異世界での異生活

なにがし

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17話 殺されそうになる

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「それで、アリアドネ様の遺体はどこにいったのですか?」

 以前、シンシアが使った魔法と同じ魔法に思えた。

「収納魔法を使って、私の収納袋に収納した。収納魔法は生き物には通用しない。そういう事だ」
「そんな確認の仕方があるのですね」

 メンガンダルは冒険者組合に戻り、従業員を集めこの件を説明した。そして、町中に訃報を知らせるよう指示した。
 シンシアは取り乱して、ヤスオに詰め寄った。

「アリ姉さんは、間違いなくあの部屋にいた。なのに、そこにはあなたがいて、アリ姉さんは街の外に。ねぇ、あなたとアリ姉さんに何があったの?教えて、お願いよ」

 悲痛な表情で詰め寄られ、思わず後ずさりをさせられた。気づけば壁を背にしていたが、なおも詰め寄ってくる。

「分からない。本当に分からない。気がつけばあそこにいた。それだけだ。すまない」

 何とかしてあげたい。何かないかと必死に記憶を辿った。何も思いつかない。どうしようもない。申し訳なく思い、唇を噛みしめる。

「うあぁぁぁぁ」

 シンシアはヤスオの表情を見て諦め、泣き崩れた。アガサがシンシアの肩を抱き、立つよう求める。立ち上がるとそのまま奥の部屋に連れていった。
 メンガンダルはすべての従業員に指示と引き継ぎを済ませたら、ヤスオと一緒に冒険者組合を出て、スペランザ教会へ向かう。


 教会に到着するとセメレ、マイヤ、トイ爺に訃報を伝えた。三人は驚愕した。特にトイ爺は信じられない様子だった。

「あの見るも無残だった遺体が、アリアドネ様?そんなはずはない。それは本当に事実なのか?・・いや。組合長殿がそう判断されたのであれば、間違いないのであろう。だが、信じられん」

 三人は、これからの事など色々心配になった。だがその前に、アリアドネを見送るのが先という共通の認識が生まれ、それぞれが行動をおこした。
 セメレは、昼食の準備を始め、午後からの授業に備える。マイヤは子供達の引率をして冒険者組合に移動し、角ウサギの解体の見学と換金の手順を教える。そうする事で、子供達に遺体を見せないようにする。
 メンガンダルとトイ爺、そして二人の補助としてヤスオが、礼拝堂へ移動して棺と祭壇の準備を始めた。メンガンダルは開放魔法で遺体を棺に移す。遺体を見たトイ爺が驚愕した。

「これは、どういう事じゃ。わしが、見た時はこのような綺麗な状態ではなかった。ヤスオさん。何があった?」

 トイ爺の疑問は当然で、ヤスオはどう説明しようか迷った。とにかく、起こった事そのままを話そう。

「あの後、何もしていないのに、みるみる治ってきて。気づけば完全に治っていた。本当なのです。俺、何もしていません」

 トイ爺もヤスオに何かできるとは、思っていない。だから、信じるしかないのだけど、信じられない。でも、信じるしかない。混乱していた。
 そんな中、セルジュ達三人が慌てて教会にやってきた。訃報を聞きアントの夢は臨時休業にしたらしい。
 セルジュが、棺の中を覗いた。

「これは。間違いなくアリ姉さん。死んだのですか?それに、この服はなんだ?アリ姉さんの服にこのようなものはない」
『うう、アリ姉様』

マルとカミルが棺の中を見て、泣き崩れる。セルジュは、涙を流しながら怒りをあらわにした。

「ヤスオォォォォ」

 今度は、セルジュが殺意に満ちた表情でヤスオに詰め寄る。またしても、後ずさりをして壁に追い詰められた。セルジュはヤスオを壁に追い詰めると首に手をかけ、締め始める。

「セ、セルジュさん。何を」
「セルジュ、止めるのじゃ」
「お前だ。お前が現れてアリ姉さんがいなくなった。そして、この姿で発見された。無関係とは言わせない。さぁ、吐け。何があったぁぁ」
「ふざけるなぁ、無関係だー。俺がアリアドネ様に何かできるわけないだろう。着ているものなら、心当たりがあるが」
「うるさい。何をした、吐けよ、吐け、吐け、吐け、吐けぇぇぇぇぇ」

