異世界での異生活 ~騎士団長の憂鬱~

なにがし

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41.私の作戦を聞いて

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「見事セロースを救援し、皆が無事に帰る事を祈る。期待している」

 出立式でのお館様の挨拶が終わり、いよいよ出発だ。

「騎士だぁぁん。前進」『おおぉぉ』

 街の東門に向かい、行進が始まる。今回の編成で馬は物資を運ぶのに使うだけにしたので、私達は徒歩での移動とした。先頭は私、騎士団の団旗を持って行進する。私の後ろに副団長、エイシア王国の国旗を持って行進する。その後ろに2人の大隊長、さらに4人の中隊長、各中隊4列と特別小隊と合わせて5列の団員が続く。
沿道には、多くの街の人達が集まりお祭り騒ぎになっていた。衛兵団員が、飛び出す人がないよう交通整理をしてくれている。その中に衛兵団長チャーフィーの姿もあり、私達を見送ってくれた。

「がんばれよー」「レスボン騎士団の強さを見せつけろ」「騎士団長様、かっこいい」「クロムウェル騎士団長。俺と結婚してくれ」「俺は、ラム騎士団員だ。結婚してくれ」

──誰だぁ。どさくさに紛れて告白している奴は。

 残念ながら、我が騎士団には音楽隊がないので、行進の際は団員達が団歌を歌いながら行進する。なぜか子供達に人気のあるこの歌は、私は好きではない。

わし・・ら の子 騎士団だー~
~けわし・・い 道のり かわし・・つつー~
~せわし・・い 人生 いたわし・・いー~
~たわし・・を 各自に まわし・・ますー~
和紙・・に イワシ・・を 書きましょおぉー~
~そんな 騎士団 したわし・・いぃー~

──なんじゃ、この歌詞は。ダジャレの大行進ではないか。たわしとかイワシとか何?

 ちなみに騎士団旗は、紅の旗に羽ばたく鷲が刺繍されており、鷲はレスボンの象徴的な存在だ。ゆえに先先先代様が、作詞されたらしいがセンスなさすぎ。騎士団の行進に、ダジャレ大行進を歌う我らの身になってくれ。
 パレードも街を出ると終わる。そのまま騎士団はセロースの街に向かって歩み続ける。このまま問題なく進めば、昼から一刻程過ぎた頃にはセロースに到着する。私達は半分ほどの地点で、少し早い昼食を取ることにした。

「団長、斥候を出して先の様子を見た方がいいと思うのですが」
昼食を取りながら、副団長カヴェナンター殿と第1大隊長テトラーク殿、そして第2大隊長ハリー殿と4人で作戦会議を開いていた。

「いや、ハリー殿。相手が獣人だから、斥候が見えるとこまで移動したら、音や匂いで見つかってしまうだろ」
「そうですね。それに、我々が風上にいますから余計ですね」
「しかしテトラーク殿、敵の数や布陣が分からなければ、攻めるのが難しいぞ」
「副団長は、どうお考えで」
「団長に考えが、あるようだぞ」
「攻める必要はない。相手が来るのを待つ」

 敵も背後から私達が来るのを警戒している。おそらく、斥候を配置して一早く発見しようとするはずだ。私は地図を広げて、ある地点を指差した。そこは、街道から離れた平原で、近くに森がある。

「ここだ。この地点で待機する」
「しかし、ここでは想定される敵の位置から程遠く、待機しても意味がないのでは?」
「いや、この場所は、明日の朝に移動すれば、昼前に敵の側面を突ける位置だ。まぁ、想定の位置に敵がいればだが」
「そこは、問題ないだろう。多少の誤差があっても想定の位置にいる。でないとセロースの西門を封鎖できないからな」
「では、決戦は明日ですか?」
「いや、今日だ」

 我々が待機地点にいると、必ず敵の斥候が、我々を見つける。報告を聞いた大シン帝国の兵士は同じ事を考える。数で勝る兵が、翌日に側面を突いてくるとなれば厄介に思うだろう。

「奇襲ですか」
「そうだ、奴らは兵を分けて、森の木々に隠れて接近し、奇襲をしかけてくる。しかも、機動力が必要だから、大シン帝国の兵士は来られない。だから、必ず獣人部隊の隊長が指揮を執る」
「そこで、敵を挑発して一騎打ちに持ち込むのですか。それで、勝てるのですか?」
「そこは勇気と根性と気合を入れて、知恵を使って勝つ」
「つまり、無策なのですね。敵は、こちらに気がつきますか?」
「テトラーク殿が言っていただろ。こちらが風上だ。私の、かぐわしい香りや美声に気がつかないはずがない。」
「そうですね。むしろ悩殺しないか心配です。それよりどうやって、敵の接近を見つけます?」

テトラーク殿、そなたは天才だな。そうか、その可能性があったか。私の魅力で悩殺。でも、それでは作戦の失敗に繋がる。ああ、なんて私は罪な女。……悪くない。いや、いや、ありえない想像はやめて、続きを言わねば。

「待機地点に到着したら、すぐに木登りが得意な者に近くの森の木に登らせる」

 敵は先手を取ったと思って、必ず急いで移動する。足の速い獣人族が集団で走れば必ず土煙が上がる。それを見つけて、その位置から待機位置への到着時間を逆算する。

「そうすれば、敵の攻撃にも備えることができるだろう」
「承知しました。ただ、団長が負けそうな時は、どんな罵倒を浴びようが加勢しますので、そこは了承ください」
「ああ、いいとも。でも、そうはならない。私が勝つからだ。無策だけど勝ちます」

 こうして昼食を済ませ、出発した騎士団は予定通り街道を外れ、待機位置に向かう。目的地まで半里になると鎧を脱いだ木登り小隊が先行する。
 待機地点に着いた時は、すでに木登り小隊の監視準備は完了していた。騎士団はそこで陣を張り襲撃に備える。

「団長、木登り小隊が約1里離れた所で、土煙を発見しました」
「もうか。早いな。木登り小隊は撤退しろ」
「どうやら団長の魅力は、獣人には効かなかったようですね」

──まったくだ。効かなくて予定通りになったのだが、複雑だ。

「迂回して森から来るだろうから、2里半ぐらいですかね。奴らの足なら四半刻くらいですか。準備は間に合いそうです」
「いや、手前で止まって息を整えてくるだろうから、もう少しみてもいいと思う」

 どちらにせよ四半刻後には、奴らは来る。うまく一騎打ちに持って行けるのだろか?そして、一騎打ちに、持ち込んで勝てるのだろうか?

──ああ、憂鬱だ。
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