異世界での異生活

なにがし

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16.初討伐

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 ヤスオには、何の事やら分からない。

「いや。あのような場所で角ウサギに遭うのは、決して珍しいことではないのじゃが。…角ウサギは動物の遺体を食う習性があるでな・・気になるのじゃ。」
「確かに。もし子供達が動物の死骸を見つけたら、ショックでしょうから。分かりました。協力します。」

 ヤスオは、腰の剣に手を当てた。昨日、アリアドネ邸で倉庫部屋を発見し、そこでショートソードを見つけていた。

──俺、冒険者だから問題ないよねぇ。
と装備してみた。前世では、ショートソードを装備して歩いたら、すぐに警察に捕まってしまう。
武器を持って歩いたことがないので、最初は人とすれ違うたびに震えた。
門を通るときも門番に怒られるのではと怯えていた。
だが、誰も何も言わない。子供達も触りたがらない。
これがこの世界の常識なのだ。
そしてトイ爺も、武器を持つヤスオを戦力として認め、相談したのだ。

「すまんのう。」

 こうして、昨日、角ウサギが現れた場所と少し離れた場所に到着した。

「今日はこの辺じゃ。良いな。」『はーい。』

 トイ爺のかけ声で薬草採取が始まる。トイ爺は早々にボンに合図を送って、ボンの警戒が始まる。
ヤスオとトイ爺は、昨日角ウサギが現れた場所に着くと探索を始めた。
すると早速、角ウサギ2匹が戦闘態勢に入っていた。

「ヤスオさん。下がってくれ。」「はい。」

 トイ爺はこれを難なく討伐した。
さらに先に進むと、何かにまとわり付くスライム数匹の塊と角ウサギを発見した。

「ヤスオさん。頼む。」

 そう言い、トイ爺は角ウサギに切りかかった。
ヤスオは剣を抜き、スライムに斬りつけた。といっても、突きしか習ってないので、ひたすらスライムを突いた。

──ボン、ボン、ボン、ボン。

 スライムからたいした反撃もなく、まとわりついていたスライム4体が魔石に戻った。
やはり想像どおり魔石というより小さな破片だが。それを拾い、硬貨が入った巾着袋に入れた。
その時、スライムが柔らかいところにいたことに気がつく。
改めて、スライムがまとわり付いていたものを、じっくり見た。

「うわぁぁぁ。」

 その正体に気づき、驚いて尻もちをついた。
スライムがまとわり付いていたのは、人の遺体の胸の部分だった。
3匹目の角ウサギを討伐したトイ爺が、ヤスオに近づき状況を把握した。

「ヤスオさん。わしは、今から子供達を連れて帰る。途中、冒険者組合に寄って応援を頼むから、それまで“それ”を頼む。」

ヤスオは返事できなかったが、トイ爺は容赦なく行動に移す。

「みなー。今日は、終わりじゃ。さぁ、教会に帰るぞ。」
「えー。何でー。」

 子供達の不満は当然である。薬草採取は始まったばかりだからだ。

「実は今、角ウサギが3匹も狩れた。今日の稼ぎは、十分であろう。」

 子供達は大喜び。

「まじでー。すごい。そんなことあるー。」

 トイ爺と子供達は帰り支度を始めた。

「おじさんは?帰らないの?」

 アイルがトイ爺にしがみついた。

「ヤスオさんは、薬草の勉強がしたくて、残るそうじゃ。」
「じゃ、アイルも残って色々教えてあげる。」
「残念じゃが、ヤスオさんの実力じゃアイルを守ってやれん。アイルが残ると言えば、ヤスオさんは帰ると言うだろう。どうか、ヤスオさんの学ぶ機会を奪わないでおくれ。」

 アイルは涙目になった。

「じゃぁ、私が強かったらおじさんと一緒にいられたのね。わたし、強くなる。絶対、強くなるから。トイ爺さん教えて。」

 トイ爺は、純粋な子供に嘘をついた罪悪感に襲われた。

「アイルは優しい子じゃ。必ず強くなるよ。」

 トイ爺はアイルを含めた子供達を連れ帰った。


 遺体は、顔や腕など肌が露出した部分はスライムと角ウサギにつつかれて、酷い状態だった。
さらに、ヤスオがスライムを突いたとき、一緒に切りつけていて胸元は傷だらけになっていた。
ヤスオは、自分がしてしまったことに涙した。

「ごめんなさい。ごめんなさい。」

 遺体の傷に手を当て、泣き崩れた。すると、どこからか声が聞こえてきた。

──お前を許そう。そして、感謝する。

 突然ヤスオの手が、輝き始めた。すると傷口がみるみるうちに治ってゆく。
さらに、露出した肌の部分も再生していく。
 どのくらい時間が経っただろうか。遺体は完全に、元の姿に戻っていた。
ヤスオは慌てて、脈を取り、胸に耳を当てた。だが脈はなく、心臓音も聞こえない。

「女性だったのか。綺麗な人だな。」

 遺体の顔を見ての率直な感想だった。そして、遺体の身に付けている衣服が気になった。

(これ、どこかで見たことがあるような・・。)
「ホッゲロゲロゲロゲロ」

 突然、込み上げてくる物を感じ、そのまま出してしまった。その後、ものすごい倦怠感を覚えた。

「ヤスオ、どこだー。」

 遠くで誰かが、呼んでいる。

「ここですー。」

 立ち上がり、手を振った。やってきたのは、組合長のメンガンダルだった。

「遺体はこれか。これは・・!アリアドネ様!!」

 メンガンダルは立ちすくんだ。

「トイ爺の話しでは、誰とも判別できないくらいのひどい損傷だと。ヤスオ。これはどういうことだ。それにこの格好はなんだ?」

 メンガンダルがヤスオに掴みかかる。

「損傷は気がつけば回復していました。でも、心臓は動いていません。格好は、初めからこれだったので、よく分かりません。」

 メンガンダルはヤスオの表情を見て嘘ではないと判断し、掴んでいた手を離した。
そして、アリアドネに手をかざした。

「クレネラッゴン。」
と呪文を唱えた。すると、アリアドネの遺体は消えた。

「消えた。ということは、本当にお亡くなりになったのですね。」

 そう呟くと、大声を出して泣き始めた。

「うおぉぉぉ。うおぉぉぉ。」

 ヤスオは黙って見ているしかできなかった。


「取り乱したりして、すまなかった。」

 落ち着きを取り戻したメンガンダルは、ヤスオに謝罪した。
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