無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい~

空月そらら

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1章

第65話 アリス達、リア達も援軍到着する

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「ほらほらルーキスちゃん!  避けて避けて!」
 
「く、くそ!」
 
 ロゼッタの鎌はルーキスに向かって振り回される。

 やはり幹部だけあって、その戦闘技術は凄まじい。
 
 私はなんとかこの鎌の攻撃を剣で受け流す。

 だが受け流すだけでは勝てない、徐々に刃こぼれしてしまうだろう。

 私は覚悟を決め、剣を振るタイミングを見計らう。
 
「ん? なんだ!?」
 
 私が剣を構えた瞬間、地面が大きく揺れた。

 その揺れはロゼッタも感じていたのか、大きく仰け反ってしまう。

 この音は……。
 
 私とロゼッタが音の方向を見てみると、とてつもない量の砂煙が上がっている。
 
「あ、あれは、ハーキム王国の軍隊か!」
 
 私は思わず声を上げて叫んでいた。

 あの砂煙を上げるほどの人員……おそらく1万はいるだろう。

 軍旗はハーキム王国の国旗。

 ハーキム王国の軍隊がこちらに向かって来ているようだ。
 
 ロゼッタはそれを見て汗を流しながら口を開く。
 
「竜ちゃんしくじったな~」
 
 ロゼッタはそう言うと、先程とは比べ物にならない速さでルーキスに鎌を振り下ろす。

 どうやら早々に決着を着けたいみたいだ。
 
 私はなんとかその鎌を受け止めるが、その隙をついてロゼッタの蹴りが私の腹に入る。
 
「ぐはぁ!」
 
 私はその蹴りの威力で、10メートル程後方に吹き飛ばされて地面に倒れる。
 
「はぁ、はぁ、いきなり……何なんだ……」
 
 私は腹を抱えながらそう呟く。

 ロゼッタはゆっくりと私の方に歩いていき、鎌を首に突きつけた。
 
 そしてロゼッタは笑いながら口を開く。
 
 その笑顔はまるで死神のようだ。

 「もう時間が無さそうだし、ルーキスちゃんには死んでもらおうかな」
 
 ロゼッタはそう言うと鎌を大きく振り上げる。

 周りにいた兵士はなんとか助けに向かおうとするが、魔物に阻まれて助けに行けないようだ。
 
「はははは、これで終わ……ん?」
 
《上級魔法 闇槍》
 
 ロゼッタの鎌が私の首まであと少しの所で、突如黒い槍のようなものがロゼッタの鎌を吹き飛ばした。

 そしてそれと同時に私の周りにいた魔物も吹き飛ばされる。
 
「あら? 意外と脆いのね」
 
「あ、あのロゼッタを……」
 
 私はそう呟く。

 目の前には、長い紫髪を靡かせた、美しい女性が立っていた。
 
 その女性は私を見ると口を開く。
 
「私はハーキム王国第二王女、アリス・レット・ハーキムよ。貴女がルーキス王女ね?」
 
「な、何故私の名を?」
 
 私は驚いてそう聞くと、アリスと名乗った王女は私に向かって微笑んだ。
 
「ハーキム軍が丁度さっき着いたのよ。そしたらあんた達の軍がここに王女がいるって騒いでたから、すぐに分かったわ」
 
 アリスはそう言ってロゼッタの方に向き直す。
 
「で? あんたは誰?」
 
 アリスはロゼッタに向かってそう質問する。

 するとロゼッタは鎌を拾いながら、アリスの方を向いた。
 
 ロゼッタはクスクスと笑いながら口を開く。
 
「私は魔王軍幹部、ロゼッタよ」
 
 ロゼッタはそう答えると、鎌を構えてアリスに突っ込んでいった。

 そしてそのまま鎌をアリスに向かって振り下ろす。
 
「ゆっくりお話しでも出来ないのかしら」
 
「あんたと話なんかしてたら軍が全員来ちゃうでしょ?」
 
「そうね、じゃあ」
 
 アリスはそう呟くと、指で下を指しながら口を開く。
 
《上級魔法 闇渦》
 
 アリスがそう言うと、地面に紫色の魔法陣が浮かび、ロゼッタの足元から黒い渦が現れる。
 
「な……」
 
 私はその魔法を見て驚愕する。

 あの魔法は闇属性の中でもかなり上位の魔法のはずだ。

 それをいとも簡単にこの王女は使ってしまうのか。
 
「ふふ! 面白い相手ね」
 
 ロゼッタはそう呟くと、空中でステップしながらその渦を躱す。
 
「はははは! 空中なら当たらな……え?」
 
 ロゼッタが笑いながらそう呟く。

 だが、ロゼッタは空中で突然動きが止まった。

