無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい～

1章

第63話 華陽に向かう クレハ視点

「セレス！　この馬速すぎない！？」
　
「この馬は近衛騎士団の隊長クラスのみが乗れる最速の馬だ！　だが今回は特別だ！」
　
「そ、そうね」
　
　今私達はアルバラン王国へ馬に乗って向かっている。

　一緒に行動しているのはリア、セレス、そして数十人の近衛騎士だ。

　私とリアはアルバラン王国に向かうために屋敷で準備をしていたんだけど、突然セレスがやってきて一緒に出発することになった。

　元々セレスは疲労が溜まっていたそうで、アデル王子の軍には参加していなかったらしい。

　そしてアデル王子の軍が出発した後、疲労が回復してすぐに私達と合流した。
　
「体は大丈夫なのセレス？　かなり疲れていたんじゃないの？」
　
「まあまあだな、クレハは大丈夫か？」
　
「ええ、リアに治癒魔法を掛けてもらったし大丈夫よ」
　
　私はそう言いながら、リアの方を見る。

　リアは馬に乗り慣れてないのか、動きがとてもぎこちない。
　
「だ、大丈夫リア？　馬から落ちない？」
　
　私がそう聞くと、リアはハッとした顔になって口を開く。
　
「だだだだ、大丈夫です！　このくらい乗りこなしてみせます！」
　
　リアはそう言うと馬から落ちないように、必死にバランスを取り始める。

　今乗ってる馬は普通の馬よりも速度が速いし、慣れるには時間が掛かりそうだ。
　
　そう考えている時、セレスが私に声をかけてくる。
　
「私の情報網だと胡威はもう陥落しているとのこと。つまり私たちが向かう場所は華陽だ。もし魔王軍が華陽と戦闘をしている場合、非常に苦しい戦いになるだろう」
　
　華陽、それはアルバラン王国の王都を守る最後の砦だ。

　アルバラン王国と魔王軍の戦いは、この華陽での攻防が重要になってくる。

　もしそこで負ければ、アルバラン王国の王都は陥落し、奴らはハーキム王国まで侵攻してくるだろう。

　だから絶対に負けられない。
　
（ロラン師匠もおそらく華陽で……すぐ行きますから待ってて下さい）
　
　そう思いながら、私は馬を走らせる。

　今は時間との戦いだ、一刻も早く華陽に到着しなければ。
　
　私達は華陽を目掛けて、全力で向かうのであった。