異世界での異生活

なにがし

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19.葬儀

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セルジュの疑問は、ヤスオにとっても最大の疑問だ。

「それは、まったくありません。俺に神の知り合いも、いませんし。そもそも、アリアドネ様はどうしてお亡くなりになったのですか?」

──!!!

「それは、私も気になっていました。」「私も。」

セメレ、マイヤも同じことを考えていた。

「そういえば、シンシアから“前日体調が悪そうだった。”の報告と“組合に宿泊したから、相当調子が悪かったのではないか。”の予想だけだったな。シンシア、詳しく聞いてないのか。確か、アースドラゴンと遭遇したのだったな。」

──アースドラゴン。

全員が驚いた。そして、アースドラゴンと戦って致命傷を負ったのかと勘違いした。

──ドラゴン。異世界だぁ。

ヤスオだけは皆と違う解釈で、異世界を肌に感じていた。

「ええ。アリ姉さんはドラゴンに捕まってしまい、食べられそうになったらしいの。それを水球魔法で大量の水を飲まして、何とか逃げてきたとか。」

──はぁ?逃げた?

アースドラゴンに捕まったのに、逃げたの。水球魔法で。すごい。皆は衝撃を受けていた。

──水球魔法。異世界だぁ。

それは、どんな魔法なのだろうか。ヤスオだけが異世界に心躍っていた。

「そんな逃げ方できるのはアリアドネ様だけだろうな。それで、その時ケガをしたとかは?」

さすがのメンガンダルも驚きで、具材を飲み込み食べる手も止まった。

「なかったわ。ただ長時間捕まっていたから、気分が悪いとだけ。」

シンシアは男連中が多いこの場で、アリアドネの“しも”の話はできなかった。

「そうか、死因はともかくアリアドネ様の肉体に限界がきたのは確かのようだ。」

メンガンダルは、これ以上何も分からないと判断して話を終わらせた。
ヤスオはシンシアの話から、ある推理が浮かんだ。
しかしまだ憶測の段階で、みんなにどう説明してよいかわからなかったので、黙っていることにした。
こうして多くの疑問を残しながら、食事会はお開きとなった。

メンガンダルとマル、カミルはそのまま、家に帰り、翌朝早めに参上することに。
シンシアは一旦家に帰って着替えてから再び教会にくることにした。
ヤスオとセルジュは、教会に泊まり込み、棺を照らすろうそくの火を絶やさないよう一晩中見張る役をかってでた。
メンガンダルは帰り際、セメレに頼み事をした。

「院長。残った串は明日の朝にでも、子供達に食べさせてくれよ。また、組合長がいない時って言われたらかなわんからな。」

──あぁぁ。気にしていたのかー。

串は11本。子供達の人数分、残されていた。


翌日。朝食を済ませた子供達に、セメレは訃報を伝えた。
戸惑う子供達に間髪容れず、祭壇のある礼拝堂に連れていき、最後のお別れを済ますようせかした。
入口に長テーブルが配置され、花が山積みにされて置かれていた。
子供達は一人一本の花を持ち、順番に棺の中に花を入れ、手を合わせる。
これは、この世界での一般的な葬儀ではなく、すべてヤスオが前世から取り入れた新しいやり方だった。
子供たちは棺に声をかけて涙した。
そして、子供達全員を祭壇の近くに並ばせてマイヤのオルガン演奏で、歌い始める。
子供達の歌が始まるとセメレは礼拝堂の入り口を開けた。
外で待っていた街の人達が、続々と入ってくる。
マルとカミルが長テーブルの後ろに立ち、参列者一人一人に花を持つよう求めた。
棺の後ろにシンシアが立ち、棺に花を入れ、手を合わせるよう参列者を誘導した。
葬儀の始まりである。
街の人達はこの異例の葬儀に戸惑ったが、アリアドネの死がそれほど特別なものなのだと納得していた。
その後、歌い手は子供達から希望者に代わり、演奏者もマイヤ、セメレ、希望者と入れ代わった。
参列者は途切れることなく続いた。最後尾の案内役をしていたヤスオが、礼拝堂にたどり着いたのは、お昼を大幅に過ぎた頃だった。
その後、関係者と希望者のみで、最後の別れを済ませ棺を移動して埋葬した。あっという間の一日だった。
すべてが終わったのは、ランタンに火を入れなければ足元が見えない頃だった。

「ヤスオさん。本当にごめんなさいね。」

教会に戻ると、セメレが用意していた食事をヤスオに差しだした。
その日、ヤスオのことは忘れ去られ交代要員が用意されず、結果飲まず食わずで、案内役をこなしていた。

「いえ、お気になさらず。こういう事もありますよ。」

ヤスオの顔が引きつっていた。それもそのはず。その事に気がついたのは先程。

──やぁ、やっとの食事ですね。朝から何も食べてないから、お腹空きましたよ。
のヤスオの発言に、おもしろい冗談だとみんなが笑った。
しかし、ヤスオのキョトンとした表情で冗談じゃないと分かり一同が笑えなくなった。

──えっ?本当なの?
そこで、初めて発覚したのだ。

「それでは、もう遅いので。」

と言うとメンガンダル、シンシア、セルジュ、マル、カミルは逃げるように帰っていった。
残ったセメレ、マイヤ、トイ爺、ヤスオが少し遅くなった夕飯を取っていた。

「ヤスオさん。これ美味しいですよ。」
「ヤスオ、これも食べろ。」

三人はやたらと気を使った。ヤスオはその気遣いがうれしいやら、おもしろいやらで、案外楽しい食事になった。


翌日からは、何事もなかったかの様に元の日常に戻った。
午前中は薬草採取。午後から勉強と訓練。夕飯をご馳走になったら雑談して帰る。帰る途中、夜食を買う。
帰ったら夜食を頬張りながら勉強または家の探索。そして、寝る。
そんな日が何日も続いた。
ある日、いつものように夜道を帰っていた。何気に空を見ると、三日月がとても綺麗に見えた。2日目に見たのと同じ月だ。

「あぁ。もうそんなに時間が経っていたのか。あっという間と思えるのはそれなりに充実しているのかな。」

そんな事を呟きながら、夜食を買いにいく。
その日、マイヤからいつも寄る惣菜屋の近くに、屋台の串焼き屋があるのを聞いて、今夜はそこに寄ってみることにしていた。

「この路地に入ったところか。」

言われた通り、路地に入ってみるとお店があった。お店に近づくにつれ、そこが串焼き屋だと分かった。

──みつけた~。

その店は、布を頭に巻いた頑固そうな親父がやっていた。
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