 その足には黒い渦が絡まっており、そこからは黒い鎖のようなものが出ている。
 
「はぁ……幹部なのに油断しすぎでしょ? 《上級魔法 黒鎖》」
 
 アリスがそう言うと、ロゼッタは黒鎖に引っ張られ地面に叩き落とされる。
 
「ちぃ! 《死喰殺斬!》!」
 
 ロゼッタはなんとか鎌で黒鎖を切り裂き、急いで態勢を立て直し鎌を構える。
 
「はぁ……はぁ……」
 
 だがあの技はかなりの魔力を使うのか、ロゼッタは息を切らしている。
 
「もう私が相手をする必要はないわね」
 
 アリスは不敵な笑みを浮かべながらそう言う。

 だがロゼッタは鎌を大きく振りながら口を開いた。
 
「し、仕方ないでしょ! 私だってルーキスちゃんとさっきまで戦ってたんだから!」
 
「あらそうだったの? じゃあハンデとして私の部下と戦わせるわ。出てきなさい、ピース」
 
「はっ」
 
 そう言ってアリスの後ろから出てきたのは、1人の女剣士だ。

 その女剣士の格好は、黒い鎧を身に纏い、長い黒髪を靡かせている。

 そして腰にある剣は、まるで血のように赤い色だ。
 
 その剣士はアリスに一礼をすると、ロゼッタの方に体を向ける。
 
「私はハーキム王国の近衛騎士団隊長、ピース・アルドだ」
 
 その女剣士はそう自己紹介をする。

 するとロゼッタはピースを睨みながら、鎌を再び構えた。
 
 そしてロゼッタとピースは同時に地を蹴り、2人同時に斬りかかる。
 
「ほらほらどうしたのピースちゃん! 剣筋が荒れてるわよ!」
 
「くっ!」
 
 見ている限りロゼッタの方が優勢だ。

 ピースの攻撃は早く、切れ味も凄い。

 だがそれをロゼッタの鎌が見事に防いでいる。

 先ほどのアリスが化け物なだけで、ロゼッタもかなりの強さだろう。
 
 その時、後ろから声がかかる。
 
「アリス殿下、遊びはこの辺にしておきましょう」
 
「ん?」
 
 突然私の前に雷鳴が轟く。

 そして雷の速度よりも速く、剣を構えてロゼッタの方に突っ込んでいった。
 
 そして一瞬のうちにロゼッタの間合いに入り、剣を振り下ろす。
 
「雷光一閃ッッッ!!!」 
 
「あ」
 
 その剣の速度と威力は凄まじく、ロゼッタの首を斬り飛ばした。
 
 そして女剣士はゆっくりと剣を鞘に収める。
 
「な、なんであんたがここにいるのよ、セレス」
 
「アリス殿下、私は疲労のため軍に参加していませんでしたが、この魔物の襲撃にいてもたってもいられず、最速の馬に乗り来ました」
 
「セ、セレス様! 体の疲労は!?」
 
 ピースがセレスにそう聞くと、セレスはピースに向き直り口を開く。
 
「ピース、久しぶりだな。私はこの通り大丈夫だ」
 
 セレスはピースに向かってそう微笑む。

 ピースはその顔を見て、目に涙を浮かべた。

 そしてセレスに抱きつく。
 
「隊長がいなくて……凄く不安だったんです! 来てくれて……本当に良かった」
 
 ピースは涙を流しながら、必死にそう言葉を紡いでいく。
 
 その姿を見たセレスは優しくピースの頭を撫でた。

 どうやらこのセレスという人物は近衛騎士団の中でもかなり信頼が厚いらしい。
 
「セレス、あなたは一人でここに来たの?」
 
「いえ、リアとクレハ、そして少数精鋭兵を連れてきています」
 
「リ、リアも来てるの?」
 
 アリスは少し困惑した表情でそう呟く。

 私にはどういう状況か全く分からないが、私はこの人たちに伝えなくては。
 
 私は勢いよく地面を叩き、上体を起き上がらせる。

 そして出来るだけ大きな声で叫んだ。
 
「左軍が今危機的状況にあります! どうか左軍の援軍に向かってください!」
 
「左軍? 詳しく教えなさい」
 
 アリスが驚いたように私に聞いてくる。

 そこで私は10分前の話をした。

 私も状況は把握しきれていないため、要領の得ない説明になるが何とか必死に伝える。
 
「そういうことね、分かったわ」
 
 アリスはそう言うと、セレスに顔を向ける。
 
「私とピースは左軍に向かうけど、あなたはどうする?」
 
「私はクレハとリアを待ってから左軍の援軍に行きます」
 
「そう」
 
 アリスはそう言うと、指を鳴らす。

 するとアリスの目の前に馬が2匹走って来た。

 アリスはその馬に跨がる。
 
 ピースもセレスに一礼をすると、すぐに馬に乗った。
 
「それじゃあ行くわよ!」
 
 2人は馬の手綱を引き、左軍の救援に向かうのであった。
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