無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい~

空月そらら

文字の大きさ
42 / 72
1章

第42話 アルバラン王国

しおりを挟む
「えっ?」
 
 その言葉に俺は思わず声を上げる。

 同様にアデル達も驚いた表情を見せる。
 
「ロラン、お主は最近活躍をしていると聞く。どうじゃ、アルバラン王国に行かぬか?」
 
 その言葉を聞き俺は唖然としてしまう。
 
 ここで俺に振られるとは思わなかったのだ。

 だが、俺にはとある考えがあった。
 
 それは、俺が冒険者としてアルバラン王国に向かえば、自由に動き回れるということだ。
 
 軍を率いるのも悪くないが、自由に動き回れる冒険者の方が、俺は性に合っている。
 
 俺は少し考えた後、陛下に向かって口を開く。
 
「やはり私はアデルを行かせるべきだと思います」
 
「ほう? それは何故じゃ?」
 
 俺はその問いに対し、ゆっくりと答える。
 
「やはり剣を使える者が行くべきです。剣の腕も確かですし、魔法もある程度使えます。軍の士気を上げるためにもアデルが良いかと」
 
 すると陛下は少し考え込んだ後、口を開く。
 
「うむ、確かにそれもそうだな。分かった、アデルをアルバラン王国に向かわせよう」
 
 その言葉を聞いた瞬間、俺は安堵したような表情を浮かべる。
 
「アデル、お主に一万の軍を預ける。アルバラン王国を救ってこい」
 
「わ、分かりました……!」
 
 そう言ってアデルは深く頭を下げる。

 すると横にいたアリスが焦ったような表情を浮かべながら、口を開く。
 
「待ってください父上! 私をアデルの軍の副官として一緒に行かせてください!」
 
「別に構わんが、喧嘩はするんじゃないぞ」
 
 陛下がそう言って釘を刺すとアリスはムスッとした顔になりながらも、小さく頷く。
 
 そして緊急会議が終わり、俺は王の間から出るのだった。

 ★

「ロランお兄様! 何でアデルお兄様に譲ったんですか!?」
 
 王の間から出た後、俺はリアにそう問い詰められる。
 
「軍を率いると自由が効かないしな、それに俺が指揮を執ると士気が下がる」
 
 俺はそう言って、リアの頭を優しく撫でる。

 するとリアは頬を膨らませて不満そうな表情を浮かべた。
 
「ムムム、ではロランお兄様はどうするんですか?」
 
 リアは俺にそう尋ねる。

 俺は少し考えるような仕草をした後、口を開いた。
 
「俺は一人で行動したいことがある。だからアデルの軍と一緒に行くことは出来ない」
 
 俺はそう言って、リアの頭から手を離そうとする。

 だが、その手はリアによって掴まれてしまった。
 
「ロランお兄様はずるいです。いつも一人で考えて、行動して……」
 
 そう言ってリアは俺の手を強く握りしめる。

 そして上目遣いで俺の顔を見てきた。
 
 俺はそんなリアの仕草に思わずドキッとしてしまう。

 だが、すぐに心を落ち着かせて、口を開く。
 
「この王国の為なんだ、分かってくれ」
 
 俺がそう言うと、リアが握りしめていた手をそっと離す。

 そして俺はリアに一つ声かける。
 
「俺はアルバラン王国にいると、クレハに伝えておいてくれ」
 
 そう言うとリアは無言で頷く。

 俺はそんなリアの頭を撫でて、その場を後にしようと歩き出す。

 すると後ろでリアが小さい声で呟く。
 
「ロランお兄様、生きて帰って来てください……」
 
 俺は思わず足を止めてしまう。

 だがすぐに前を向いて、再び歩き出すのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

処理中です...