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40.護衛の冒険者は精鋭ぞろいです
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とりあえず、獣人達を説得できる情報が手に入った事は朗報だ。うまくいけば懐柔できるかもしれない。だが、獣人族の事情を知ってしまったので、戦いにくくなってしまった。いざ、戦闘になってしまったら、私は冷静に彼らを殺す指示が出せるだろうか。問題はやはり、大シン帝国の兵士だ。何とか、双方を引きはがし交渉する必要がある。
「それで、衛兵団長。援助物資隊の準備は終わった?」
「すまぬ、妹よ。一晩かけても準備は終わらなかった。商業組合がえらく混乱して、思うように、作業が進まなかったのだ」
「うむ、夜が明けて、人手が揃ってきているから、これからが準備だろうな。終わるのは早くて昼過ぎ。もっと遅くなるかも。許せ、妹よ」
「というわけで、すまないが、出発を遅らせて欲しい。お館様には、今日の出発と言っているから問題ないだろう」
「いや、騎士団は予定通りの出発としよう。我々が先行して、道を開けておくので物資隊はゆっくり来るといい。追いつく頃には、交渉の準備を済ませておこう」
「そうか、ならばお願いする。そなたの無事を祈る」
「うん。行って来る」
こうして、チャーフィー達と別れた私は、騎士団が待機する場所に急いだ。
「団長、物資隊の準備が遅れているようですが、出発はいつになりますか?」
副団長殿は、まだ入浴中のようで、大隊長殿が仕切っていた。私は、出発時間に変更がないことを告げ、待機するよう指示した。まだ少し時間があるので、物資隊の状況を見に行った。
「あっ、お姉さま。お久しぶりでーす」
「おお、久方ぶりだぁ。会いたかったよ。でも、どうしてここにいるのだ?」
声をかけてきたのは、冒険者パーティー猿女の3人娘の一人アンだ。アンの声に反応してイーシアとシンシアも駆け寄ってきた。
「私達は、物資隊の護衛の依頼で、来ていまーす」
「でも、準備が遅れていて、暇にしているよ」
「マチルダさんも、暇で見に来たのですか?」
──そうか、物資隊の護衛は冒険者が務めるのだったな。
「いや、騎士団は予定通り出発する。その前に物資隊の状況を見に来ただけだ」
「さすがは、騎士団長。物資隊の状況も把握しに来ましたか」
──冒険者組合長殿。まずい、騎士団長と呼ばないで。
「まさか、弟君も護衛で来ているのですか?」
「もちろんさ、こんなイベント滅多にないからな。ぜひ参加させてもらうよ」
「そなたは、組合長でしょう。この街を離れたらダメでしょう」
「ははは、心配ご無用クロムウェル団長。私には、アガサと言う優れた参謀がいるから安泰だよ。いや、私がいない方がいいような気がする」
『確かにぃぃぃ』
「ねぇ、今、団長って言わなかった?」
──まずい。
「ひょっとして、マチルダ姉さんは騎士団長なのか?」
「うそ、騎士団長が、はぐれて森で迷っていたの?」
『そんなわけ、ないよねぇぇぇ』
──あります。
私は、顔を赤くして足元を見つめ固まってしまった。3人はそんな私を見てクスクスと笑っている。
「あなた達、そのくらいにしておきなさい。その人を怒らせると、ぶち殺されるわよ」
「あ、母さん」
アリアドネ様。まさか、護衛隊に参加されるのですか。それにしても、相変わらずの情報通ですね。その口ぶりだと料亭での事を知っているのですね。それはそうとシンシアさん。今、母さんと呼びましたか?娘なの?そなたはアリアドネ様の娘なの。えぇぇぇぇ。
「私を母と、呼ぶんじゃないよ。見た目通り、姉と呼びな」
「はい、はい。アリ姉さん」
──ん?母さん?姉さん?どういう事?