セルジュの首への締め付けがきつくなる。ヤスオの意識が遠のいていく。

「神、死する時、天空への光現れ、その旅路を導く。そして、再びの復活を願わん。ケレス教の聖典の一説です。セルジュさんは天空への光を見たのですか?」

セメレが、手を合わせながらセルジュに問いかける。その言葉にセルジュは力を抜き締め付けた手を緩めた。

「セルジュ、慌てるな。ここにあるのは、遺体ではなく抜け殻だ。アリアドネ様は簡単には死なん」

メンガンダルにそう言われて、納得した。確かにこれは遺体ではない。セルジュはヤスオの首から手を離した。

「ヤスオ様、大変失礼しました。確かに、あなたにアリ姉さんをどうにかする事はできませんね」

セルジュはヤスオを見下し、睨みつけていた。謝罪の言葉を口にしながら、謝罪しているようには見えない。ヤスオはその場に座り込み、頭を抱えて涙した。そんなヤスオをセメレは歩み寄り肩を抱く。
 メンガンダルが怖い顔をして、ヤスオを睨みつけ近寄って来る。セメレを跳ね除け、ヤスオの胸元を握り締めた。

「衣服に、心当たりがあると言ったな。どういう事だ」
「先ほどは頭の中で、その・・整理がつかなくて。ちゃんとお答えできなくてすみません。でも、今なら分かります。あれは、前世で俺が着ていたものに似ています」
「似ているとは、どういう事だ。ヤスオの世界の着物でいいのか?」
「はい、おそらく」

──…………。

 メンガンダルは手を離し、考え込んでしまった。セメレは再びヤスオを抱き締める。セルジュも棺の中を見つめながら考え込んでいる。

「この服装での葬儀が行えない。破けたところもあるし、着替えさせよう」
「それは、ダメですよ。セルジュさん」

 この世界では、死人は亡くなったそのままの姿で棺に入る。ただ今回は、見たこともない服装に、ヤスオが破いてしまった所もあり、参列者が変に思うのではと懸念していた。だが、着替えさせるのは死んでからもさらに辱めをさらすとして、ご法度となっていた。できるのは、上に着せる事だけ。

「顔を残してそれ以外は、花で埋め尽くせばいいのですよ」

 座り込んだまま、頭を上げることなくヤスオが、呟いた。それは、ヤスオの世界では普通の納棺なのだが、この世界では斬新な方法だった。

「では、行くぞ」

 ヤスオのアイデアを採用したセルジュは二人を連れて、文字通りの花摘みに出かけた。


「こんばんは。お邪魔しますよ」
「あら、シンシアいらっしゃい。待っていたわ」

 陽も暮れ、制服のままのシンシアが訪ねてきた。花摘みを終えたカミルにメンガンダルがシンシアへのお使いを頼んでいた。シンシアはカミルと共にお使いを済ませ、二人共両手に大きな袋を二つ持って訪ねてきた。
セメレが応対し、そのまま食堂に案内した。マイヤが大きな皿を三枚持ってきてテーブルに並べた。
その皿にシンシア達が持ってきた袋の中身を一枚には大盛、残り二枚には均等に入れた。袋の中身は食べ物のようだ。
 一方ヤスオ達5人は、一日かけてようやく祭壇などの準備を終わらせ、教会の庭で休憩をしていた。
すると突然、メンガンダルが孤児院の方へ歩いていくので、4人は後を追った。

「おお、シンシアご苦労。手数をかけたな」

 食べ物の匂いを嗅ぎつけ、メンガンダルが食堂にやってきた。続いてヤスオ、マル、セルジュ、トイ爺の順に入ってきた。
 メンガンダルは食堂の長椅子の先頭に座り、ヤスオには対面に座るよう勧めた。セルジュはメンガンダルの隣に座り、ヤスオの隣にトイ爺が座った。マルは準備の手伝いにいく。
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