異世界での異生活

なにがし

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18.食事会

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「ヤスオ、この食べ物を知っていますか。」

 それは、肉や野菜を串に刺し焼いた食べ物だった。
肉だけ物もあれば、間に野菜が刺さっているものもある。
野菜は、ネギやピーマン、玉ネギといったところか。
問題は肉だ。何の肉か、さっぱり分からない。

「串焼きですね。まだ食べたことは、ありませんが。」
「おお。ご存じでしたか。これは、美味しいうえに、経済的でして。私のような大食いには大助かりの食べ物です。」

──なるほど。

 メンガンダルの前の皿だけ大盛りなのはそういう理由があったか。
各自の前に小皿とお茶が置かれ準備が完了。各自が席に座る。
この時トイ爺はシンシアに席を譲り、末席に座った。
全員が席についた時、メンガンダル以外にも匂いを嗅ぎつけた者がいた。

「いいな。いいなぁ。」「大人達ばかりで、ずるいぃ。」

 孤児院の子のビルとリンが覗いてきた。

「これ、あなた達の食事は済んだでしょ。残ったら取っといてあげるから、今日は部屋に戻って休みなさい。」

 セメレが子供達をたしなめる。

「えぇぇ。組合長がいるもん。ぜってぇ残らねぇよ。」

 組合長の大食いは子供達にも知れ渡っている。
ビルはふてくされて、口を尖らせた。
ビルは子供達の中では最年長で、リーダー的な立場のうえ、面倒見がよい子だ。

「小僧。よく分かっているじゃないか。わたしは食べ物を残さない主義なのだ。」

 メンガンダルは開き直り、自慢げに話す。

「ただの食いしん坊なだけだろ。」「そーだよ。ずるぅい。」

 リンも口を尖らせた。リンも女の子では最年長で、姉的な存在だ。
2人は子供達の代表として食料確保に従事していた。

「こぉら。そこの、“ひょっとこ”兄妹。今日はウサギ肉だったのでしょ。美味しくなかったの?足りなかったの?」

 今度はシンシアがたしなめる。

「あれは、あれで美味しかったし、おなか一杯だけど。…分かったよ。」
「シンシア姉ちゃん。今度は組合長がいない時に買ってきてねー。」
『おやすみー。』

 二人は部屋へ戻っていった。

「買ってきたのはシンシアだけど、金を出しているのは、わたしなのだが。」

 メンガンダルが小声で呟いた。
この時、子供達はアリアドネの事を知らない。
明日知った後もあのくらい悪態が付ければ良いのだが、とメンガンダルは思った。

まずは腹が減っては、と食事会が始まった。
皆が串を取り、頬張り始めた。ヤスオも勇気を振り絞り一口。

「おほ。美味い。これ普通に鶏肉だ。」

 舌鼓を打ち、あっという間に一本食べた。
別にもう一種類の肉がありそうなので、それをもう一本取った。

「これも、うまい。というかこちらの方が俺好みだ。これ何の肉だろう?」

 隣のシンシアに聞きたかったが、今はそのような悠長な話をしている場合ではない。
とりあえず串焼きを満喫することにした。

「ヤスオ、食べながらでいいのだが。」

 メンガンダルは口の中に、たくさん具材を詰めたまま話を切り出してきた。

「アリアドネ様の服の事なのだが。とても身軽でその、寝るときに着るような物に見えたのだが。」

 メンガンダルは口の中に具材が入っていても、はっきりと話す。
どこから、声が出ているのか気にはなるが聞ける空気ではないのでスルーする。

「その通りです。あれは、病衣と言い、病院に入院した人が着る服です。寝やすく、脱ぎやすい構造になっています。」

 周りは“ビョウイン”が気になり少しざわついた。シンシアが説明する。
メンガンダルはシンシアの説明が終わるのを待ち、続きを話した。

「それで、その病衣は元々ヤスオが着ていたものなのか?」
「おそらくそうでしょう。病院では、男性は青色。女性は赤色の病衣を身につけますが、アリアドネ様が着ていたのは。」
「青色でした。ヤスオ様はアリ姉さんの服を着ていたのですよね。」

セルジュが割って入ってきた。

『えっ?!』

 セメレ・マイヤ・トイ爺・マル・カミルが固まった。
マルとカミルがひそひそ話を始め、ヤスオを見る目が明らかに変わった。

「だとしたら、衣服を残して身体だけが入れ代わった。となりませんか?」

セルジュは五人を無視して続けた。
この言葉にセメレ達は理解したのだが、マルとカミルはひそひそ話に夢中で聞いていなかった。

「そうなるな。だが何故、衣服を残して身体だけ?一体だれが、何の目的で?」

 メンガンダルは手を止め考え込んだが、口の中が空になる事はなかった。

「報告書に似たような記載はないのですか?」

今度は報告書に周りが、ざわめく。シンシアが組合に過去の転移者を記載した報告書があることを皆に伝えた。

「私なりに調べてみたのだが、そのような事例は全くない。転移した者は皆、前世の衣服で転移している。だから余計、分からないのだ。」

 メンガンダルは、額に手を当て考え込んだ。
それでも口に何かを入れたままだった。

「目的は分かりませんが、誰がやったかは想像がつきます。」

 セメレの突然の発言に、皆驚き、注目する。
セメレは立ち上がり全員を見渡して、話を続けた。

「おそらく、アリアドネ様の旦那様でしょう。」
「ちょっと待って下さい。アリ姉さんは、生涯独身で、旦那さんはいないはず。」

 セルジュが片手を上げ、異議を申し立てた。

 「それは、現世での話。天界では、旦那様がおられました。むしろ、神と結婚したから神になったのです。当然旦那様は神ですので、そのような力はお持ちでしょう。」

セメレは手を合わせ祈る。

 「あぁ、だから結婚しなかったのですね。だとしたら、なぜそのような手の込んだ事を?」

 今度はセルジュが額に手を当て考え込んだ。口の中は、何もない。

「それを、アリ姉さんが望んだから。いえ、アリ姉さんがこの世界に留まるのを望み、その為に必要な工程だったとしたら?」

 シンシアが顔を上げ、目が輝いてきた。

「説明がつくな。だとしたらやはり、アリアドネ様がこの世界のどこかにおられる。そして、何らかの方法で、我々に連絡してくるだろう。とりあえず遺体が見つかったからには、葬儀を行わなければならない。だが、まだ希望はある。信じていこう。」

 メンガンダルが話を締める。全員がうなずいた。

「では、アントの夢はこれからもヤスオ様を支援していきます。しかし、そのためのヤスオ様の役割は何なのでしょう。ヤスオ様は、心当たりはないのですか?」

 セルジュの疑問は、ヤスオにとっても最大の疑問だ。
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