異世界での異生活

なにがし

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20話 突然の冷遇に戸惑う

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 その店は、布を頭に巻いた頑固そうな親父がやっていた。親父は、ヤスオに気がつくと、ものすごい形相で睨みつけた。

「うーん」

 どれを何本注文するか悩む。この悩みが楽しい。この世界にきて、買い物の楽しさを知った。

「おまえに売る串焼きは、この店にはねぇ。かえれぇ」

 親父が怒鳴りつけてきた。

「お、俺のことか?」
「そうだ。おまえだ。かえれぇぇ」

 訳が分からないが、親父の激しい剣幕にとても理由を聞ける雰囲気ではない。さらに周りを見渡すと、他の店の店主や客もヤスオを睨んでいた。厳しい視線にさらされながら、引き返していつもいく惣菜屋に寄った。
 いつもは、愛想の良いおばさんだが、今日は迷惑そうにされた。

「おばさん。唐揚げ4つちょうだい」

ヤスオは選ぶことなく、すぐに注文する。おばさんは手招きをして、屋台の裏に隠れるよう勧める。

「あんたは常連さんだから、商売するけど、これからは目立たないように買いにきておくれ。」

 ヤスオは隠れながら小声で話す。

「なんで?」
「あんた、評判悪すぎる。あたしの立場が悪くなる」

 唐揚げを袋に入れるおばさんの表情は辛そうだった。

「ごめん、おばさん。ありがとう」

 袋と料金を交換し、すみやかに立ち去った。その後も街の人の冷ややかな視線が刺さる。刺さる視線に耐えながら、逃げるように家路を急いだ。
 帰宅してすぐに台所の椅子に座る。テーブルの上には前日まで、読んでいた本が置きっぱなしになっている。本の横に唐揚げを置き、状況を整理した。

──どういうわけか?俺は街の人に嫌われている。

なぜかは、いくら考えてもさっぱり分からない。

──明日、院長に相談してみよう。

 それぐらいの結論しか思いつかなかった。今はどうにもならないので、とりあえずいつも通り夜食を食べながら本を読むことにした。

──なんで?

 街の人に嫌われている現実が頭をよぎり、読書に集中できない。本に涙が落ちた。“いけない”と慌てて本を拭き、涙を必死にこらえて読み進めた。唐揚げを一口しては読んで、一口しては読んで、そうして涙をこらえた。
だが、何ページか読み進めたら、涙を抑えきれなくなった。

──ありがとう。

 大粒の涙がこぼれた。目に手拭いをあて、何度も何度も涙を拭きとる。唐揚げが5つ入っていただけなのに、涙腺が崩壊した。


「あら、ヤスオさんこんなに早くどうしたのですか?」

 まだ、夜が明けぬ薄暗い時間にヤスオが教会を訪れた。セメレとマイヤは朝食の準備をしていた。

「朝早く、すみません。まずは、手伝いをさせてください。そのあと、相談を聞いてくれませんか?」
「えぇ、分かりました。では、この食器を食堂に運んで、並べて下さい」

 セメレは何かあると察知したが、まったく想像がつかないので、とりあえずヤスオの希望どおりにした。


「はぁ?街の人達に嫌われている?」

 お茶を入れていたセメレの手が止まる。ヤスオのおかげで少しゆとりができたので朝食前に院長室で三人がお茶をすることになった。

「はい。串焼き屋さんには怒鳴られて門前払いされましたし、街の人達から白い目で見られるし。院長なら何かご存じかと思いまして」

 お茶を運ぶ院長の顔は、ひたすら驚いていた。

「いいえ。何も存じあげません。マイヤは何か、ご存じ?」
「いいえ、私も。そのようになっている事すら知りませんでした」

 全員にお茶を配り終え、セメレは席に座り一口お茶をすすった。

「何か悪い噂でも、広がっているのでしょうか。トイ爺さんにもそれとなく伝えて、街の人の動向に注意して頂くようにしましょう」

 マイヤは湯呑を机に置き、ヤスオの手に自身の手をのせた。

「ヤスオさんは、気にせずいつも通りにしていてください。私も、街の人に聞いてみます。特に串焼き屋の親父さん。ヤスオさんにそんな態度取るなんて」

心なしか、マイヤの目が燃えているように見えた。


「通ってよし」

 いつも通りトイ爺と子供達、プラス“ワン”とヤスオが門を抜けて、街の外へ向かう。

「ヤスオ、やはり何かおかしいぞ」

 毎日ヤスオの背中に乗って門を通過するのが、ボンの日課になっていた。そんな無防備なボンの背中を擦るのが、門番の日課になっていた。
 しかし、その日はボンに触ることなく、さらにヤスオを見ようともしなかった。トイ爺はそれが気になっていた。

「はい。なんか、気味悪いです」
「同感じゃ」

 いつも通り、薬草採取が始まった。子供達はすっかりヤスオに慣れて楽しそう。特にアイルはヤスオを父親のように慕い、他の子に優しくすると焼きもちを焼くほどだった。
 時折、休憩や遊びを交えながら楽しい時間が過ぎた。だがその間、門番は遠くから休む事なくヤスオを見ていた。

『じゃん、けん、ぽん』

 薬草採取が終わり、年少組によるヤスオの肩車を賭けた、じゃんけんが始まった。4人いる年少組でなぜかアイルが強い。3日に1回は勝っている。

「やったー。勝ったー」

 今日もアイルが勝ったようだ。肩車をすると4人共、必ず寝る。そして、教会に着く頃には、ヤスオの頭はびしょ濡れになっている。最近では教会の入り口にヤスオ専用の手拭いが置かれている。
 昼食を済ませ、午後の授業が始まった。プリスト文字は形の違うローマ字のようだったので、容易に覚えた。
 計算機は、まさにそろばんだった。扱うのは小学校の授業以来だが、なんとか扱えるようにはなった。どれも順調に学んでいたが、生活魔法だけがどうしても使えない。
 生活魔法は9種類あるそうで、魔法属性を持たない人でも1種類は使えるらしい。多い人は6種類で、魔法属性を持つ人は最大4種類までしか使えず、無属性の人より少なくなる。すべて使える人は、アリアドネ様のような魔女だけだそうだ。

──魔力”0”なので、仕方ない。

 なので、魔法はあきらめた。
 いつからかトイ爺の訓練にアイルが参加するようになった。アイルには剣の素質があるそうで、その上達ぶりにトイ爺が驚いていた。さらに、その事が周りの子供達を刺激し、みんなが修練に、より集中するようになっていた。
 訓練は相変わらずで、ひたすら子供達の攻撃を受け続けた。子供達の上達ぶりはすごく、最近では受ける左腕が少し痛くなってきた。
なので、避けてみた。
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