混乱している私に、イーシアが耳打ちをして、教えてくれた。シンシアは孤児院出身で、幼いころから、孤児院を支援するアリアドネ様を母のように慕っていた。たまに甘えて母と呼ぶのだが、アリアドネ様が嫌って毎回、今のやり取りが行われるらしい。という事は、まさかアントの夢のセルジュ殿とシャーロット殿も孤児院出身なのでは。だから、アリ姉様と呼んでいるのか。だとしたら、私がアリ姉殿と呼ぶのはお門違いだな。
「それで、アリアドネ様がここにいるという事は、護衛隊に参加してくださるのですか」
「まぁね。あなたから話を聴いちゃったからね。傍観できないわ。それより、クソ商人共の家の地下の事、聞いたわよ。あの可愛い団長は何をしていたのよ」
「言わんで、やってください。今、責めるとハゲます」
アリアドネ様がカンカンに怒っているので、話をすり替える為、獣人族と交渉の余地がある事を伝えた。そして、どうやって交渉の場を用意し、その席に座らせるか悩んでいる事も伝えた。
「確かに、大シン帝国の兵士が大人しく傍観するとは思えませんな」
この時、猿女の3人は、この手の話しには全く興味がないようで、逃げて行ってしまった。
「ねぇ、獣人達はどうやってセロースの街の西側にまわったと思う」
「それは、セロースの北にはエヌコートやレスボンまで広がる大きな森があります。そこを走って抜けたのでしょう。獣人なら十分可能です」
「大シン帝国の兵士は?森の中を、馬で走り抜けるのは無理よ」
──確かに、そうだ。
一体、どうやって抜けたのだ。他にも、戦闘用の物資も運ばなければならなかったはずだし。
単純だ。獣人達が背負って走り抜けたのだ。彼らは、人よりはるかに力がある。それくらいわけないだろう。
「獣人が背負って抜けたのなら、兵士はそんなに多くないですね」
「兵士の鎧や武器も運ばなきゃいけないし、自分達の武器や食料などの物資を運ばなきゃならないから50人程度と考えて、まぁせいぜい2、3人が限界じゃないかしら」
「なら、隊長と副隊長の2人と見ればいいでしょう」
「そうね、そして兵士達には馬がない。戦闘になれば、足手まといにしかならないわ」
「元々、獣人の監視が任務だろうから後方で、ふんぞり返っているのでしょうなぁ」
「そして、獣人達は、足が速くて、鼻が利き、耳も良い。それを利用すれば交渉できるかもよ」
そうか、そういう事か。アリアドネ様、ありがとうございます。作戦が思いつきました。うまくいけば、一騎打ちに持っていける。後は、どうやって殺さず勝つかだ。これが、1番の難題だよな。
──はぁ、憂鬱だ。
「それで、衛兵団長。援助物資隊の準備は終わった?」
「すまぬ、妹よ。一晩かけても準備は終わらなかった。商業組合がえらく混乱して、思うように、作業が進まなかったのだ」
「うむ、夜が明けて、人手が揃ってきているから、これからが準備だろうな。終わるのは早くて昼過ぎ。もっと遅くなるかも。許せ、妹よ」
「というわけで、すまないが、出発を遅らせて欲しい。お館様には、今日の出発と言っているから問題ないだろう」
「いや、騎士団は予定通りの出発としよう。我々が先行して、道を開けておくので物資隊はゆっくり来るといい。追いつく頃には、交渉の準備を済ませておこう」
「そうか、ならばお願いする。そなたの無事を祈る」
「うん。行って来る」
こうして、チャーフィー達と別れた私は、騎士団が待機する場所に急いだ。
「団長、物資隊の準備が遅れているようですが、出発はいつになりますか?」
副団長殿は、まだ入浴中のようで、大隊長殿が仕切っていた。私は、出発時間に変更がないことを告げ、待機するよう指示した。まだ少し時間があるので、物資隊の状況を見に行った。
「あっ、お姉さま。お久しぶりでーす」
「おお、久方ぶりだぁ。会いたかったよ。でも、どうしてここにいるのだ?」
声をかけてきたのは、冒険者パーティー猿女の3人娘の一人アンだ。アンの声に反応してイーシアとシンシアも駆け寄ってきた。
「私達は、物資隊の護衛の依頼で、来ていまーす」
「でも、準備が遅れていて、暇にしているよ」
「マチルダさんも、暇で見に来たのですか?」
──そうか、物資隊の護衛は冒険者が務めるのだったな。
