく出来る魔法なのだ。
 
「なぜ上級魔法が使える? お前、普通の貴族ではなさそうだな」
 
「さあな? 俺はただの冒険者だよ」
 
 そう答えると、セシルは笑いながら口を開く。
 
「その仮面、何とかして外してみるか」
 
 その言葉と同時に、セシルは再び俺に向かって走ってくる。
 
《中級魔法 ファイアボール》
 
 俺はファイアボールをセシルに向かって放つ。

 しかし、その魔法は簡単に避けられてしまう。
 
 俺は続けて火球などの中級魔法を連続して放つ。

 だがセシルには1つも当たらない。

 一体どんな動体視力をしているんだと言いたい所だな。

 だがこれを続けているだけでは埒が明かないな……。
 
 (出来ることなら魔力の消費は抑えたいんだがな)
 
 そう考えていると、俺の目の前にセシルが突然現れる。
 
《雷光剣》
 
 次の瞬間、目にも留まらぬ速さでセシルの剣が俺に向かってくる。
 
「これならどうだ!」
 
「うわ!?」
 
 俺は斬撃をギリギリのところで避けるが、仮面に少しだけ傷がつく。
 
(あ、危なかった……)
 
 もしこの仮面が無かったら、今頃俺の首が飛んでいたかもしれないな。
 
《上級魔法 炎嵐》
 
 俺は魔力を一気に消費し、炎の嵐を起こす。
 
「こ、これは!?」
 
「さて、本番はここからだぞ?」
 
 俺は炎の嵐をセシルにぶつける。

 流石に近衛騎士団隊長でも、この上級魔法の嵐から逃れることは出来ないだろう。
 
 俺は一安心してセシルの様子を見る。

 すると……。
 
《雷光剣》
 
 なんと炎の嵐の中からセシルが現れる。

 だがセシルの顔からは余裕が消えていた。
 
「流石に舐めすぎたな、仮面の男よ」
 
 セシルはそう言うと、俺に向かって走ってくる。
 
《上級魔法 炎槍》
 
 俺は炎の槍をセシルに向かって放つ。
 
 しかし、その攻撃も避けられてしまう。
 
 そして俺の目の前には、剣を振りかぶったセシルがいた。

 咄嗟のことで俺は防御魔法の結界を張る。
 
 だが、その斬撃の衝撃は凄まじく、俺は吹き飛ばされてしまう。
 
「どうした? これでお終いか?」
 
 セシルはそう言って、俺を見下す。

 俺は何とか立ち上がりながら、考える。
 
(強い……)
 
 俺の魔法は全て防がれてしまい、逆に相手の攻撃は全てほぼ俺に直撃する。

 このままでは負けてしまうだろう。

 だが、俺にはまだ切り札がある。
 
(まだ不完全だが、最上級魔法《炎竜》ならセシルに一撃必殺のダメージを与えられるかもしれない)
 
 俺は覚悟を決めて、全魔力を一点に集中し、最上級魔法の詠唱を開始する。
 
「火炎を纏いし龍よ、我が眼前にてその力を解き放ちたまえ」
 
 そして詠唱が終わり、魔法を解放する。
 
《最上級魔法 炎竜》
 
 俺の目の前に巨大な炎の竜が現れる。

 だが不完全な魔法なので、その竜はあまり形を保ててはいない。
 
「な、なんだこれは……、この魔法は……、もしかして『火の賢者』か?」
 
 セシルの顔色が変わる。

 まさかここまでの魔力とは思わなかったのだろう。
 
「これで終わりだ」
 
 俺は炎竜をセシルに向かって放つ。

 するとセシルは剣を構える。
 
《雷光剣ッッッ!!!》
 
 セシルは炎竜に向かって、渾身の一閃を放つ。

 するとその刀身からは雷が迸り、俺の魔力と干渉して爆発を起こす。
 
 ドガ――ン!!

  轟音とともに爆発が起きる。

《初級魔法 結界》
 
 俺は咄嗟に防御魔法を貼り、爆風をしのぐ。

 それにしても、とんでもない威力だった。
 
 流石は近衛騎士団隊長であると思わせられる一撃だったな。

 だがこれでセシルは大ダメージを受けたはずだ。
 
 俺は爆炎の中心に目を向ける。

 するとそこには大ダメージを受けているセシルがいた。

 そして剣には雷の光は無くなっている。

 完全に魔力切れだろう。
 
 俺もかなり魔力を消耗してしまったが、結果的には勝てたので良いとするか。
 
「はぁはぁ、まさかこの私がここまでやられるとは……」
 
 俺はセシルの側まで行き、手を差しのべる。
 
 するとセシルは俺の手を取り立ち上がり、少し笑った後に口を開く。
 
「素晴らしい魔法だ、私の完敗だな」
 
「セシルも強かった、最後の剣技は見事だったよ」
 
 俺はそう言う。

 するとセシルは少し困った様に笑い、 剣を鞘に収める。
 
 こうして、セシルとの戦いが終わったのだった。

 ―――――――――
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