異世界での異生活

なにがし

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21話 嫌われた理由を知る

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 避けられて、当初は空振りして転ぶ子がいたが、最近では空振り後の連続攻撃がうまくなってきた。ヤスオも防御がうまくなり年長組の攻撃も巧みにかわすようになった。
 素振りも変わらずで、ヤスオは別メニュー。構えては突きの繰り返し。最初は笑っていた子供達も最近では笑わなくなり、それどころか真似をする子も出てきた。どうやらそれなりに形が整ってきたのだと思う。

 夕飯を終え、子供達は各自部屋に戻り自由時間を満喫する。大人達四人は雑談するため、院長室に集まった。だが、ヤスオ以外の三人はいつもと様子が違っていた。

「こんばんは、ごめんください」

 聞きなれた女性の声がした。セメレが応対のため、声が聞こえる方へ歩き始める。

「あら、シンシア。それに組合長さんまで。どうぞ、お入り下さい」

 セメレの案内で二人は、院長室に入ってきた。二人はヤスオを見つけると、挨拶をする。

「ヤスオさん。葬儀以来ですね。ご無沙汰しています」
「ヤスオ。まだいてくれたか。丁度よかった」

 二人が、いつもと違う様子で挨拶をした。同時にマイヤが二人のお茶を入れ始める。

「久方ぶりじゃ組合長殿。それで、二人して今日は何しにきたのじゃ?」

 二人に挨拶すらされなかった、トイ爺が二人を睨みつけていた。

「ああ、トイ爺。葬儀以来ですね」

 気まずそうに、メンガンダルが挨拶をした。トイ爺の迫力に二人は、その場で立ちすくんだ。
 院長室の椅子は四つしかない。すでにトイ爺とヤスオが座っているので、残り2つを自分達が座ってもよいのか遠慮もしていた。
 見かねたセメレが椅子に座るよう勧めた。椅子に座った二人にマイヤがお茶を差し出す。

「それで、本日はヤスオさんの件でいらしたのですよね」

 顔こそ笑ってはいたが、マイヤから何やらものすごい圧を感じる。今にも目からビームが、口から炎が出てきそうな雰囲気だ。

「ああ。その通りだ。今日は謝罪と説明にきた」

 どうやら、ヤスオ以外の人は何かしらの事情を知っているようだ。そのせいか、メンガンダルは肩身が狭そうだ。

「その前に、わたしからヤスオさんに説明させて下さい」

 まずはマイヤが説明してくれるようだ。この様子だと、ヤスオが街の人達から嫌われている件なのだろうか。

「今朝ヤスオさんから話しを聞いて、串焼き屋の親父さんに事情を聞きに行きました。聞けば孤児院に出入りしている若い男が、アリ姉様を死に追いやった張本人だと言うじゃないですか」

──え?若い男って俺のこと?

 あーそうか。この世界では、俺は若い方に入るのか。ヤスオは、嬉しくて思わず顔に笑みが浮かぶ。しかし、そんな雰囲気ではないので慌てて下を向き、顔を見えないよう両手で覆い隠した。

「ヤスオさん、ショックですよね。もちろんわたしは、否定しましたよ。ですが、冒険者組合の職員が言っていた話だから間違いないと言い返されまして。それで、院長先生に相談いたしました」

マイヤは言いたいことを言うと、満足して部屋の隅の物置台の前に歩いていく。

わたくしも、街の人達から同じ事を伺っていました。マイヤから噂の発信元を聞いて、すぐにセルジュさんに相談させていただきました。」

 自身の椅子に座っていた、セメレが話を引き継いだ。トイ爺は、街や門番の様子をセメレに報告した時、同様の事を聞いていた。

「それで、セルジュが冒険者組合に抗議にきて、私も事情を知り慌てて調査したわけだ」

 今日までメンガンダルも噂の事は知らなかったようだ。

「それで、この悪意ある噂を流したのは、誰じゃ」

 トイ爺が、いつになく怒っている。

「その前に調査の経緯を聞いてくれ。ヤスオの事なのだが冒険者証の発行時、職員全員で証書を探した事があって、職員はヤスオの事は知っている。また、史上初のG級冒険者として有名で、冒険者や門番、騎士なら名前ぐらいは知っている。ただ、出自や顔など詳しいことを知っている職員は、わたしとアガサ、シンシアだけだ。他の職員には、何も知らせていない」

 メンガンダルはお茶を一気に飲み干し、湯呑をテーブルの上に置いた。その湯呑をマイヤが回収し、お茶を入れ直す。

「それで?」

トイ爺もお茶を飲んで、自身を落ち着かせた。

「それがいけなかった。突然現れた謎のG級冒険者の事を多くの者が知りたがり、職員に問う者が続出した。もちろん、他の冒険者の情報は話してはならないので、話せないで済むはずだった。だが、ヤスオの出現とアリアドネ様の死が重なったので、セルジュが疑ったように、職員の間でもそのような憶測が生まれた」

 マイヤが入れ直したお茶を、メンガンダルの前に置いた。

「それで職員がその憶測を広めてしまったと?」

 トイ爺は、やや呆れ顔でメンガンダルを睨みつけた。

「いや、待ってくれ。例え憶測が職員内で広まっても、それを外部に洩らしたりしない。そういう決まりなのだ。…憶測を広めたのは、フランツという魔石受付をしている男だ」

 メンガンダルは両手で自身の太ももを殴って悔しそうだ。

「本来なら、魔石受付の男一人がそのような話をしても信憑性がなくて、そこまで広まるなんてないのだけど。受付のチェンチェンとユキナが食堂で、その話をしてしまったみたいなの。それを、一部の冒険者に聞かれたみたいで、信憑性ができてしまった。」

 シンシアは、立ち上がり深々と頭を下げた。

「ヤスオさん。ごめんなさい。二人は小声であれば問題ないと思っていたらしくて。こういう事があると若い二人に、ちゃんと教えなかった教育係の私のミスです」

 ヤスオは笑顔で答える。

「気にしないで下さい。そういう事もありますよ~」

 事の重大性をまったく理解しておらず、若者入りした事実だけを喜んでいた。

「それで、そのフランツという人はどうなるのです?」

 セメレはそう聞きながら、シンシアに歩み寄り肩を抱いて、座るよう勧めた。

「じつはその、フランツは兄上の紹介で採用した職員でして」

──兄上?

「何じゃと、では間者か?」

──間者?間者ってスパイの事だよな。ん、どういう事?

「待って、ヤスオさんが不思議そうな顔している」

マイヤが割って入ってきた。ヤスオの頭から湯気が出ていた。
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