「いや、騎士団は予定通り出発する。その前に物資隊の状況を見に来ただけだ」
「さすがは、騎士団長。物資隊の状況も把握しに来ましたか」
──冒険者組合長殿。まずい、騎士団長と呼ばないで。
「まさか、弟君も護衛で来ているのですか?」
「もちろんさ、こんなイベント滅多にないからな。ぜひ参加させてもらうよ」
「そなたは、組合長でしょう。この街を離れたらダメでしょう」
「ははは、心配ご無用クロムウェル団長。私には、アガサと言う優れた参謀がいるから安泰だよ。いや、私がいない方がいいような気がする」
『確かにぃぃぃ』
「ねぇ、今、団長って言わなかった?」
──まずい。
「ひょっとして、マチルダ姉さんは騎士団長なのか?」
「うそ、騎士団長が、はぐれて森で迷っていたの?」
『そんなわけ、ないよねぇぇぇ』
──あります。
私は、顔を赤くして足元を見つめ固まってしまった。3人はそんな私を見てクスクスと笑っている。
「あなた達、そのくらいにしておきなさい。その人を怒らせると、ぶち殺されるわよ」
「あ、母さん」
アリアドネ様。まさか、護衛隊に参加されるのですか。それにしても、相変わらずの情報通ですね。その口ぶりだと料亭での事を知っているのですね。それはそうとシンシアさん。今、母さんと呼びましたか?娘なの?そなたはアリアドネ様の娘なの。えぇぇぇぇ。
「私を母と、呼ぶんじゃないよ。見た目通り、姉と呼びな」
「はい、はい。アリ姉さん」
──ん?母さん?姉さん?どういう事?
混乱している私に、イーシアが耳打ちをして、教えてくれた。シンシアは孤児院出身で、幼いころから、孤児院を支援するアリアドネ様を母のように慕っていた。たまに甘えて母と呼ぶのだが、アリアドネ様が嫌って毎回、今のやり取りが行われるらしい。という事は、まさかアントの夢のセルジュ殿とシャーロット殿も孤児院出身なのでは。だから、アリ姉様と呼んでいるのか。だとしたら、私がアリ姉殿と呼ぶのはお門違いだな。
「それで、アリアドネ様がここにいるという事は、護衛隊に参加してくださるのですか」
「まぁね。あなたから話を聴いちゃったからね。傍観できないわ。それより、クソ商人共の家の地下の事、聞いたわよ。あの可愛い団長は何をしていたのよ」
「言わんで、やってください。今、責めるとハゲます」
アリアドネ様がカンカンに怒っているので、話をすり替える為、獣人族と交渉の余地がある事を伝えた。そして、どうやって交渉の場を用意し、その席に座らせるか悩んでいる事も伝えた。
「確かに、大シン帝国の兵士が大人しく傍観するとは思えませんな」
この時、猿女の3人は、この手の話しには全く興味がないようで、逃げて行ってしまった。
「ねぇ、獣人達はどうやってセロースの街の西側にまわったと思う」
「それは、セロースの北にはエヌコートやレスボンまで広がる大きな森があります。そこを走って抜けたのでしょう。獣人なら十分可能です」
「大シン帝国の兵士は?森の中を、馬で走り抜けるのは無理よ」
──確かに、そうだ。
一体、どうやって抜けたのだ。他にも、戦闘用の物資も運ばなければならなかったはずだし。
単純だ。獣人達が背負って走り抜けたのだ。彼らは、人よりはるかに力がある。それくらいわけないだろう。
「獣人が背負って抜けたのなら、兵士はそんなに多くないですね」
「兵士の鎧や武器も運ばなきゃいけないし、自分達の武器や食料などの物資を運ばなきゃならないから50人程度と考えて、まぁせいぜい2、3人が限界じゃないかしら」
「なら、隊長と副隊長の2人と見ればいいでしょう」
「そうね、そして兵士達には馬がない。戦闘になれば、足手まといにしかならないわ」
「元々、獣人の監視が任務だろうから後方で、ふんぞり返っているのでしょうなぁ」
「そして、獣人達は、足が速くて、鼻が利き、耳も良い。それを利用すれば交渉できるかもよ」
そうか、そういう事か。アリアドネ様、ありがとうございます。作戦が思いつきました。うまくいけば、一騎打ちに持っていける。後は、どうやって殺さず勝つかだ。これが、1番の難題だよな。
──はぁ、憂鬱だ。
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